3年以内に新卒社員の30%が離職|今すぐできる予防策は?

離職する従業員の退職届けのイメージ写真

この十数年、新卒で採用した社員の3年以内の離職率は3割を越えています。
「仕事が合わない」「人間関係が良くない」「入社前とのギャップがある」などで、辞めていく新卒社員。コストをかけて採用・育成した社員が離職してしまうのは、会社にとって大きなダメージです。
この記事では、新卒社員の離職の背景を探り、今からできる離職の改善策を解説します。

離職率とは?

ある時点で働いていた従業員のうち、一定期間後に会社を辞めた人の割合です。数値が高いほど、従業員の定着率が低いと言えます。
一定期間は、いつからいつまでと具体的に法律などで定められていません。よって、直近1年間の離職率を知りたいなら1年、3年間の離職率を知りたいなら3年と、企業側が任意で設定します。
以下のように計算します。

一定期間に辞めた従業員の人数÷期間の最初の時点で在籍していた従業員の人数×100

新卒社員の離職率

最終学歴と業界によって離職率は異なります。それぞれ見てみましょう。

新卒社員の離職率は3割前後

厚生労働省の発表によると、2010年以降の新卒3年以内(高卒以上)の離職率は、軒並み3~4割前後で推移しています。

最終学歴別の孫卒3年以内の離職率のグラフ図

中卒と高卒以上の離職率の差が大きいと分かります。たとえば2018年の離職率は、高卒36.9%、短大卒41.4%、大卒31.2%に対し、中卒は55.0%と高くなっています。

業界によっても離職率は異なる

業界別の新卒3年以内の離職率のグラフ図

厚生労働省発表の2018年3月卒の新卒3年以内の業界別離職率によると、高卒・大卒共に最も離職率が高いのは、宿泊業・飲食サービス業です。
次に生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業と続きます。

一方で、離職率が低いのは、電気・ガス・熱供給・水道業、鉱業・採石業・砂利採取業、金融業・保険業です。大卒では、製造業の離職率が低い傾向です。

離職率の高い業界は、長時間労働や土日祝日の出勤など不規則な働き方になりがちです。にもかかわらず、給与水準が高いわけではありません。働き方に見合う給与が得られ、長く働ける企業への人材流出が多いと考えられます。

離職率の低い業界は、業務の機械化・自動化が進んでいます。工場・設備のシフトが遵守されるのも、働きやすい要因です。残業が少ない、ワークライフバランスをとりやすいと考えられます。
社会インフラ関わる仕事は景気動向に左右されづらく、一定のニーズがあるため、待遇が安定しています。働き方と待遇のバランスがとれているため、待遇面の不満は起こりにくいでしょう。

離職理由の上位は「労働条件・賃金がよくない」「人間関係」「キャリアアップのため」

独立行政法人労働政策研究・研究機構の調査によると、最も多い離職理由は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」。次いで「賃金の条件がよくない」「キャリアアップのため」です。

「すぐ辞めるのは我慢が足りないから」と非難する人もいますが、「この会社で働きたい」と思い選考を受けて入社していることを考えると、従業員だけの問題とは言えません。離職理由を見ると、企業側の労働環境にも問題があります。
特に多い離職理由についてご説明します。

労働条件が良くなかった

長時間労働、休みが少ないなどは、最も多い離職理由として挙げられます。ワークライフバランスを大切にしたい人が増えているので、会社都合の残業や休日出勤が多い、雇用契約書の労働条件と実態がかけ離れているなどは、会社へのネガティブな印象につながります。

プライベートの時間を確保できないがために、離職する人が多いことが調査から分かります。

待遇・昇給への不満

賃金への不満は、退職理由として労働条件に次いで多く挙げられます。
責任のある仕事を担っていた李、業績アップにつながる成果を出していたりすれば、従業員は賃金に反映されると期待されます。
にもかかわらず、給与がなかなか上がらないと、適性な評価によって今より高い給与を提示してくれる会社に転職する人がいてもおかしくないでしょう。

新卒の方だと、社会保険料の控除などを理解しておらず、手取りが少ないことを理由に離職を考えるケースもあります。給与から控除されるものや手取り額などを丁寧に説明することで、手取りが理由の離職を防ぐことができます。

人間関係が良くない

職場の人とうまくコミュニケーションをとれないと、悩みや不安・不満をどのように解消すれば良いか分からず、会社を辞めてつらい気持ちから逃れようとする人もいます。
上司・同僚に限らず、クライアントとの関係に悩むケースもあります。たとえば、セクハラやパワハラなどです。会社が適切に対処できないと、今の職場で働き続けるのは難しいと思い、不快にならずに働ける環境を求めて退職する方もいます。

キャリアアップのため

転職は珍しいことではなくなっています。
株式会社学情のインターネット調査によると、新卒で入社した会社で働きたい年数について最も多い回答は「定年まで」(38.3%)でした。しかし「3年未満」(5.6%)「3年以上5年未満」(18.6%)「5年以上10年未満」(22.2%)と、半数近くは10年未満で転職を考えていると分かります。
働く中でチャンスがあればやりたいことを問う質問に対しては、最も多かった回答は「副業」(60.0%)ですが、2番目は「転職」(35.1%)でした。

副業やリモートワークなど多様な働き方が広がっています。
今の会社の先輩の状況と自身を比べ、「このまま働き続けても理想のキャリアや働き方の実現は難しそう」と思うと、時代に合っていて、自分が成長できそうな会社で働く人が出てくると想像できます。

やりたい仕事と違った

社会人経験のない新卒社員の働く場合、自分のやりたい仕事や想像していた業務内容と実際にやることにギャップが生じることがあります。
必ずしもやりたいことが具体的にある人ばかりではありません。しかし、仕事を通じて「想像していた仕事と違う」「自分に向いていない」と感じると、自分の得意分野を活かせる企業で働くために離職する人は少なくありません。

会社説明会で聞いていた話やインターンシップでやっていた仕事と入社後の仕事のギャップが大きい、ジョブローテーションでさまざまな仕事を経験できないなどの体制は、離職のきっかけとなるため要注意です。

ノルマや責任が重すぎた

新卒社員は、ビジネスマナーやビジネスメールの書き方などをこれから身につける段階です。
にもかかわらず、厳しいノルマを課されたり責任の重い仕事を任されたりすると、ストレスや目標達成できない焦りや自信喪失などで、早期退職してしまいます。

新卒社員への期待が大きく、会社としては早く成長させてあげたいと思うもの。しかし、従業員がモチベーションを高く保ち、会社に貢献したいと思ってもらうには、少しずつでも目標達成し、できることが増えていると従業員自身が感じられることが大切です。

分からないことの多い新入社員がすぐに質問・相談できる環境が整えられていないと、新入社員が責任を負うことになるので、細やかにフォローできる体制ができているかも注意しましょう。

結婚・出産のため

独立行政法人労働政策研究・研究機構の調査によると、「結婚・出産」は女性で最も多い離職理由です。
結婚や出産は、ライフスタイルを大きく変えるので、これまでと同じ働き方が難しくなると想定されます。

  • 時短勤務やリモートワークに対応している
  • 育児休暇を取得しやすい
  • 復職後もこれまでの経験を活かした仕事ができるなどの環境になっている

これらが整っていなければ、結婚・出産をきっかけに、離職するリスクが高まります。

離職率に悩む上司のイメージ写真

新卒の離職率を改善するためにできること

採用から人材育成まで、時間も金銭面のコストもかかるので、短期間での離職は採用・人材育成にかけたコストが無駄になります。 新たな人材を確保できないと、業務に支障が出ます。離職率の高さを理由に応募を避けられるなど、人材確保が難しくなるデメリットもあります。
新卒3年以内の離職を減らすために、人事担当や新入社員の育成を担当する従業員が知っておくべきことを紹介します。

入社前と後のギャップをなくす

労働条件や給与が思っていたものと違う、やりたい仕事ができないなど、入社前後の大きな差は、離職のきっかけになります。ギャップを埋めるポイントは、ミスマッチをなくすこと。たとえば、説明会や面接で会社の実態をできる限り伝えるなどです。 繫忙期など残業を避けられない事情はあるでしょう。新しい会社だと育児休暇の実績がなく、育児休暇を取得した従業員をどのようにフォローするかなどが明確になっていない企業も。

応募者が集まらないことを懸念し、ネガティブな情報を伝えることに抵抗があったとしても、その背景を丁寧に伝えることで、業務の実情や大変な面を理解し、心構えをした上で入社できます。
たとえば、繁忙期に残業が増えるのであれば、残業時間の目安や、残業手当ての制度まで伝えることをおすすめします。 基本給やボーナスはいつ・何を評価して決めるかなども、丁寧に説明しましょう。
面接でどのような仕事をやりたいか聞いたり、適性検査を参考に配属を決めたりすることもおすすめです。

労働環境を改善する

ワークライフバランスをとりやすい会社は、離職率の低い傾向です。
離職率の低い会社を参考に、残業や休日出勤を減らす仕組みづくりを始めましょう。自動化できるな作業の自動化、人員配置を見直して従業員一人ひとりが得意な仕事ができるようにする、人材を増やすなどを検討してみてください。 産休・育休をとりやすい、時短勤務やリモートワークへの対応などは、結婚・出産による離職防止を期待できます。

ただし、制度を利用しない従業員の中には、業務負担が増えることを心配し、必ずしも歓迎されるとは限りません。従業員間の理解を促し、特定の従業員にしわ寄せが来ないための運用が求められます。 <

成長と評価の機会をつくる

できることが増えるなど仕事を通じて成長を実感できると、モチベーションアップにつながります。仕事で高いモチベーションを持てるとやりがいを感じ、仕事にも会社にも愛着がわくでしょう。
しかし、自分自身で成長を感じるのは難しいもの。そこで、上司からの評価が大切になります。1on1ミーティングなど部下に評価を伝える時間を設けることをおすすめします。

相談できるメンターをアサインする

メンターとは、社員1人に対して割り当てられる入社年の近い相談役の先輩社員です。
新入社員は不安なことが多いので、仕事や人間関係などの悩みを相談できる年齢の近い先輩がいれば、不安が和らぎ、離職のきっかけをなくすことにつながると期待できます。 メンターは、コミュニケーション能力が高く、人の話を聞くのが得意な方が向いています。成長につながるアドバイスをしたりコミュニケーションをとれるよう、マネジメントに求められるスキルが身に付く研修の活用もおすすめです。

「歓迎されている」と実感できる場をつくる

会社に馴染めないと居心地が悪く、もっと環境の良い会社で働きたいと思われてしまいます。組織の一員になれたと感じてもらうのに、コミュニケーションのきっかけにもなる歓迎会などがおすすめです。 新型コロナをきっかけに、リモートワークに切り替えた会社は多くあります。オンライン飲み会やランチなど、対面以外でも会社の人たちとのつながりを感じる機会はつくれます。会社に温かく迎えてもらえたと感じると、「この会社で頑張りたい」という気持ちになるでしょう。コミュニケーションが活発な良い雰囲気の職場なら、従業員の定着も期待できます。

まとめ

離職に多い理由は、労働条件や給与の不満、人間関係や業務にまつわる悩みが挙げられます。忙しい割に給与が安いなど業界の問題の場合もありますが、社会人経験の浅い新卒3年以内の場合だと、理想と現実の違いや職場の居心地の悪さに悩み、離職するケースが少なくありません。
会社の実情を丁寧に伝え、いつでも相談できたり納得のいく評価をもらえたりするなど、安心して働ける環境づくりで、早期離職を防ぎましょう。

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