目標管理(MBO)とは?役立つ手法から運用の課題、解消方法を紹介

目標管理(MBO)は、2010年時点で導入企業が7割を超える注目度の高い制度です。年功序列や終身雇用から成果主義の方向に変化している日本経済において、目標管理は現代に即した制度とも言われています。しかし広がりを見せる一方で、

「具体的にはどんなメリットが得られるの?」
「正しい本来の目的ってなんだろう」
「導入のコツを知りたい」

と思い悩むことはありませんか?

そこで今回は、目標管理の正しい概念や代表的なメリットについて詳しくご紹介します。また運用のコツとして効果的な手法や、陥りやすい課題とその解消方法についてもまとめて解説します。目標管理について知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

目標管理(MBO)とは

目標管理(MBO)について、以下の2つの項目に沿って解説します。

  • 目標管理(MBO)の概要
  • 1990年代後半 日本社会に浸透

目標管理(MBO)の概要

目標管理は英語で「Management By Objectives」と表され、その頭文字からMBOとも呼ばれる制度です。1950年代にアメリカの経営学者ピーター・ドラッカー氏が提唱し、日本においても高い注目が集まっています。

目標管理の目的は、組織における目標達成と、社員個々の人材育成やモチベーションの向上です。目標管理には、トップダウンで目標を課すのではなく、社員自らが目標設定から実行まで担う特徴があります。そのため目標の達成だけでなく、主体的な働きを身に着ける人材育成やモチベーションの維持にも効果が期待できる取り組みです。

目標管理(MBO)とOKRとの違い

MBOと似た言葉として挙げられるOKRとは、「Objective and Key Results」の略で、インテル社の元CEOアンドリュー・グローブ氏によって提唱されました。

定量的な目標(数値化できる目標)と定性的な目標(数値化できない目標)で、従業員の生産性向上を目指します。

両者の大きな違いは3つです。

  1. 目標の考え方
  2. 目標をどこまで共有するか
  3. 目標設定から振り返りまでの期間

MBOでは、人事評価や給与に影響を与えます。目標達成率は高い方が望ましいとされます。

一方、OKRは人事評価などの参考にされません。故に、達成が難しい高い目標も設定しやすいです。目標達成に向けてチャレンジすることが、生産性アップにつながっているのかもしれません。

MBOは、従業員本人と上司との間でのみ目標を共有します。OKRは、組織全体で共有されます。

MBOは、1年ごとに目標の達成度などを評価します。OKRは1~3ヶ月ごとです。振り返る期間が多いおかげで、どうすれば目標達成できるか、大きな目標達成のために設定すべき小さな目標はないかなどを考える機会も多く持てます。

1990年代後半 日本社会に浸透

1950年代にアメリカで広がりを見せた目標管理ですが、日本では1960年代半ばに社会に紹介されたものの定着には至りませんでした。その頃の日本は「個人の成果」ではなく、終身雇用と年功序列を前提とした職能資格制度が普及していたためです。高い成績を残した若手社員よりも、勤続年数の長い社員が優遇された時代では、主体的に動く働き方は重視されていませんでした。

しかしバブル崩壊など日本の経済状況の変化から、貢献度が高い社員に対して企業が還元することで、人件費をかけずに業績向上を目指せる成果主義の考え方が広がります。その結果1990年代後半には、社員の成果を把握する手段として目標管理が日本社会に浸透していくようになりました。

目標管理導入の主な3つの効果・メリット

目標管理を導入する効果やメリットとして以下の3つが挙げられます。

  • 社員のモチベーションを向上させるメリット
  • プロセスを自主的に考える人材育成の効果
  • 人事考課の評価基準を透明化させるメリット

1つずつ理由を含め紹介します。

社員のモチベーションを向上させるメリット

目標管理を導入するメリットの1つは、社員自らが目標を設定し達成することで、モチベーションを向上させる点です。理由は、アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏が提唱する「二要因理論」にあります。ハーズバーグ氏は業務上の満足と不満足、それぞれ感じる要因を追究したところ、満足と不満足につながる要因はそれぞれ別物であることが判明しました。満足の要因には、「達成すること」「承認されること」といった仕事の満足度が当てはまり、動機付けの要因でもあることが報告されています。

このような理論を実現する具体的な取り組みとしては、目標を設定した社員に対し、まずはその目標が企業に役立つ働きであることを認めましょう。達成した際には褒めることや、次なる目標達成に期待を寄せることで、社員のモチベーションを高い水準に引き上げることができます。このように目標管理の導入によって、自ら設定した目標を達成し上司に認められることは、社員のモチベーションの向上・維持ににつながる効果が期待できます。

プロセスを自主的に考える人材育成の効果

主体的な取り組みが行われる目標管理は、人材育成の効果も発揮します。なぜなら課題や目標が上司から提示されないため、目標を達成するために必要な取り組みを自ら考えられる人材が育つためです。例えば、チームでの目標が決定された際に、上司がそれぞれに役割を振り分けるのではなく、社員個々でどのような貢献ができるかを熟考します。そのため、自らの特性だけでなくメンバーの得意・不得意を考慮することや、限られた期間でのスケジュール管理など、新しいマネジメントスキルを習得できるでしょう。目標達成のために試行錯誤する中で、能力開発や強みの強化が見込め、自主的に働くことができる人材が育成されます。

人事考課の評価基準を透明化させるメリット

目標管理は目標と結果がどちらも明確であるため、人事考課の評価基準を透明化させるメリットを持ちます。目標は上司から与えられたものではなく、上司との話し合いをもとに自ら設定したものであるため、結果となる達成率も明確になります。社員全員が目標管理に取り組むことで、公平で納得性の高い人事考課が実現できるでしょう。

目標管理導入でのデメリット

目標管理の目的を見失ったり上手に活用できないと、従業員のモチベーションダウンのきっかけになります。管理者への負担も、デメリットと言えます。

社員のモチベーション低下の原因になる可能性がある

目標達成できたなど成果を実感できると、モチベーションアップにつながります。仕事に裁量権があると、モチベーションを保ちやすいように、自分で設定した目標を達成できると、さらなるモチベーションアップを期待できます。

故に、上司に目標設定されてしまうと、部下は自主性を尊重されていないと感じ、モチベーションの維持が難しくなります。

従業員のレベルに合わない目標も、士気を下げる原因です。目標は、高すぎても低すぎても達成感が得られないためです。

目標管理のポイントは、従業員自身で目標を決められるようにすることです。

目標の立て方が分からない従業員がいることも想定し、従業員の成長につながる目標のレベルをアドバイスできることが大切です。新入社員と入社5年目の従業員が会社に求められることが違うことを考えると、立てるべき目標も異なると想像できるのではないでしょうか。

目標達成のためのアドバイスができるスキルも重要です。部下の目標管理について学べる管理者向けの研修の受講などをおすすめします。

管理者の負担が増える

目標管理を始めたら、部下の目標達成度の測定、フィードバックなどの業務が発生します。部下が多いほど、目標管理に伴う業務の負担も大きくなります。

上司の負担増の原因の一つが、フィードバックの機会が多すぎること。普段からコミュニケーションが活発なら、フィードバックの回数を減らしても、従業員の成長をサポートできるでしょう。上司とのやりとりで、部下は会社からの評価や今後取り組むべきことが分かるためです。

会社が求めることが分からないと、従業員はさまざまな目標を立ててしまいます。会社の方向性が分かれば、会社の発展に貢献するために自分が伸ばすべきことが分かり、掲げる目標を絞りやすいでしょう。目標が限定されれば、達成度のチェックもしやすくなりそうです。

目標達成に固執してしまう

目標達成率は人事評価や給与に影響しますが、達成度の低い従業員の評価を下げすぎると、従業員のモチベーションまで下げてしまいます。

上司が結果しか見ていないと思われると、評価と関係ない業務をおろそかにする従業員が出てもおかしくありません。

目標達成のための取り組み、つまり、過程に関する目標も立ててもらうと、従業員のモチベーションを高く保てるでしょう。

手段が目的化してしまう

目標管理は、従業員のスキルアップ、組織の課題解決や発展などのための手段です。故に、達成度のチェックやフィードバックで満足してしまうと、目標管理の目的が変わってしまいます。

目標管理を目的にしないためには、目標達成で実現したいこと、要するに、目標の先にゴールがある意識を忘れないことが大切です。

たとえば、目標達成率が高いにもかかわらず、チームの売り上げが変わらない時。目標管理が目的になっていると「目標を達成できているのだからそのうち売り上げにも反映されるだろう」と対処しないかもしれません。

一方、目標管理を売り上げアップのためと認識していれば、「違う目標を設定してもらう方が良いのでは?」「フィードバックで業務の進め方も一緒にアドバイスできないか?」などの対策に取り組めます。

目標設定に役に立つ手法

目標設定に役に立つ手法

目標設定を行う際に役立つ手法として2つの方法を紹介します。

  • ベーシック法
  • HARDゴール

それぞれ解説するので、取り入れやすい手法を検討してみましょう。

ベーシック法

ベーシック法は最も基礎的な目標設定と言われている手法です。手順としては以下の4つの項目に沿って目標を設定します。

目標項目:「なにを」目標にするか決める

まずは「どんなことを達成するか」を考え目標を決定します。目標は以下4つのタイプに分類して検討しましょう。

  1. 向上・強化:現状から更なるレベルアップとなる目標
  2. 改善・解消:抱えている問題を解決するための目標
  3. 維持・継続:現状のままを維持する目標
  4. 創出・開発:新たに何かを生み出すもしくは始めるための目標

達成基準:「どれくらい」達成するのか決める

目標に対する達成率を明確にするため、達成基準をなるべく明確に定めます。具体的には以下3つの基準が考えられ、目標の内容に合わせて検討しましょう。

  1. 目標を数値化する:「売上額を前年比120%アップ」
  2. 目標の状態を具体化する:「働きがいのある会社としてランキング上位をキープする」
  3. 目標達成までのスケジュールを立てる「今月中に資格を取得する」

期限設定:「いつまでに」達成するのかを決める

目標達成をいつまでの期間に行うのか決定します。一年や半期、四半期と、目標内容と状況を照らし合わせ設定しましょう。

達成計画:「どうやって」達成するのか決める

目標達成を実現するプランを定めます。課題に対しどのようなアプローチが必要か、どんな方法でアプローチが可能かなど具体的に考え、現実的な行動まで落とし込むことが重要です。

HARDゴール

HARDゴールはマーク・マーフィー氏が提唱した目標設定の概念で、近年注目が高まっている手法です。特徴としては感情に深く根付いた取り組みであることで、「HARD」の4つの頭文字で表されるそれぞれの指標に沿って目標を設定します。

H:Heartfelt「心の底から達成したいと思える目標」
A:Animated「目標達成後の状況やキャリアが鮮明にイメージできる目標」
R:Required「目標達成において必要である明確なスキルや能力」
D:Difficult「目標達成において予想される困難や乗り越えるための方法」

自らの感情をもとに目標を設定するため、中長期的な将来において自分が描くキャリアに関連する目標を設定する際に適していると言われています。

目標管理の課題と導入成功に導く解消法

目標管理を行うにあたって陥りやすい課題が以下の2つです。

  • 【課題1】目標の進捗具合を上司が確認できていない
  • 【課題2】目標管理の達成率をそのまま評価に反映している

それぞれ課題となってしまう要因と解消方法を紹介します。

【課題1】目標の進捗具合を上司が確認できていない

社員が設定した目標の進捗状況を上司が確認できていない状況は、比較的起こりやすい問題です。なぜなら目標の設定段階から社員が主体となって動くため、上司は社員に任せきりになる可能性が高まるためです。

このような問題の解消方法としては、コミュニケーションが取れる機会を定期的に設定することが挙げられます。「設定した目標対して見直しは必要か」「実際に取り組んでみて苦労している点はないか」など社員自身で振り返りを促すことや、サポートできる点がないか投げかけましょう。具体的には1on1ミーティングとして面談を導入し、上司と部下のコミュニケーションを習慣づけることもおすすめです。

【課題2】目標管理の達成率をそのまま評価に反映している

目標管理は目標と結果が明確であるため、達成率をそのまま評価に反映するケースも課題として挙げられます。このような取り組みは、個人の目標さえ達成すれば評価されるという認識を生んでしまい、社員が低い目標を立てようとする傾向が強まります。

解消方法としては、目標管理とともに行動評価や業務姿勢を評価する情意評価を人事考課の1つとして加えましょう。目標を達成するプロセスも見てくれると社員が認識できれば、目標達成に向かって努力する姿勢も高まります。

目標管理を導入するときの注意点

目標管理の利点を活かす3つのポイントを紹介します。

モチベーション向上につながる目標設定をする

目標は達成するまでが簡単すぎても難しすぎても、モチベーション低下の要因になります。
従業員によって、頑張れば達成できる程度は異なるので、モチベーションアップには、一人ひとりのレベルに合う目標がポイントです。

たとえば、契約数を増やしたい時、コンスタントに契約を伸ばしている人なら「今月は〇本」、営業が苦手な人なら「前月よりアポの本数を増やす」などです。

目標達成の基準をハッキリする

数値で測れない目標だと、達成できたかの判断に困ります。感覚に頼らざるを得ず、上司と部下で目標をどこまで達成したかの感じ方が異なり、部下に評価を納得してもらえないことも懸念されます。

誰が見ても達成率の分かる目標は、数字を使うことがポイントです。たとえば、「前月より〇本契約を増やす」などです。

プロセスも評価する

プロセスが評価されず、目標達成までの道のりが遠いと、モチベーションを保つのが難しいです。
目標に向かうまでの小さな目標を設定してもらうと、プロセスも評価しやすいです。

たとえば、資料がなければお客様は検討しにくく、契約までたどり着かないかもしれません。そこで、「営業の〇日前までには資料作成を終える」などの目標があると、余裕を持って分かりやすい資料を用意でき、契約につながることも期待できます。

社員の心理状態把握に役立つツール 

上で説明したように、目標管理には注意すべき課題が存在します。「現在目標管理を運用しているのが、機能しているのか心配だ」とお考えのご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。まずはサーベイツール等を用いて、社員の心理状態を適宜把握することが有効な方法となります。

ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、社員の心理状態把握に最適なサーベイツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

154項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック 

スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出。質問に対しチャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。

適切な対策案を分析レポート化

調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。

部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化

集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。

  • 部署
  • 男女
  • 職種
  • テレワーク

対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てられます。

まとめ

目標管理(MBO)は、社員自らが目標設定・管理を行い、上司は達成のサポートを担う制度です。社員のモチベーション向上や人材育成の点で注目され、近年導入する企業が増えています。今回は目標管理の概要や導入のコツ、メリットを詳しく解説しました。

ラフールサーベイでは18万人以上のデータをもとに、従来のアンケートでは見えにくかったリスクや課題を多角的に抽出し可視化することができます。サーベイツールの導入により、面談では見抜けないような社員の本質を可視化することが可能です。社員個人の特性や性格、考え方まで把握できるため、働きやすい環境づくりの役に立つでしょう。

サーベイツールをお探しの方は、ぜひラフールサーベイを検討してみてください。

https://survey.lafool.jp/
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