適材適所とは?重要性やメリット、失敗例まで徹底解説

適材適所

ビジネスシーンにおいて、「適材適所」という言葉はよく使われます。しかし、単なる理想論ではなく、組織のパフォーマンスを最大化するためには、個人の特性や能力を見極め、最適なポジションに配置する具体的な取り組みが不可欠です。この記事では、適材適所の正しい意味やメリット、よくある失敗例、そしてビジネスで実践するためのステップについて詳しく解説します。

「適材適所」とは?

一般的な適材適所の意味

小学館のデジタル大辞泉によれば、「適材適所(てきざいてきしょ)」とは、「その人の適性や能力に応じて、それにふさわしい地位・仕事に就かせること。」を意味します。

語源は伝統的な建築現場からきており、家屋を建てる際、木材の性質に合わせて最適な配置をすることに対して「適材適所」という表現が生まれました。そしてこの表現は次第に、人に対して使われることが多くなりました。

ビジネスにおける意味

ビジネスの現場では、特に人事領域で「適材適所」という表現が用いられます。仕事においては、単にスキルや経験だけではなく、個人のモチベーション、チームとの相性なども加味して配置を考えることが求められます。

適材適所が実現できれば、組織の生産性が向上し、個人のエンゲージメントも高まります。逆に適材適所を無視すると、モチベーション低下や離職につながる恐れが生じてしまいます。

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なぜ「適材適所」が重要なのか?

人手不足

現代社会において、人手不足が深刻化しています。厚生労働省によれば、少子高齢化を背景現代社会において、人手不足が深刻化しています。厚生労働省の「令和4年版 労働経済の分析」によれば、少子高齢化を背景として、2035年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は38%台になると推計されています。15~64歳の生産年齢人口も現在すでに減少しつつあり、その割合の低下も見込まれています。

参考:厚生労働省「令和4年版 労働経済の分析」

少子高齢化に加え、離職による人手不足も問題として挙げられます。「-令和5年雇用動向調査結果の概況-」によれば、日本の離職率はコロナ禍の2021年には13.9%にまで下がりましたが、翌年以降再び上昇し、2023年には15.4%に達しています。また同資料では、転職入職者が前職を辞めた個人的理由として、「仕事の内容に興味を持てなかった」という回答が職場の人間関係・給与・労働条件に次いで多く挙げられています。自社の従業員が現在の業務内容・役職が自分に合っていないと感じることは、離職へと直結する可能性があるのです。

少ない人員で効率よく業務を行っていくには、従業員の性質に合った人材配置が重要です。また、適切な人材配置は、従業員満足度の向上にもつながるために、離職による更なる人材不足を防ぐことも期待できます。

変化の多い「VUCA時代」を生き抜くため

現代は、IT技術の進化や突発的な自然災害など、変動が大きく不確実、複雑で曖昧な時代です。このような状況は、Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字から、「VUCA(ブーカ)」と呼ばれています。

社会の変化に対応していくためには、適材適所の人材配置が必要です。例えば近年では、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークという新たな働き方が急速に導入されるようになりました。こうした劇的な変化のスピードに対応していくには、従業員が自身の能力を最大限に発揮して効率よく業務を行える環境が求められています。

適材適所がもたらすメリット

組織全体への効果

離職率が低下する

各従業員の特性や希望に合った人材配置を行うと、従業員のモチベーションを維持することができます。合わない業務への人材配置は、苦痛となる場合があり、離職につながりやすくなります。また従業員が離職すれば、新たに採用・育成を行わなければならず、余計な採用・育成コストがかかってしまいます。

一方、個々のスキルや性格、志向に合わせた配置では、主体的に業務に関わったり、能力がさらに成長したりと、成果や成長を感じられます。この結果、従業員のモチベーション維持につながり、離職を防ぐことができます。

業務効率の向上

適材適所によって、各メンバーが自分の得意分野で力を発揮できるようになるため、業務がスムーズに進み、生産性が飛躍的に向上 します。不得意な分野で苦労していた場合に比べ、作業スピードが速くなり、ミスも減少します。

特に、業務分担が明確になり、「誰が何をすべきか」がクリアになるため、無駄な指示待ちややり直し作業などが大幅に減少します。これにより、組織全体のスピード感が増し、成果に直結しやすくなるのです。

組織全体の能力の底上げ

適材適所により、個々の強みが自然と組織に還元される ようになります。個人が自分の力を発揮できる環境では、チーム全体のアウトプットレベルが底上げされ、組織の総合力が強化されます。

また、個々が自信を持って業務に取り組むことで、他者へのポジティブな刺激となり、組織内に良い競争意識が生まれる こともあります。これがさらにチームワークや相乗効果を生み出し、組織全体が活性化 していきます。

イノベーション(革新)の促進

個々の得意分野や価値観が活かされることで、新たな視点やアイデアが生まれやすい環境が整います。 特に、多様なバックグラウンドやスキルを持つ人材が適材適所で活躍している組織は、イノベーションが起こりやすい という特徴があります。

適材適所によって、「固定観念にとらわれない発想」や「リスクを恐れず挑戦するマインド」が育まれ、市場変化にも迅速に対応できる組織体制が作られる のです。

個人への効果

モチベーションとエンゲージメントの向上

適材適所により、社員は自分の得意分野で成果を上げやすくなり、成功体験を積み重ねることができます。 その結果、キャリア満足度が向上し、自信や自己肯定感も高まります。

「自分の強みが認められている」「組織に必要とされている」と感じることが、働く意欲の向上や長期的なキャリア構築へのモチベーションにつながります。

また、会社が自分に適した環境を配置していると感じられる場合には、「この会社でさらに成長・貢献したい」というエンゲージメントの強化も期待できるでしょう。

メンタルヘルスの改善とストレス軽減

適材適所により、自分に合った業務に従事することができれば、無理なプレッシャーや苦手分野によるストレスが大幅に軽減されます。これにより、メンタルヘルスリスクの低下、職場環境の改善、健康的な働き方の実現につながります。

ストレス耐性が低めの社員に対しても、適性に合った役割を与えることでパフォーマンスを最大限に引き出すことが可能になるといえます。

ビジネスにおける適材適所のよくある失敗例

ビジネスにおける適材適所のよくある失敗例

固定観念にとらわれた判断をしてしまう

多くの企業でよく見られるのが、昔ながらのイメージや先入観に基づいて人材配置を決めてしまうパターンです。

例えば、「営業に向いているのは外向的な人」という固定観念があっても、 聞き上手で内向的な人が、信頼関係を築く営業スタイルで成果を出すこともあります。

また「管理職は経験豊富な年長者が適任」という先入観があれば、 若手でも高いリーダーシップや柔軟性を持つ人材が活躍する可能性を見落としてしまうでしょう。

こうした固定観念は、本人のポテンシャルを過小評価し、チャレンジの機会を奪う危険性があります。特に、多様性や新しい働き方が求められる現代では、「型にハマった人材配置」は組織の成長を阻害する要因となりがちです。

改善のポイントとしては、上司や人事担当者が無意識のバイアスに気づき、意識的に「多様な視点」を持つことや、性格や経験にとらわれず、実際のパフォーマンスや成長意欲を重視することが挙げられます。

従業員の納得感がない配置

もう一つのよくある失敗は、本人の意向や適性を十分にヒアリングせず、一方的に配置を決めてしまうことです。

上司から突然「次の異動でこのポジションに就いてもらう」と言われ、本人が戸惑うケースは珍しくありません。「自分は本当にそのポジションに合っているのだろうか?」「キャリアの希望は全く聞かれなかった…」というように、納得感のない配置は、モチベーション低下や離職のリスクを高めてしまいます。

こうした状況を防ぐためには、キャリア面談の場を定期的に設け、本人の希望や将来ビジョンを把握することが重要です。また配置決定後には、配置の意図を丁寧に説明し、なぜその役割が本人にとって成長機会なのかを伝えることも有用でしょう。必要に応じて、選択肢を提示し、本人の意見を尊重する姿勢を持つことも検討してみましょう。

ビジネスにおいて適材適所を実現するためのステップ

業務内容の整理

適材適所を実現させるためには、組織としてどこを目指しているのか、そしてそのために各ポジションが果たすべき役割は何かを明確にする必要があります。

会社全体のビジョン・戦略に基づいて、部門ごとのミッション・KPI(成果指標)を明確化し、各業務にどのような人材が必要なのか、業務量や現在の人材配置がどうなっているのかなどを可視化することで、自社の課題が見えてきます。このような整理を通して、各業務にどのような人材を配置すべきかが明らかになります。

従業員の適性を正確に把握

適材適所を実現するためには、個々の社員が持つスキルや特性を正確に把握することが重要です。これができていないと、どんなに優れたポジション設計をしても、人と役割のミスマッチが起こりやすくなります。

この時、「この人は明るいから営業に向いてそう」というような、個人の主観を元に見極めるのではなく、適性検査などの客観的なデータを用いて、従業員の性格や能力を分析しましょう。各業務に向いている従業員をピックアップしていくことができます。

適正検査「テキカク」では、従業員の価値観や特性を可視化することができます。社員と部署の相性もわかるため、適材適所の配置換えにも役立つツールです。社内利用限定プランは無料で利用できますので、是非こちらからチェックしてみてください。

従業員本人へのヒアリング

スキルがマッチしていても、本人がその業務に興味を持てなかったり、キャリアプランと大きくズレていたりすると、モチベーションが続かずパフォーマンス低下につながるリスクがあります。

本人が自身で認識している「自分が得意だと感じること」「苦手だと感じること」を把握しましょう。自己認識と他者評価のギャップがある場合は、その差を認識してもらうことで、現実的なキャリア設計をサポートすることもできます。

また、従業員の成長や家庭の事情などのライフイベントによって希望が変わることもあるため、定期的にヒアリングを行う必要があります。本人の希望を把握しておくことで、不本意な異動を防げ、離職や生産性の低下を防ぐことができます。

継続的なフォローアップ

適材適所な人材配置を実現するには「一度配置すれば終わり」ではありません。

従業員の成長や事業環境の変化に応じて、適性もモチベーションも変わっていきます。また、「適した場所だと思ったが、実際に配属されてみたらあまり合っていなかった」というケースも起こり得ます。そのため、配置後も従業員を継続的にフォローアップし、定期的な見直しをしたり、適宜柔軟な対応を取る体制が必要です。

まとめ

ビジネスにおける適材適所とは、単なるスキルマッチではなく、個人の特性・志向性・組織のニーズを総合的に考慮して人材配置を行うことを意味します。

適材適所を実現することで、生産性の向上、離職率の低下、社員のモチベーションアップ といった効果が期待できます。成功には、適性検査の活用、目標設定、本人の志向確認、柔軟なフォローアップ という具体的なステップを踏むことが不可欠です。

「適材適所」を単なるスローガンにせず、組織文化として定着させることが、企業の成長を支える大きな力となるでしょう。

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