仕事やプライベートなどで何かしらの悩み事があり、誰かに相談することができずに困っている時は、”カウンセリング”を活用してみるのも一つの選択肢です。今回は、どのような人にカウンセリングが必要で、どういった流れで進行していくのか、カウンセリングによって得られる効果にはどのようなものがあるのかを解説していきます。
カウンセリングとは
「心理相談」ともいわれ、専門的知識や分析力、話術をもつカウンセラーがクライエントと対話し、クライエントが抱える悩み事を一緒に解決できるよう関わっていきます。
文部科学省では、下記のように定義されています。
カウンセリングは、人間の心理や発達の理論に基づく対人援助活動であり、個人の成長を促進し対人関係の改善や社会的適応性を向上させることから、様々な領域の対人援助サービスの専門家がそれぞれの場面で活用している。学校教育においても、カウンセリング心理学に基づくアプローチが児童生徒の人格形成や様々な問題解決に有効であることから、教員を中心としたスクールカウンセリング活動が実施されている。
第3章 スクールカウンセリング
カウンセリングでは、カウンセラーが解決策を示していくのではなく、クライエントが問題を打ち明け相談することで自分自身がどういう状態であるかを確認し、問題に対して解決への糸口を見つけるための手助けを行います。
身近なものでは、美容相談や法律相談などの幅広い分野でおこなわれるカウンセリングや、心理療法や精神療法など治療を目的におこなう心理カウンセリングがあり、さまざまなシーンでカウンセリングを受けられます。
カウンセリングの目的
カウンセリングではクライエントが自分自身のことや今抱えている問題、自分の心の状態を話していくことで、問題点を整理でき、新しい自分に出会えることがあります。
カウンセリングによって自信がない自分をとりはらうことができたり、固執していた考えを改めることができたり、クライエントの考え方やとらえ方の変化による問題の解決がカウンセリングの目的となります。
ほとんどの場合、カウンセラーがクライエントの話している最中に割って入ったり、考え方を否定することなく傾聴し共感していき、相談者の悩みを受け止めていきます。
相談者はカウンセリングを通して心が軽くなったり、気持ちが前向きになり現状よりよくなろうとする気持ちがわいていきます。
カウンセラーの資格について
カウンセラーの資格は国家資格である公認心理師をはじめ、そのほかにも民間資格が存在します。最近では企業内外でのメンタルのケアが重要視されており、それに伴って多くのカウンセラーの資格が存在します。カウンセラーの資格の取得方法は、大学や大学院での修了が必須のものから通信講座のみで取得できるものまでさまざまあり、難易度も異なっています。心理系資格の種類には、公認心理師(国家資格)や臨床心理士(日本臨床心理士資格認定協会)などが挙げられます。
セラピーとの違い
セラピーはより早く、問題を改善するためにセラピストがクライエントに対して治療法や解決策などを提示することで、問題を解決していくのでセラピーは受動的であるといわれています。カウンセリングはカウンセラーが問題の答えを教えるのではなく、相談者が自分自身で解決策を見つけ出すようにサポートしていくので能動的とされています。このようにカウンセリングとセラピーは似ているようで全く異なるものなのです。もしあなたが悩みを打ち明けようと思っているのであれば、この2つを正しく理解したうえでどちらを利用するか決めることをおすすめします。
カウンセリングの流れ
カウンセリングでは、初期段階・中期段階・後期段階と3つの段階を踏んでいき、相談者の悩みを聞いていきます。
- 初期段階
まずは、相談者が落ち着いて悩み事を打ち明けられるように、カウンセラーは相談者との間にある心の壁を取り除いていきます。
- 中期段階
相談者がカウンセラーと打ち解けてきたら、問題ごとにより深く内容を掘り下げていきます。相談している内容だけはなく、相談者の人生背景や人間性も注意深く観察し、どういう問題があるのかを専門的に分析してきます。相談者にどう変わりたいのか、変わる意思はあるのかなどを話の中から洞察することで問題解決の糸口を探ります。対話を重ねていき、相談者の悩みをどのように解決していけるのかを一緒になって考えていきます。
- 後期段階
最終的には相談者が自信をもって日常へと戻っていくことが理想的です。カウンセリングを終え、相談者がカウンセラーとの別れで不安にならないように関わっていきます。
カウンセリングが必要な人
医療的なカウンセリングでは医師と本人による同意が必要となります。
カウンセリングは、本人が自発的に取り組むことが必要とされています。たとえ医師が治療を行う上でで必要だと判断したとしても、本人に受ける意思や受けたいと思う気持ちがなければカウンセリングを行うことはありません。また、カウンセリングは根気強く継続的に行うケースもあるため、本人がカウンセリングを受けたいと希望したとしても、対話が負担となりカウンセリングを受けることが難しいと医師が判断した場合には行うことはありません。
このように医師と本人による同意が得られなければ、いくらカウンセリングを行ったとしても効果は期待できないでしょう。
以下、治療を行っていく上でカウンセリングが必要であると判断されやすいケースです。
- 薬物療法や休養による治療だけでは改善が期待できないとき
精神的な病気による心身の不調では、薬だけの治療では根本的な解決にはなりません。その人の人間性や考え方、病気になった経緯などがあるため、一度薬で症状が良くなってもまた再発してしまう可能性があります。本人が自分の性格や新しい考え方を得るきっかけとして、カウンセリングを行うことで根本的に治療することが期待できるでしょう。
- 継続的にカウンセリングを行ったとしても問題ないと判断されたとき
カウンセリングは何度も繰り返し行うことが多く、根気と強い意志が必要となります。また、保険が効かず、自由診療(全額自己負担)となるケースもあります。相談者の精神的な負担や経済な負担を考慮しながらカウンセリングを行う必要があります。
カウンセリングは治療として行われるもののみではない
カウンセリングは必ずしも治療を目的としてのみ行われるものだけではなく、日常で抱える誰にも話せないような心の悩みを打ち明けられる場所としても活用できます。1回だけのカウンセリングで終わるケースもあれば、必要に応じて複数回の対話を行うこともあります。
そのため、年単位で時間をかけて対話を重ねていく可能性もあります。カウンセリングを受け続ける忍耐力や意志の強さ、経済面など相談者自身に負担がかかることもあるので、継続的にカウンセリングを行っていくには、相談者の意思決定を尊重していく必要があります。
もし相談者がカウンセリングを終わりにしたいと訴えれば、その時点で終了させることも可能です。
カウンセリングの効果
カウンセリングによって期待できる効果について解説していきます。
心が軽くなる
声に出して悩みを第三者に打ち明けることで、重い気持ちがとりはらえてスッキリとした感情になります。カウンセラーに自分の状況や悩みを共感してもらえることで自信が沸き、前に進もうという気持ちが芽生えます。
自分が陥っている状態について理解できる
自分がどういう状況で悩んでいるのかを、しっかりと理解できていないこともあります。カウンセラーと対話をすることで、自分の状況がどういうのものかをしっかりと整理できます。
人間関係がスムーズになる
問題が相談者自身だけではなく、相談者を取り巻く周囲の人間にも関係しているケースがあるため、カウンセラーはクライエントとクライエントの周りにいる人についても分析しています。周囲の人間関係などの状況も自分の中で整理できるので、その後の人間関係がスムーズになっていきます。
新しい自分に出会える
カウンセラーは話を聞くだけはなく、時には専門的な観点から分析し、客観的に意見してくれることもあります。そのため相談者は主観的な考えだけではなく、物事を違う方向から見れ、新しい発見を得られます。この気づきから問題解決の糸口が見つかる可能性もあるため、新しい自分に出会うことはとても大切です。
カウンセリングはどこで受けられる?
実際にカウンセリングを受けることができる会場やどのようにして行うかについて解説します。
カウンセリングを行う場所
実際に受けてみたいと思っていたとしても、どこに行っていいか分からない人も多いでしょう。
成人の方が実際にカウンセリング受けられるところは次のような施設があります。
- 医療機関
- 企業に設置されている「カウンセリング室」
- 保健所または精神保健福祉センターにある「精神衛生相談室」
- 民間の企業や法人団体が提供するカウンセリングサービス
- ハローワークや障害者職業センター
カウンセリングの方法
カウンセリングを行う時には次のような方法でクライエントと対話をしていきます。
- 対面カウンセリング
実際にカウンセラーと会って行うカウンセリングです。1対1でのカウンセリングのため誰かに話を聞かれる心配がないです。対面による緊張感がうまれてしまうかもしれませんが、会話の中での身振り手振りや表情などあらゆる情報がカウンセラーに見えるので、自分の話したいことが伝わりやすくなります。
- グループカウンセリング
複数の相談者が集まって行うカウンセリングです。相談者は他の相談者とも関わることとなり、グループの中で自分や他人を理解したり行動を変えることを目的としています。同じような悩みを持つ人と話すことで共感を得られたり、とらえ方や見え方の違いが感じられたりなど、自分だけではない考え方を養えます。
- 電話カウンセリング
カウンセリングを受けたいと思っていても、外へ出ることに抵抗があったり、行く場所がわからない場合は電話によってカウンセラーと話せる方法もあるので活用してみるとよいでしょう。自宅から出ずにカウンセリングを受けられるため、落ち着いた環境でカウンセリングに望めます。
- メールカウンセリング
カウンセラーとメールのやり取りでカウンセリングを行う形式です。話すことに緊張してしまったり、直接話すことに抵抗がある人にはおすすめです。自分の好きなタイミングでカウンセラーへ思いを伝えられるので、日中仕事で忙しい人などは活用してみてもよいでしょう。
- インターネットによるカウンセリング
こちらもメールカウンセリングと同様に自分の好きなタイミングでカウンセリングを受けられます。最近ではオンライン電話やチャット形式なども普及しており、外へ足を運ぶことなく気軽にカウンセリングが受けられます。
カウンセリングの注意点
カウンセリングでは恋人や友人関係ではない、第三者だからこそ本音で話せますが、相談者が不利益を被らないようにカウンセラーに対して厳しい規則が設けられています。
以下がカウンセラーの規則の一例です。
- カウンセラーは、相談者に自分のプライベートなことを話したり、カウンセリング以外の個人的な関係(友人関係・恋人関係など)を持つことを禁止されている
- カウンセラーには厳格な守秘義務があり、たとえクライエントと血縁関係である家族であったとしてもカウンセリングで話した内容を公表してはならない
またカウンセラーが守るべき倫理として以下が挙げられます。
- 悩みを相談したいと思っているクライエントを一人の人間として尊し、冷たくあしらうようなことはせず、親身なって傾聴を心がけること相談者の利益を守るために守秘義務は必ず守ること。
徹底した規則や倫理概念をもてなければ、相談者も安心して悩みを打ち明けられないでしょう。
カウンセリングの料金
カウンセリングの費用が自由診療になるかについてはどのような場所でうけるかによって決まります。また、医療機関で治療に必要とされた場合でも医師以外のカウンセリングは保険適用外となります。
1回当たりの相場は1回(60分)あたり6,000~10,000円ほどです。相談内容やクライエントの状況によっては継続的に行う必要もありますので、経済的な負担は軽視できません。どのようなところへ行くかによって料金設定は異なりますが、無料でカウンセリング受けれるよう会場を設けているところもあるので、事前に確認しておくと安心して受けられるでしょう。
カウンセリングの事例
【相談内容】
寮を出たい。全然勉強ができない。このまま,寮にいるとストレスのため眠れないし食事もとれない。Nはオセアニア出身(英語圏)の19歳の白人の女子学生である。日本語運用能力は高い。教育的な家庭環境で育った。
【経過内容とその結果】
<第1期:緊急相談期>
自主来室し、カウンセラーを見るなり、無言のまま涙をあふれさせた。“もう、我慢できない。寮を出たい”と泣いて訴えた。
カウンセラーは本人の様子や発言から、緊急相談の対応として機関の教育・事務関係者への連絡・会議での善後策の検討など関係者との調整面接を実施し、Nには機構・組織・契約などの社会的ルールに関して出身国と日本との対比を含め話合いを進めていった。
Nの心理的な問題をより正確に把握するためと、それを関係者に説明できるものとしてNの留学生活のイメージの構造を測るPAC分析をおこない、それをもとに話し合うことが有効であると考えられた。
第1回目のPAC分析をおこなった。この結果の解釈をカウンセラーと共同しておこなうことで、ずいぶん落ち着きを取り戻し、文化的差異への気づきをみせはじめ、同時に子どものころから抱いていた身体的コンプレックスの点についても自分から話せた。
<第2期:発達援助期>
自分のアパートに住み始めて1週間がすぎたころに、Nは相談室に晴れやかな表情でやってきた。“本当にすばらしい。学校と住むところが違って、私の住む所があるのがすばらしい。赤ちゃんも子どももいて、人々の普通の生活がある”。
Nのこれらの実感をふまえて、今後のNの行動に関して話し合った。2か月がすぎたころには、具体的な生活の仕方についての話合いが進んだ。冬休みに来日した家族を見送ったときの体験を語った。
“成田で悲しくて涙がでた。しかし、同時に不思議な感情を味わった。`ほっとしたという感じである’。
つまり、自分のスペースの確保が自分の生活の実感として感じられた”。このエピソードをもとに、親からの独立、アイ3事例Nの面接経過の詳細は、井上(1997)に紹介されている。アイデンティティの確立などについて話し合った。
このころ、カウンセラーが日本文化論の本を貸し、一緒に読後感などを話し合った。
<第3期:カウンセリング終結期>
3月になって前年の9月以来の本人の退寮をめぐる体験の意味について振り返ることをおこなった。
本人の留学生活のイメージが第2期からどう変化したかをみるためPAC分析第2回目をおこなった。
修了式を迎えるころには、進んで卒業アルバムの作成に参加し、夜遅くまで多くの寮に住む友人と共同作業を続けた。相談室にも頻繁に話しに立ち寄り、見たり聞いたりして感じたことを、快活に語った。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/69/4/69_4_295/_pdf
社員のメンタル状態の可視化に組織改善ツール「ラフールサーベイ」
「あの社員、最近元気がない気がする…」「他にも悩みを抱えている社員がいるのでは?」とお考えの人事担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。
組織改善ツール「ラフールサーベイ」は、1億2000万以上のデータを基に、従来のサーベイでは見えにくかった「なぜエンゲージメントが低いのか?」「高ストレス者のストレス因子は何?」といった低スコアの要因を可視化します。メンタル・フィジカルデータはもちろん、eNPSや企業リスクなど組織状態を可視化する上で必要な設問を網羅しているため、今まで気づかなかった組織の強みや、見えていなかった課題も見つかり、「次にやるべき人事施策」を明確にすることができます。
詳しくは以下からWebサイトをご覧ください。
まとめ
カウンセリングの意義やどこで受けられるか、また効果や料金などについても説明をしていきました。今回の記事のポイントは
- カウンセリングでは解決策を提示するのではなく、相談者自身が心や頭を整理し、解決策を見つけ出すサポートを行う。
- カウンセリングを行うことで新しい自分に出会えたり、自信を取り戻せる。
- カウンセラーの資格は民間のものや国家資格などさまざまなものがある。
- 継続的にカウンセリングを行うケースがある。
- 内容によっては保険が適用されることがある。
でした。
悩みを誰にも話せず、1人で抱え込んでしまっている人は一度カウンセリングを受けてみても良いでしょう。誰にも話せないことでも声に出して話すことで自分への負担は軽減されます。また、カウンセリングによって自分の考え方やとらえ方、心の状態を確認でき、悩みを解決する手助けをしてくれるでしょう。