人材育成の1つであるジョブローテーションは、1990年以前から国内で運用されていることをご存知ですか?
様々な経済状況によって働き方に変化が起きている今、実はジョブローテーションを行う目的にも変化が起きています。しかし、
「正しい目的は何だろう」
「ジョブローテーションにデメリットはないの?」
「導入するなら効果的な運用をしたい」
このようなことを考え、悩んでしまうことはありませんか?
効果的な運用には改めて理解を深めることも重要です。そこで今回は、現代のジョブローテーションの目的や、メリット・デメリットについて改めて解説します。導入の成功に導くポイントについても、わかりやすくまとめました。
ジョブローテーションの効果的な運用を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
1.ジョブローテーションとは
ジョブローテーションの概要について、目的や他制度との違いを紹介します。
項目は、以下の通りです。
- 時代の流れで変化したジョブローテーションの目的
- 人事異動との違い
- 社内公募制との違い
時代の流れで変化したジョブローテーションの目的
ジョブローテーションとは、社員が属する部署や職務を定期的に変更させることで、様々な業務や経験を積ませる人材研修の1つです。
定期的という期間の定義は、企業によって異なります。一般的には3ヶ月から数年の期間である場合が多く見受けられ、目的に応じて適切な期間を検討すると良いでしょう。元来ジョブローテーションは、多種多様な知識や経験、スキルを活かすジェネラリストである経営幹部の育成が目的とされていました。
昔は転職が当たり前ではなく、終身雇用の働き方が一般的とされていた時代背景があります。終身雇用制度は、1つの会社に定年まで働くことが前提であったため、社内において先を見据えた計画的な人材育成が可能です。そのため社内での様々な部署や職種を経験させることが、ジェネラリストを育成する手段として適切だと考えられていました。若手の頃から時間をかけ、社内のノウハウを身につけさせるジョブローテーションは、そのような時代において国内で広がりを見せます。
現代におけるジョブローテーションの目的の1つに、柔軟で多様な経験を持つ社員の育成があります。様々な職務の経験は社員自身の視野の広がりとなり、業務において柔軟な対応ができるスキルにつながります。また企業にとっては社員それぞれに対して、「どんな業務が向いているか」「どのような特性があるのか」といったように、適材適所の見極めが可能です。そのため現代では、柔軟で経験豊富な社員育成と、適材適所の人事異動の2つがジョブローテーションの目的であると言えるでしょう。
人事異動との違い
比較対象として挙げられやすい人事異動との違いは、行う目的にあります。人事異動は、組織の中において社員の職務や職場を変えることで、経営戦略に基づいた部署を強化することが目的となります。具体的には、昇格や昇進、新卒採用、社外への出向などが挙げられ、社員の地位や職務などの変更全般を意味し、全て戦略に基づいた変更です。
その一方、ジョブローテーションの目的は人材育成や人事戦略です。社員に様々な経験を積ませるような長期間に渡る人材育成によって、将来の幹部候補を育てていく、先を見据えた戦略や育成となります。
社内公募制との違い
社内公募制との違いは、人事配置の対象となる社員の選び出す方法にあります。社内公募制においては、会社が必要とする要件を公開し希望者を募ります。自ら希望し手をあげた社員を対象に人事配置が検討され決定されます。
一方でジョブローテーションでは、社員の意向は基本的に考慮されません。会社が適した社員を検討し人事配置が決定され、該当社員に決定が言い渡されます。どちらも人事戦略に基づいた決定ですが、社内公募制は社員自らの希望に沿った選定であり、ジョブローテーションは会社が判断した適切な選定という点で異なります。
2.ジョブローテーションのメリット・デメリット
ジョブローテーションの導入には、メリットとデメリットどちらも存在します。自社に適切な制度か見極めるために、その両方に関して理解を深めておきましょう。
・ジョブローテーションのメリット
- 今後の人事配置の参考になる
- 業務の属人化を防げる
- 社内の横断的ネットワークを構築できる
・ジョブローテーションのデメリット
- ジョブローテーションに向かない職種がある
- 業務のスペシャリストが育ちにくい
1つずつ根拠を含め解説します。
【メリット】今後の人事配置の参考になる
ジョブローテーションの導入は、社員が様々な職務や部署を経験できるため、企業にとっては社員の能力や適性を見極める判断基準が増えます。その結果得られるメリットとして、将来のキャリア開拓や適材適所の人事配置が挙げられます。また社内で様々な経験ができることは、社員自身にとっても自分のやりがいや得意不得意を発見できる機会にもなります。そのため、適切な人事配置を検討できることに加え、社員にとっては働きがいを見つけられる機会となり、企業全体として生産性向上が見込める人事配置の参考となり得るでしょう。
【メリット】業務の属人化を防げる
ジョブローテーションの活発化は、特定の担当者がいなければ業務が進まないといった業務の属人化を防ぎます。なぜなら1つの業務に対して、複数の社員での対応を可能にするためです。また複数の社員が業務に対応できることは、社員全体のワークライフバランスを整えることも可能です。特定の担当者しか対応できない業務がある場合、その担当者に不測な事態が起きた際に業務が滞ってしまうリスクや、担当者が休むことができない負担が考えられます。業務の属人化を防げることは、業務を効率よく進められることに加え、社員に対し平等に仕事と生活の調和を与えやすくなります。
【メリット】社内の横断的ネットワークを構築できる
部署間を超えた社員の交流が広がることで、社内の風通しが良くなるメリットがあります。同じ会社であっても部署や職場が異なると交流の機会はなかなかありません。そのため業務上協力が必要になっても、ぎこちないコミュニケーションとなる場合もあります。その点ジョブローテーションの導入は、他部署や職場の社員との交流が必然的に増えるため、協力体制も深まりやすくなります。その結果、社内における横断的なネットワークの構築に期待できるでしょう。
【デメリット】ジョブローテーションに向かない職種がある
ジョブローテーションを行う際には、適さない職種があることを理解しておきましょう。例えば、専門的スキルが求められる職種や、マニュアルでは伝わらないノウハウが多い職種が当てはまります。長期間に渡って培われるスキルや能力を発揮しなければならないため、ジョブローテーションには不向きであると考えられます。定期的に異動する機会があるとスキルや能力を身につけるのは困難となるため、不向きな職種にはジョブローテーションを行わない方が良いでしょう。
【デメリット】業務のスペシャリストが育ちにくい
定期的に部署や職務を異動するジョブローテーションは、その部署や職務におけるスキルの蓄積が難しいデメリットがあります。業務への取り組み方や内容を一通り学ぶことはできても、深い理解や経験は積みにくいという課題があるためです。そのため、スペシャリストが必要である部署にはジョブローテーションを避けることを検討する必要があります。また人事戦略としてスペシャリストの育成を目指す場合も導入を避けた方が良いでしょう。
3.ジョブローテーションを成功に導くポイント
ジョブローテーション導入の際に、成功に導くポイントとして以下2つが挙げられます。
・ジョブローテーションを行う目的を伝える
・アンケートを実施して社員の心理状態を把握する
それぞれ理由を含め紹介します。
ジョブローテーションを行う目的を伝える
社員が主体的に業務に取り組めるよう、事前にジョブローテーションを行う目的を伝えましょう。目的が不透明なままの異動となってしまっては、社員のモチベーションも上がりません。また人事異動には多少なりとも社員にとって負担がかかるため、行う目的に対する同意や、モチベーションを上げる投げかけが必要です。
具体的には、この時期に異動をする意味合いや目的、今後のキャリア形成について明確に伝えるよう心がけましょう。「あなたの成長に期待している」「会社の発展につながる」といったような前向きな目的は、社員のやる気を引き出します。
組織サーベイを実施して社員の心理状態を把握する
組織サーベイで社員の心理状態を可視化することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。これまでとは異なる働き方や、新たな人間関係など人事異動には様々な変化が付きものです。そのため社員にとってはどうしてもストレスを感じる場面が多くなります。ストレスがうまく解消されず蓄積されると、離職率が高まる可能性も考えられるでしょう。トラブルを起こさせないために、社員が感じているストレスの度合いを客観的に見極め、適切な対策を講じる必要があります。具体的には、ストレスを可視化し管理できるツールの活用によって、心理状態が把握でき必要な対策の検討がしやすくなります。退職が不測の事態となってしまわないよう、社員が抱える不安をできる限り緩和するよう心がけましょう。
4.海外にはジョブローテーションがない?
実は海外ではジョブローテーション制度はほとんど見られません。なぜなら、海外では終身雇用という概念がないためです。
海外における働き方の概念として、「キャリアアップの環境は自分自身で切り開くもの」という認識が強くあります。そのため、ジェネラリストを目指す場合であっても会社主体ではなく自分自身を主体として考えます。積極的に転職活動を行うことや、社内で機会があれば自ら手を挙げ希望するなど、自ら考え行動し挑戦していく姿勢が見受けられます。このような話を耳にすると、ジョブローテーションは能動的な制度で本当に必要か疑問に感じる方も多いかもしれません。しかし、「実際に自分のやりたいこととは何か」「どんなキャリアを積んでどんなことを達成したいか」など自らの気持ちと向き合い、考え抜くことは想像以上に困難です。
その点ジョブローテーションは、本当にやりたいことや得意なことを見出せるきっかけとなります。その結果、自分が心から働きがいを感じられる業務に携わる可能性も高まるでしょう。
5.社員のストレス状態把握に役立つツール
ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、社員の心理状態の把握に最適なサーベイツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。
ジョブローテーションの実施前・実施後に心理状態を把握することで、社員にどのようなストレスがかかっていて、要因はどこにあるか、適切な対策は何かを見極めることができます。社員の不安を極力取り除き、ジョブローテーションを意義のあるものにしましょう。
また、ラフールサーベイを長期的に運用することで、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げることができます。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック
スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出。質問に対しチャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。
適切な対策案を分析レポート化
調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。
部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化
集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。
・部署
・男女
・職種
・テレワーク
対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てられます。
6.まとめ
ジョブローテーションは1990年以前から日本社会で運用されているものの、時代の流れとともにジョブローテーションの運用目的も変化してきました。本記事では海外のジョブローテーション事情やメリット・デメリットを紹介しました。
ラフールサーベイでは18万人以上のデータをもとに、従来のアンケートでは見えにくかったリスクや課題を多角的に抽出し可視化することができます。ジョブローテーションとサーベイツールをあわせて導入することで、新しい環境で働く社員のサポートを手厚く行えるでしょう。
サーベイツールをお探しの方は、ぜひラフールサーベイを検討してみてください。