企業の労働生産性を高める取り組み

日本企業全体における課題であり改善が急務だと言われている労働生産性。近年改善に取り組み始める企業が増加し、実際に改善の業務を求められている管理職の方も多くいるでしょう。
しかし、
「そもそも労働生産性ってどんなこと?」
「どうして改善する必要性があるんだろう」
「効果的な改善方法がよくわからない」
こんなことを感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は労働生産性の概念から低下している原因を解説し、具体的な改善の取り組みについてまとめて紹介します。
改めて労働生産性について理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

1.労働生産性とは

労働生産性とは

労働生産性とは、労働者1人あたりまたは1時間当たりに生み出せた成果を数値で表した指標です。計算方法は「産出量(成果)÷労働量(労働者数や労働時間)」の式で求めることができ、労働で得られた産出物に対し、かかった労働量で割ったものとなります。労働生産性の向上とは、同じ労働量でも生み出す成果が大きくなること、もしくは労働量を減らしても同じ成果を保てた場合を意味します。

2.物的労働生産性と付加価値労働生産性

労働生産性には、労働で得られた成果の違いによる2つの種類が存在します。

  • 物的労働生産性
  • 付加価値労働生産性

それぞれの違いを詳しく解説します。

物的労働生産性とは

物的労働生産性とは、労働によって得られた成果を生産数や販売額といった物的なものとして置きます。例えば、販売員として働くことで得られた製品の売上を表します。物的労働生産性を算出することによって、労働者がどれだけ効率的に生産数や売上額を生み出しているか把握できます。しかし成果によっては数値や個数で測れない場合もあるため、あくまで成果が物的なものである場合にのみ表すことが可能です。

物的労働生産性の計算方法

労働生産性の計算方法は、従業員1人当たりの労働生産性と、1時間当たりの労働生産性を求める場合に分かれます。 従業員1人あたりの物的労働生産性を求める場合は、下記の計算式です。

従業員1人あたりの物的労働生産性=生産量÷労働者数

一方、1時間あたりの物的労働生産性を求める場合は、計算式はこちらです。

1時間あたりの物的労働生産性=生産量÷(労働者数×労働時間)

付加価値労働生産性とは

付加価値労働生産性とは、労働によって得られた成果を付加価値として置きます。付加価値とは、生産過程において新たに付け加えられた金銭的な価値を指します。例えば、パソコンを製造販売する場合、外部から購入した原材料を組み合わせ加工し作業をする過程において新たな価値が付け加えられており、それを付加価値といいます。数値として表す際には、売上高から原材料費や人件費などを費用を差し引いて残るものを指します。

付加価値労働生産性の計算方法

従業員1人あたりの付加価値労働生産性を求める場合は、下記の計算式です。

従業員1人あたりの付加価値労働生産性=付加価値の値÷労働者数

1時間あたりの物的労働生産性を求める場合の計算式は、下記の計算式です。

1時間あたりの付加価値労働生産性=付加価値の値÷(労働者数×労働時間)

3.現状の日本の労働生産性

労働生産性が大きく注目され始めたきっかけは、政府が打ち出した「働き方改革」にあります。「働き方改革」が打ち出された目的の1つとして、日本の労働生産性を向上させる必要があったためです。では実際に日本の労働生産性はどのような状況なのか、国内の現状を世界と比較しながら具体的に紹介します。

世界の労働生産性

実は先進国の中でも日本の労働生産性は最低レベルであると言われています。実際に、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で日本の労働生産性は36カ国中21位という結果が公益財財団法人日本生産性本部から報告されています。また主要先進国7か国の中で見ると日本は最下位であり、この状況は1970年以降変わらず続いています。世界と比べると日本の労働生産性は長年に渡って向上されておらず、悩ましい現状が伺えます。

世界の労働生産性

※画像:公益財団法人・日本生産性本部

産業別 日本国内の労働生産性の現状

国内の労働生産性を産業別に比べてみると、資本集約型が上位を占めており具体的には不動産、電気・ガス・水道、情報通信などの産業の労働生産性が高くなっています。一方でサービス業などの多数の従業員が必要となる労働集約型産業は労働生産性が低いことが報告されています。その理由は多くの労働力が必要な分、一人当たりの生産性は低くなるためです。また国内の産業別労働力人口はサービス業において増加傾向であることが報告されており、国全体の労働生産性低下が懸念されています。このことから、産業別に見ると日本国内においてはサービス業の労働生産性向上が特に必要であり、大きな課題であることが伺えます。

4.労働生産性が下がる原因

労働生産性を改善し向上するためには、まず低下の原因を突き止めなければなりません。その原因はいくつか考えられていますが、主に以下2つの労働環境が考えられています。

  • 単純作業の長時間労働
  • 非生産なマルチタスク

1つずつその理由と具体例を解説します。

単純作業の長時間労働

同じ作業を繰り返すような単純作業は、脳が作業に慣れマンネリ化しやがて続ける意思を消失させることが心理学的に報告されています。また長時間労働は疲労やストレスによる業務のミスや進行の遅れを招くことで、企業の労働生産性を低下させます。意識の低い業務を長時間続けることで生まれる業務のミスは修正のため労働時間をさらに増やし、業務の進行が遅れる悪循環に陥ります。このように単純作業による長時間労働は、労働者にとって疲労やストレスの蓄積に加え、業務の遅れによる成果を生み出しづらい環境となり、労働生産性低下の大きな原因と言えます。

非生産なマルチタスク

マルチタスクは人間の脳の構造上ミスを起こしやすい状況であり労働生産性を下げる原因となります。マルチタスクは一見、同時に複数の業務をこなしているように見えますが、1度に2つ以上の物事を正確に処理するのは人間の脳では難しいことが報告されています。脳内で行われる正確な物事の処理は、1つずつ物事のスイッチを切り替えることで可能となるため、業務を同時進行で進めているわけではありません。そのため、複数の業務の同時進行は次第に1つ1つの業務に欠陥が現れ、ミスが続くなど結果的に非生産的な労働環境になると言えます。

プロセス重視の人事評価

日本でのプロセス重視の人事評価は、労働時間が長ければ精力的に働いていて、逆に労働時間が短ければ努力していないと評価されてしまうケースが良く見られます。結果や成果を評価する制度でないと、本質的な労働生産性は上がっていかないでしょう。
欧米では残業時間が長いと評価が低くなるというのが一般的であり、論理的に考えれば与えられた仕事をスピーディにこなせる人の方が、本来は高く評価されるべきですよね。結果や成果を正当に評価できる制度を導入すれば、管理職を含めて全社的な生産性への意識が高まるでしょう。

5. 労働生産性の向上がもたらすメリット

人材不足の解消

労働生産性が向上すれば、人口が減少する日本での、人材不足の問題の解消にもつながります。「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には644万人の人材不足が起こると予測されています。人材不足の問題への対策は、今後の日本にとっては必要不可欠です。1人1人が生み出す成果量を上げていくことは、日本の未来へ大きな貢献となるでしょう。

柔軟なはたらき方への対応・ワークライフバランスの改善

短時間で成果をあげることができれば、1人の従業員当たりの労働時間の減少が見込めます。その結果ワークライフバランスが整い、柔軟な働き方が広がっていき、従業員の過労働の問題の解消にもつながるでしょう。過労働が問題となる現代社会で、過労死につながってしまうケースも見られます。労働時間の削減は従業員の心にゆとりを与え、結果的に生産性の向上にもつながっていくでしょう。

コスト削減

同じ成果量でも従業員の労働時間が短くなれば、企業は人件費を削減できます。ワークライフバランスが整い、離職率が下がれば新卒者や転職者の数も少なくなり、雇用にかかるコストや、研修費用も削減することができるでしょう。労働時間を増やしてでも成果量を増やす戦略は、採用コストや研修費の増加につながり、長期的に見ればマイナスの影響も大きいです。

企業競争力の向上

労働生産性が上がり、製品やサービスの質も向上すれば、企業間の競争もより激しくなるでしょう。同じ質の製品やサービスであれば、人件費を削減した企業の方が、安価なコストで提供できます。グローバル化する現代社会ですから、生産性が高い海外企業と競争するためにも、生産性を上げることはとても大切です。

労働関係の補助金や助成金の割増

厚生労働省では、労働生産性を向上させた事業所に向けて、労働関係助成金を増加させる制度を設けています。もちろん助成金が増えることによる金銭的なメリットも大きいですが、国や社会から評価を受けるという点も、長期的な目線ではとても重要なポイントになるでしょう。

6.企業の労働生産性を高める取り組み

企業が労働生産性を高めるために実施できる取り組みは様々あります。その中でも代表的な4つの取り組みがこちらです。

  • 社員一人ひとりのスキル向上を図る
  • 社員に対するタイムマネジメント
  • 個人業務の可視化
  • 人材流出の解消

それぞれ具体例と併せて紹介します。

社員一人ひとりのスキル向上を図る

一人ひとりが高いスキルで業務に取り組むことで多くの成果が生み出され、企業としての労働生産性が向上されます。スキルが高いことで同じ労働量でもより大きな成果を得られることは社員にとっても業務を前向きに取り組めるモチベーションの向上にもつながります。スキル向上の具体的な例として、社内システムを効率的に操作する「ITスキル」や、目標達成を目指し自分自身を管理する「セルフマネジメントスキル」は多くの社員にとって活用しやすいスキルです。また、管理職が部下との良好な関係性を構築する「コーチングスキル」や、分野ごとの質の高い成果を生む「専門的スキル」は、役職や部署など個別にスペシャリティーを高める効果があります。労働生産性向上に活かせるスキルは多種多様であるため、状況に応じて研修を開催するなどして、社員一人ひとりがスキルを身につけ活用できるよう取り組みましょう。

社員に対するタイムマネジメント

タイムマネジメントの取り組みは限られた時間を有効に使って業務に取り組むことで、労働生産性の向上に効果的です。タイムマネジメントとは直訳すると時間管理を意味しますが、目的としては限りある時間を有効活用することを指します。具体的には目標を達成するための必要なタスクを挙げ、優先順位をつけて管理し取り組みます。1日もしくは1週間単位でタスクを洗い出すと取り組みやすいでしょう。またタスクにかかる時間も併せて管理しておくと長時間労働を防ぐことにもつながります。社員一人では優先順位が難しいケースや予定外の突発的な業務が発生することも考えられるため、気軽に上司に相談できる環境づくりも併せて行うことをおすすめします。

個人業務の可視化

個人業務の可視化とは、社員一人ひとりの業務がチームや部署全体で共有されている環境を指します。周囲の社員から個人の業務が見えることで、削減できる仕事や手助けできる仕事などを見つけることができ、業務全体の生産性向上につながります。可視化する方法としては、取り組む業務の予定が記載されたスケジュールを共有することや、業務の一覧がまとめられる専用のITツールを活用する方法があります。個人業務の可視化が根付いた職場では業務の取捨選択が効率良く行われるだけでなく、互いの働きぶりによってモチベーションを高めることや、良い取り組みを吸い上げナレッジとして共有できることなど幅広い価値が生まれます。

人材流出の解消

人手不足は労働生産性の向上どころか業務の遂行も困難にするため、企業には安定した人材が必要不可欠です。人材が流出した際に欠員を埋める形で新たな採用を行っても、根本となる原因を解消していなければ人材流出は繰り返されることとなります。そのため、人材流出を食い止め防ぐためには、社員にとって働きやすい環境を整えることが重要です。具体的には、社員が不満や不安な気持ちを溜め込まないよう定期的なストレスチェックを行うことや、長時間労働やハラスメント行為の是正といった労働環境の見直し、明確な基準や目標を開示する評価制度の改善などが考えれられます。職場の現状と照らし合わせて適切な方法を実施するよう心がけましょう。

業務フローの見直しとマニュアル化

企業は経営が長くなるにつれて、業務フローが伝統的に継承されていて、当たり前のように取り組んでいることも多いでしょう。しかしその業務フローを今一度、本当に効率的か、改善できる点はないか考えていくことはとても大切です。「これまでこのように取り組んできたから」という理由だけで、継続している業務フローは少なくないはずです。常に業務への取り組み方を改善していき、定期的にマニュアルを改良していくことで、効率の高い業務フローが継承されます。

業務効率化のシステム導入

業務効率を上げるためにはやはり、AIやIoTを活用したシステムの導入はとても効果的です。例えば営業であれば顧客管理システムを導入したり、マーケティング部門ではマーケティングオートメーションのツールを導入するなど。人間よりも高度で効率的な分析ができるツールは、作業効率向上のとても大きな力になるでしょう。導入や利用にかかるコストは安価でないこともありますが、労働生産性を高めることは長期的に見れば、コストの削減や利益の向上にもつながっていきます。

育成・評価方法の見直し

従来の育成システムや、評価制度が業務効率を下げてしまっている可能性も考えられます。例えば成果を正当に評価できていない場合は、従業員のモチベーションは大きく下がってしまい、業務効率の低下につながるでしょう。生産性を上げるための従業員の育成や、評価方法の見直しはとても重要です。また成果そのものだけでなく、これまで評価されづらかった残業時間の削減についても、評価の対象として重視することも効果的です。

7.労働生産性を高めるために役立つツール 

社員の労働生産性を高めるための手段の一つとして、”社員が安心して働ける環境づくり”が挙げられます。労働生産性を向上を目指すためのいわば土台になります。

ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、企業の労働生産性を高めるために最適なサーベイツールです。

従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

154項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック 

スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出。質問に対しチャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。

適切な対策案を分析レポート化

調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。

部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一元化

集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。

  • 部署
  • 男女
  • 職種
  • テレワーク

対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てられます。

8.まとめ

企業全体で労働生産性を高めるためには、社員個々人の生産性を上げる試みが重要です。その土台となるのは”社員が安心して働ける環境”であり、まずは環境改善に焦点を当てることが重要になります。ラフールサーベイを用いれば社員個々人の精神状態を可視化・定量的に分析できるため、効率よくその作業を行えます。

https://survey.lafool.jp/
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