労働人口の減少や人材の流動化が進む中、社員の離職は企業にとってなるべく避けたいものです。
その一方で、
「社員が会社を辞める理由ってなんだろう」
「どんな対策を行うべきなのかわからない」
と悩んでいる方も多いかもしれません。
効果的な対策を講じるためには、まず原因を明確に特定する必要があります。そこで今回は離職の原因や対策方法、離職率改善に成功した企業事例を紹介します。自社における離職率の原因を特定し適切な対策を検討していきましょう。
1. 若年層が早期離職してしまう原因とは?
離職の中でも特に、「若者層の早期離職」に頭を抱えている方も多いかもしれません。厚生労働省の調査によると、新卒3年以内の社員のうち3割が3年以内に離職している現状が報告されています。
そこで若者層が早期離職を決める5つの代表的な原因を紹介します。
①仕事内容のミスマッチ
②休日が少ない、有給が取りづらい
③職場の人間関係が望ましくない
④仕事上のストレスが大きい
⑤キャリア形成が見込めない
若者層の早期離職を防ぐために今一度確認してみましょう。
離職原因①仕事内容のミスマッチ
仕事内容のミスマッチとは、希望する業務と実際に任される業務のズレを指します。例えば入社前にイメージしていた業務と実際の業務に乖離がある場合、理想が叶えられない現実に不満を抱くこととなります。自らの希望や理想に沿わない業務ではモチベーションが上がらず、不満は募りやすくなるでしょう。その結果、自身が希望する業務を全うできる新しい職場を探し離職してしまいます。
離職原因②休日が少ない、有給が取りづらい
多くの若者層は仕事と私生活の両立を重視するため、私生活の時間を確保しにくい職場は自らの価値観と合わないと感じ離職につながりやすくなります。
若者層が持つ就職観を調査した株式会社マイナビの「2018年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、「収入」よりも「生活と仕事の両立」を重視していることが報告されています。少ない休日や取得しにくい有給ではプライベートの時間を充分に過ごせず、仕事の時間だけが増えていくでしょう。自身の価値観とはそぐわない環境は離職を検討する要因の1つと言えます。
離職原因③職場の人間関係が望ましくない
上司や先輩、同期などとの人間関係は、若者層にとって離職の意思に大きな影響を与えます。例えば攻撃的な上司の元では意見を伝えにくく能動的な姿勢となるため、やりがいを感じながら働くことは難しいでしょう。強い不安や不満、悩みが生まれる環境で働き続けることはストレスの蓄積となり、離職を考えるきっかけとなります。
離職原因④仕事上のストレスが大きい
サービス残業や休日出勤などの長時間労働は、身体的にも精神的にも負担がかかります。長時間労働は十分な休息が得られないため疲労が蓄積され、そのような状態で行う業務はミスを起こしやすくなります。そして思うように仕事が進まないことや成果が得られないことに更なるストレスを感じてしまうでしょう。そのため身体的・精神的に負担がかかるような仕事上のストレスが大きい環境は離職を決める原因となります。
離職原因⑤キャリア形成が見込めない
終身雇用や年功序列が崩壊する現代において、会社に頼らずに自分自身のキャリアアップを望む若者層が増えてきました。そのためキャリア形成が見込めない職場は若者層が望む環境とは異なり、離職を決める原因となり得ます。具体的には、やりがいや成長が感じられないような環境ではキャリア形成が見込めないと感じられるでしょう。その結果、働くことを通して自分自身を高められる職場への移動を検討することとなります。
2. 導入・実施できていますか?退職を防ぐための6つの対策
社員の退職を防ぐ6つの対策方法がこちらです。
- 働き方の条件の柔軟化
- 教育体制の見直し
- キャリアパスを明確に提示する
- 人事評価制度の見直し
- 社内コミュニケーションの充実
- 定期的に従業員のストレスチェックを行う
内容を具体的に解説していきます。
働き方の条件の柔軟化
柔軟な働き方を支える環境は離職を防ぐことにつながります。例えばテレワークは、テクノロジーの活用によって場所や時間に縛られない勤務が可能な働き方です。そのため若者層にとっては、育児や介護などのライフイベントがあっても「離職せずに働き続けられる」というポジティブなイメージを持つことができます。
その他にも労働時間を短縮する「短時間勤務」や自宅で働く「在宅勤務」も時間や場所を拘束しない環境を整えます。柔軟な働き方を支える環境によって仕事と私生活のバランスを保った働き方が実現されるため、企業に定着し働き続ける理由の1つとなるでしょう。
教育体制の見直し
社員の意向に沿った成長機会を与える教育体制によって、高いモチベーションを持って仕事に励むことが可能です。現状や希望に沿ったスキルアップは自身の成長を実感しやすく、新たな仕事にも前向きな気持ちで取り組むことができます。
具体的な教育体制としては、入社2年次・5年次と節目ごとに行う「階層別研修」によって階層ごとに必要なスキルを身につけることが可能です。またインターネットを活用し好きな時間や場所で学習できる「eラーニング」は、興味がある分野を個々で選択でき意欲的な学習を促進します。
キャリアパスを明確に提示する
目指す役職や職務に就くまでの道筋を表すキャリアパスの明確な提示によって、入社後のミスマッチを防ぎます。若者層の離職理由には「入社後のミスマッチ」が挙げられやすく、希望する仕事ができない環境はモチベーションが上がりません。
具体的な対策としては、役職や職務ごとに必要なスキルや知識、評価基準を定めた内容を採用時に提示し入社後のミスマッチを防ぎます。役職や職務ごとに「理想の人物像」を提示できると社員は働き方をイメージしやすく、目標に向かってモチベーションを保った働きを続けられます。
人事評価制度の見直し
公平な人事評価制度は社員の成長実感につながり、やりがいを持って働けることで定着率向上に期待できます。
公平な評価制度として「360度評価」は、上司だけでなく先輩や部下、チームメンバーなど社員個々が関わる様々な立場の人間から評価を受ける制度です。上司からの一方的な評価ではなく様々な視点からの評価によって社員は高い納得度を得られます。多くの気づきが得られる評価は、自身の働き方を見直し改善していく取り組みを促進し成長実感を得られやすくなるでしょう。
社内コミュニケーションの充実
コミュニケーションの活性化は職場に対する安心感を生むため離職防止に効果的です。
例えば「メンター制度」は、新入社員に対し先輩社員が指導者となり業務のアドバイスや相談など全般的なサポートを行います。新入社員にとっては先輩社員と関わる中で、仕事だけでなく職場におけるコミュニケーションの取り方を学ぶことが可能です。そのため制度終了後もコミュニケーションが活性化されやすく、職場へ安心感を持って働きやすい環境を整えます。
定期的に従業員のストレスチェックを行う
ストレスチェックの実施によって従業員が抱えるストレスの原因や傾向を特定でき、明確な対策を打つことができます。ストレスの蓄積は職場を離れる大きな要因となるため対策が求められるものの、従業員が抱えるストレスは個々で異なり効果的な対策の検討は困難かもしれません。
しかし例えば部署や職種ごとに適した質問項目を設定することや、定期的に実施を繰り返すことでストレスの傾向や原因を捉えることに近づきます。捉えられた傾向や原因をもとに対策を検討してみましょう。
3.【事例紹介】離職率を改善した企業2選
離職率を改善させることに成功した企業事例を紹介します。原因と対策をまとめて紹介するので、自社における取り組みの参考にしてください。
カネテツデリカフーズ
食品メーカーであるカネテツデリカフーズは「新規学卒者指導員制度」導入によって離職率を10%以下に低下させています。それまでは入社3年以内に半数が退職する年もあり、課題として新人に対するスキルや技術指導の不十分さやコミュニケーション不足が挙げられました。そのため即戦力としての指導を行う目的を持った新規学卒者指導員制度を導入しました。
新入社員にマンツーマンで指導員をつけ徹底的な教育を行うことで、コミュニケーションの活性化も見受けられたと言います。
ジオコード
Webマーケティングを行うジオコードでは、福利厚生の充実によって離職率を年々低下させています。会社の成長に伴い、増加した社員から福利厚生に対する意見があがり、社員の意見を取り入れたユニークな福利厚生を充実させました。
例えば日本代表戦に備えた臨時休暇に対応する「サッカー休暇」や、「無料軽食制度」など20項目以上になる独自の制度が導入されています。社員の要望を前向きに捉え、実現していく企業の姿勢によって従業員の満足度は高まり、離職率が年々減少する結果が得られています。
4. 離職リスクの可視化に役立つツール
上でご説明したように、離職の原因は様々です。まずはサーベイツールなどを活用して組織状態を明確にし、離職リスクがどこに潜んでいるかを特定しましょう。
ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、離職リスクの可視化に役立つツールです。また、従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。
社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック
スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出。質問に対しチャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。
適切な対策案を分析レポート化
調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。
部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化
集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。
- 部署
- 男女
- 職種
- テレワーク
対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てられます。
5. まとめ
今回は離職原因や対策方法、改善の成功事例を紹介しました。効果的な対策の実行は、社員の定着率向上や生産性向上にも期待できます。まずは自社における課題を明確にするために、従業員の立場に立って離職の原因を検討してみましょう。