メンター制度とは?導入するメリットについて事例を用いて解説

相談する二人の二人の画像

メンター制度とは、育成対象の社員に対して先輩社員が定期的な面談でサポートを行う制度のことです。

メンター制度のメンターは、英語の「Mentor」に由来しており、日本語で「助言者・指導者」という意味があります。つまり、直訳すると、メンター制度は「助言者の制度」という意味になります。

メンター制度の助言者は「メンター」と呼ばれ、助言を受ける側、つまり育成対象は「メンティ」と呼ばれます。定期的な面談は「メンタリング」と呼ばれ、メンターがメンティの仕事の相談に乗るだけでなく、多くの場合はテーマを定めずに、なんでも相談できる場として活用されています。

1. メンター制度とは

メンター制度の概要や、導入されるようになった経緯・背景について説明します。

メンター制度とは

メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した先輩社員が、コミュニケーションを通じて、後輩社員のサポートを行う制度のことです。

年齢や社歴の近い上司以外の先輩社員がメンターとなります。客観的な助言ができる別部署の社員が担うことが一般的です。一方で、メンティは、メンター制度導入時は新入社員や若手社員が対象となる場合が多かったものの、近年では女性の社会進出に伴って女性社員の管理職候補やマネージャー候補も対象となるようになりました。現在では、目的に応じた社員が対象となっています。

メンター制度の目的は、人材育成のみならず、コミュニケーションを行うことによる関係の構築によって、新入社員の早期退職を防止することです。最近では、将来のキャリア形成につながるメンタリングも必要とされてきています。

米国では、キャリア形成のために使われており、メンティーは若者と限らないこともあります。日本でも、米国のようなメンター制度を導入している企業もあります。

メンター制度が求められる背景

メンター制度は、米国で始まりました。日本では、1990年後半より外資系企業を中心に導入され始めました。2000年半ばより多くの企業に導入されていき、中堅社員の部下育成力向上に使われるようになりました。2010年からは政府主導で女性活躍推進のために導入されるようになりました。2010年半ばより若手社員の早期退職が深刻な問題となったため、新入社員の定着化のために用いられるようになりました。

現在では、職場でのコミュニケーションは希薄化しています。これにより、人材育成の機会が失われ、人間関係も希薄となり、仕事やプライベートのことを相談できる機会も減りました。そのため、メンター制度を通して、人材育成を行うとともに、気軽に相談できる環境を作り、働きやすさや安心感を感じてもらうことで、若手社員の定着率を上げることが重要となっています。

2. メンター制度を導入するメリット

メンター制度の導入することで得られるメリットを、企業・メンティ・メンターそれぞれの視点から解説します。

企業にとってのメリット

定着率が向上する

職場内でのコミュニケーションが希薄化することで、人間関係の構築も難しくなっており、誰にも相談できずに一人で悩みを抱え込んでしまう社員も少なくありません。メンター制度を導入すると、悩みをメンターに相談できるようになり、周りからのサポートも受けやすくなります。コミュニケーションの取りやすい環境を作ることで、社員は働きやすさを感じ、定着率の向上につながります。

部門・部署間のコミュニケーションを活性化できる

メンター制度では、業務上行う必要最低限のやり取りに加えて、社員同士の関わり合いの機会を増やすため、社内のコミュニケーションの活性化につながります。メンティとメンターの間に信頼関係が構築されるだけでなく、メンティ同士やメンター同士など横のつながりが増えるきっかけにもなります。また、メンターが親身に相談に乗ってくれた経験から、メンティ自身も他の社員に積極的に声がけを行うなどの波及効果も期待できるでしょう。

キャリア育成をサポートできる

メンタリング(面談)はキャリアについての話をする良い機会でもあります。メンターがメンティの将来のキャリア像を知ることができれば、そのキャリア形成をサポートしていくことができるでしょう。メンティにとっては、自身がやりたい事をサポートしてもらえる環境が得られるため、モチベーションの向上につながります。

メンティにとってのメリット

仕事上の問題や悩みを解消できる

メンター制度では、メンティは、仕事に関して困っていることや人間関係の悩みなど、さまざまな問題をメンターに相談することができます。一人で思い悩んで抱え込むことがなくなり、「相談できる相手がいる」という安心感が得られるため、精神的な負担が軽減します。

多様な働き方を模索できる

メンターは、年齢や社歴の近い他部署の先輩が担当することが一般的です。メンティが所属する部署以外の話を聞く機会が得られるため、多様な働き方を模索できます。例えば、「自部署には産休・育休をとっている人がいないので、モデルケースを知りたい」、「自分の将来のキャリア形成についてモデルとなる人物がいないか」など、働き方の事例を聞きたいと思ったときは、メンターである他部署の先輩社員に聞くことで、知りたい情報が得られることもあります。

メンターにとってのメリット

メンター自身のキャリア形成に活かせる経験を積める

メンター制度では、メンター自身の成長も期待できます。人にアドバイスをすることは、自身を振り返るきっかけともなります。メンティの話を聞いてアドバイスを行うことで、メンターは多様な考え方や視点を身につけることができるでしょう。その成長は、今後のキャリア形成に活かすことができます。

組織や仕事への責任感が高まりモチベーションが向上する

メンターになると、「後輩に教えられるよう、お手本になれるよう成長しなければ」という意識が生まれます。仕事に対する責任感が高まり、モチベーションの向上にもつながります。また、メンティとの対話が自分を客観視するきっかけにもなるでしょう。

3. メンター制度を導入するデメリット

時間を取られるためメンターの業務負担が増える

メンターとなった社員は、通常業務にプラスしてメンタリングを行う必要が出てくるため、業務負担が増加します。さらに、メンターとして頑張ったとしても、その努力が自身の評価につながらないと余計に負担に感じてしまうでしょう。そのため、メンターの負担を少しでも抑えるような環境整備が必要となります。メンターの上司がメンターに選ばれた社員をサポートしたり、社員の評価項目にメンターとしての貢献度を加えたりするなど、メンターに配慮した体制を導入することが求められます。

メンターとメンティのマッチングが難しい

メンターとメンティの相性が良くないと、お互いがストレスを感じてしまうことになります。これでは、メンター制度が悩みを抱え込む原因になってしまい、逆効果となってしまいます。メンター制度が効果を発揮するためには、マッチングで相性を考慮する必要があります。相性の良いペアを組むためには、社員の性格や価値観を知ることができる分析ツールを利用すると良いでしょう。分析結果に基づいてマッチングを行うことで、相性が良く、信頼関係が構築されやすい組み合わせを実現することができます。

4. メンター制度以外の人材育成制度

メンター制度と類似する人材育成制度として、ブラザーシスター制度(エルダー制度)、OJT、コーチングがあります。1つずつメンター制度との違いを含めて紹介します。

ブラザーシスター制度(エルダー制度)

ブラザーシスター制度とは、先輩社員がブラザーやシスター(兄や姉)のような存在となって後輩社員を育成する制度です。後述のOJT制度の一つです。

先輩社員が後輩社員に対して、会社における業務の取り組み方や進め方など、実務的な指導を行います。多くの場合、働き方がまだ身についていない新入社員が育成対象となります。

メンター制度とは、先輩社員の所属とサポート内容において異なります。メンター制度では部署が異なる先輩とペアを組みますが、ブラザーシスター制度では同じ部署の先輩とペアを組みます。また、メンター制度では業務上の悩みから人間関係といった精神的なサポートまで行うのに対し、ブラザーシスター制度では業務の指導やサポートが中心となります。

OJT

OJTとは、On-the-Job Trainingの頭文字を取った名称で、実務を通したトレーニングで人材育成を行う手法です。前述のブラザーシスター制度(エルダー制度)もOJTの一つです。

OJTでは、後輩社員が実践的な知識やスキルを身につけることができるように、先輩社員が指導や助言を行います。OJTでは同じ部署の先輩社員が後輩社員に指導を行うことも特徴の1つです。

メンター制度との違いは、ブラザーシスター制度(エルダー制度)同様に、先輩社員の所属とサポート内容にあります。メンター制度では部署が異なる先輩と、ブラザーシスター制度では同じ部署の先輩とペアを組みます。また、メンター制度では業務内容だけでなく精神的なサポートも行うのに対し、ブラザーシスター制度では業務に関する指導やサポートが中心となります。

コーチング

コーチングとは、対話を通して、相手の目標達成をサポートする取り組みです。指導者は、相手の目標や課題に関して傾聴や質問を行い、相手の気づきや考えを引き出します。コーチングを受けることで、相手は目標達成のために自発的行動ができるようになります。

メンター制度との違いは目的とサポート方法です。メンター制度は業務やキャリア、人間関係などさまざまな悩みを聞き、悩みを解消するサポートを行うことが目的です。コーチングでは、業務上の目標を達成できるようサポートを行うことが目的です。メンター制度とコーチングはよく似ているため、コーチングを行いながらメンタリングを行うこともできます。

5. メンター制度の導入の流れと重要なポイント

メンター制度の導入についてのポイントを紹介します。

メンター制度を導入する目的を明確にする

メンター制度の導入前に、実施する目的を明確にしておく必要があります。「新入社員のサポート」「若手従業員の早期離職の防止」など、現場の課題をヒアリングして実情に合ったものにしましょう。目的が明確になると、メンティにどんな社員を設定するべきかが見えてきます。

メンターとメンティのマッチング

メンターとメンティーの選定方法には、指名、自薦、他薦があります。人事担当者がメンターとメンティの組み合わせを決めることもありますし、人事がメンター候補者を提示し、その中からメンティ自身が選ぶこともあります。メンターとメンティの相性は、制度の成否を左右するため、慎重に決めなければなりません。また、メンターには、知識や経験が豊富であり、誠実で信頼できる人柄で、傾聴力・質問力があるなど、メンターとしての適性がある人材を選びましょう。

関係部署に周知する

メンター制度を開始する前に、関係部署に制度について周知しておくことが大切です。制度の目的や意義を共有することで、協力して制度を進めていくことができます。

事前研修を行う

メンター制度を開始する前に、事前研修を行いましょう。メンター制度についての説明を行い、目的や進め方、必要なスキル、問題が起きた場合の対処法などについて確認することができます。

厚生労働省のHPに事前研修の内容や、メンター・メンティそれぞれが注意すべき項目がまとめられたメンタリング・チェックリストがあるため、それらを活用することもおすすめです。

参照:メンター制度導入・  ロールモデル普及 マニュアル

実施前にルールづくりをする

メンター制度を効果的に運用していくには、ルールを設定しておくことが重要です。以下の3つが最低限のルールとなります。

①守秘義務 

面談で話した内容は決して口外してはいけません。トラブル防止のため、周知徹底が重要です。

②相談窓口

メンターとメンティの相性が合わない、メンタリングが適切に行われないなどの問題が生じた場合に備えて、相談窓口を設けましょう。何か問題が発生した場合も、第三者を介することで、早期の問題解決につながります。

③メンタリングの時間や頻度

メンタリングは、原則として就業時間内に行います。導入初期の段階では、面談1回あたりの時間や頻度を設定しておくと、制度の定着までスムーズです。

メンターのケアをしっかり行う

メンター制度を効果的に行っていくためには、メンターのケアも大切です。メンターには、面倒見が良く、責任感の強い社員が選ばれることも多いでしょう。しかし、真面目で責任感の強い社員ほど、自分のメンタリングが適切であるか悩む傾向があります。特に、担当していたメンティが退職してしまうと、責任を感じてメンタルに不調をきたしてしまうこともあります。メンターが精神的に追い込まれないように、メンターの様子を気にかけ、相談に乗るなどしてフォローを行なっていくことも重要です。また、メンターどうしが情報交換ができる環境をつくることもおすすめとなります。メンターがサポートを受けることができる体制づくりも忘れないようにしましょう。

6.ユニークな方法でメンター制度を成功させている企業事例3選

1、2、3の文字

メンター制度を取り入れている企業の中には、ユニークな方法でメンター制度を行なっている企業もあります。

富国生命保険相互会社/公募制でメンターを選定

富国生命保険相互会社では、メンターを公募制で選定する方法を導入し、メンティだけでなくメンターも高い成長を得られるメリットを生みました。

公募制にした理由は、メンター制度の成功を熟考した結果にあります。富国生命保険相互会社は、成功のために最も重要なのは、メンターの熱意を持った活動であると考えました。そうして、会社から任命するのではなく公募制にすることで集まったのが、モチベーションの高いメンターです。高い向上心を持つメンターは、真剣にメンティと関わっていく過程を通し、業務だけでは得られなかった成長を遂げました。

また、メンターを支えるメンターである「シニアメンター」を設定することで、社員自身でメンター制度を創り上げ、それを後輩に引き継いでいくという誇りや制度への愛着心を高めました。

富国生命保険相互会社におけるメンター制度の企画や運営は、社員によって主体的に行われることで、社員の成長やメンター制度自体のブラッシュアップを可能にしています。

株式会社資生堂/リバースメンター制度

これまでにないリバースメンター制度で大きな成果をあげているのが、株式会社資生堂です。

リバースメンター制度とは、若手社員がメンターとなり、異なる部署の役員をメンティとし、マンツーマンでITツールの知識やスキルを教える制度です。従来のメンター制度とはメンターとメンティの立場が逆となるこの制度の背景には、上層部である役員に対してITツールの活用を促進したいという狙いがありました。併せて普段接する機会のない社員たちの社内コミュニケーションの活性化という目的も含まれています。

制度導入の結果、役員のITリテラシーは瞬く間に向上し、役員から若手社員に対する評価も高まりました。メンター制度は必ずしも立場が上である社員がメンターにならずとも、目的に応じたメンター・メンティの設定によって、必要な成果を得ることができます。

メルカリ/メンティの希望でメンターを選ぶ

メルカリでは、2020年から「Exec Mentoring Program」というメンター制度を実施しています。

育成型組織を目指すために作られたプログラムで、選抜されたメンバーが参加できます。この制度では、メンティの希望を重視し、メンターもメンティ自身が選べるのが特徴です。

自分の斜め上にあたる経営陣がメンターとなり、毎月1時間程度、半年間のメンタリングを受けられます。メンティからは「業務や意思決定のスピード感を倍速にできた」という声も聞かれ、同社でも満足度の高いプログラムとなっているようです。

7.社員のストレス状態把握に役立つツール「ラフールサーベイ」

ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、社員の心理状態の把握に最適なサーベイツールです。

従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

メンター制度とあわせて運用することで、メンターとメンティの適切なマッチングを促し社員のサポートを手厚く行うことができます。

また、社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能です。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができます。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能です。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

154項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で154項目あります。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を得ることができます。そのため、従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック 

スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出します。質問に対し、チャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。

適切な対策案を分析レポート化

調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能です。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。

部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化

集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。

  • 部署
  • 男女
  • 職種
  • テレワーク
  • 部署
  • 男女
  • 職種
  • テレワーク

対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てることができます。

8.まとめ

メンター制度では、業務に関することのみならず、キャリアや人間関係、時にはプライベートに関することなど、様々なことにおいてサポートを行います。悩みを相談できる相手がいるということは、コミュニケーションが希薄な現代において、とても素晴らしい環境です。若手社員にとって、その会社で働き続ける理由となるでしょう。

メンター制度を正しく理解し、メンター・メンティにとって過ごしやすい環境をつくり、メンター制度を有効に運用していきましょう。

ラフールサーベイはメンターとメンティの相性判定に有用なツールとなっています。ぜひ活用してみてください。

https://survey.lafool.jp/
関連タグ

この記事をシェアする

  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする

今週のイチオシ!コンテンツ

お役立ちセミナー

Follow Us!

SNSで、人事・経営者に役立つ情報をチェック!このサイトの更新情報もお知らせします

PAGE TOP