人的資源管理(HRM)とは?企業をより成長させるための仕組みを考える

人的資源管理(HRM)とは?3つのモデル、問題点、モチベーションとの関係、事例も解説

「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つは経営に必要な資源(リソース)です。その中でも、最重要とされる「ヒト」を経営資源として管理し活用していくとは、どういうことなのでしょうか?

本記事では、人的資源管理(HRM)の定義や基本モデルの紹介、人事制度として導入すべき具体的な内容や成功事例などを詳しく紹介していきます。

人的資源管理(HRM)とは 

人的資源管理(HRM)とは「Human Resource Management(ヒューマン・リソース・マネジメント)」の略で、従業員などの人材を「人的資源(Human Resource)」と捉え、戦略的に活用する制度を「設計・運用すること(Management)」で、経営戦略の達成を目指していくことを意味します。

企業の経営を下支えする資源として、一般的に「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源があり、そのうちの「ヒト=人的資源」が最重要とされています。その理由は、ヒトが、モノを使い、カネを動かし、情報を扱って初めて企業活動が成り立つからです。

人的資源を戦略に沿って管理していくために、大きく2つのアプローチがあります。

1つ目は「人事制度の構築」です。企業にとって必要な採用活動から始まり、適材適所な人材配置、能力開発、評価制度や報酬、退職・解雇に至るまでの人事体制を整えることで人的資源を管理する方法です。

2つ目は、リーダーやマネージャーなどのリーダーシップによって、人的資源である部下のモチベーションを高め、経営戦略の達成のために貢献する行動を促す方法です。

モノ・カネ・情報などの経営資源とは異なり、喜怒哀楽という感情や意思を持つ「生身の人間」を資源として管理することは容易ではありません。上記2つのいずれのアプローチであっても、人的資源管理を実行する上で課題は大きいと言えますが、その半面、潜在的な能力を引き出す面白さや秘める可能性も大きいと言えるでしょう。

2020/09/23
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人的資源管理(HRM)の歴史 

人的資源管理(HRM)は、その名の通り、ヒトを資源として捉えマネジメントを行うことですが、この考え方が日本で注目されるようになったのは1990年代以降のことです。

1960年代ごろまでの企業活動は「大量生産大量消費」を目的とするものが多く、官僚的・機械的な企業組織の中で、労働者は「コスト」と捉えられ、「集団」として扱われていました。そのため、ヒトの管理と言えば「人事・労務管理」にとどまり、決して資源としてみなされることはありませんでした。

その後、大量生産時代は終焉を迎ると終身雇用の考え方は徐々に薄れ、グローバル化と知識社会化が進む中で、働くことに対する考え方も多様化していきました。1990年代以降は、個人としての労働者を重視し、いかに経営戦略に直結する人材へと育成・管理していくかという「人的資源管理」の概念が普及していきました。

人的資源管理は、1960年代に生まれた人的資本理論(human capital theory)と人間関係論などの行動科学が合わさった概念が原型となっています。ヒトに蓄積されている知識や経験、技能などを活かし増大させるためには教育訓練への投資が有効、という理論に企業経営の観点が加わって、人的資源管理の形が作られたのです。

戦後のアメリカで普及し、その後イギリスなどでも一般的に使用されるようになり、やがて日本でも広がっていきました。

人的資源管理(HRM)の目的と役割 

人的資源管理は、企業にとって経営的なメリットをもたらすと同時に、個人の掲げる目標達成につながるものでなければなりません。また、短期・長期の両方の視点から捉えることが大切です。

つまり人的資源管理(HRM)を行う上で、「経営側か個人か」「短期か長期か」という4つの視点を複合的に捉えることがポイントです。

【経営的・短期の目標】成果による戦略達成への短期的な貢献を高める
【経営的・長期の目標】戦略を具現化し、その効果を維持するための能力を向上する
【個人的・短期の目標】公平で、情報開示に基づいた評価と処遇を提供する
【個人的・長期の目標】キャリアアップにより人間としての発達や成長を支援する

人的資源管理(HRM)の3つのモデル 

人的資源管理には「ミシガンモデル」「ハーバードモデル」「高業績HRM」という3つのモデル概念があります。それぞれのモデルの特徴を理解し、どのモデルをベースに人的資源管理を展開していくかの参考として覚えておくとよいでしょう。

ミシガンモデル

「人的資源管理は経営戦略との整合性を重視して行われるべきである」というのが主張です。

1980年代にミシガン大学などで行われた研究をベースとし、下記の4機能を戦略的マネジメントに落とし込み、個人・組織の両方のパフォーマンスを高めるマネジメントを提唱しました。

  1. 採用と選抜
  2. 人材評価
  3. 人材開発
  4. 報酬

経営戦略、経営環境、組織構造などの経営面の強化と人的資源の管理を融合した点が、従来の人事管理・労務管理にはない大きな特徴といえます。

ハーバードモデル

1980年代にハーバード大学で行われた研究結果をベースとして生まれた人的資源管理モデルで、[1]社員のコミットメントと能力を向上させることで、[2]費用対効果(コストパフォーマンス)を最大化し、その結果、[3]組織と個人の目標を合致させる、という考え方です。

人的資源管理の領域は、4つであると定義づけています。

  1. 社員の影響
  2. 人的資源のフロー
  3. 報酬システム
  4. 職務システム

このように、ミシガンモデルよりも広い領域での管理を提唱し、社員の心理状態にも着目している点が特徴です。

高業績HRM(AMO理論) 

高業績企業が採用している人的資源管理の具体的な体制にはさまざまなパターンがありますが、総括して「高業績HRM」と呼ばれます。基盤となる理論もさまざまですが、代表的なAMO理論とは、「社員の能力(Ability)、モチベーション(Motivation)、機会(Opportunity)」の3要素の向上が組織の競合優位性を高めるとする理論です。

ただし、このモデルは経営目標への貢献度合いを向上させる側面よりも、従業員個人のモチベーションを向上させる作用の方が強い、という研究結果が多くみられます。

人的資源管理(HRM)の課題と問題点 

人的資源管理(HRM)の課題と問題点

人的資源管理の代表的なモデル「ミシガンモデル」「ハーバードモデル」それぞれに、課題や問題点もあります。特徴と合わせて把握しておくことが大切です。

ミシガンモデルの課題・問題点

ミシガンモデルの最優先事項は企業戦略で、それを達成するために人的資源管理施策が実行されるため、戦略がうまく働き企業業績が向上すれば、貢献度に応じて人的資源の価値は高まります。

しかし、企業としての成長を優先するため、従業員の人間性や雇用保障が軽視されやすい点が課題としてあげられます。

個人の潜在能力の把握・開発がおろそかになった状況で人事選考や報酬決定、人材開発がなされてしまい、個人の能力を最大限に引き出せずに終わってしまう可能性が残されます。

ハーバードモデルの課題・問題点

ハーバードモデルは、企業と従業員の協調的な関係性を主軸に、組織全体の成長を目指すモデルです。

従業員の希望に応じてさまざまな雇用形態が混在し、一見、雇用調整が容易に思えるのですが、不満があっても伝えられない状態になる可能性もあり、「不満が聞こえない=効果的な人的資源管理ができている」と勘違いしやすいという問題があります。

また、企業側が労働組合を軽視したり、労働組合の組織率が低下したりすることで、形骸化し、相互扶助の関係が壊れてしまうことも少なくありません。

人的資源管理(HRM)とモチベーションの関係 

業務遂行すれば自らに還元されるという実感、組織に必要とされているという安心感や自己承認感が得られる人事制度を整えることで、従業員は組織・職務に対する心理的コミットメントを強め、経営プロセスへの参加や参加意識を促せます。

人的資源管理(HRM)の1つである高業績HRMシステムは、「採用、選抜、教育、報酬、職務分析、業績評価」という要素に分けられますが、これらの各施策において、従業員のモチベーションをどう向上させるか、という視点が重要になります。

ある程度の意思決定権を従業員自身に委ね、公正な評価制度を設置し、内発的な動機付けを促していくことで、従業員は企業との良好な関係を築け*、結果的に経営目標の達成に貢献する人材育成につなげられるのです。

*組織と組織内個人との社会的交換関係(social exchange theory)と呼ばれます。

人的資源管理(HRM)で取り組むべき人事制度 

人事制度においては、従業員の視点から施策の立案・実行をしていくことが大切です。

業務時間の配分を整備

無駄な残業を減らして、長時間労働を避けるための業務管理や人員配置は、今や企業として必須の対応です。個々の作業を細かく点検したり、一部の従業員に業務のしわ寄せがないかどうか、定期的にチェックできる体制が必要です。

在宅勤務

「在宅ワーク」「テレワーク」で業務遂行できる場合は、積極的に任せていくことも重要です。オンラインでの仕事のやりとりを円滑にするために、システムの導入など設備投資も同時に進めていきます。

フレックス制度

「フレックス制度」は、社員自身が労働時間や始業・終業の時間を決められる制度であり、柔軟な働き方を促すことに役立ちます。就業時間を一律で管理するのではなく、社員のライフスタイルに合わせて自由に勤務時間を決めてもらうことで、モチベーションの向上につながります。

人的資源管理(HRM)における評価制度 

人的資源管理を効果的に行うために、公平で明確な評価制度を設けることが必要です。ここからは、代表的な評価制度について紹介していきます。

目標管理制度(MBO)

従業員が自主的に掲げた目標を経営陣と共有し、その達成度合いを管理していく評価方法です。従業員と企業の両者のメリットが合致しているかを確認し、過不足があれば事前に調整を行います。従業員自身の目標達成が起点となるため、モチベーション維持・向上につながりやすくなります。

360度評価

上長だけが評価を行うのではなく、部下・同僚・顧客といった複数の評価軸を取り入れた評価制度です。異なる視点から評価することで、従業員の能力や仕事への貢献度を客観的に判断でき、評価内容への納得度が高くなるというメリットがあります。

コンピテンシー評価

「コンピテンシー評価」とは、社内で優秀な業績を納めている従業員の行動特性を、評価基準としてスタンダードにおき、それを比較対象することで評価をしていく仕組みです。対人交渉能力、タイムマネジメント、アカウンタビリティ(説明責任能力)、ストレス管理など、一般的に数値化しづらい項目の評価も可能です。

人的資源管理(HRM)の事例

株式会社イトーヨーカ堂 

仕事に対する価値観や働き方の多様化に対応するために、従業員が通いやすさに応じて勤務地を選択できる制度を採用。他にもキャリアアップのステップを明確化したり、キャリアアップを希望しない選択肢を要したりと、個人のニーズに合わせた柔軟な人事体制を敷いています。またパートタイム勤務であっても、自己評価と上長の評価を合わせて客観的に評価をする「セルフチェック制度」を導入しています。

サムスン電子 

韓国の大手エレクトロニクス企業であるサムスン電子は、1990年代からグローバル人材の育成・能力開発の構築のため「マネジメント人材育成制度」を実施しました。「人材第一」という経営哲学のもと、優秀な人材のスカウト、組織メンバーの競争性の強化、成果報酬型の徹底、などに力を入れグローバル企業として名をはせた企業です。

2年間の成均館大学・マサチューセッツ工科大学で研修を実施したり、経営・技術への惜しみないグローバル育成を行うなど、人的資源管理に意欲的に取り組んでいます。

社員の状態把握の可視化に役立つツール ラフールサーベイ

「ラフールサーベイ」は、社員状態把握を可視化するのに役立つツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

141項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で141項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約84項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

まとめ

以上、人的資源管理(HRM)を理解するための基本情報の紹介でした。

企業にとって経営的なメリットをもたらすと同時に、従業員それぞれのの掲げる目標達成や豊かな生活を実現するために重要な役割を果たしますので、今一度、自社の人事制度を見直し、よりよいものへと改善してはいかがでしょうか?

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