心理的安全性とは?高める方法やメリット・基本知識を詳しくご紹介

近年、職場やチーム内で「心理的安全性」が重要視されるようになっています。心理的安全性とは、メンバーが自分の意見やアイデアを自由に表現でき、失敗を恐れずに行動できる環境のことです。この記事では、心理的安全性の基本的な概念、高めるための具体的な方法、メリットについて詳しく解説します。

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心理的安全性とは

心理的安全性(psychological safety)と呼ばれ、ハーバード大学にて組織行動学の研究をおこなうエイミー・エドモンソン氏によって提唱された概念です。

心理的安全性は、「不安や恐怖を抱くことなく自分が思った発言や行動ができる状態」を指します。具体的には、自らの言動によって人間関係に歪みが生じるのではないかという心配やストレスがない状態を言います。

彼女の研究によれば、心理的安全性が高いチームは、メンバーがリスクを取って新しいアイデアを試みることができるため、創造性やイノベーションが促進されるとされています。また、メンバーが自由に意見を述べ合える環境は、コミュニケーションの質を高め、結果としてチーム全体のパフォーマンスを向上させる効果があります。

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心理的安全性が注目される背景とは?

この概念に注目が集まった理由は、2015年にGoogle社が「効果的なチームの条件において心理的安全性が最も重要な概念である」という研究結果を発表したためです。効果的なチームとは、業績や成果などの高い結果だけでなく、チーム内の文化や風土といった居心地の良さも併せて加味され、総合的に優れていると評価されたチームを指します。

研究結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーには特徴があり、Googleからの離職率が低く、高い収益性を生み、マネージャーから高い評価を得られる機会が 2倍多いことが判明しました。心理的安全性の高さはその人自身の能力を高め、チームにとっても高い効果を生み出す重要な要素であることが伺えます。

Googleの発表で心理的安全性という言葉が広く知られるようになったのはもちろん、テクノロジーの発展に伴い、効率や生産性アップを図りたいと思う企業が増えたことも関係すると考えられています。

エドモンドソンによる心理的安全性を損なう4つの要因と行動

心理的安全性は、適切な風土を持ち、優れた業務の結果を生み出す「効果的なチーム」作りに重要な概念です。一方、心理的安全性が低いチームにおいては大きく4つの不安が生まれることもエイミー・エドモンソン氏によって提唱されています。以下では、それぞれの不安とその具体的な行動について詳しく説明します。

  • 無知だと思われる不安(Ignorant)
  • 無能だと思われる不安(Incompetent)
  • 邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)
  • ネガティブ思考だと思われる不安(Negative)

1つずつ詳しく解説していきます。

無知だと思われる不安(Ignorant)

無知だと思われる不安は、わからないことを尋ねた時に「こんなことも知らないのか」と失望や見損なわれたような反応されることで生まれる、恥ずかしさや焦りの気持ちが入り混じった不安を言います。このような不安を抱えると、誰かに何かを尋ねることへの恐怖を覚えてしまい、わからないことが不明なまま解決されない問題として蓄積されてしまいます。仕事においては、問題に対し的確なアドバイスを取り入れられる機会が失われるため、ミスの発生や適切な問題解決に至らない影響が考えられます。

  • 行動例
    • 会議中にわからないことがあっても質問しない
    • 新しいプロジェクトについての理解が不十分でも確認しない

無能だと思われる不安(Incompetent)

無能だと思われる不安は、「自分の能力が不足していると思われるのではないか」という恐れから生じます。この不安は、誤りや失敗を自ら報告できない心理を生み出します。不安な気持ちからミスの未報告や隠蔽が癖づいてしまう可能性もあるでしょう。初めは小さなミスであっても報告されず改善されないままでは後々大きな損失や問題にもなり得ます。

  • 行動例
    • 自分のアイデアを共有するのを避ける
    • 課題や問題に直面しても助けを求めない

邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)

邪魔をしていると思われる不安は、「他人の時間や作業を妨げていると思われるのではないか」という恐れから生じ、積極性や個性を失う状況を生み出します。例えば課題に対する新しい策をひらめいたとしても、面倒に思われることや業務の妨げになるのではないかと不安を感じます。このような不安が発生してしまうと、様々な人が集められ意見を出し合い問題を解決するチームとしての問題解決能力を失います。

  • 行動例
    • 重要な情報や進捗状況を共有しない
    • 他のメンバーに相談やフィードバックを求めるのを避ける

ネガティブ思考だと思われる不安(Negative)

ネガティブ思考だと思われる不安は、「問題提起や批判をするとネガティブだと思われるのではないか」という恐れから生じます。例えばミーティングの場において、思い浮かんだ意見が本来適切なものであっても「それはネガティブな考え方だ」と批判される可能性を考え不安に陥る状態を指します。このような不安は、自らの言動で人間関係に歪みが生まれることを恐れるあまり、否定的な意見と捉えられそうな発言を慎む状態を生みます。実は前向きで的確であったかもしれない意見も埋もれてしまうため、チームとして正しい問題解決から遠のいていく影響も考えられます。

  • 行動例
    • リスクや問題点について発言しない
    • 改善のためのフィードバックを控える

心理的安全性がもらたらす「企業」への効果

心理的安全性_効果

心理的安全性が企業文化に根付くと、様々な良い影響が生まれます。特に重要な2つの効果について、詳しく見ていきましょう。

チームのパフォーマンスの向上

心理的安全性が高いチームは、メンバーが自由に意見を交換し、リスクを取って新しいアイデアを試すことができる環境が整っています。このような環境においては、メンバーが自分の意見やアイデアを表現しやすくなり、多様な視点が集まることで、より創造的で効果的な解決策が生まれます。結果として、チーム全体のパフォーマンスが向上し、効率的にプロジェクトを進めることができます。このサイクルが続くことで、チームは連続的に成長し、より高い成果を上げられるようになります。

従業員のエンゲージメント向上

心理的安全性が高い環境では、従業員が自分の意見や感情を率直に表現できるため、職場でのストレスが軽減されます。これにより、従業員の満足度が高まり、仕事に対するモチベーションが向上します。従業員が自分の意見が尊重され、貢献が評価されていると感じることで、職場へのコミットメントが強まり、エンゲージメントが向上します。エンゲージメントが高い従業員は、自発的に仕事に取り組み、組織の目標達成に積極的に貢献しようとするため、結果として企業全体の生産性が向上し、顧客満足度の向上にもつながります。

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心理的安全性がもたらす「個人」への効果

心理的安全性は、個人にとっても多くのポジティブな効果をもたらします。以下では、特に重要な3つの効果について詳しく説明します。

ストレスの軽減

心理的安全性が高い環境は、個人のストレス軽減に大きく寄与します。職場でのストレスの一因は、自分の意見やアイデアを発言する際の不安や恐れです。しかし、心理的安全性が確保された環境では、失敗を恐れずに意見を述べることができます。これにより、個人が感じるプレッシャーが減少し、仕事に対するストレスが軽減されます。また、心理的安全性が高い職場では、他者からの批判や否定的な反応を恐れる必要がないため、安心して業務に取り組むことができます。このような環境が整うことで、精神的な健康が保たれ、仕事に対する意欲も高まります。

自己成長の促進

心理的安全性が確保された環境では、従業員は自己成長に対して積極的になります。自分の意見やアイデアを自由に表現できるため、新しいスキルの習得や知識の拡充に対する意欲が高まります。挑戦的な課題に取り組む際も、失敗を恐れずに挑戦することができるため、学びの機会が増えます。これにより、個々の能力やキャリアパスが広がり、自己成長が促進されます。自己成長を実感できる環境は、従業員のやる気を引き出し、仕事に対する満足感やモチベーションを高める要因となります。結果として、個人のスキルアップやキャリアの発展が加速し、組織全体の人材力の向上にもつながります。

人間関係の向上

心理的安全性の高い職場では、従業員同士の信頼関係が深まり、人間関係が向上します。メンバーが互いに意見を尊重し合い、支持し合うことで、職場内のコミュニケーションが円滑になります。このような環境では、対立や誤解が少なくなり、協力しやすい雰囲気が作られます。また、信頼関係が築かれることで、メンバー間の支え合いや助け合いが自然と生まれ、チームワークが強化されます。良好な人間関係は、職場での満足感や安心感を高め、従業員の仕事に対する愛着や忠誠心を深めます。その結果、職場の雰囲気が良くなり、長期的なチームの結束力と個々の幸福感が増すことになります。

チームの心理的安全性を測定する「7つの質問」

チームにおいてどれくらい心理的安全性が保たれているか「7つの質問」で確認することができます。メンバーには匿名で「7つの質問」に回答してもらうことで、より現状に近いチームの心理的安全性を測ることができるでしょう。「7つの質問」は心理的安全性を提唱したエイミー・エドモンソン氏が論文中で発表しており、内容は以下の通りです。

1.If you make a mistake on this team, it is often held against you.
  もしあなたがこのチームでミスをしたら、批難されることが多い。

2.Members of this team are able to bring up problems and tough issues.
 このチームのメンバー達は、困難な課題も提起することができる。

3.People on this team sometimes reject others for being different.
 このチームの人たちは、異質なモノを排除する時がある。

4.It is safe to take a risk on this team.
 このチームなら、安心してリスクを取ることができる。

5.It is difficult to ask other members of this team for help.
 このチームのメンバーに対して、助けは求めにくい。

6.No one on this team would deliberately act in a way that undermines my efforts.
 このチームには私の成果をわざと無下にするような仕事する人は誰もいない。

7.Working with members of this team, my unique skills and talents are valued and utilized.
 このチームのメンバーと仕事をする中で、私個人のスキルと才能は、尊重され役に立っている。

この7つの質問を通してチームの心理的安全性の現状を把握し、必要な改善策を講じることで、より安心で協力的なチーム環境を築くことができます。

チームの心理的安全性を高める5つの方法

チームの心理的安全性を高めることは、メンバーが安心して意見を述べ、リスクを取ることができる環境を作り出すために重要です。ここでは、心理的安全性を向上させるための具体的な方法を紹介します。

全員が発言できる場にする

安心してコミュニケーションをとったり発言できたりすると、積極的なコミュニケーションや何かを主張・提案する時の心配が小さくなります。具体的な方法としては、以下のような取り組みがあります。

  • ラウンドロビン方式:ミーティングで順番に意見を述べるラウンドロビン方式を取り入れることで、全員が発言できる機会を確保する。
  • 意見を求める文化の形成:リーダーやメンバーが積極的に他のメンバーに意見を求めることで、発言しやすい雰囲気を作る。
  • アンケートやフィードバックの活用:ミーティング以外の場でも、アンケートやフィードバックを通じて意見を収集することで、全員の声を反映させることができる。

双方がアサーションを心がける

アサーションとは、アサーティブコミュニケーションの略で、相手の考え方を大切にしながら、自分の意見や感情を伝えるコミュニケーションです。

相手のことを聞いてばかりで自分の考えや気持ちを主張できないことは、不満・不安が蓄積される原因です。反対に、自分の主張ばかりで相手の考え方などを受け止めないと、相手がストレスを抱え、発言を控えてしまうかもしれません。

誰もが自分の意見を言えるようにするには、「自分も相手も主張する権利がある」というアサーションの考え方が大切です。

チーム全体で定着させるなら、アサーションのテクニックを学んだり、ロールプレイングで伝え方を体験できる研修がおすすめです。

メンバー同士が交流機会を作る

仕事以外での交流は、リラックスした状態でのつながりを期待できます。リラックスしていると会話しやすく、心理的安全性を高めやすいです。飲み会や食事会などは、一緒に仕事をするメンバーのことを深く知ったり、関わりの少ないメンバーともコミュニケーションをとるのに役立ちます。

  • 定期的なチームビルディング活動:レクリエーションやチームビルディングイベントを定期的に開催する。
  • ランチやコーヒーブレイクの共用:メンバーがリラックスして交流できる場を提供する。
  • オンライン交流の促進:リモートワークが増える中、オンラインでの交流機会を積極的に作る

チームで協力して仕事をする環境を作る

協力し合えるチームは仕事への不安が溜まりにくいので、安心して働けるでしょう。困っているメンバーをすぐにサポートできるようにするには、お互いの進捗を把握できる仕組みが必要です。具体的な取り組みとしては、以下のような方法があります。

  • コラボレーションツールの導入:プロジェクト管理ツールやコミュニケーションツールを活用して、情報共有と協力を促進する。
  • 共同プロジェクトの設定:メンバーが共同で取り組むプロジェクトを設定し、協力の機会を増やす。
  • 定期的な進捗共有:定期的に進捗状況を共有するミーティングを開催し、全員が情報を把握しやすい環境を作る。

評価項目や評価基準を見直す

何が評価されているか分からないと、「反対意見を言ったら印象が悪くなって評価が下がるのでは」などと不安になるもの。自分の意見を主張できないだけではなく、昇給・昇格のポイントが分からないままでは、モチベーションを保ち続けるのも難しいです。

誰にでも分かりやすい評価項目か、客観的に評価できる基準になっているかチェックし、理由を説明できる評価ができなそうなものは、変えても良いでしょう。

ただし、従業員をランク付けするような評価は注意が必要です。「失敗できない」「他のメンバーに負けたくない」といった意識が、チームの雰囲気を悪くするかもしれないためです。

ランク付けの代わりに、良かったこと・今後の課題を部下にフィードバックすることをおすすめします。フィードバックの際、分かりやすい基準はアドバイスの参考になります。

まとめ:心理的安全性のある職場を目指そう

心理的安全性は、企業と個人の双方に多くのメリットをもたらす重要な要素です。信頼と尊重の文化を築くことで、チームのパフォーマンスが向上し、イノベーションが促進されます。心理的安全性のある職場を目指して、協力し合う環境を作りましょう。これにより、企業全体の競争力が高まり、個々のメンバーも充実した生活を送ることができるでしょう。

https://survey.lafool.jp/

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