パフォーマンスマネジメントは、変革のスピードが著しい現代に適しているとされる人材マネジメント方法のひとつです。従来型の方法と違い、従業員の主体性を重視する点が大きな特徴となります。パフォーマンスマネジメントを実施することにより、どういった変化が現れるのでしょうか。今回は、パフォーマンスマネジメントの基礎知識や実施の流れ、導入前に覚えておきたい注意点など、さまざまな情報をご紹介します。
パフォーマンスマネジメントの基礎知識
パフォーマンスマネジメントは、どのような内容のマネジメント方法なのでしょうか。まずは、パフォーマンスマネジメントの意味や導入のメリット、おすすめできる理由などをご紹介します。
パフォーマンスマネジメントとは?
パフォーマンスマネジメントは、近年、欧米のグローバル企業に広がりつつあり、注目を集めるマネジメント手法です。年次での評価を行わず、上司と部下の対話を重視する方針が特徴とされます。上司は適切なフィードバックを行い、メンバーの成長を引き出し、成果につなげることが求められます。実施の際は、メンバーのパフォーマンスを最大限引き出し、目標達成を目指す意識が大切です。
パフォーマンスマネジメントを導入するメリット
パフォーマンスマネジメントを実施することで、目標のためにサポートを受けられ、適切な評価を与えられる職場環境が実現します。それにより、従業員が主体的に挑戦できるようになる点が大きなメリットです。従業員一人ひとりが自分の役割を把握し、主体性を持った仕事をすることで、組織全体のパフォーマンスも向上。働きがいのある職場の構築につながります。上司と部下の信頼関係を築きやすくなるほか、従業員エンゲージメントの向上も図れるでしょう。
また、スピード感を持った対応ができる点も大きな特徴のひとつです。日本の多くの企業が導入している人事評価制度である「目標管理制度(MBO)」は、半期や1年ごとに目標設定⇒行動⇒評価を行います。従来はこの方法で成果を上げることができましたが、世の中が目まぐるしく変化する現在では、スピード感を持った対応が難しい場合も。部下へのフィードバックは時間が経ってから行うこととなるため、不明瞭な評価となってしまうケースも見られます。
加えて、MBOの場合は目標の設定や評価など、一連の流れをこなすのに時間がかかります。特に社員数の多い企業では管理職側の負担が大きくなるのも難点です。長い時間をかけて目標設定やフィードバックなどを行っても、思っているほど高い効果が得られないことも。こういった問題点を回避するためにも、パフォーマンスマネジメントの導入が適しているといえます。
パフォーマンスマネジメントの主な流れ
パフォーマンスマネジメントでは、明確な目標設定からスタートし、フィードバックを繰り返しながら達成のために動いていきます。こちらでは、パフォーマンスマネジメントの主な流れを解説します。
目標を設定する
パフォーマンスマネジメントを実施する際は、最初に目標設定を行います。会社全体の方針をもとに、チームや個人の目指すべき目標を検討しましょう。また、評価の対象や基準も決めておきます。
コーチングを行う
上司はコーチングの技法を用いながら、メンバーが目標を達成できるように取り組みます。コーチングとは、コミュニケーション方法の一種です。うまくコーチングすることでメンバーのモチベーションを高めて主体的な行動を促し、目標達成へ導くことができます。
コーチングの頻度は特に決まっていません。1週間や1カ月に1回といった短い頻度で実施する場合もあります。進捗に応じてリアルタイムで面談の機会を設け、コミュニケーションを取りましょう。
フィードバックを行う
メンバーが目標達成のためにアクションを起こしたら、フィードバックを行います。主観や偏見の混じった意見ではなく、数値やデータなどの客観的な証拠に基づいたフィードバックを実施しましょう。その際、具体的にデータ化された課題があると、改善策を考案しやすくなります。
また、否定的な評価ではなく、目標達成のためのアイデアを出し合うという意識も大切です。必要であれば目標設定を変更する柔軟性も持ちましょう。
パフォーマンスマネジメントを導入する際のポイント
パフォーマンスマネジメントの効果を十分に発揮するためには、目標設定からフィードバックに至るまで、各ポイントに気をつけることが求められます。本格的な導入を始める前に、以下の点をチェックしておきましょう。
会社の考えやスタンスを一貫させる
パフォーマンスマネジメントでは、メンバー個人の成長にフォーカスします。ただし、従業員が会社の持つビジョンから逸脱した目標を掲げてしまうと、組織の方向性がぶれてしまうことになるでしょう。会社や人事の考え、スタンスには一貫性を持たせ、個人の目標に反映させることが大切です。
パフォーマンスマネジメント導入の際は、会社としての目的や、目指す姿を具体的に決めておきましょう。従業員の理解を得たうえでマネジメントを進めることが、結果として組織力の強化につながるはずです。
管理職者の意識改革を行う
チームメンバーが目的に向かって動くには、マネージャー側のサポートが欠かせません。パフォーマンスマネジメントを円滑に行うには、管理職者の意識も重要なポイントとなります。特に、部下とのコミュニケーションについては十分に配慮する必要があるでしょう。管理職者も積極的にコミュニケーション能力向上に努めることが大切です。必要であれば、管理職向けの研修を実施し、意識改革を進めましょう。
コーチングのスキルを身に付ける
コーチングの場は、上司が評価者となって一方的に話をするのではなく、相互でコミュニケーションを取ることが求められます。対象者に質問を投げかけ、メンバー自らが解決策を考案できるように話を進めていきます。そうすることで従業員それぞれに当事者意識が生まれ、主体的に動きやすくなっていくはずです。
コーチングの能力は、すぐに身に着けられるとは限りません。これまでコーチングを実践する機会がなく、従来型の人事評価システムに慣れている管理職者には、さらに難しいものとなるでしょう。あらかじめマニュアルを作成しておく、コーチング研修を行うなどの方法で管理職者をフォローすることもおすすめです。
フィードバックを大切にする
パフォーマンスマネジメントでは、個々をランク付けしていくようなやり方ではなく、それぞれのアクションを評価していきます。そのために重要なのがフィードバックです。モチベーションを低下させてしまうような内容は避け、一人ひとりの目標設定に見合ったアドバイスを行います。
フィードバックの際は、目標を達成したかどうかだけではなく、プロセスについても評価していきます。目標を実現するために、次からはどういった行動を起こせば良いかを考えていきましょう。
また、従業員が目標達成しやすいビジネス環境を提供することも大切です。定期的に面談の機会を設定するのはもちろん、従業員が気軽にフィードバックを求めに来られるような態勢を整えておきましょう。そのためには、日頃から信頼関係を構築していく努力が欠かせません。リーダー側から部下に対して、サポートを行う旨を伝えていきましょう。
パフォーマンスマネジメントに役立つツール
パフォーマンスマネジメントを効率的に行うためには、各工程を自動化できるツールの導入がおすすめです。最後に、パフォーマンスマネジメントにおすすめのツールをご紹介します。
目標管理ツール
目標管理ツールは、目標の設定や管理を効率化できるツールのことです。ツールの導入によって設定した目標を意識する機会が増え、モチベーションを維持しやすくなります。目標達成に向けたアクションや進捗を可視化できるツールもあり、KPIやKGIなどの具体的な数値で定量的に状況を把握することも可能です。
また、ツールを活用することにより、マネジメント側の負担を減らすこともできます。クラウド型のツールであればリアルタイムでの更新も可能で、データ共有も簡単に行えるようになります。
1on1支援ツール
1on1の実施に際しては、事前にある程度の調査が必要です。業務に追われている管理職者の場合、準備に時間を取れないこともあるでしょう。適切なパフォーマンスマネジメントのため、1on1ミーティングの管理や運用を効率化できるツールを使うのもおすすめです。ツールを利用すれば、ミーティングの管理、実施内容の振り返りや共有などがより簡単に行えるようになります。
ツールによって、スケジュールを調整する、事前に会話のテーマを設定する、実施した会話の内容を記録する、次のアクションを決めるなど、多彩な機能があります。自社に必要な機能を備えたツールを探しましょう。
個人・組織の現状把握に役立つツール「ラフールサーベイ」
パフォーマンスマネジメントに役立つサービスをお探しなら、ぜひラフールサーベイをご検討ください。ラフールサーベイは、調査・測定や分析、フィードバック機能を搭載したサーベイツールです。組織の持つ幅広い課題を可視化し、効果的なアプローチ方法を提案します。組織と従業員、両者の視点から課題解決のための改善案を提示することが可能です。
ラフールサーベイでは、ES調査、エンゲージメント調査、メンタル/フィジカル、ストレスチェック、パーソナルコンディション調査など、さまざまな調査項目を用意しています。オリジナルの調査項目により、多角的な視点からの結果分析が行えます。調査後は自動でフィードバックコメントを表示するため、マネジメント側の工数を減らせる点もメリットです。具体的なセルフケアのアドバイスも行い、従業員それぞれの行動変容を促せます。
ラフールサーベイを活用すれば、課題特定や具体策の提示、アフターフォローまでスムーズに行えます。ご希望の場合は専門家によるフィードバックや1on1ミーティングサービスなど、豊富なオプションもご利用可能です。興味のある事業者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
人事制度を見直してパフォーマンスマネジメントを取り入れよう
従来の人事制度では限界を感じている場合、パフォーマンスマネジメントを導入して人材育成に取り組むことがおすすめです。一人ひとりにフォーカスしたマネジメントをすることで従業員が主体性を持って働けるようになり、エンゲージメント向上や生産性向上などの効果を得られることがあります。導入に際しては会社全体で取り組む意識を持ち、管理職側への研修やセミナーなども行うことが大切です。便利なツールやシステムなども活用しながら、組織変革を進めましょう。