ブラザーシスター制度の導入で新入社員の定着と企業の成長を目指す

ブラザーシスター制度の導入で新入社員の定着と企業の成長を目指す

ブラザーシスター制度とは?企業事例、メリット・デメリット、運用方法も解説

新入社員を一人前の社会人として育て上げる教育には、いろいろな方法があります。「どんな新人教育をしようか」「新しい教育方法にチャレンジしてみたい」と思っている担当者もいることでしょう。今回はその中でも、ブラザーシスター制度の定義やメリット・デメリット、実践している企業の例などを紹介します。

ブラザーシスター制度とは

ブラザーシスター制度とは、新入社員と同じ部署にいる社員を兄(ブラザー)、姉(シスター)に見立てて、仕事の進め方から悩み相談などの業務〜メンタル面のフォローまでのアドバイスを行う制度のことです。基本的には新入社員1人に対して先輩が1人つきますが、企業によっては複数の先輩社員が付くこともあります。なお、ブラザーシスター制度はほとんどが新卒の新入社員の教育に用いられ、中途入社の社員に対しては行われることは少ない教育法です。年の近い社員が割り当てられることで、業務や新生活への悩みを相談しやすく、新入社員の離職率を低下させる効果が期待できます。

ブラザーシスター制度の目的

ブラザーシスター制度は、年齢の近い社員に教育や社会生活のアドバイス、サポートをしてもらうことでコミュニケーションを充実させ、企業への愛着を高めて社内キャリアの形成に前向きになってもらうことです。新卒の新入社員にとって「上司に相談する」というのは、とてもハードルの高い行為です。ですから、年の近い先輩社員に教育係になってもらい、上司との橋渡しになってもらうことで、コミュニケーションが取りやすくなります。社員同士のコミュニケーションがスムーズにとれるようになれば、社内キャリアの形成などに取り組む余裕も出てくるでしょう。

ブラザーシスター制度の効果

ブラザーシスター制度の効果として第一にあげられるのは、職場への定着率です。厚生労働省が2020年に発表したデータによると、平成29年3月卒業者で、新規学卒就職者の就職後4年以内の離職率は、新規高卒就職者39.5%、新規大卒就職者32.8%でした。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00003.html

厚生労働省

大卒者の3割、高卒者に至っては4割が3年以内に新卒で入社した職場を去っています。企業としても、費用と時間をかけて入社してもらった人材が短期間で離職するのは、大きな痛手でしょう。
ブラザーシスター制度を利用すれば、1対1で指導ができるので細かいところまで指導が行き届きます。その結果、離職率が低下する効果が出ています。また、指導する先輩社員もデータでは表しにくいものの、マネジメントスキル向上や職場の一体感といった効果が期待できます。

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ブラザーシスター制度・メンター制度・OJT制度それぞれの違い

注目されている新入社員の教育方法としてブラザーシスター制度のほか、メンター制度やOJT制度があげられます。それぞれにどのような違いや特徴があるのか、ここで解説しましょう。

ブラザーシスター制度

ブラザーシスター制度は、主に新卒の新入社員1名に対し、同じ部署にいる年の近い先輩社員が1名~複数名つき、仕事のやり方や社会人としての心構え、悩み相談などを行います。きめ細やかな指導をすることにより、コミュニケーションの円滑化と離職率の低下などが期待できる制度です。なお、サポート範囲は企業によって異なり、会社によっては仕事のやり方だけを指導することもあります。

メンター制度

メンター制度とは、ブラザーシスター制度同様、先輩社員と後輩社員がペアとなり、先輩社員が後輩社員にメンタル面やキャリア形成に関する指導を行います。ブラザーシスター制度とよく似ているので、メンター制度とブラザーシスター制度を同一視している企業もあります。ブラザーシスター制度同様、離職率の低下や社内向けキャリア形成の向上を目的とした制度です。ブラザーシスター制度が主に新卒の新入社員の育成を目的としたものであるのに対し、メンター制度は中途入社社員を含む若手社員が対象です。

OJT制度

OJT制度とは、日常業務を通じた社員教育制度のことで、職務現場で先輩社員が後輩社員へ仕事の進め方や技術の伝承を教育する制度です。いわゆる、一般的な「社員教育」です。かつて日本の企業では「見て覚える」という教育を行う企業が多かったのですが、現在は言葉で教えたりマニュアルに沿って教育を行うのが一般的です。新入社員に限らず先輩から後輩、上司から部下へと日常的に広く行われている教育法です。ブラザーシスター制度やメンター制度と違い、メンタル面でのサポートは基本的に行いません。また、対象は新卒新入社員や若手社員に限らず、同じ社内から異動してきた他部署の社員も対象です。

ブラザーシスター制度のメリット・デメリット

ブラザーシスター制度のメリット・デメリット

ここでは、ブラザーシスター制度のメリット・デメリットを解説します。メリットだけでなくデメリットを知ることで、自社にあった制度のアレンジができることでしょう。

ブラザーシスター制度のメリット

まずは、ブラザーシスター制度のメリットを解説します。

早期離職の防止につながる

厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況」によると、平成27年3月に大学を卒業した

新卒社員のうち、1年目に離職した人が全体の11.9%、2年目が10.4%、3年目が9.5%となっています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html

厚生労働省

若手社員の早期離職は会社にとって深刻な問題であり、早急な対策が必要です。
ブラザーシスター制度は新卒社員のメンタルケアも指導範囲に含まれます。何か困ったり悩んだことがあったりしても会社内で気軽に相談できる先輩がいれば、心強いことでしょう。また、指導する社員の手に負えない事態であっても「相談」という形で早期に問題が明るみになれば、会社の上層部が早めの対策を取れます。

社員のスキルアップ

新卒の新入社員はやるべきことや覚えるべきことがたくさんあります。社会人経験のある中途社員のように基礎だけをひととおり教えれば、あとは経験を活用して自分でやるべきことを学ぶ、といったことは期待できません。

ブラザーシスター制度であればマンツーマン指導に近いことができます。きめ細やかな指導をするほど、スキルアップするまでの時間は短くなり、新入社員のやる気も増すことでしょう。
また、指導役になる先輩社員も「マネジメントをする」という経験を通して問題解決や指導力が上がるなどのメリットもあります。この力は、将来役職が上がり部下を持つことになった際に役立つことでしょう。

社員間の連携につながる

ブラザーシスター制度をスムーズに行うためには、社員同士の連携や教育が不可欠です。業務とは異なる「新入社員の教育」という目的に向かって力を合わせることで、普段ではあまり接触のない社員同士のコミュニケーションも深まることでしょう。また、教育役の社員同士が新入社員の抱える悩みや不安を共有することで、社員間の連絡がスムーズになることが期待できます。社員同士の連絡がスムーズになれば、仕事の問題や情報などの共有も同様に行えるでしょう。

企業文化の継承

ブラザーシスター制度が企業に定着すれば、「先輩社員は後輩社員を指導、サポートを行う」という文化が生まれます。指導を受けた社員はやがて指導をする側になり、後輩をサポートする文化は引き継がれていくことでしょう。

ブラザーシスター制度のデメリット

今度は、ブラザーシスター制度のデメリットを解説します。

指導役と新入社員の相性が合わないことも

ブラザーシスター制度は、指導役と新入社員の相性が大切です。人事がいくら熟考して組み合わせを考えても、相性が合わないこともあります。相性の合わない者同士を組み合わせても、先輩社員は指導力を発揮できませんし、新入社員も能力を開花させることはできないでしょう。また、社員同士の相性は組み合わせてみないとわかりません。ですから、ブラザーシスター制度が始まってから社員同士の相性の悪さがわかった場合、制度のメリットは発揮できないでしょう。

後輩社員の間で不公平感が募ることも

ブラザーシスター制度では、相性が悪いペアが生まれる一方で相性のいいペアも生まれます。相性のいいペアの場合、新入社員が早々に能力を開花させることもあるでしょう。しかし、その結果ほかの社員のモチベーションが低下することもあります。「この先輩(新入社員)とペアでなければよかったのに」と思ってしまうことで、相性がいまいちの社員同士の溝がますます深まってしまう可能性もあるでしょう。

指導役となる先輩社員に負荷がかかることも

ブラザーシスター制度は、年の近い社員同士でペアが組まれます。会社によっては指導役の先輩社員もようやく一人前になったばかり、ということもあるでしょう。ひととおりの仕事はできるけれど他人の指導をするだけの余裕はない、というケースもあります。また、業務負荷が増えることで指導役の社員が不満を抱くこともあるでしょう。会社側のサポートが十分でないと、余裕がない先輩社員はおざなりの指導をして終わり、ということもあります。

新入社員が自立しにくい

ブラザーシスター制度により、相談しやすい雰囲気を作ることはとても大切です。しかし、新入社員によってはその雰囲気に甘えてしまい、先輩社員にべったりになってしまうこともあるでしょう。指導役の先輩社員が面倒見のいい場合は、さらに拍車がかかる可能性もあります。ブラザーシスター制度による指導をいつ、どこまで行うかを会社側がしっかりと定め、新入社員の手を放すタイミングを間違えないようにすることが重要です。

このように、ブラザーシスター制度にはメリットだけでなく、デメリットもあります。デメリットを少しでもなくすためには会社側の努力も大切です。たとえば、ブラザーシスター制度を導入する前に先輩社員に研修を行う、会社側がどこまで指導役の先輩社員をサポートするかを明確にする、負担を軽減するための措置を講じるなどです。

ブラザーシスター制度の運用方法

ここでは、ブラザーシスター制度をスムーズに運用するために、企業側が取るべき行動について解説します。ぜひ、参考にしてみてください。

導入にあたっての目的とKPIを決める

ブラザーシスター制度を導入すると決めたら、まずは導入の目的とKPIを設定しましょう。KPIとは、目標を達成するうえで達成度合いを計測したり監視したりするための定量的な指標のことです。

新入社員教育の範囲は広く、やることはたくさんあります。「ここまでできれば終了とする」という範囲を決め、達成基準を定めなければ、指導役の社員の負担ばかりが増大する可能性もあるので、気をつけましょう。
例えば、「社員の早期離職防止」や「新入社員の早期定着の促進」をブラザーシスター制度の目的とした場合、KPIは「新入社員の離職率を下げる」や「疑問や悩みをその場で解決できる環境作りをする」となります。

対象者の決定

ブラザーシスター制度では、指導する社員の範囲を特定することも大切です。新入社員の人数だけ指導役の社員も必要ですから、「新卒で入社した社員」「入社1年以内の社員」など対象を厳格に絞りましょう。

運用方法の決定

指導役の先輩社員に何もかも丸投げしてしまうと、先輩社員の負担だけが増大していきます。指導する期間や内容を明確に定めておきましょう。可能ならば、事前に指導役を任された先輩社員に研修を行い、サポート方法や指導内容などを定めて「会社側がしっかりとバックアップする」という姿勢を見せることが大切です。

ブラザー/シスターを決める

ブラザーやシスターの選定は慎重に行いましょう。立候補や面倒見のよい社員にオファーをかけるなどの方法もいいですが、指導役候補の社員のコミュニケーション能力や、抱えている仕事の内容を見て判断することも重要です。たとえば、重要なプロジェクトに関わっている社員は外す、1対1でなく指導役の社員2人に新入社員1名をつけるなどの方法もあります。

社内アナウンス

ブラザーシスター制度の導入をきめたら、社内全体に周知を徹底します。指導役の社員と生徒役の社員だけでは不十分です。社内全体に「このような制度を始めます」と周知することで、社員全員のサポートも期待ができます。また、「ブラザーシスター制度を導入する」だけでなく、「現在はこのようなことをしています」といった進歩状況を社内報などで伝えるのもおすすめです。

定期的な進捗確認

KPIや目標を定めていても、予定通りにいかないことも珍しくありません。定期的な進捗確認は必須です。もし目標とするスキルに達していない場合は、対策を考える必要があります。レポート提出や面談により、指導役と生徒役の社員同士に問題が起きていないかを随時確認するようにしましょう。

ブラザーシスター制度を導入している企業

ここでは、ブラザーシスター制度を実際に導入している企業の事例を紹介します。ブラザーシスター制度の導入を検討している企業は参考にしてみてください。

アサヒビール株式会社の事例

アサヒビール株式会社では、キャリア支援の取り組みの一環としてブラザーシスター制度を導入しています。期間は入社してから4カ月間、指導役の先輩社員は、原則入社3年目から8年目の若手社員が担当します。指導役の社員は社内公募で募集しているので、やる気のある社員に新入社員の指導を任せることが可能です。ブラザーシスター制度の導入により、社員同士が助け合う風潮が生まれ、離職率も2018年時点で1%満という非常に低い離職率を維持しています。アサヒビールのブラザーシスター制度は古く、現社長にもかつて「ブラザー」がいたとのことです。

三井住友海上火災保険株式会社の事例

三井住友海上火災保険株式会社では、「ファミリー制度」という独自のキャリア支援制度を取り入れていますが、これは実質的な「ブラザーシスター制度」です。新入社員1名に育成担当者であるファーストブラザー・ファーストシスターがつき、日常業務や会社員としての心構え、メンタル面などの指導やサポートを中心となって行います。なお、三井住友海上火災保険株式会社では、ファーストブラザー・ファーストシスターだけでなく、職場の全員が「新入社員を成長させよう」という高い意識を共有しているのが特徴です。このほか、新入社員と合同の「ブラザーシスター・新入社員合同研修」の実施など、ほかの教育制度も充実しています。同社の離職率は、2019年時点で1.8%です。

社員の精神状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ

「ラフールサーベイ」は、社員の精神状態を可視化することのできるツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

154項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

まとめ

今回は、新入社員の教育の一環であるブラザーシスター制度について解説しました。ブラザーシスター制度は、新入社員の離職率を低下させ、社内キャリアを向上させるきっかけをつくるのに非常に有効な教育方法です。その一方で、先輩社員に指導を丸投げしたりペアとなった社員同士の相性を無視すると、デメリットばかりが際立つことになるでしょう。ブラザーシスター制度をスムーズに成功に導くためには、先輩社員へのケアと社員全員でペアをサポートし、見守っていこうという姿勢や、しっかりとしたマニュアル作りも大切です。

https://survey.lafool.jp/
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