CSR(企業の社会的責任)とは?基本概念からメリット・デメリット、事例まで徹底解説

「CSR(Corporate Social Responsibility)」とは何か、その重要性や実施にあたってのメリット・デメリット、さらにはCSR活動の成功事例まで詳しくご紹介します。

CSRとは「企業の社会的責任」

CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が社会的存在として果たすべき責任のことを指し、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。

この概念は、企業の役割が単に利益を追求するだけではなく、持続可能な社会の構築に寄与することが求められるように進化してきました。

例えば、環境に配慮した製品開発や、地域社会との協働プロジェクトなどが挙げられます。これらは企業のイメージ向上やリスク管理にも寄与し、結果として長期的な競争力の強化につながっています。

CSRの歴史的背景と日本での普及

CSRに近い概念は古くから世界的に存在していたものの、日本においてCSRが注目され始めたのは1990年代頃のことです。

日本では1960年頃から1990年代にかけて経済成長が著しく、企業は自社の利益を最大化することを第一優先としていました。

しかし、利益を追求する中で公害や環境破壊などの環境問題、バブル崩壊後の2000年代にかけては不景気のさなか企業の不祥事が相次ぎ、社会にたいして損失を与えるようにまでなりました。

そのような状況を受けて日本でもCSRへの関心が高まってきた背景がありました。

CSRの現代社会における重要性と期待

現代社会では、企業に対するステークホルダーの期待が高まっており、CSRは必須の経営戦略となっています。消費者、投資家、従業員など、多様な利害関係者が企業の社会的責任を重視しており、CSR活動は企業の信頼性やブランド価値を高める要因となっています。

また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みとしても、CSRは重要な役割を担っています。

CSRのメリットとデメリット

CSR(Corporate Social Responsibility)活動は、企業が社会的責任を果たすことで得られるメリットと、それに伴うデメリットの両面を持ちます。

CSRの主なメリットと企業価値への影響

環境保護や社会貢献といったCSR活動を行っていることを社内外にアピールすることで企業のブランド価値を高め、顧客や社会からの評価を高め、信頼を獲得することが最大のメリットです。これにより、顧客ロイヤルティの向上や新しい市場への進出が容易になる可能性や、利益向上にもつながる可能性があります。

また、CSR活動によって社会からの信頼が高まり、業績が安定することで従業員満足度の向上や、人材の採用においても好影響をもたらすでしょう。

CSRにおける潜在的デメリットとその対策

一方で、CSR活動にはリスクも存在します。

CSR活動には初期投資が必要であり、短期的には利益減少につながることもあります。また、CSR活動が表面的であったり、社会的な期待に応えられなかった場合、企業の評判を損なうリスクもあります。

これらのデメリットに対処するためには、CSR活動を長期的な視点で計画し、ステークホルダーとのコミュニケーションを重視することが重要です。具体的には、透明性のある報告や、関係者との対話を通じて、CSR活動の真摯さを示すことが求められます。

CSR関連用語の違いとは

CSR(企業の社会的責任)という概念は、企業が社会的、環境的な問題に対してどのように責任を果たすべきかを示すものですが、これに関連する用語には

  • サステナビリティ
  • SDGs
  • コンプライアンス
  • CSV

などがあります。
これらの用語はしばしば混同されがちですが、それぞれに明確な違いがあります。各用語の違いとその関連性について解説します。

CSRとサステナビリティの違い

CSRは企業が社会的責任を果たすための戦略や活動を指し、サステナビリティは持続可能な発展を目指す広義な概念です。CSRは企業の内部的な取り組みに焦点を当てるのに対し、サステナビリティは経済的、環境的、社会的な側面を総合的に考慮した長期的な視点を持ちます。

例えば、企業が地域社会への寄付やボランティア活動を行うのはCSRの一環ですが、製品のライフサイクル全体を通じて環境への影響を最小限に抑えるような取り組みはサステナビリティの観点から進められます。

CSRとSDGsの違い

CSRは企業の社会的責任を果たすための枠組みであり、SDGs(持続可能な開発目標)は国際社会が共有する17の目標を示しています。CSR活動を通じて、企業はSDGsの達成に貢献することができます。

例えば、企業が教育支援プログラムを展開することで、SDGsの「質の高い教育をみんなに」に寄与することが可能です。また、SDGsは企業がCSR活動の方向性を定める際のガイドラインとしても機能し、企業の社会的責任の取り組みがグローバルな目標に沿ったものになるよう促します。

このようにCSRとSDGsは相互に作用し、企業の社会的責任の実践をより広い視野で捉えることを助けます。

CSRとコンプライアンス違い

CSRは企業が社会的責任を果たすことを目指すのに対し、コンプライアンスは法律や規制を遵守し業務を遂行することを指します。

また、法律や規制のみならず、社会通念上の常識やルールであると広く認識されていることに従って業務を遂行するということも含まれます。

コンプライアンスはCSRの基礎となる要素であり、法令遵守はCSR活動の大前提です。

CSRとCSVの違い

一方で、CSV(Creating Shared Value、共通価値の創造)は企業が事業活動の中で経済的価値を生み出しながら社会的問題の解決に貢献することを指し、CSVの理念に基づいた経営を「CSV経営」と呼びます。

国際規格ISO26000とCSRの7つの原則・7つの中核主題

CSRは、国際的な視点からも重要視されており、世界各国で異なるアプローチが見られます。ここでは、国際規格ISO26000と7つの原則・7つの中核主題についてご紹介します。

国際規格ISO26000は、企業が社会的責任を果たすためのガイドラインを提供しており、CSR活動の国際的な枠組みを形成しています。

ISO26000にはには7つの原則および7つの中核主題があり、企業がCSRを果たしていくうえでもこれらが重要です。

< 7つの原則 >

  1. 説明責任
  2. 透明性
  3. 倫理的な行動
  4. ステークホルダーの利害の尊重
  5. 法の支配の尊重
  6. 国際行動規範の尊重
  7. 人権の尊重

< 7つの中核主題 >

  1. 組織統治
  2. 人権
  3. 労働慣行
  4. 環境
  5. 公正な事業慣行
  6. 消費者課題
  7. コミュニティへの参画

これらをもとにし、CSRのアクションプランを作成・実行していくことにより、企業は社会における信頼と評価を得ることができると言えます。

CSRの実践事例

CSRの取り組みは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、ブランドイメージの向上や顧客ロイヤルティの強化にも寄与します。ここでは、国内外の企業がどのようにCSRを実践しているのか、その事例をご紹介ます。

セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングスでは、すべてのステークホルダーに「信頼される、誠実な企業でありたい」という社是に基づいて事業を営んでいます。

サステナビリティの取り組みごとに方針を定めているほか、CSR活動においては持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みである「国連グローバル・コンパクト」の10原則を支持し、その実現のために本業を通じてCSR活動に取り組んでいることを発表しています。

以下の7つを重点課題として設定し、店舗や、商品・サービスなど、本業を通じてこれらの課題を解決することで、企業の持続的成長と持続可能な社会を目指していくとしており、CSV経営の考え方にも近いといえます。

  • 重点課題 1:お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する
  • 重点課題 2:安全・安心で健康に配慮した商品・サービスを提供する
  • 重点課題 3:地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する
  • 重点課題 4:多様な人々が活躍できる社会を実現する
  • 重点課題 5:グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する
  • 重点課題 6:お客様との対話と協働を通じてエシカルな社会を実現する
  • 重点課題 7:パートナーシップを通じて持続可能な社会を実現する

また、Webサイトから誰でも見ることができるサステナビリティデータブックを公開しています。

【出典】セブン&アイ・ホールディングス Webサイト「サステナビリティ」

日本マクドナルド

日本マクドナルドでは、持続可能社会に向けた考え方と取り組みを「サステナビリティレポート」として公開しています。

マクドナルドのパーパスである「おいしさと笑顔を地域の皆さまに」を実現するため、以下の4つの領域に注力していることを発表しています。

  1. 安心でおいしいお食事を(Food Quality & Sourcing)
  2. 地球環境のために(Our Planet)
  3. 地域の仲間にサポートを(Community Connection)
  4. 働きがいをすべての人に(Jobs, Inclusion & Empowerment)

サステナビリティレポートでは、どのような取り組みを行っているかと成果としてあげられた数字を具体的に示しています。

【出典】日本マクドナルド「サステナビリティレポート

自社のCSR活動を計画・改善するためのステップ

CSRを成功させるには、企業のビジョンと戦略に沿った取り組みが必要です。
また、ステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、透明性のある情報開示が求められます。

ここからは、自社のCSR活動の計画から改善に至るまでのステップ具体的に解説していきます。自社のCSR活動は以下のステップで計画し、実施後は評価とフィードバックを通じて改善していきます。

  1. CSR活動の目的を整理し、方針を作成する
  2. 自社に合ったCSR活動を選定する
  3. CSR活動の管理、運営体制の整理・構築を行う
  4. CSR活動の評価とフィードバックを行う

1.CSR活動の目的を整理し、方針を作成する

CSR活動を開始するには、自社のビジョンや価値観に合致した活動を選定することが重要です。そのためには、まず前段として自社のCSR活動で成し遂げたいことは何か?といった目的を整理してアウトプットするとよいでしょう。

2.自社に合ったCSR活動を選定する

次に、1で整理したCSR活動の目的をもとに自社に合った活動が何なのかを挙げてみるとよいでしょう。

これには、ステークホルダーのニーズを把握し、社会的課題と自社の事業との関連性を分析する作業も含まれます。

また、先に説明したISO26000の7つの原則および7つの中核主題を使って整理するのも有効でしょう。

3.CSR活動の管理、運営体制の整理・構築を行う

計画したCSR活動を実施するためには、適切な管理と運用体制の構築が不可欠です。これには、活動の責任者を明確にし、チームを編成することが含まれます。

また、定期的なミーティングや進捗報告を行い、活動が計画通りに進んでいるかを確認します。

例として、社内のボランティアプログラムを立ち上げる際には、参加者の募集から活動の実施、結果の共有までを一貫して管理する体制が求められるでしょう。

4.CSR活動の評価とフィードバックを行う

CSR活動を継続的に改善するためには、定期的な評価とフィードバックが必要です。これには、活動の成果を定量的、定性的に測定し、ステークホルダーからの意見を取り入れることが含まれます。

例えば、地域社会への貢献活動の効果を測定するために、参加者の満足度調査や地域の変化を観察することができます。得られたデータとフィードバックをもとに、次の計画に反映させることで、CSR活動はより効果的かつ効率的になります。

まとめ:CSRを理解し、企業価値の向上につなげよう

本記事では、企業関係者の皆様がCSRの基本概念を学び、そのメリット・デメリットを理解し、他の関連用語との違いを把握することで、自社のCSR活動をより効果的に計画し、改善するため具体的なステップについてご紹介してきました。

今回得た知識を活かし、自社独自のCSR活動を展開し、社会に貢献するとともに、企業としての信頼と競争力を高めていきましょう。

ウェルビーイング/人的資本経営を支援・実現する、組織改善ツール「ラフールサーベイ」

ISO26000の中核主題の1つ目には「組織統治」という項目がありました。

組織を改善していくには、組織を構成する個人である従業員がいまどのような状態にあるのかをまず把握することが大切です。

ラフールネス指数による可視化

従来の組織サーベイやストレスチェックでは社員が高ストレスや低エンゲージメントであることはわかっても、その要因が何なのかわからないという課題がありました。

ラフールサーベイではラフールネス指数(組織・個人の“健康度合い”を独自に算出した指数)により働く社員の健全さを把握することができます。

ラフールネス指数は具体的に「総合」「個人」「職場」の3つに対して他社比較と時系列比較を行い、社内の従業員の健康とメンタルの状態を可視化させることができます。

直感的に課題がわかる分析結果

ラフールネス指数の強みは課題を数字で可視化させることです。

ラフールサーベイでは部署や男女別にデータ分析が可能で各都市ごとにデータを比較することができます。

普段社員を観察しているだけでは中々見えづらい、社員の内面的なストレスまで把握できるようになります。

154項目の質問項目で多角的に調査

厚生労働省が推奨している質問票の質問数は57項目です。一方で、ラフールサーベイでは154項目の質問があります。

従来のストレスチェックでは把握できなかった「受験者の性格」「衛生要因(給与・福利厚生)」「エンゲージメント(エンプロイー・ワーク)」などを追加しています。多角的な調査により、より詳細な状況を把握することが可能です。

19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック

経営者や人事の方の中には、「できるだけ簡潔にストレスチェックを行いたい」と考えている人もいることでしょう。ラフールサーベイでは「ショートサーベイ」と呼ばれる、19の質問項目に厳選したメンタルチェックもあります。

質問が少ない代わりに毎月行えるので、月ごとに対策を考えたい企業に有効です。

部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化

ラフールサーベイでは、部署や男女、職種別にデータ分析をすることが可能です。他部署・男女・職種での比較ができるだけでなく、危険ゾーンとなる箇所を直感的に一目で確認することができます。

適切な対策案を分析レポート化

質問の回答を終えると、分析を行い組織の生産性や離職リスクが直感的なグラフで可視化されます。可視化されたグラフに基づいて、「次にどんな対策を打つべきなのか?」をロジカルに検討していくことができます。

カスタマーハラスメントから社員を守り、組織の改善につなげていくためにはラフールサーベイを利用することでまず組織と個人の状態を可視化してみるところからはじめてはいかがでしょうか。

https://survey.lafool.jp/
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