注目されつつある福利厚生「GLTD」って?

GLTDとは?特徴、所得補償との違い、メリットなどを解説

GLTDとは?特徴、所得補償との違い、メリットなどを解説

企業における福利厚生は、従業員が安心して働くために必要な制度であり、一人ひとりの働く姿勢やモチベーションにも関わってきます。また、高齢化が進む中で優秀人材の確保や定着は今後ますます留意すべき課題であり、状況に応じて柔軟な働き方が選択できる福利厚生へのニーズは高まっています。

特に近年、コロナウイルスの爆発的な流行により、レジャーやレクリエーション関連よりも給与の補償を重視する声が増加傾向です。「GLTD」は、こういった要望に応える制度であり、株式会社アドバンテッジ リスク マネジメントの調査によると「福利厚生にGLTDを導入している企業を、就職先として魅力に感じる」という人は7割にものぼりるとのことです。

この記事では、将来的な企業戦力の維持にも有効なGLTDについて、どんな特徴があるのかや所得補償との違い、メリットとデメリットを解説します。

GLTDとは

GLTDのルーツは米国で、Group Long Term Disabilityの頭文字を取った言葉です。日本語では「団体長期障害所得補償保険」と表し、従業員が病気やケガなどで長期的に働けなくなった際、定年年齢まで収入をサポートする、団体向けの保険です。

従来より、休業した従業員に対し「傷病手当金」として1年6カ月間、健康保険から補助金が支給される制度はあります。しかし、働けない期間が支給期間を超えた場合は、「障害年金」のみの受給となり、十分な収入が得られません。

GLTDを導入すれば、こういった国の社会保障では十分に補償できない部分を補完できます。免責期間を除く、就業不能の全期間において安定した収入が得られるため、適切な治療を受けながらスムーズに復職が可能です。身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを示す「ウェルビーイング」の観点から見ると、経済的なリスクが軽減されることで従業員の安心感につながります。つまり企業にとっては、従業員が安心して働ける環境づくりに役立つ制度とも言えるでしょう。

アメリカでは1980~90年代頃から既に普及しており、従業員500名以上の企業において95%程度導入されていました。日本では1994年に大蔵省の認可を得て、以降導入する企業が増加しています。

GLTDの特徴

GLTDは、補償範囲や期間が従来の社会保障と異なります。大きく5つの特徴について解説します。

①定年までの長期補償
従業員が病気やケガで働けなくなった時に、定年となる満60歳(最長で65歳)まで、月々の収入に応じた補償金額が支給されます。また、給与支給と同様に月単位の支払い形態のため、従業員は生活費などに補填しやすいのも特徴です。

②精神疾患や自宅療養中も補償対象
病気やケガの発生原因は国内と国外を問わず、業務内か業務外でも24時間補償対象です。また、保険会社によってはうつ病などの精神疾患も補償対象となり、最長2年、受給できます。

一般的な医療保険では対象外となる、退院後の自宅療養期間やリハビリテーション中も対象期間に含まれ、無理なく復職できます。

③復職後や退職後も継続補償
病気やケガから回復し、就業が可能になった後も、所得が就業障害発生直前の80%に満たない場合は、その所得の喪失率に応じた金額が継続的に支給されます。

また、万が一身体に障害が残り完全には復職できなかったとしても、最長満65歳まで継続して補償され、従業員の就労を支えます。

④介護休業を補償する特約が新設
介護休業を取得した場合、通常は雇用保険から給付金として、休業開始時点の賃金の67%相当が受給できますが、GLTDは、これに上乗せして合計80%まで非課税で補償可能です。また、保険会社によっては、介護のための時短勤務者に対し、補償するメニューもあります。

⑤サポートプログラムが充実
GLTDは保険としての補償機能だけでなく、それぞれの保険会社が提供しているサポートプログラムを受けられます。たとえばストレスチェックや復職支援など休業者のサポート、人事労務担当者向けのコンサルティングや社内研修の講師派遣、従業員向けホットラインなど、手厚いフォローを無料で受けられる保険も多数あります。

GLTDと所得補償保険の違い

GLTDは法人契約のため、所得補償保険に比べ補償範囲が広く、給与ベースで補償金額が調整されるなどの違いがあります。詳しいGLTDと所得補償保険の違いは以下を確認しましょう。

  • 契約対象

所得補償保険:
企業での加入も可能ですが、主に個人で加入します。

GLTD:
勤務先など企業や団体を通じて加入します。

  • 支払対象

所得補償保険:
就業不能になった場合に補償されるため、傷病により作業が限定され収入減になった場合は対象外です。

GLTD:
傷病前と比べ、一定割合以上の所得が下がった場合は補償の対象ですが、免責期間中にまったく働けない状態の場合に適用されます。

  • 支払期間

所得補償保険:
中には退職年齢まで支払われる保険もありますが、多くの場合1年~2年程度です。

GLTD:
数年~数十年の期間受給でき、補償開始からの年数で定めるか「65歳まで」といったように年齢で定める方法があります。

  • 免責期間

所得補償保険:
短期補償タイプで1週間程度、長期補償タイプで1年程度が目安です。

GLTD:
90日~180日程度と長期です。

  • 物価調整

所得補償保険:
物価調整は設けていません。

GLTD:
支給期間が長期のため、加入時と比べ物価が上昇した場合、補償金額も増加する保険が多くあります。

GLTDのメリット

GLTDのメリット

GLTDを導入した場合、企業にはどんなメリットがあるのか解説します。

従業員の満足度向上と企業アピール

GLTDの導入は、企業が従業員を大切にしていることの具体的な取り組みとして認知されるため、社外に対する企業価値のアピールにつながります。また社内でも、従業員は将来に不安を感じずに仕事ができ、積極的な姿勢や満足度向上が見込め、人材の定着化や労働組合との良好な関係維持にも役立ちます。

さらに、働けない状況に陥っても安定した収入を得られる企業は、新卒や中途の求職者が他社と比較した際にも有利です。GLTDは、多様化する働き方やライフスタイル、柔軟に働きたいというニーズにマッチした福利厚生と言えるでしょう。

がんの治療と仕事の両立を支える

がん患者は継続して増加しており、 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターの調査によると、男女ともに2人に1人が一生のうちにがんと診断されるとも言われています。入院による治療が主流でしたが、近年は医療技術の進歩などにより、外来通院をしながら在宅で治療する方法に変化しつつあります。このような流れから、病気と向き合いながら仕事を両立できる体制作りで、患者を支援することが企業に求められています。

GLTDであれば、在宅での治療中も収入が補償され、身体を無理することなく仕事復帰が可能です。高い確率で発症することを踏まえ、会社の制度で従業員の身体的、経済的不安を解消できます。

従業員のメンタル不調対策・再発回避

メンタルヘルス不調者の増加が深刻化する昨今、不調者の精神的負担を軽減し、スムーズに社会復帰できる仕組みが必要です。不調期間の収入減は不安や焦りをあおり、回復が遅れたり復職後の再発につながる恐れがあります。

GLTDによる補償で収入面が安定すれば、不調者に対し追い詰めることなく、解決に導きやすくなります。ストレスチェックなどを併用すると予兆を感知し、対象者に対する早期対策ができ、GLTD制度でアフターフォローまで網羅すれば、安定した生産性の維持が可能です。

GLTDのデメリット

GLTD導入に伴い、コストや運用整理など一定の負担がかかるため、デメリットも理解して導入を判断するとよいでしょう。

GLTDは法人契約のため、保険料は会社が負担します。この際、支出を抑えることに目を向けると、免責期間が長くなり、福利厚生に対する従業員の満足度は低下し、逆に不満につながる可能性があります。

また、制度を実際に利用する人数がわずかであれば、運用費用ばかりかさむことになりかねません。福利厚生を増やせば必然的に運用コストは増えてしまうため、過去の休業者や退職者の人数と傾向を分析し、導入後の費用対効果を検討する必要があります。たとえば、従業員が全員加入する部分と任意加入する部分を組み合わせた形を取る方法があります。全員加入型は従業員の保険料を会社が負担しますが、任意加入型は希望する従業員が個別で保険料を負担するので、二つの加入形態を組み合わせると、会社の予算に合わせてどこまで負担するかを検討できます。または、休業補償規定や傷病見舞規定といった社内規定での補填とセットでサポートするの有効です。

さらに、団体割引率は加入者数に応じて変動するため、小規模事業者は割引が効きにくいなくなります。自社の従業員規模や状況、規定、想定される利用頻度などを考慮し、効果的に活用するとよいでしょう。

導入に迷う場合は、保険代理店などの、GLTDを取り扱うアドバイザーへ相談すると安心です。

まとめ

コロナウイルスが世界的に流行し、「いつ就労継続が難しくなるか予測できない」という不安を多くの人が抱えています。当たり前に仕事ができるという既成概念を脱し、長期的視野において、安心、安全な就労環境を整備することが重要です。

一方で、働き方の多様性やビジネススピードは加速しており、企業は攻めと守りのバランスを維持する必要があります。GLTDを企業制度として取り入れることは、健康経営や戦力強化の一端になるでしょう。

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