テレワークにおける人事評価の課題、適した人事評価制度、企業事例についても解説
コロナ禍に伴い、すでにテレワークを実施している企業も多いのではないでしょうか。
しかし、テレワーク下において、本当に適切な人事評価ができているのか不安に思っている担当者もいるでしょう。
本記事では、テレワークにおける人事評価の課題やテレワークに適した人事評価制度、テレワークで人事評価制度を改善した企業事例について詳しく解説していきます。
テレワークにおける人事評価の難しさ
株式会社あしたのチームが2020年に実施した「テレワークと人事評価に関する調査」によると、部下の人事評価をする管理職のうち73.7%が「オフィス出社時と比べて難しい」と答えています。
また「テレワークにおける人事評価制度が現在のままで良いと思うか」という問いに対して「見直し・改定する必要がある」と回答した人は41.3%とほぼ半数に近い割合を占めました。
このように、管理職層の多くがオフィス勤務時のマネジメントのままでは、テレワークでの人事評価は厳しいと感じています。
テレワークでの人事評価は変えていく必要があるのか
日本の企業で導入されているテレワークは週に1、2日程度が在宅で、残りはオフィスに勤務するパターンがほとんどです。結果的にオフィスで働く時間の方が長いため、従来通りの人事評価制度をそのまま適用していることが多いでしょう。
ですが、従来通りオフィスに勤務する場合の人事評価制度は「仕事の結果(成果)とプロセスの両方を勘案して評価している」場合がほとんどです。それをテレワーク下でも同じように適用しているのです。
実際に、日本テレワーク協会の「在宅勤務の推進のための実証実験モデル事業報告書」によると、在宅勤務者の評価について、59.7%と半数以上が「仕事の結果(成果)とプロセスの両方を勘案して評価している」と回答しています。
オフィス勤務では従業員の勤務態度など働きぶりが見えるので、プロセス部分の評価もしやすいはずです。しかし、従業員の状況が分かりにくいテレワーク下において、プロセス部分は評価しにくいと言えるのではないでしょうか。適切な評価が行えないとなると、従業員の不満にもつながるでしょう。
そのため、テレワークにあわせた評価制度の検討は必要と言えます。テレワークにおける評価について、ひととおり課題を洗い出した上で、客観的な視点で評価ができるよう体制を整えることが急務と言えるでしょう。
また、テレワークに適した新たな評価制度を作る際には、評価される側と評価する側、どちらか一方の改善では足りません。「評価される側が目標設定と成果報告を適切に実施できる仕組み」と「評価する側(人事部やマネジメント層)のスキルアップ」を並行して整えることが重要なポイントです。
テレワークにおける人事評価の課題
テレワークにおける人事評価の課題として、どのようなことがあげられるのでしょうか。
業務プロセスの評価が難しい
テレワークでは部下の仕事ぶりが見えずらく、オフィス勤務に比べてコミュニケーションも減るため、業務プロセスが確認しづらくなります。
従来に比べて、プロセスにおける評価材料は減っているといえます。
テレワークにおいては、どのように業務プロセスを確認し評価をしていくか、今一度考え直す必要がありそうです。
評価方法や評価基準があいまい
「メッセージでのやり取りやビデオ会議での発言を重視するのか」「成果物や実績などを重視するのか」など、テレワークでの評価方法や基準について明確にし、共通認識を持つようにしておきましょう。
また、テレワークとオフィス勤務の従業員が混在する企業では、より評価項目の工夫が必要です。従来通りのプロセスも大いに含まれる人事評価制度であれば、テレワークの従業員は不利になりえます。
人事プロセスの遅延
意見交換しながら複数人で人事評価をする場合、担当者同士がテレワークをしていると、タイミングが合わせにくかったり密な相談ができなかったりと、コミュニケーションがうまくいかず評価プロセスが滞るケースがあります。
組織的に評価を行う場合には、スムーズな情報交換が求められます。
テレワークに適した人事評価制度
テレワークに適した人事評価制度の実現には、どういったことがあげられるのか解説します。
評価項目の明確化と共有
まずは評価項目を明確化します。
成果や実績といった分かりやすい部分だけではなく、可視化しにくい部分はオンライン面談などを実施しながら、業務スピードやレスポンスの速さなども定量的に計測し、評価材料にするとよいでしょう。
評価項目を明確にしたら、上司によって評価方法のばらつきが生じないよう工夫をし、また従業員に周知することも忘れずに行ってください。
評価方法を統一
評価する側もテレワーク環境の評価に慣れていない場合があります。そのため、
人事評価システムを導入、評価方法を確認するプロセスを加える、評価のためのマニュアルやガイドライン作成するなど、仕組み作りの工夫が必要です。
「目標管理制度」の導入
目標管理制度とは、従業員自身がが期間内に達成したい目標を定め、実現するための取り組みなどを設定し上司と共有します。その内容に基づいて振り返りや評価を行います。
ただ目標に対する取り組みを評価できるだけでなく、モチベーションやセルフマネジメント能力の向上にもつながります。
人事評価プロセスを工夫
紙やエクセルを用いていた人事評価も、オンラインで情報共有しながら人事評価ができる仕組みがあるとよりスムーズです。
従業員の情報を一カ所に集めた上で、アクセス制限をかけるなど徹底した管理を行いましょう。
部下が自己PRできる機会を設ける
部下自身が考える成果やプロセスについて、評価する側に自己PRできる機会を設けることは、お互いにとって納得のいく公平な評価にするためにも有効です。
裁量労働の可視化ができるような仕組み作り
裁量労働制を取り入れる場合は、誰か一人に負担がかからないようにするためにも、改めて人事評価のルール化や人事評価制度の見直しを行う必要があります。
従業員一人ひとりの公平性や働きやすさに目を向けながら、何が評価対象なのか、評価基準を共通認識として把握しておくことが大切です。
テレワークにおける人事評価のポイント
従来の人事評価とは異なる、テレワークにおける人事評価のポイントは何なのか解説します。
コミュニケーションの工夫
テレワークでは、従来と比べコミュニケーション量が減るため、今まで以上に質の高いコミュニケーションが要求されます。
単にコミュニケーションの機会を増やせばいいというわけではなく、報告・連絡・相談をルール化するなどして情報共有を仕組み化していきましょう。
例えば「業務予定の報告を習慣づける」「緊急の場合はチャットではなく電話を使う」「相談しやすい時間を事前に共有しておく」など、細かく決めておくことが重要です。
場合によってはオンラインツールを用いて顔を合わせたり、面談を定期的に実施するなどしてコミュニケーションの工夫を図ると効果的です。。
そうすることで部下の仕事ぶりも見えてくるため、評価も自然としやすくなるはずです。
ITツールの導入
ITツールの導入は、組織内のコミュニケーションが活発になるだけではなく、勤怠管理や業務内容の共有・管理にも役立ちます。
グループウェアと呼ばれる業務の効率化を推進するためのソフトウェアや、ビジネス利用に特化したビジネスチャットなど、さまざまなツールがあります。
テレワークで人事評価制度を改善した企業事例
実際に、テレワークに伴い人事評価制度を改善した企業事例を紹介します。
株式会社SiM24
株式会社SiM2は半導体パッケージや、部品の応力解析、熱解析などの受託シミュレーションサービスを提供する企業です。
高スキルな人材を活かした組織作りの実現のために、正社員は8時間の勤務時間内、その他の雇用形態の従業員は労働時間を報告してもらい、勤務時間と成果物が見合っているかを評価しています。
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は、ソフトウェアの開発・販売・保守・サービスなどを行っている企業です。
裁量労働制を取り入れ、その日の仕事の成果を評価対象としており、自己管理能力も評価の一部となっています。
社員の心身の健康状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ
「ラフールサーベイ」は、社員の心身の健康状態を可視化することのできるツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。対面で顔を合わせる機会が少なくなっているテレワーク導入企業様に多くご利用いただいております。
社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
まとめ
テレワークにおける人事評価の課題や適した人事評価制度について紹介しました。
テレワークに適応した新たな評価制度の導入は、従業員のモチベーションを向上させるだけでなく、優秀な人材の確保や強い組織づくりなど、経営的メリットにもつながります。
まずは、自社の評価制度がテレワークに対応しているか、評価の仕組みから見直すことからじはじめましょう。