組織には、それぞれ特有の文化がある場合が多く、既に良い組織文化がある場合もあれば好ましくない組織文化が根付いている場合もあります。 本記事では、組織文化とは何かといった基本的な事柄から、組織文化にはどのような利点があるのか、良くない場合とはどの様な物なのかについて解説していきます。
社風へのマッチ度で採用候補者の定着率・活躍度がわかる!
適性検査「テキカク」の資料ダウンロードはこちら
組織文化とは?
まず組織文化とは、心理学者であるエドガー・H. シャインによると「組織文化とリーダーシップ」において「グループが外部適応や内部の統合化を行う際の問題に対して取り組む過程で、学習及び共有された、基本的な前提認識のパターン」であり、新しいメンバーが同様の問題に対して対応する際に「適切な方法として教えられるもの」と定義されています。
つまり、組織文化は組織内で問題解決する際に得られた知見から作られた認識パターンであり、これにより組織全体の行動原理の枠組みが出来ていると言えます。
組織文化と構成要素
組織文化にはエドガー・H. シャインが提唱した3段階の文化レベルがあります。
この図のように、組織文化はレベル1から発展し、その中で暗黙の了解といったような議論を交えずとも従業員それぞれが認識しているレベル3の組織文化が形成されます。
特に、組織文化の性質は、言語化されていない当たり前の行動原理や思考様式に反映されるため、この様な段階に分けることができるのです。
組織文化と組織風土との違い
組織文化の一方で、類義語として組織風土という言葉も一般に知られています。
しかしながら、組織文化と組織風土では明確に意味の違いがあります。
具体的には、組織風土は認識できる組織の性質であり、一方で組織文化は無意識下で影響を与えている価値観等の組織の性質のことを指します。
また、組織風土としては、従業員が感じる組織に対する雰囲気や人間関係も挙げられます。
組織文化の種類
組織文化には、種類があり、ミシガン大学のロバート・クイン、キム・キャメロンらが開発した「競合価値観フレームワーク(Competing Values Framework:CVF)」に基づき、「家族文化」「官僚文化」「イノベーション文化」「マーケット文化」これらの4つに分類することができます。
これらの分類と自社の性質を照らし合わせる事で、自社の組織文化の特徴がどれに近いのか把握することができるでしょう。
家族文化
家族文化とは、従業員同士が互いを尊重することが重視された組織文化のことです。
家族のような親密性や仲間意識が見られ、日本企業で最も多いとも言われています。
周囲への気遣い及び調和が大事にされるというメリットの一方で、家族文化のデメリットとしてチームで評価されることが多いという点が挙げられます。個人的に評価がされにくい性質もあるため、注意が必要です。
官僚・階層文化
官僚・階層文化は、一貫性や効率、画一性が重視された組織文化です。
年功序列などに重きを置いている企業に多い文化であり、メリットとして管理・規律に厳しいといった特徴があります。この組織文化は、特に従業員同士の連帯感が強く、家族文化と同様に個人の能力の評価がされにくいと言ったデメリットがあります。
イノベーション文化
イノベーション文化は、柔軟性及び革新性が重視された組織文化です。
上記と共に、新しい価値をつくりだす事や成長のためのプロセスを評価されるというメリットがある文化ですが、日本では最も少ないとされています。家族文化や官僚・階層文化とは違い、高いスキルや行動力が求められるといった高いハードルがデメリットとして挙げられますが、より高みを目指す人が多くなりやすい環境でもあると言えます。
マーケット文化
マーケット文化は、市場での競争に勝つことが重視された組織文化です。
特に、結果や成果が重視され競争力が高いため、他の文化と比べ早く結果がでると言ったメリットがあります。イノベーション文化と同様、個人の能力が評価されやすい一方で、個人の能力が重要であると言ったハードルがデメリットとして挙げられます。
組織文化のメリット
ここまで組織文化の種類とそれぞれにおけるメリットやデメリットについて着目してきましたが、組織文化があること自体にも以下の様なメリットがあるとされています。
1. エンゲージメントの向上
組織文化を構成する要素と働き甲斐を構成する要素には、価値観・リーダーシップの有効性と言った共通点があり、良い組織文化が育まれる環境では従業員の働きがいが向上するとされています。
2. 組織の競争力・職場環境の向上
組織文化には組織の個性がでることから、他企業との差別化の要因の一つとなります。イノベーション文化の組織では革新的なアイディアが出しやすかったり、家族文化の組織ではチームでの成果が上げやすいなど、それぞれの組織文化と業務の性質があった環境を作る事で、より競争力が高まることや働きやすい環境が生まれることが知られています。
3. 採用力(人材定着率)の向上
組織の競争力と同様に採用力も組織文化によって向上することが知られています。しかしながら、組織文化は潜在意識や行動原理として隠れているため、採用力の向上につなげる際は言語化することが必要であるとされています。個人の能力が評価されやすい文化や、チームで評価されやすい文化など、しっかりとした組織文化があり、それが言語化されている事でそれぞれの企業にあった人材をより確保しやすくなるでしょう。
また、組織文化にあった人材を採用できることで、その後の定着率も良くなることが知られています。
4. 意思決定が速くなる
組織文化はその組織がいままでの問題に対して解決のための行動をとり、それにより蓄積された知見から形成されています。そのため従業員の行動様式に影響を及ぼすことで、既に組織が体験した問題に対して速く対処することが出来るのです。
また、組織文化が定着していることで、新規の問題に対しても従業員それぞれが対応しやすくなることから、意思決定の速度が速くなるとされています。
社風へのマッチ度で採用候補者の定着率・活躍度がわかる!
適性検査「テキカク」の資料ダウンロードはこちら
組織文化のデメリット
組織文化にはメリットがある一方で、デメリットも幾つか知られています。
1. 組織への客観視の低下
組織文化が強すぎる場合には、自社の状態について客観視ができなくなることがデメリットとして挙げられます。自社の組織文化に信頼を厚くし過ぎる事で、問題に対して解決できない場合に他を責めたり、自分たちの落ち度を確認できなくなると言った現象が起こるとされています。
そのため、強い組織文化の中では常に客観視を行う姿勢も併用することが大切です。
2. 排他性の増加
次に組織文化が強すぎると、他を排する事に繋がってしまうことが知られています。残念ながら、組織が成長し大きくなるにつれ多様性が生まれる事で、満場一致で組織文化に同意がされるという状況は生まれにくくなってしまいます。これに伴い、組織文化にあわない人は離職してしまう事もあるでしょう。強すぎる組織文化は違う意見の従業員や他者に対して排他的になってしまいますが、一方でより組織の目的が統一化されるという側面もあるため、一概に悪い事であるとは言えません。
3. 変革への阻害
組織文化は出来上がってからも、組織の業務内容や顧客のニーズに合わせて変革することが必要であるとされています。しかしながら、既存の組織文化に対して強い共感をもつ従業員ばかりであれば変革に対して否定的になってしまう場合も考えられます。
4. 柔軟性の低下
2.3に上げたように、強すぎる組織文化によって、柔軟な対応がしにくくなることも事実です。
特に、組織文化に執着しすぎる事は変革の阻害と共に、組織の成長にも悪影響であるため、柔軟性を持たせた組織文化を持つことが重要です。
組織文化のデメリットは対策を行うことができるので、デメリットを理解し抑えながら運用するとよいでしょう。
悪い組織文化の例
一方で悪い組織文化が定着している場合には、組織文化のデメリットだけでなく以下のような問題も発生することが知られています。
特に、組織の目的や理念にあわない組織文化が形成されている場合や、顧客や従業員のニーズに合わない組織文化が形成されている場合には注意が必要です。
1. 離職率
企業の組織文化が悪く、従業員のニーズと乖離がある場合には、離職率が増加してしまいます。
業種や企業理念に合った適正な組織文化ではない場合には、せっかく採用した人材も働きにくくなってしまうことで、エンゲージメントの低下も懸念されるため、こういった場合には早急に組織文化の見直しが必要になります。
2. 風通しが悪くなる
企業の組織文化が悪く、働きにくい場合にはコミュニケーションの不足による職場環境の悪化が懸念されます。また、組織文化が閉鎖的であるなどコミュニケーションがとりにくい場合にも同様に、情報伝達に遅れが生じたり、意見が言いにくいなどの問題が発生するとされています。
3. ワークライフバランス
過度な成果主義や競争力へ重きを置いた組織文化の場合には、従業員のワークライフバランスが崩れる恐れがあります。これに伴い、従業員のエンゲージメントの低下と、積極性の低下が懸念され、企業の成長にも悪影響が生じるでしょう。
この様に、行き過ぎた組織文化などは、ただのデメリットとは違った問題を抱えている場合が多く上げられるため、改善の必要があるでしょう。
組織文化の具体例
ここまで、デメリットや悪い組織文化について説明してきましたが、良い組織文化は組織のパフォーマンスやブランドイメージを向上させることができるため、組織文化を正しく形成することが重要です。
ここでは、企業別で良い組織文化について紹介していきます。
組織文化の企業例
ユニクロ
ユニクロでは、すべての社員が「全員経営」することを掲げており、一般社員も経営的観点を持って業務に取り組むことを目指しています。これに伴い、組織構成から社内のデスクの配置などの配慮がされており、ここでの組織文化は企業の「システム・ルール」と整合性があり、官僚・階層文化とマーケット文化の融合型のような特徴があると言えるでしょう。
グーグル
Google社では「Googleが掲げる10の事実」を策定し、自社の行動指針としています。人とそのポテンシャルを重視した、「人財」と整合性のあるイノベーション文化に近い組織文化が形成されています。また、この行動指針に共感して会社に貢献する熱意あふれた社員を採用しているため、組織に統一性があることで、より成長できる組織文化が形成できていると言えるでしょう。
トヨタ
トヨタ社では、車づくりを通じて社会貢献を行うこと、そして人間性を尊重すること重視した家族文化に近い組織文化が形成されています。一方で、地域や社会の豊かな生活の実現とその発展を目的として、研究と創造、改善を重ねていることから、イノベーション文化も取り入れていることが見受けられます。この様な組織文化により従業員同士の信頼と尊重、社員個人の成長をも目的とした企業活動がされています。
引用元・さらに詳しくはこちら:【組織文化の実例10選!】企業の発展を左右する組織文化の重要性も解説!
まとめ
組織文化には、企業の更なる成長に必要な要素が複数ある一方で、企業にあっていない場合や強すぎる場合には逆効果になってしまう場合もあります。
グーグル社の例のように、組織文化を作る場合や、改革を行う場合には、組織の方針にあった人材を確保することも重要です。
テキカクなどの適性診断だけでなく、その後採用予定の人材がどのような活躍ができるのかなど、長期的な組織文化の形成に優良なツールを用いて採用を行うことで、より良い組織文化の形成を行うことができます。