目標管理(MBO)とは?意味や目標管理のやり方を詳しく解説

ビジネスの世界では、目標を設定し、それに向かって進むことが重要です。その中でも、目標管理(MBO)は、2010年時点で導入企業が7割を超える注目度の高い制度です。この記事では、MBOの基本的な概念から歴史、他の目標設定手法との違い、そしてMBOを導入する際のメリットやデメリットまで、詳しく解説します。

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目標管理(MBO – Management by Objective)とは

目標管理(MBO)は、組織全体および個々の社員の目標を明確に設定し、その達成度合いを評価するための管理手法です。この手法では、組織のビジョンやミッションに沿った具体的な目標を設定し、その目標に向かって計画的に業務を進めます。MBOの導入により、社員は自らの役割と期待される成果を理解しやすくなり、組織全体の生産性向上に寄与することが期待されます。

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目標管理(MBO)の歴史

目標管理(MBO)の歴史を辿ると、その発展と変遷が企業経営にどのように影響を与えてきたかが見えてきます。ここでは、MBOの歴史について詳しく解説します。

ドラッカーの著書「現代の経営」で提唱

MBOの概念は、1954年に経営学者ピーター・ドラッカー氏が著書『現代の経営』で初めて提唱しました。ドラッカー氏は、社員が自ら目標を設定し、その達成に向けて主体的に行動することが組織全体の生産性向上に貢献すると考えました。このMBOの考え方は、当時の経営手法として革新的であり、多くの企業経営者に影響を与えました。

1960-70年代:大手企業をはじめとした一部企業が導入

1960年代から1970年代にかけて、日本の大手企業をはじめとした一部企業が導入しました。その中の大部分の企業が、上司が設定した目標を部下に押し付けるようなノルマ管理としてMBOを使用し、一部の企業のみが、人材育成やモチベーション向上の手段としてMBOを活用しました。

1990年代以降:多くの企業が導入

1990年代以降、MBOは日本国内で急速に普及します。その背景には、バブル崩壊があります。バブル崩壊後の日本では、企業存続をかけたコスト削減を余儀なくされ、多くの企業で人件費削減が必要となりました。これにより、従来の年功序列による評価制度ではなく、成果や業績に応じた評価制度が注目されることとなり、多くの企業にMBOが導入されていきました。

2000年代以降:企業ごとに独自の進化

2000年代以降、MBOはさらに進化し、企業ごとに独自のアプローチが取り入れられるようになりました。テクノロジーの進化に伴い、デジタルツールやソフトウェアを活用した目標管理が一般化し、リアルタイムでの進捗管理やデータ分析が可能になりました。また、社員のエンゲージメントやモチベーションを高めるための工夫が加えられ、より柔軟で適応的なMBOが実現されています。

MBOとOKRはどう違う?

MBOとOKR(Objectives and Key Results)は、どちらも目標設定とその達成を目指す手法ですが、いくつかの重要な違いがあります。MBOは目標の達成度合いを社員の評価に活用することが多いのに対し、OKRでは簡単には達成できない野心的な高い目標を設定して、人事評価とは切り離して考えます。また、MBOの目標は100%達成することを基準としている一方、OKRでは目標が野心的であるため達成基準を70%程度とした上で、目標を達成するプロセスを重視します。

MBOとKPIはどう違う?

MBOとKPI(Key Performance Indicators)は、目標達成を測定するための指標として使用されますが、目的が異なります。MBOは目標達成そのものを重視し、個々の目標設定と達成に基づいて評価するのに対し、KPIは業績を定量的に測定し、進捗管理と改善に利用されます。また、MBOは通常、長期間(半年から一年)で評価されるのに対し、KPIは比較的短期間で進捗を確認することも大きな違いです。

現在のMBOの問題点

目標管理(MBO)は、多くの企業が導入している有効な手法ですが、日本におけるMBOの導入には、特有の問題点が存在します。その一つが、「Self Control(セルフコントロール)」の概念が欠落している点です。

MBOの正式名称は「Management by Objectives and Self Control」

MBOの正式名称は「Management by Objectives and Self Control」で、その名の通り、目標(Objectives)と自己管理(Self Control)を組み合わせた経営手法です。MBOは本来、社員が自己管理のもとで目標を達成するための手法であり、社員自身が自らの行動や成果を管理することが重要とされています。しかし、日本ではこの「Self Control」の側面が軽視され、上司が一方的に目標を設定し、その達成度を評価する形で広まってしまいました。

このような形での導入は、社員の主体性や自律性を損ない、モチベーションの低下を招く原因となります。「Self Control」の概念が欠けていると、社員は目標を達成するためのプロセスや手段を自ら考える機会が少なくなり、ただ指示に従うだけの受動的な態度が強化されてしまいます。これでは、本来のMBOの効果を十分に発揮することは難しいでしょう。

この問題を解決するためには、社員が自らの目標設定に積極的に関与し、その達成に向けた自己管理を促進する環境を整えることが重要です。上司は指導や支援を行う一方で、社員の自主性を尊重し、自己管理能力を高めるためのサポートを行うべきです。これにより、社員のエンゲージメントが向上し、組織全体の生産性と成果が向上することが期待されます。

MBOを効果的に導入するためには、これらの課題に対処し、適切な運用方法を取り入れることが不可欠です。組織全体で目標管理を適切に運用することで、より高い成果を上げることができるでしょう。

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目標管理(MBO)導入の3つのメリット

組織における目標管理(MBO)は、さまざまな利点をもたらします。ここでは、MBOを導入することによる3つのメリットを紹介します。

目標が明確になる

MBOの導入により、組織や個人の目標が明確に定義されます。明確な目標設定をすることで、全体の方向性を明確にし、行動計画の策定や優先順位の決定がしやすくなります。

社員のモチベーション向上

MBOは目標達成を個人やチームの成果として評価するため、社員のモチベーション向上に貢献します。目標設定に参加し、自身の成長や組織の成功に対する責任感が高まることで、パフォーマンスの向上が期待できます。

プロセスを自主的に考える人材を育成する

MBOは自己管理能力を促進することで、プロセスを自主的に考え、改善する人材を育成します。目標達成に向けた戦略や方法を主体的に検討し、実行することで、組織全体のイノベーション力を高める土壌が生まれます。

目標管理(MBO)導入のデメリット

目標管理(MBO)は効果的な管理手法ですが、導入する際には注意が必要です。以下に、MBO導入に伴うデメリットや注意点を紹介します。

社員のモチベーション低下の原因になる可能性がある

MBOでは目標達成が評価基準となりますが、過度な競争や目標に対するプレッシャーが社員のモチベーション低下を招く場合があります。成果を強調するあまり、チームワークやクリエイティビティが損なわれる可能性もあります。

管理者の負担が増える

MBOにおいて、管理者は各部門や個人の目標を明確にし、その達成状況を定期的に確認しなければなりません。この管理には多くの時間と労力が必要であり、管理者が目標設定と進捗管理の業務に追われることが多くなります。さらに、社員との進捗確認やフィードバックの提供も含め、管理者の業務が増えるため、他の重要な業務に割く時間が減少してしまうことがあります。

目標達成に固執してしまう

MBOの枠組み内での目標達成に強く焦点を当てすぎると、社員が目標達成のために過度にストレスを感じたり、他の重要な業務や創造的な活動に時間を割けなくなる可能性があります。これにより、組織全体の柔軟性や創造性が損なわれるリスクがあります。

手段が目的化してしまう

MBOはあくまで社員の成果や成長、そして組織全体の目標達成のための手段です。ですが、MBOにあまりにも集中しすぎると、MBOにおける目標達成が目的となってしまうことがあります。そのため、目標達成が最終目的ではないことを理解し、本来の目的を見失わないようにすることが重要です。

目標設定に役に立つ手法

目標設定に役に立つ手法

目標設定を行う際に役立つ手法として2つの方法を紹介します。

  • ベーシック法
  • HARDゴール

それぞれ解説するので、取り入れやすい手法を検討してみましょう。

ベーシック法

ベーシック法は、目標設定から達成に至るまでのプロセスを体系化した方法で、目標設定と達成に向けた具体的な道筋を示すための有効な手法です。以下の4つのステップに沿って目標を設定していきます。

目標項目:「なにを」目標にするか決める

まずは「どんなことを達成するか」を考え目標を決定します。目標は以下4つのタイプに分類して検討しましょう。

  1. 向上・強化:現状から更なるレベルアップとなる目標
  2. 改善・解消:抱えている問題を解決するための目標
  3. 維持・継続:現状のままを維持する目標
  4. 創出・開発:新たに何かを生み出すもしくは始めるための目標

達成基準:「どれくらい」達成するのか決める

目標を設定した後、その達成基準を明確にします。この基準により、目標達成の度合いを評価することが可能になります。

  • 定量的指標:数値で表現できる指標(売上額、顧客数、作業量など)を設定し、目標達成の具体的な基準とする
  • 定性的指標:数値化が難しい目標に対しては、品質の向上や顧客満足度の向上といった定性的な基準を用いることもある

期限設定:「いつまでに」達成するのかを決める

目標達成をいつまでの期間に行うのか決定します。一年や半期、四半期と、目標内容と状況を照らし合わせ設定しましょう。その際、以下のような点に注意するとよいでしょう。

  • 現実的な期限:期限は達成可能で現実的なものとする。無理な期限設定は社員のモチベーションを損ない、逆効果を招く可能性があるので注意する
  • ステップごとのマイルストーン:長期的な目標の場合、途中の進捗を確認できるマイルストーンを設定することで、定期的な見直しと調整が可能になる

達成計画:「どうやって」達成するのか決める

目標達成を実現するプランを定めます。課題に対しどのようなアプローチが必要か、どんな方法でアプローチが可能かなど具体的に考え、現実的な行動まで落とし込むことが重要です。

HARDゴール

HARDゴールはマーク・マーフィー氏が提唱した目標設定の概念で、近年注目が高まっている手法です。特徴としては感情に深く根付いた取り組みであることで、「HARD」の4つの頭文字で表されるそれぞれの指標に沿って目標を設定します。

  • H:Heartfelt(心の底から達成したいと思える目標)
    • 達成することに強い意欲を感じる目標であることが重要です。目標に対する個人的な情熱や価値観と結びつくことで、目標に向かうモチベーションを高めます。
  • A:Animated(目標達成後の状況やキャリアが鮮明にイメージできる目標)
    • 目標を達成した後の自分の姿や状況を具体的にイメージしましょう。そうすることにより、目標の実現可能性が高まり、達成感や期待感を高めることができます。
  • R:Required(目標達成において必要である明確なスキルや能力)
    • 目標を達成するために必要なスキルや能力を明確にしましょう。また、必要なスキルや能力のギャップを認識することで、それらを補うための計画を立てやすくなります。
  • D:Difficult(目標達成において予想される困難や乗り越えるための方法)
    • 目標達成の過程で予想される困難とその対処法を事前に考えておくことも重要です。これにより、直面するであろう課題に備え、困難に直面しても挫けずに目標に向かって進み続けることができます。

自らの感情をもとに目標を設定するため、中長期的な将来において自分が描くキャリアに関連する目標を設定する際に適していると言われています。

目標管理(MBO)の課題と導入成功に導く解消法

目標管理を行うにあたって陥りやすい課題が以下の2つです。

  • 【課題1】目標の進捗具合を上司が確認できていない
  • 【課題2】目標管理の達成率をそのまま評価に反映している

それぞれ課題となってしまう要因と解消方法を紹介します。

【課題1】目標の進捗具合を上司が確認できていない

社員が設定した目標の進捗状況を上司が確認できていない状況は、比較的起こりやすい問題です。なぜなら目標の設定段階から社員が主体となって動くため、上司は社員に任せきりになる可能性が高まるためです。

このような問題の解消方法としては、コミュニケーションが取れる機会を定期的に設定することが挙げられます。「設定した目標対して見直しは必要か」「実際に取り組んでみて苦労している点はないか」など社員自身で振り返りを促すことや、サポートできる点がないか投げかけましょう。具体的には1on1ミーティングとして面談を導入し、上司と部下のコミュニケーションを習慣づけることもおすすめです。また、目標達成のためのプロセスを可視化するツールを導入することで、進捗管理がより容易になります。

【課題2】目標管理の達成率をそのまま評価に反映している

MBOにおいて、単に目標の達成率を評価に反映するだけでは、社員のモチベーションを低下させるリスクがあります。目標達成の背景や過程を考慮せずに評価を行うと、不公平感が生じる可能性があるからです。この問題を防ぐためには、目標の達成度だけでなく、そのプロセスや努力を評価に組み込むことが重要です。また、フィードバックを通じて社員の成長を促進することも大切です。これにより、目標管理が単なる評価のツールではなく、社員の成長と組織全体の成果向上に寄与する手段となります。

目標管理(MBO)を導入するときの注意点

目標管理の利点を活かす3つのポイントを紹介します。

具体的な目標を設定する

目標は具体的であることが重要です。抽象的な目標では、社員が何を達成すべきかが曖昧になり、行動の指針として機能しません。具体的な数値や期限を設定することで、目標達成に向けた進捗が測定しやすくなり、達成感も得やすくなります。

例えば、「顧客満足度を向上させる」という目標を設定する際には、「次年度の顧客満足度を5ポイント向上させる」といった具体的な基準を設けることが効果的です。

高すぎず低すぎない目標を設定する

目標は、達成可能でありながらも挑戦的であることが理想です。目標が高すぎると社員は挫折感を感じやすく、逆に低すぎると達成感が得られず、モチベーションが低下します。現実的かつ適度にチャレンジングな目標を設定することで、社員は自己成長を実感でき、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

会社の方向性や役割と関係のある目標を設定する

個々の目標は、会社全体の方向性や役割と一致していることが重要です。これにより、社員は自分の仕事が組織全体の目標にどのように貢献しているかを理解しやすくなります。また、目標が会社のビジョンやミッションと一致していることで、組織全体が同じ方向に向かって協働することが可能となり、成果の最大化が期待できます。

まとめ:MBOを適切に導入して生産性向上を目指そう

目標管理(MBO)は、組織の目標と個人の目標を一致させ、全体の効率を高めるための有効な手法です。正しく導入することで、組織全体の生産性を向上させることができます。MBOのメリットを最大限に活用し、課題を解消するための取り組みを行うことで、より効果的な目標管理を実現しましょう。

https://survey.lafool.jp/

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