「ダイバーシティ&インクルージョンって結局どういうこと?」「企業はどんな取り組みをすればいいんだろう」 近年よく耳にするダイバーシティについて、こんな疑問を抱いたことはありませんか? そこで今回はダイバーシティ&インクルージョンについて、改めて確認したい概要や推進方法、企業の導入事例をまとめて紹介します。この記事を読み進めることでダイバーシティへの深い理解や具体的な取り組みについて把握することができます。疑問を抱えていた方や、取り組みに悩んでいた方はぜひ参考にしてくださいね。
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ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは
ダイバーシティ(Diversity)という言葉は直訳すると「多様性」という意味です。組織マネジメントにおいては、性別や国籍、年齢などの多様性が活かされた働き方を推進する考え方を指します。企業戦略の側面においても個々が持つ強みが最大限発揮されるため、企業の成長に効果的な取り組みです。
またインクルージョン(Inclusion)とは直訳すると「包括」「包含」「一体性」という意味です。そのためダイバーシティ&インクルージョンとは、互いの多様性を受け入れ一人ひとりの違いが活かされることを指します。ダイバーシティ&インクルージョンは企業にとって、持続的成長に欠かせない考え方であると言われています。
具体的な例を挙げると、外国人を雇用したが社内に活躍の場がなく退職してしまうような状況ではせっかくの雇用が活かされません。この場合ダイバーシティ&インクルージョンの考え方としては、雇用した外国人ならではの価値観や強みを引き出すために周囲の社員が違いを受けれようとする姿勢を示します。例えば、積極的に意見を伺ったり、チーム力が高まるようなワークへの取り組みを通して、多様性への尊重や共に成長を目指す風土を伝えます。
このような取り組みによってダイバーシティ&インクルージョンは実現され、お互いの多様性を受け入れ幅広い強みを持つ企業は持続的な成長を実現するでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景
もともとダイバーシティ&インクルージョンはアメリカで生まれ広まった考え方です。日本社会においてダイバーシティ&インクルージョンが注目され始めた理由には3つの背景があります。
- 労働人口の減少
- グローバル化による市場環境・顧客ニーズの変化
- 雇用意識や価値観の多様化
総務省の調べによると、少子高齢化の進行により日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年を境に減少傾向にあり、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)にまで減少すると見込まれています。この労働力不足を補うため、女性、高齢者、障がい者、外国人など、多様な人材が活躍できる環境を整える動きが様々な企業・団体で活発化しています。
また、グローバル化により、企業間の競争は激化するとともに、優秀な人材はより好条件な職場を求めて国内外を問わず流動するようになった今、人材確保は企業にとって難しい課題の1つとなりました。
働くことに対する価値観も多様化し、「プライベートを優先しながら働きたい」「場所や時間に縛られることなく自由に働きたい」というニーズを持つ従業員が離職をしないよう、多様な働き方を選択できる制度づくりに取り組む企業も増えています。
雇用意識や価値観の多様化は、日本社会における働き方の変化にも表れています。終身雇用や年功序列から成果主義へと移り変わる中で、働きがいやワークライフバランスの両立が求められるようになりました。そういった社員個々の価値観を受け入れる企業こそ、現代社会で活躍する労働者にとって働きがいを感じられる企業であり、企業としても事業の成長や発展に期待できるでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンにおける「多様性」の幅
人材の多様性は無数であり、個人は目に見える部分から見えない部分まで、さまざまな点で違いをもっています。個人の違いがいかに幅広いものであるかを把握するために、ここでは組織内で出会う多様性とはどんなものか、その一部を見てみましょう。
例えば、個人の属性は多様性の一つです。女性の社会における活躍推進や、外国人労働者の雇用、障がい者雇用、シニア層の雇用などがダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとして挙げられます。さらに近年は、LGBTをはじめとした性的マイノリティーの人々が偏見や無理解に悩むことなく、自分らしく働くことのできる環境づくりも重視されています。
目に見える部分のみならず、価値観や発想などの多様性も職場において重視されるべき要素です。個人の意見や価値観、宗教受容は人によって幅広く異なることを理解しあい、先入観なく適切に対応することが重要です。
さらに企業の多様性を捉えるうえでは、働き方も大きなポイントとなります。時短勤務やリモートワーク、副業や兼業など、幅広い働き方が認められつつある昨今では、多様な働き方が従業員にとっても企業にとってもプラスとなることが注目されています。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するメリット
ダイバーシティ&インクルージョンを推進する主なメリットは以下の3つです。
多様な人材を獲得できる
例えば、時短で働くという選択肢を設けたり、自宅で勤務ができるよう整備したりすることで、子育てや介護で時間や場所に制限がある人材が働くことが可能になります。また、外国人労働者が心地よく働けるよう、言語のサポートが整っていたり、社内に異文化を容認する雰囲気が醸成されていたりすることで、海外の求職者にとって大きな魅力と映るでしょう。
このように、多様な人材が活躍できる制度の整備や、それを認める社風の定着は、企業の採用力を高めます。優秀な人材を確保し、定着させることで他社との競争に競り勝つ力を培うことにつながります。
イノベーションを生み出す原動力になる
多様な価値観をもつ人材が生き生きと活躍する環境下では、斬新なアイデアが生まれやすいという副次的メリットもあります。
- 多様な価値観を持つ人材が活躍する企業では、斬新なアイディアが生まれやすい。
- 既存の枠組みにとらわれない新たなビジネスアイディアが新商品や新サービスを生み出し、自社の競争力になる。
離職率の低下とエンゲージメントの向上
多様性が認められ、従業員一人ひとりが「働きやすい」と実感する環境が整備されれば、自ずと離職率は低下していきます。在宅勤務や時短・時間外勤務を選択できるようになれば、家庭やプライベートと両立しやすくなるでしょうし、外国人やLGBTQの方、障害を持っている方達がストレスなく周囲とコミュニケーションをとり、業務に当たることができるならば、離職の可能性も低くなります。
また、離職を防止するだけでなく、自身の価値観に対して理解・尊重されていることを実感することは、企業への信頼感や愛着を高めることにつながり、結果、業務パフォーマンスの向上につながるなどのメリットをもたらします。これを従業員エンゲージメントといいます。
経営陣なら知っておきたいダイバーシティ&インクルージョンの推進方法
特に経営陣の方に特に押さえておいて欲しい、ダイバーシティ&インクルージョンの推進方法が以下4つです。
- ダイバーシティ&インクルージョン推進の目的を社員に浸透させる
- ワークライフバランスを考慮した多様な働き方を推進する
- 社員同士がコミュニケーションを取りやすい環境作り
- ライフステージに関わらず就業を継続できるよう支援する
1つずつ理由を含め紹介します。
ダイバーシティ&インクルージョン推進の目的を社員に浸透させる
まずはダイバーシティ&インクルージョンを推進する目的を社員に共有し浸透させます。なぜなら経営陣の理解だけでなく現場の社員の理解があってこそ、組織風土や職場環境の改善に繋がるためです。経営陣の意向を共有する有効な方法として、全社員を対象としたミーティングの実施や研修の開催が挙げられます。どんな方法においても目的だけでなく、推進の経緯や社員に期待することなどを含めて伝えることによって、社員の能動的な取り組みを実現できるよう努めましょう。
ワークライフバランスを考慮した多様な働き方を推進する
多様な働き方を推進する際には、ワークライフバランスを考慮した内容を心がけましょう。ライフイベントに応じた働き方ができる体制が整っていることで、フルタイムでは働きづらい社員がいたとしても解雇という選択をせずに長期間にわたって人材を確保できます。ライフイベントには出産や子育て、介護などさまざまあるので、必要に応じてそれぞれに適した体制を整えましょう。
具体的な例として以下のような取り組みがあります。
- 子育てとの両立を目指し、休暇制度や時短勤務を可能にする
- 実家での介護を行いやすいよう、テレワークの導入
社員同士がコミュニケーションを取りやすい環境作り
社員同士がコミュニケーションを取りやすい環境も、ダイバーシティ&インクルージョンの推進において重要です。なぜなら、社員同士が密に意思疎通できることで、互いの価値観や違いを受け入れる姿勢が形成されるためです。このような姿勢は、多様性を受け入れ互いの違いを活かすチームとしての強みになります。
コミュニケーションを活性化させる具体例として以下の方法があります。
- 個々の席を持たないことで、幅広い社員との交流が可能なフリーアドレス制の導入
- 気軽な意見交換や部署間の交流目的となるよう経費で行うランチミーティングの実施
ライフステージに関わらず就業を継続できるよう支援する
出産や育児にハプニングはつきもの。また、誰であっても、突然介護や闘病が始まり、ライフステージが急に変化することもあるでしょう。
そのような時でも従業員が置かれた状況に理解を示し、就業継続できるよう柔軟に対応することで、ダイバーシティ&インクルージョンは推進されていきます。
子育てや介護中の従業員が時短で働ける制度や時間外(深夜帯など)に働ける制度、出産・育児・介護休業制度の導入など、直接的な支援はもちろん、誕生日や結婚記念日に取得できる「記念日休暇」や個人の趣味やステップアップを支援する休暇の制定など、従業員のニーズを把握したユニークな取り組みで就業継続を支援する企業もあります。
4. ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業事例
この章ではダイバーシティ&インクルージョンに取り組む国内企業として以下の事例を紹介します。
- SCSK株式会社
- 住友林業株式会社
- 日本IBM株式会社
- 味の素株式会社
具体的な取り組みや成果についてまとめたので、自社の導入や見直しの参考にしてください。
SCSK株式会社
SCSK株式会社では、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの中でも女性の活躍推進に注力しています。女性活躍推進に優れた上場企業として、令和5年度の「なでしこ銘柄」に選定されています。
目標として女性のいきいきとした活躍を掲げ、長時間労働の是正や管理職の育成に取り組みました。具体的な方法として、役員による指導育成プログラムである「サポーター制度」の実施や、女性管理職とのネットワーク構築、女性・男性共に活躍できる組織風土の醸成に向けたセミナーの開催を行ってきました。。女性社員にとっては目指すキャリアや希望するワークライフバランスに沿った的確なプログラムに参加できることで、企業への貢献意欲も向上されます。
得られた成果として、2022年3月期には女性のライン管理者登用人数は124人を達成しました。また2016年には女性活躍推進法に基づく優良企業としての認定も取得しています。
住友林業株式会社
人材確保のためにシニア層の活用を始めた企業が、住友林業株式会社です。具体的な方法として「選択型定年制度」の導入と「シニア人材バンクセンター制度の上限撤廃」に取り組みました。
「選択型定年制度」は、社員本人の健康や家族の状況など個々の事情に応じて社員自身で定年時期を選択できる制度です。この制度の活用によって定年時期を前倒しすることで、社員が自分のペースに合わせた勤務地や勤務時間が可能である再雇用社員としても働ける体制を整えました。
また「シニア人材バンクセンター制度の上限撤廃」は、上限70歳まで継続勤務を可能にする制度です。年齢にとらわれないシニア人材に活躍の場を提供する制度によって、多様な人材による活気ある職場づくりが推進されています。
住友林業株式会社では、社員とっては価値観の尊重、企業にとっては人材確保という双方にとってメリットのあるダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが進んでいます。
日本IBM株式会社
日本IBM株式会社は、LGBTQ+への取り組みをいち早く始めた企業で、LGBTQ+の認知がまだ広まっていなかった2004年から委員会を設置しました。LGBTQ+ 社員とアライを中心に、人事やスポンサー役員が一体となって、当事者への理解をふかめるためのさまざまなイベントを開催しています。また2016年には同性パートナーを配偶者と同等に見なす「IBMパートナー登録制度」を施行し、福利厚生や人事制度においても配偶者とパートナーを同等の扱いとして活用できるよう設定しています。これにより、結婚や出産による特別有給休暇や慶弔見舞いなど、事実婚を含む男女間の結婚と同じ水準で制度を適用できます。すべての社員が平等に働くことだけでなく、働く環境においても多様性を受け入れ社員個々が自分らしく活躍できる職場を実現している企業です。
味の素株式会社
味の素株式会社のダイバーシティ &インクルージョンの取り組み開始は2008年にまで遡ります。主に女性を対象として育児休暇や時間単位有休などを推進した第1フェーズ、その対象を全従業員に広げた第2フェーズを経て、現在は、さらに従業員一人ひとりの価値観が尊重され、各人の能力が活かせる環境づくりに取り組んでいます。
2023年にはD&Iから、 Equity(エクイティ/公平性)の観点を追加したDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)へと移行しました。育児や介護による休職のためにキャリアが遅れてしまうなど、D&Iだけでは解決できない「不公平さ」も課題とし、社員一人一人に合わせた環境の提供を重視しています。
D&I推進のために 働きやすい職場環境への改善には「テキカク」
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するうえでは、従業員にとって働きやすい職場環境を実現させることが重要です。社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。
既存社員も受検可能な適性検査「テキカク」を利用することで、社員の価値観を理解することができます。ヒアリングと合わせてこれらのツールを導入することにより、自社に適したダイバーシティ&インクルージョンを推し進める一歩を踏み出すことができるでしょう。