注目すべき人事用語「ノーレイティング」ランク付けしない新しい評価方法

注目すべき人事用語「ノーレイティング」ランク付けしない新しい評価方法

新しい人事評価制度として注目を集めている「ノーレイティング」をご存じでしょうか。
従来の評価制度の課題を解決するマネジメント手法として、外資企業をはじめ、日本でも広がりをみせています。

しかし、「従来の人事評価制度と何が違うのか」「新しい制度をどのように導入したらいいか分からない」という疑問に思う人も多いのではないでしょうか。

本記事では、ノーレイティングについて詳しく知りたい人や現在の人事評価制度に限界を感じているという人に向けて、

  • ノーレイティングとは?
  • 日本で広まっている背景
  • 注目されている理由
  • 各企業の導入事例

を紹介します。時代にあった評価制度を取り入れることで、より強い組織づくりを目指しましょう。

ノーレイティングとは?

ノーレイティングとは、ランク付けをしない新しい人事評価制度のことです。従来のように、期末や年度末に「S」「A」「B」「C」といったランク付けをするのではなく、日常的にフィードバックを行い、その都度評価を行うという方式です。

ノーレイティングの概念が生まれたのはアメリカです。ビジネススピードの変化や仕事の進め方の多様化といった背景から、より今の社会に適した人事評価方法として注目されています。なお、ランク付けによる従来の人事評価制度を「レイティング」と言います。

継続的なフィードバックをベースとした「ノーレイティング」では、従業員へのランク付けは意味がないこととされています。一律の基準でランク付けを行う評価方法では、目標と日常の業務との乖離が生まれやすく、従業員のモチベーションを維持させるのが難しいからです。

ノーレイティングを行う上でもっとも重視されているのは、上司と部下の対話です。部下が納得して評価を受け入れ、業績アップにつなげられるかどうかは、面談によるものが大きいといえるでしょう。

実際に、GoogleやAmazonGE、GAP、マイクロソフトといった大手グローバル企業が次々とノーレイティングを導入しています。近年では、日本でも導入する企業が増えてきました。

ノーレイティングが注目された背景

従来の人事制度では、下記のような点が問題になることが多くありました。

  • 評価方法の不透明さ
  • 希望するキャリアパスと異なる目標にはやる気が起きにくい
  • 評価に対しての外的要因が見えにくい

目標に対して達成か・未達成かという評価方法は、評価に対しての外的要因が見えにくく、従業員のモチベーションの低下につながりかねません。

例えば、目標が未達成に終わったのは、為替相場や経済状況など外的要因が主な原因だったのかもしれません。外的要因が正しく考慮されず低いランク付けをされてしまうのは、従業員のやる気を削ぐ原因になり得ます。

そういった従来の人事制度の課題を解決するため、新たな評価制度を検討する企業が増え、その流れからノーレイティングにも注目が集まるようになりました。

ノーレイティングが日本で広まっている背景

近年、日本の雇用環境の変化はますます加速を続けています。今までの評価制度は機能しなくなりつつあるのが現状です。

一番の変化は、雇用の流動性が高まり人的リソースの確保が難しくなったことにあります。日本企業は、これまで以上に従業員の長期的な育成が求められるようになりました。また、持続的な従業員の育成こそ企業の成長につながるとの考えから、上司と部下の密なコミュニケーションを重視する企業が増えています。

時代の変化に対応できる新たな評価制度として、ノーレイティングに移行する企業が日本国内でも増えはじめています。

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ノーレイティングが注目されている理由

ノーレイティングが注目されている理由について解説します。

相対評価では評価基準が曖昧

レイティングは相対評価のため、評価基準が見えにくいというデメリットがあります。目標を数値化しにくい事務職やサポート職などは、特に差が分かりくく、従業員の不満が出やすいのがネックです。

一方、ノーレイティングは相対評価ではありません。上司と部下が一緒になって目標を設定し、密なコミュニケーションをもとに評価が行われます。そのため、目標達成までのプロセスや仕事への姿勢も評価できるようになり、評価基準の透明性も高まります。

評価によりやる気をなくす社員が出る

レイティングでは、相対評価のため「C」や「D」などの低い評価をつけざるを得ません。周囲の環境によっては、優秀な人でも低い評価を受けることになりかねず、評価に不満を持つ人も出てくるでしょう。

ノーレイティングでは相対的な評価を行う必要がないため、それぞれに正当な評価が付けられます。

時代にそぐわない評価の遅さ

レイティングは期末や年度末に一度しか評価されないため、1年前に立てた目標が1年後には、会社の方針からずれてしまうことも少なくありません。

ノーレイティングでは、複数回・定期的にフィードバックを行うため、臨機応変に目標や課題と向き合えます。調整を行いながら、個人と会社の成長をともににすすめることが可能です。

ノーレイティングのメリット

ノーレイティングの実施で得られるメリットについて解説します。

目標設定や評価への納得感が高まる

ノーレイティングは、上司と常にコミュニケーションをはかりながら進めていくため、目標設定・評価ともに双方が納得しやすいというメリットがあります。

従来の人事評価では、従業員自身が立てた目標ではないことが多く、モチベーションにつながらないことも多くありました。

さらに、評価が行われるのは期末・年度末に一度のため、何カ月も前の行動が評価されることも不満につながりやすい要因です。

しかし、ノーレイティングでは上司の記憶や感情に左右されず、現在の行動が評価されるため、評価への納得感も高まります。

また、その時の成長に合わせた目標を設定できるのもノーレイティングの強みです。

従業員のエンゲージメントを高められる

ノーレイティングでは、従業員が高いモチベーションを維持して仕事にのぞめるのが特徴です。

2016年にLinkedIinが行った調査によると、69%の従業員は「仕事の努力が正当に評価された場合には、より仕事に熱心に取り組む」と回答しました。

リアルタイムの目標と市場ヘの迅速な対応

従業員と密なコミュニケーションをはかることで、企業が外的要因に反応しやすいという点もメリットです。

市場の変化に迅速に対応する事で、被害を最小限に食い止めたり、一方で利益を最大限に活かすチャンスを逃さないため、会社全体の成長が見込めます。

上司・部下のコミュニケーションの活性化

ノーレイティングでは、上司と部下1on1でのミーティングが頻繁に行われます。

ミーティングは、部下がどんな状況に置かれているのか・何に悩んでいるのかといったことを知る良い機会です。回数を重ねるごとに、意思の疎通がスムーズに取れるようになり、認識のズレも自然と解消されていきます。

働き方の多様化に対応しやすい

対話の中で一人ひとりの状況に合わせた目標設定と評価を行うため、短時間勤務やリモートワークなど、どんな働き方をしていても個別に対応が可能です。これにより、不平不満が生まれにくく、誰もが円滑に業務を進行できます。

離職に歯止めをかけられる

2019年にエンジャパンが実施した「『退職のきっかけ』実態調査」によると「やりがいを感じない」「人間関係」「人事制度への不満」の3つの要素が離職の大きな理由となっています。

ノーレイティングを導入すれば、上司と部下が日常的にコミュニケーションを取るため離職のきっかけとなる要因をカバーすることが可能です。

個人の成長に焦点を当てた人事制度を導入したアドビシステムズ株式会社では、導入前に比べて離職率が大幅に低下したという結果が出ています。

ノーレイティングのデメリットと対策

メリットが多いノーレイティングですが、デメリットについても把握しておく必要があります。対策とあわせて解説します。

上司の負担が増える

ノーレイティングでは、頻繁に部下と1on1で対話を行うため、従来のレイティングに比べて時間的な負担は増える傾向にあります。

対話の量と質によりノーレイティングの内容が決まるため、周囲のサポートを得ながら、質の良い対話を継続的に行うことを上司に意識させることが大切です。

上司に高いマネジメント能力が求められる

レイティングは、事前に決められた明確な評価項目・基準のもとでランク付けするため、上司が部下を評価することは比較的容易でした。

しかし、ノーレイティングでは、企業側で明確な評価項目・基準が設定されておらず、上司に判断が委ねられている場合がほとんどです。

ノーレイティングでは、上司が適切なフィードバックを送れることが前提条件です。上司のマネジメント能力が不足していると、評価に対して不満を抱く従業員も出てきます。上司にはこれまで以上に高いマネジメント能力が求められるといえるでしょう。

会社側は、評価する側のマネジメント能力を高めるため、管理職を教育する必要があります。360度評価を実施して、自分に不足している能力が何かを本人に認識させ、コーチング研修などでマネジメントに対する意識改革を行うことが重要です。

現場が混乱する可能性がある

従来のレイティングでは一度決めた目標は変わらないため、従業員が何をすれば良いのかが明確でわかりやすいといった特徴があります。

一方で、ノーレイティングは上司と部下の対話の度に、状況の変化に合わせて目標が変化します。対話がうまくいかなければ、従業員に「評価がコロコロ変わる」という認識を持たれ、本来の目標を見失ってしまうことにもなりかねません。

そういった場合は、必要に応じて面談の頻度を調整したり、目標設定に大きく関わるような状況の変化があった場合にはすぐにメンバー全員に伝えるなど、臨機応変な対応が必要です。

企業によっては適さない可能性がある

ノーレイティングは、従来のレイティングとはまったく異なる人事評価制度です。場合によっては導入が難しいケースもあることを考慮しておく必要があります。

下記の3つのケースに当てはまる場合は、本当にノーレイティングを導入する必要があるかを慎重に検討しましょう。

・歴史の長い大企業でレイティングによる人事評価制度が深く根付いている

・少人数で会社を回しているため対話に時間を割くのが難しい

・業務や職種の特性上、さほど変化への対応が必要とされない  

ノーレイティングにおける給与・昇進の決定

ノーレイティングにおける給与・昇進の決定

ノーレイティングの導入にあたり、給与・昇進の決定はどのようにすれば良いのでしょうか?

給与の決め方

ノーレイティングでは、仕事の貢献度に応じて、上司が部下一人ひとりに配分金額を決定する方法を採用しているのが一般的です。

評価される側も面談によって自分への評価を実感できるため、従来よりも自分の報酬に満足できます。

その他、評価調整を行う「キャリブレーション」と呼ばれる方法や、業績に応じて従業員の等級をもとに決められた金額を支給する方法などもあります。

昇進の決め方

従来のレイティングを行っている場合でも、新たな業務を遂行するために必要な能力やリーダーシップなどを総合的に評価した上で、昇進が決められていることがほとんどです。

そのためノーレイティングを導入しても、昇進の決め方は変わらないことが多いでしょう。

その他に、管理職と人事が従業員一人ひとりの成長シナリオを話し合う「タレントレビュー」を通じて、昇進を決めるという方法もあります。

ノーレイティングの導入方法

どのようにノーレイティングを導入すれば良いのか、方法を紹介します。

課題の分析

まずは、現在の人事評価制度にどのような課題があるかを認識することからはじめましょう。課題が何かを確認したら、原因を分析し、対策方法を検討します。

ノーレイティングによって改善が見込めるようであれば、制度の導入について検討を始めるとよいでしょう。

信頼関係の構築

ノーレイティングの導入前に大事なのは、上司と部下の間で信頼関係を構築しておくことです。

日々の業務の中で関わる機会を増やしたり、評価とは切り離した形で上司と部下の1on1での対話を試験的に始めるなど、コミュニケーションの時間を設置しましょう。

評価する側の意識改革

従来の人事評価制度に慣れている場合、評価する側の意識を変えるのが難しいケースもあります。

また、上司が十分なコミュニケーション能力やマネジメント能力を持ち合わせているとも限りません。研修やセミナーに参加させて終わりではなく、しっかりと部下とコミュニケーションが取れているのかを確認していく必要があります。

管理職を対象とした研修や360度評価などの実施、評価する側の意識改革を行うのも企業側には求められます。

評価制度の見直し

ノーレイティングの導入は、これまでの評価制度が大きく変わることを意味します。営業のインセンティブやボーナスなどの報酬に加え、昇進するタイミングなどもあわせて見直す必要があります。

評価する側や昇進に際する決裁権が誰にあるのか、またどのタイミングで反映するのかなど、細部までしっかり決めておくことが重要です。

日本では管理職もプレイングマネジャーとして業務を行なっている事が多いため、ミーティング時間の確保やマネジメントなど管理職への負担についても十分に検討する必要があります。

従業員への周知と理解

ノーレイティングの導入前に、従業員の理解を得ておくことも大切です。

従業員に対して「どういった制度なのか」「どのようなメリットがあるのか」といったことをしっかり説明し、事前に周知をはかっておきましょう。

一人ひとりの不安や疑問点を解消しておくことが、新制度への協力を得るカギとなります。

制度の導入

導入して初めて課題が明らかになるケースもあるため、不具合があるとわかった時点で、臨機応変に制度の改良を行う柔軟性も必要です。

スムーズな運用のため、研修の実施やコミュニケーションツールの提供といったサポートなどを、積極的に人事主体で行うことが求められます。

決定権の委譲

上司と部下との信頼関係や、評価への従業員の納得感を維持するためにも、必要に応じて決定権の委譲を検討しましょう。

ノーレイティングを導入している企業事例

ノーレイティングを導入している企業事例を紹介します。自社で導入する際の参考にしてみてください。

General Electrics

General Electricsは、1878年にトーマス・エジソンがエジソン電気照明会社を創業したところからはじまりました。現在では、航空機エンジンから医療機器まで幅広い製品を手掛ける世界最大の多国籍複合企業へと成長しています。

同社は、2016年度に新しい人事評価制度「Fastwork」を導入し、フィードバックが送れる独自のアプリを用いています。音声やメモ・書類などを使って、仕事の進み具合について、上司から客観的な評価を得ながら、能力開発も行えるという実践的なシステムです。

新しい評価制度の導入後、従業員からは「面談の質があがった」「無駄に叱られる機会が減った」「上司が改善点を示してくれるようになった」「モチベーションがあがった」という声が聞けました。

カルビー株式会社

カルビー株式会社は独自の働き方改革を行い、5年で利益率を10倍にするという驚異的な成果を実現しています。

カルビー株式会社が行ったのは、「目標と成果の明確化」です。1年間の仕事内容を確認し、上司と部下が一緒になって目標を決めていきます。コミットメントはすべて数値化されるのも特徴のひとつです。

また、役職者の目標・成果の内容は社内サイトで共有されます。成果の達成度合いに応じて賞与が決まるため、従業員はモチベーションを維持しながら業務にあたれます。自分の働きがダイレクトに給与に反映されることで、従業員同士が協力しあうケースも増えたと言います。

P&G株式会社

P&G株式会社は、「目標の管理プロセス」に重きをおいたマネジメントを行っています。

まず、トップが定めた目標を各部署にブレークダウンし、チーム目標を共有した上で個人の目標を設定します。その際、上司は部下にその仕事を割り振った理由を説明をします。目標に向かう理由をしっかり理解させることで、仕事の姿勢が主体的なものへと変化し、パフォーマンスの向上につながるからです。

目標を定めたあとも2週間に1度のペースで面談を行い、進捗状況を確認しながら従業員へのフィードバックを行っています。

社員の精神状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ

「ラフールサーベイ」は、社員の精神状態を可視化することのできるツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

154項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

まとめ

ノーレイティングの導入は、従来型の人事評価制度の課題を解決し、IT化やグローバル化に対応できる組織づくりの一歩になるでしょう。

単に新しい制度を導入すればいいというわけではなく、メリットやデメリットも把握した上でしっかり議論を行って検討することが重要です。

まずは、人事評価制度において自社にどんな課題があるのかを分析してみるとこから、はじめてみてください。

https://survey.lafool.jp/
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