認識が広まりつつある「ウェルビーイング」とは?できることから始めてみませんか?

認識が広まりつつある「ウェルビーイング」とは?できることから始めてみませんか?

1. ウェルビーイングとは?WHOの定義と概念をわかりやすく解説

まずは、ウェルビーイングという言葉の本来の意味や定義、類義語との違いについて解説します。

ウェルビーイングの定義とウェルフェアとの違い

ウェルビーイング(Well-being)という言葉に注目が集まるようになった契機は、1946年の世界保健機関(WHO)憲章草案における「健康の定義」です。ここで健康(Health)は次のように定義されています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態(well-being)にあることをいいます。」

出典:日本WHO協会 世界保健機関(WHO)憲章とは

つまり、単に病気でない状態を超えて、心も体も、そして人間関係や社会的な環境も含めて「良好で満たされている状態」であることを指します。

デジタル大辞泉によれば、ウェルウェルビーイングの定義は以下の通りです。

  • 1 幸福。安寧。
  • 2 身体的・精神的・社会的に良好な状態。特に、社会福祉が充実し、満足できる生活状態にあることをいう。

一方、よく似た言葉に「ウェルフェア(welfare)」があります。

同じくデジタル大辞泉において、ウェルフェアは「福祉事業」「福利」と定義されており、企業においては「福利厚生」を指すことが一般的です。

両者の違いは、ウェルビーイングが目指すべき「目的、状態」であるのに対し、ウェルフェアはそれを実現するための「手段」と言えます。

福利厚生(ウェルフェア)を充実させることで、従業員のウェルビーイングを高めることができる、と捉えると分かりやすいでしょう。

なぜ今ウェルビーイングが注目されるのか

近年、ビジネスの現場でウェルビーイングが急速に注目されるようになった背景には、以下の4つの要因があります。

1. 世界的な「幸福度」への意識の高まり

「世界幸福度調査(World Happiness Report)」において、日本の幸福度ランキングは2025年版では55位にとどまっています。物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさを求める気運が高まる中、企業にも従業員の幸福を追求する姿勢が求められています。

参考:World Happiness Report 2025

2. 価値観の多様化とイノベーションの必要性

市場の変化が激しい現代において、企業が生き残るためにはイノベーションが不可欠です。異なるバックグラウンドを持つ人材が、それぞれの個性を活かしながら健康的に働く(=ウェルビーイングな状態である)ことは、創造性を高め、新しいアイデアを生み出す土壌となります。

3. 労働力不足と人材獲得競争の激化

少子高齢化が進む日本において、労働力の確保は深刻な課題です。「給与が高い」だけでなく、「心身ともに健康に、自分らしく働ける会社」であることが、優秀な人材を採用し、定着させるための重要な条件となっています。

4. 政府による推進と「健康経営」の広がり

日本政府は「成長戦略実行計画」において「国民がWell-beingを実感できる社会の実現」を掲げています。また、労働安全衛生法などの法整備や、経済産業省による「健康経営銘柄」の選定など、国を挙げて従業員の健康と幸福を重視する動きが加速しています。

出典:内閣官房 成長戦略実行計画(PDF)

参考:経済産業省 健康経営銘柄

ウェルビーイングを構成する主要な要素

ウェルビーイングを具体的に理解するための指標として、代表的な2つのモデルを紹介します。

【1】PERMA(パーマ)モデル

ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマン博士が提唱した、幸福感に関連する5つの領域です

  • Positive Emotion(ポジティブ感情):嬉しい、楽しい、感動するなどの前向きな感情。
  • Engagement(何かへの没頭):時間を忘れて何かに打ち込んでいる状態。
  • Relationship(良好な人間関係):他者との協力や意思疎通ができている状態。
  • Meaning and Purpose(人生の意義や目的):社会貢献や他利的な行動を通して、人生の意義を感じられている状態。
  • Achievement/ Accomplish(達成):何か目標を達成している状態。

【2】ギャラップ社の5つの要素

アメリカのギャラップ社が定義した、ウェルビーイングを構成する5つの要素です。

  • Career Well-being:日々の時間をどのように過ごすか
  • Social Well-being:どれだけ人と良い関係を築けるか
  • Financial Well-being:経済的生活を効果的に管理しているか
  • Physical Well-being:心身ともに健康であるか
  • Community Well-being:地域社会とのつながっているか

これらすべての要素がバランスよく満たされている状態が、真のウェルビーイングと言えます。

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2. 企業がウェルビーイングに取り組む3つの大きなメリット

ウェルビーイング経営の実践は、従業員だけでなく企業経営にも大きなリターンをもたらします。

従業員のエンゲージメント向上と離職率の低下

ウェルビーイングが高まると、従業員は「この会社で働くこと」に意義や価値を感じるようになります。これはエンゲージメント(会社への愛着心・貢献意欲)の向上に直結します。

経済産業省の調査でも、健康経営度の高い企業は離職率が低い傾向にあるという結果が出ています。従業員が心身ともに満たされていれば、優秀な人材の流出を防ぎ、採用コストの削減にもつながります。

出典:経済産業省 これからの健康経営について(PDF)

生産性・パフォーマンスの最大化と組織の健全化

心身が健康で幸福度の高い社員は、創造性や労働生産性が高いことが多くの研究で示されています。

逆に、ストレス過多や疲労の蓄積は、出勤していてもパフォーマンスが上がらない状態を引き起こします。ウェルビーイングへの取り組みは、こうした見えない損失を防ぎ、組織全体のパフォーマンスを最大化させます。

企業価値やブランドイメージの向上

SDGsの目標3に「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-being)」が掲げられている通り、ウェルビーイングへの取り組みは企業の社会的責任(CSR)としても評価されます。

「社員を大切にする会社」というブランドイメージは、投資家からの評価(ESG投資)を高めるだけでなく、顧客や求職者からの信頼獲得にも寄与します。

出典:日本ユニセフ協会 “だれもが健康で幸せな生活を送れるようにしよう”

3. ウェルビーイング実現のための具体的な取り組み8選

では、企業は具体的に何から始めればよいのでしょうか。効果的な8つの取り組みを紹介します。

(1) 組織の健康診断|現状を把握するためのサーベイ導入

まずは自社の現状を知ることがスタートです。ストレスチェックに加え、エンゲージメントサーベイやパルスサーベイを導入し、従業員の幸福度や不満の所在をデータとして可視化しましょう。

(2) 労働環境の見直しと多様な働き方(勤務形態)の推進

長時間労働の是正はもちろん、リモートワーク、フレックスタイム制、短時間勤務制度など、個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を導入します。ワークライフバランスの充実はウェルビーイングの基礎です。

(3) 従業員の心身の健康増進とメンタルヘルス対策の強化

健康診断の受診推奨だけでなく、社内での運動イベント開催、ヘルシーな食事補助、産業医やカウンセラーとの相談窓口設置など、フィジカルとメンタル両面の健康をサポートします。

(4) コミュニケーション活性化と人間関係の改善

「孤独」はウェルビーイングの敵です。1on1ミーティングの実施、社内サークル活動の支援、フリーアドレス制の導入など、縦・横・斜めのコミュニケーションが自然と生まれる仕掛けを作ります。

(5) 公平な評価制度と報酬制度の導入

納得感のある評価制度は不可欠です。また、報酬制度の導入もウェルビーイングの向上が期待できます。例えば、従業員同士で感謝のメッセージと少額の報酬を送り合う「ピアボーナス」の導入は、社内のポジティブな感情を高め、良好な人間関係にもつながるでしょう。

(6) 企業理念やビジョンの社内共有

仕事の意義を感じるためには、企業の理念への共感が欠かせません。ビジョンを浸透させ、「自分の仕事が社会の役に立っている」と実感できる機会を設けましょう。

労働者の視点から見れば、パーパスやビジョンを事前に確認しておき、共感できる企業を選ぶこともとても重要です。給与や業務内容だけでなく、企業の精神的姿勢も会社を選ぶ際に確認しておきましょう。

(7)女性の健康・キャリア支援など多様性への配慮

女性特有の健康課題(フェムテックの活用など)への支援や、育児・介護と仕事の両立支援など、多様な人材がライフイベントを経ても活躍し続けられる環境を整備します。

(8) 上司のマネジメントスキル育成

現場のウェルビーイングは、直属の上司に大きく左右されます。管理職向けに、心理的安全性の作り方やコーチング、メンタルヘルスラインケアなどの研修を行い、マネジメントの質を向上させることが重要です。

4. ウェルビーイングに取り組む企業の成功事例5選

実際にウェルビーイング経営を推進している企業の事例を紹介します。

1. 楽天グループ株式会社(ウェルビーイング・ファースト)

楽天では”Well-being first”を提唱し、「個人・組織・社会」の3つの階層でのウェルビーイング向上を目指しています。ウェルビーイングサーベイを定期的に実施して現状把握を行いながら、従業員の心身の健康の向上のためのセミナーやイベントを開催しています。

2. 積水ハウス株式会社(男性育休100%取得)

「わが家」を世界一幸せな場所にするというビジョンのもと、男性社員の育児休業取得率100%を達成しています。制度があるだけでなく「取得するのが当たり前」という風土を醸成し、従業員の家族も含めたウェルビーイングを実現しています。

3. 株式会社丸井グループ(手挙げの文化)

ファッションビルのマルイ等の事業を傘下に収める丸井グループでは、社員が自ら手を挙げて公募制プロジェクトに参加する「手挙げの文化」を醸成しています。対話を重視した組織づくりを行うことで、自律的なキャリア形成とエンゲージメントの向上を実現しています。

4. 味の素株式会社(健康管理サイトと社食)

「味の素グループで働いていると、自然と健康になる」というビジョンを目指し、従業員一人一人に「My Health」という専用のウェブサイトを用意しています。自分の健康状態や生活習慣データを、就労データと合わせて一元的に確認できるようになっています。また社員食堂では、「MyHealthランチ」という「たんぱく質20g以上、野菜120g以上、食塩3g以下」を基準にした献立を提供しています。

5. 株式会社PHONE APPLI(自然を感じるオフィス)

「CaMP(キャンプ)」と呼ばれるオフィス環境を構築。テントや観葉植物があり、リラックスして働ける空間を提供しています。自然の中で働くような環境がコミュニケーションを活性化させ、社員の創造性と幸福度を高めています。

5. ウェルビーイングの「可視化」と改善をサポートするツール「ラフールサーベイ」

あの社員、最近元気がない気がする…」「コミュニケーションをもっと取った方がいいのかな?」とお悩みの管理職や経営者の方も多いのではないでしょうか。

組織改善ツール「ラフールサーベイ」は、1億2000万以上のデータを基に、従来のサーベイでは見えにくかった「なぜエンゲージメントが低いのか?」「高ストレス者のストレス因子は何?」といった低スコアの要因を可視化することができます。メンタル・フィジカルに関するデータはもちろん、eNPSや企業リスクなど組織状態を可視化する上で必要な設問を網羅しています。そのため、今まで気づかなかった組織の強みや、見えていなかった課題も見つかり、「次にやるべき人事施策」を明確にすることができます。

組織改善ツール「ラフールサーベイ」について、詳しくは以下からWebサイトをご覧ください。

組織と個人の可視化と行動変容をうながす 組織改善ツール「ラフールサーベイ」

まとめ

ウェルビーイングとは、従業員が心身ともに健康で、社会的にも満たされ、やりがいを持って働ける状態のことです。

これは単なる福利厚生の話ではなく、企業の生産性向上、人材確保、そして持続的な成長を実現するための重要な経営戦略です。

まずは自社の現状を把握し、小さな取り組みからでも「社員の幸せ」を考える施策を始めてみてください。従業員のウェルビーイングを高めることは、結果として企業の未来を切り拓く大きな力となるはずです。

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