「社員を優秀な人材として育てたい」
「育成に成功する方法やポイントを知っておきたい」
人材育成に携わる方はこのように感じたことがあるかもしれません。人材育成は従業員個々の成長によって組織の発展に貢献できる重要な取り組みです。しかしその手法は多種多様であり、どのような取り組みが自社に適しているか、成果を得るためにはどうすれば良いか、疑問が浮かぶこともあるでしょう。
そこで今回は人材育成について、以下4つの項目を解説します。
- 人材育成の概要
- 施策や手法
- 成功に導くポイント
- 課題と解決方法
育てたい人物像や自社の現状と照らし合わせながら読み進めることで、効果的な人材育成の方法が見出せます。人材育成に悩みや疑問がある方はぜひ参考にしてください。
1. 人材育成とは?
人材育成について詳しく理解するために以下の項目に沿って解説します。
- 人材育成の概要
- 2つの目的
- 人材開発との違い
1つずつ確認しておきましょう。
人材育成とは
人材育成とは、個々の従業員の能力やモチベーションを高める取り組みです。取り組みによって企業は様々な環境変化へ対応でき、永続的な発展や成長を目指すことができます。育成対象となるのは管理職や新入社員など、目的に応じて様々です。従業員はそれぞれ持ち合わせているスキルや経歴が異なるため、目的に応じ対象となる従業員を定め取り組む内容を決定することが効果的です。目的は企業が目指す姿と対象者の現状を照らし合わせ、必要な能力や知識を検討すると良いでしょう。
人材育成の目的
人材育成には2つの目的があります。
- 目的1:人材育成で生産性を向上させる
- 目的2:従業員の退職を予防する
それぞれ詳しく解説します。
目的1:人材育成で生産性を向上させる
1つ目は生産性向上を目指す目的です。日本では少子高齢化によって労働人口減少が深刻化しています。この現状から企業にとって従業員は重要な人的資源であり、企業の成長には一人ひとりの労働生産性が欠かせません。人材育成は従業員個々の能力を高め、業務へのモチベーションを向上させます。高い能力とモチベーションは業務効率を向上させ、生産性向上へとつながります。
目的2:従業員の退職を予防する
2つ目の目的は従業員退職の予防です。企業の中でも新卒3年目以内の従業員の離職は、社会全体の課題となっています。離職率は3割程度であり約10年前から改善されていません。
高い離職率の原因の1つとして、従業員が社内における成長機会を感じられていないという点があります。成長機会を感じられない職場では将来への希望やモチベーションが上がらず、他に活躍の場を探してしまうことが考えられます。その点、人材育成は、従業員自身の能力向上を目指し研修などの学びの機会を提供します。そのため人材育成は従業員に成長の機会を与えることで、退職の予防という狙いも含まれるのです。
人材育成と人材開発の違い
人材開発は人材育成と同様の意味で捉えられやすい言葉ですが、2つの意味合いは異なります。人材開発の目的は今ある課題に対し必要な能力を身につけ、自身の成長や組織の成果に結び付けていくことです。そのため対象となるのは課題が見出されている従業員であり、具体的には中堅社員や管理職などが当てはまりやすいでしょう。一方で人材育成では目的に応じて対象者を定め対象者に必要な新たなスキルを学習させることで、地位や立場に合わせた能力の基盤作りを行います。
まとめると人材育成と人材開発では目的が異なり、以下のような違いがあります。
- 人材育成:必要な能力を新しく身につける
- 人材開発:今ある課題を解決する能力を開発する
2. 人材育成につながる施策・手法
人材育成の施策と手法には以下6つの代表的なものがあります。
- OJT
- OFF-JT
- 自己啓発(SD)
- 目標管理制度(MBO)
- 外部講師を招いて集合研修
- eラーニング
1つずつ具体的に解説します。
OJT
OJTとは、日常業務に就きながら行われる教育訓練です。具体的には、直接の上司や先輩社員が通常業務を行いながら業務の取り組み方や作業方法などを指導します。業務における基本的な指導を行うため、対象となるのは主に新入社員です。
メリットとして以下2点があります。
- 実施後に即戦力として期待できる
- コストが抑えられる
OJTは実際の業務手法を学べるため現場に出てすぐに活用できる能力が身につきます。また指導者は社内の人間であり、特別な時間や場所が不要であるため教育コストを抑えた指導が可能です。反対にデメリットには「指導者のスキルに偏る」という点があります。指導者は上司や先輩社員であり、専門のスキルを持った講師ではありません。そのため指導者のスキルによっては思うように能力が身につかない可能性もあるでしょう。
OFF-JT
OFF-JTとは、通常の業務を離れ集合研修や座学を通して行われる教育訓練です。具体的には特定の知識習得を目的に対象となる従業員を集め、専門講師や知識を持った人物から指導を受けます。特定の知識やスキルを学ぶため、対象となるのは中堅社員から新入社員まで目的に応じて様々です。
メリットとして以下2点があります。
- 秩序立った学びが可能
- 均等に教育を受けられる
集合研修や座学では目的に沿って順序が保たれた状態での学びが可能であり、指導者のスキルのバラつきが少ないです。OJTのように業務を行いながらの指導では論理的な指導は困難でしょう。反対にデメリットには「コストがかかる」という点があります。研修のための時間や設備費用、講師の人件費など様々なコストが発生するため、実施の際には十分な検討が必要です。
自己啓発(SD)
自己啓発とは、自らの意思で身につけたい能力や知識について主体的に学習する取り組みです。従業員個々の意思で行われることから、全社員を対象に行えます。具体的には社内外における勉強会への出席や業務に関わる資格取得などが挙げられます。
メリットとして以下2点があります。
- 自由度が高い
- 学習スピードが早い
学習する内容や時間を自らの意思で決められるため、意欲的な取り組みによって効率的な知識習得に期待できるでしょう。反対にデメリットには「従業員個々の習熟度にバラつきが出やすい」という点があります。取り組み方や意欲は従業員によって差があるため、能力が身に付くレベルにはバラつきが出やすくなるでしょう。
目標管理制度(MBO)
目標管理制度とは業務における具体的な目標を自ら定め、達成度合いを評価する制度です。目標設定は個人またはグループ単位において行われます。
メリットとして以下2点があります。
・主体性の向上
・問題解決能力の向上
上司との話し合いによって本人が納得した上で目標設定が行われるため、目標を達成しようという意欲的な姿勢が身につき、その過程において解決能力の向上が期待できます。反対にデメリットには「設定する目標レベルが低くなる」ことが挙げられます。達成度合いが評価されることから、良い評価を受けようと目標設定が低くなりやすい傾向があります。
外部講師を招いて集合研修
集合研修とは、外部講師を招き集められた受講者に対し目的に沿った指導を行う訓練です。具体的には、新入社員を対象に社会人としてのマナー講習を行うことが挙げられます。研修の目的に応じて学習内容を定められるため、全社員に対し行うことが可能です。
メリットとして以下2点があります。
- 学習に専念できる
- 深い知識やスキル獲得につながる
集合研修は業務と離れることで集中した学習が可能であり、専門の講師によって深い学びが得られます。デメリットとしては「場所と時間に縛られる」という点があります。決められた場所と時間で行われるため、例えば外回りを行う営業職にとっては通常業務が疎かになってしまう可能性があるでしょう。
eラーニング
eラーニングとは、インターネットを活用し学習できる仕組みです。具体的には、オンライン上で学習できるツールを組織内に導入し従業員は好きな場所や時間に学習を行います。遠隔地でも学習が可能であるため、各支店に所属する従業員や、外での業務が多い営業職などに適しています。
メリットとして以下2点があります。
- 柔軟に学習できる
- 個々のスキルに応じた学習が可能という点があります。
eラーニングは場所や時間を選ばないため業務のスケジュールに合わせた学習が可能です。また自身の能力に合わせた学習を選択できるため、効率的に知識を習得できるでしょう。デメリットとしては「新たなコストの発生」という点があります。導入する専用教材やツールの選択における手間や、導入費用が発生してしまいます。
3. 人材育成を成功に導くポイント
人材育成を成功に導く2つのポイントがこちらです。
- スキルマップを作成する
- 自社に合う人材育成手段を検討する
実施の前に内容を押さえておきましょう。
スキルマップを作成する
スキルマップとは、職種や年次ごとに身につけてほしい能力を挙げ、時系列でまとめたものです。具体的には「営業職1年目では何事も挑戦する行動力を身につけて欲しい」という能力目標を立てます。3ヶ月や半年、1年と時系列ごとに目標達成に必要な短期的目標を立て、能力獲得を目指します。
スキルマップ作成のメリットとして挙げられるのが以下2点です。
- 取り組むべき内容が明確になる
- 確実な能力向上
時系列ごとに短期目標を掲げられるため、今やるべきことが明確に掴めます。さらに短期目標ごとに振り返りを行うことで、スキル獲得へ向けて着実なステップアップが可能でしょう。
自社に合う人材育成手段を検討する
人材育成は、能力やモチベーション向上を目標に企業が提供する場において従業員自身が取り組みを進めます。そのため自社の風土に適切でない人材育成手段では、従業員が取り組みにくく本来の目的を達成することは困難です。例えばテクノロジー環境が整っていない組織において、オンライン学習ツールである「eラーニング」導入で育成を図っても、従業員は上手く使いこなせず育成は見込めません。
自社に適した手段を見出すためには、人材育成での問題点を明確にした上で効果的な打ち手を検討します。さらに打ち手として必要なツールは従業員にとって「わかりやすい」、「使いやすい」ものを導入すると人材育成の取り組みは促進されるでしょう。新たな手段を実施する際には、実施前後の変化を検証し手段に反映させることでより効果的な人材育成が実現できます。
4. 【階層別】人材育成の課題と解決法
人材育成における課題と解決法を階層別にまとめました。
- 【採用時】内定承諾後の辞退者が多い
- 【新入社員】仕事にやりがいやモチベーションを見出せない
- 【若手〜中堅社員】部下への指導・育成に十分な時間を費やせない
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
【採用時】内定承諾後の辞退者が多い
内定後に多くの辞退者がいるという課題には、内定者研修の実施が効果的です。 なぜなら内定後から入社までの間に「社風が合わないかも」、「他社での選考が通過してしまった」と自社への入社に不安を感じ辞退する場合が多いためです。そのため内定者には内定者研修の実施によって、入社までの間に十分なフォローを行いましょう。研修の内容としては、選考過程における不安や疑問点の確認や、職場見学の実施などを通し自社での働き方をイメージさせます。入社までの期間に安心感や期待感を与えることで、辞退者の減少につながるでしょう。
【新入社員】仕事にやりがいやモチベーションを見出せない
新入社員がやりがいを見出せない状況には、コミュニケーションを通した人材育成を行いましょう。新入社員にとって業務は取り組むことで精一杯であり、慣れない環境によるストレスも重なりやりがいを得難い状況です。この課題には、OJTの導入によって先輩社員との活発なコミュニケーションを通し新入社員へ安心感や仕事への価値を感じさせる育成が効果的です。年の近い先輩社員とは話がしやすい上に、実際の業務や結果を間近で見られるため、職場への帰属感やモチベーションが高まります。先輩社員との交流を通し、OJT終了後も職場でのコミュニケーションが取りやすくなり職場に馴染みやすくなるでしょう。
【若手〜中堅社員】部下への指導・育成に十分な時間を費やせない
部下の育成手法を学ぶ時間の確保には、eラーニングの導入がおすすめです。若手や中堅社員は業務に活かせるスキルが身につき始め、担当業務や責任の増加によって日々多忙になりやすいでしょう。その上、年が近いこともあり新入社員や部下の育成も頼まれやすいものの、なかなか時間を割けない課題があります。この場合には、時間や場所の拘束がないeラーニングによって指導・育成方法を学ぶことが可能です。オンライン上であればいつでも取り組めるため、外出先や移動中でも学習ができ効率良く知識やスキルが習得できるでしょう。
5. 社員の精神状態の可視化に役立つツール
上でご説明したように、効果的な人材育成をするには自社に適した手段を見出すことが重要となります。まずは自社の課題を把握し、従業員のニーズを把握することからはじめましょう。
ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、社員の精神状態の可視化に役立つツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。
社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック
スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出。質問に対しチャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。
適切な対策案を分析レポート化
調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。
部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化
集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。
- 部署
- 男女
- 職種
- テレワーク
対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てられます。
6. まとめ
今回は人材育成について、手法や成功のポイント、課題の解決方法を中心に紹介しました。人材育成は従業員個々の成長によって、生産性向上や離職率の抑制など企業に大きなメリットをもたらします。従業員にとっても自分自身の成長は、やりがいやモチベーションの向上につながるため従業員と企業双方に価値のある取り組みです。まずは自社の課題を明確にし、従業員のニーズを踏まえながら効果的な手法を検討してみましょう。