ビジネススピードの加速や成果主義へのシフトなどにより、個のパフォーマンスを最大化し、生産性高く働くことが重視されています。さらに、任意の場所で働くテレワーク環境下においては、これまで以上に従業員自身で体調やメンタルを健全な状態に維持することが必要です。
セルフマネジメントの能力を養えば、過労やストレス過多になることなく、良好なコンディションで本来のスキルを発揮しやすくなるでしょう。自分の内面に目を向け、平常を保つ方法を知ることで、生産性の低下や人間関係のトラブルを防き、成果や評価に結びつきますくなります。
セルフマネジメントとは
セルフマネジメント(self-management)とは、自身の感情や体調を意識的にコントロールし、目標達成を可能にすることを指します。たとえば、タスク管理やモチベーション維持は、ビジネスシーンにおけるセルフマネジメントの一つです。セルフマネジメント能力を身につけ習慣づけるには、パフォーマンスが落ちる要因を分析し、思考の癖を捉えた上で、行動を正す必要があります。特に、自然に湧き上がる「感情」を抑制するためには、継続的なトレーニングが必要です。
セルフマネジメントの能力が低い状態のままでは、業務効率が下がったり、受動的な姿勢で成長できなかったりといった事象を引き起こし、個人や組織のパフォーマンスが伸びません。企業力強化のためにも、従業員への意識付けや研修に組み込むなど、具体的な施策を進める企業が増えています。
セルフマネジメントの重要性
セルフマネジメントが重視されるようになったのは、社会的背景が関係しています。労働人口の減少が深刻化が進む中で、経済成長率を押し上げるために働き方改革が制定され、より生産性高く働き、目標にコミットすることが求められるようになりました。また、コロナで急速に普及したリモートワークにおいては、オフィス出社に比べ個人に委ねられる部分が多くなり、セルフマネジメント能力が高い人と低い人では、成果や評価で差が出やすくなっています。従業員一人ひとりが力を発揮し、自身の持ち味を活かしたキャリアを積むためにも、セルフマネジメント能力を養うことが重要です。
リモートワーク化の加速
リモートワークは、働きやすい場所や時間の選択肢が増え、従業員の生産性を高められる一方で、上司と部下や同僚同士で顔を合わせる機会が減り、悩みやトラブルを解消しづらい、もしくは帰属意識が低下しやすいといった懸念もあります。
企業側から見れば、対面による従業員のマネジメントができなくなることで、勤務態度や業務プロセスでは評価しづらくなり、アウトプットを重視する傾向が高まっています。
働く場所に関わらず自身の存在価値をアピールするためには、周囲の環境や状況に左右されず本来の力で仕事に臨み、確実に目標を達成することが大切です。
働き方改革の推進
2018年に制定された働き方改革では、「労働時間の是正」を3つの柱の1つに掲げています。従業員の労働時間規制や年休取得を徹底することが企業に義務付けられ、生産性を高めて働くことは国としてのミッションになりました。
このミッションを達成するためには、企業が福利厚生や社内規定などを見直し、働きやすい職場環境を構築する一方で、従業員自身においても、生産性向上の意識を高め、自律的に働く姿勢へ変わる必要があります。
ビジネス環境の変化の速さ
絶えず変化するビジネス環境で、企業は顧客ニーズを捉え、ビジネスモデルの変革や新たな市場への参入など、スピードと柔軟性が問われています。セルフマネジメント能力の高い人材で成り立つ組織はモチベーションやパフォーマンスが安定しているため、新たなイノベーションやクリエイティブを生み出しやすくなります。逆に、セルフマネジメント能力が低い組織では、社員同士の相互作用がうまく機能せず、連携や新たな価値を創出しづらくなるでしょう。
役職ごとに異なるセルフマネジメントの手法
セルフマネジメントは業種業態やポジションに関わらず有効なビジネススキルですが、プレイヤーと管理職では、求められるスキルの幅が異なります。管理側の立場では、自分自身に対するマネジメントに加え、部下がセルフマネジメント力を高められるようにフォローするスキルも必要です。
プレイヤーに求められるセルフマネジメント
一般社員においては、まず自身の職務や役割に期待されている成果を明確にすることが大切です。自分が向かうべきゴールが具体的であればあるほど達成意欲が沸き、日々の業務に活かしやすくなります。
また、業務がうまく回らなかった時や効率が落ちた時を振り返り、何が要因となっていたのか突き止めることも重要です。たとえば、思うように進捗が進まずイライラしていた、もしくは上司からの評価が想定より低くショックだった、といったような感情の起伏に流され、思わぬミスにつながっていた可能性もあります。自分の思考をコントロールすれば、仕事の質と速度が向上するでしょう。
管理職に求められるセルフマネジメント
管理職は、自身の業務と並行してチームマネジメントも担うため、より一層セルフマネジメント能力を高める必要があります。チームを着実にゴールへ導くために、タスクやモチベーションの管理をするだけでなく、素早く状況を判断し、取捨選択を決断しなくてはなりません。また、部下が生産性高く働くために、チームのメンタルケアも欠かせないでしょう。
管理職の立場で感情や体調に乱れがあると、チーム全体の士気が下がったり、誤った方向に進んでしまう可能性があります。
セルフマネジメント失敗の要因
次に挙げるような思考の癖があると、セルフマネジメントの習得に時間がかかる傾向です。プレイヤー、管理職に関わらず、思い当たる部分がある場合は、焦らずに段階を踏んで解決するようにしましょう。
完璧主義
掲げた目標に対し、成し遂げようとすることは大切ですが、完璧を求めすぎると、ささいな失敗や予期せぬトラブルが発生した際に大きな精神的ダメージを受けます。追い込まれると、冷静さを失ったり周囲に感情をぶつけたりする場合もあり、悪循環に陥りやすくなります。このような完璧主義の人は、達成できそうな範囲で目標を設定し、計画的に進めると自己をコントロールしやすくなるでしょう。
ネガティブ思考
新しい仕事を始める時や、重い役割を与えられた際、自分には無理なのではないか、失敗したら取り返しがつかないのではないか、といったように悪い方向へ考える癖があると、チャレンジしづらくなります。ネガティブ思考はリスクマネジメントとは異なり、不安な気持ちから過剰に自分の行動を抑えてしまうため、成長の機会を自ら手放してしまうでしょう。
このような考え方を変えるには、まず自分の現状を分析し、できていないことだけではなく、できていることに目を向けて自信を養います。また、できていないことについては、どうすれば改善するかを自答すると、対処法が明確になり、意欲的に仕事をしやすくなるでしょう。
物事の優先順位付けができていない
仕事をパラレルで進める場合、優先順位が曖昧なままでは効率が落ちてしまいます。視野を広げ、タスクのゴールや、得られる効果などを認識した上で、順位付けをし、集中力を高めて取り組むことが重要です。スケジュール策定時に優先度を意識した期日を設け、時間と能力を効率的に活用するようにしましょう。
セルフマネジメントを身につける方法
セルフマネジメント能力は、目標管理や時間管理、感情のコントロールなど、ビジネスにおけるさまざまなスキルが含まれます。業務を進めながら効果的に習得する方法について説明しましょう。
細かい目標設定
目標を立てる際は、レベル以外に粒度も大切です。特に中長期的な目標を立てる場合、抽象的になりがちなので注意しましょう。曖昧な目標は、途中で何をやるべきか見失ったり、終わりが見えずモチベーションが下がってしまう可能性があるため、可能な限り細かく設定します。
細分化した目標は、具体的な行動に落とし込みやすくなり、スケジュール策定へと進みやすいでしょう。
時間制限を設けてタスクをこなす
目標を達成するタイムリミットを決め、計画的にこなすことを意識すると集中力が高まります。仕事に費やす時間には限りがあり、さらに予期せぬタイミングで他の仕事が舞いこむこともあるため、効率性を保つことは重要です。1日の中でも、午前にやるべきこと、午後にやるべきことなど時間単位でタスクを決めると、時間を有効活用できるでしょう。
マイルストーン設定
半年や1年がかりの長期プロジェクトなど、期間を必要とする仕事については、たとえば週単位など短い周期の目標を立て、小刻みに達成度合いを振り返ると、自分が今どの時点にいるか、進度がわかりやすくなります。また、マイルストーンは、先のゴールに対し、逆算して目標を順番に設定していくため、方向性のズレを防ぐ効果もあります。
マインドフルネス瞑想を取り入れ集中モードを作る
ストレスを溜めず、パフォーマンスを高める方法として「マインドフルネス」が効果的です。マインドフルネスでは、瞑想を通して自身の心に耳を傾け、過去の失敗に捉われたり、未来への漠然とした不安に襲われている自分を鎮め、「今」に集中できる穏やかな精神状態を意識的に作っていきます。マインドフルネスを習慣化することで、一次的にネガティブな感情が生まれても、冷静な自分に立ち戻れるため、集中力や記憶力を維持できるでしょう。
自身のアクションの効果測定し振り返る習慣を
意識的に自己をコントロールした結果、仕事でどんなアクションにつながったのかをこまめに振り返り、プラスに働いたかどうかや見直すべき点を分析することが大切です。また、個人だけでなく、セルフマネジメントへの取組みが組織の状態変化にどう結びついたのかも重要なポイントです。
従業員のストレス状況やモチベーション、組織の健全性について定点観測し、必要なフォローや育成へ活かすと、個人や組織の状態が安定し、高いパフォーマンスが発揮される好循環が生まれやすくなります。
まとめ
働き方やキャリアが多様化する中で、従業員一人ひとりがセルフマネジメント能力を養い、仕事で自身の価値を発揮することは、個人の成長や目標実現に大きく貢献します。企業においても、セルフマネジメント能力の高い人材は貴重であり、人材育成や組織開発へ活かすことで企業力強化につながります。
セルフマネジメントの重要性について社内で理解を深め、個人の行動変化と組織パフォーマンスの関連性を定期的に図り改善を繰り返すことで、ポジティブマインドや柔軟な判断力が企業風土として定着し、エンゲージメントも高まるでしょう。