企業の継続的発展には社会の変化に対応できる組織改革が欠かせません。なぜなら、企業を取り巻く環境は日々変化するため、対応できずに立ち止まっていては時代に取り残されてしまうためです。しかし組織改革の必要性を理解できていても、「どんなときに行うべきだろう」「スムーズに取り組めず苦戦している」と悩んでいる方も多いかもしれません。また、「反発する社員がいるのでは」と不安を感じている方も少なくないでしょう。
そこで今回は、企業に求められる組織改革の概要、そして進め方についてわかりやすく説明します。さらに、変革への反発を示す社員への対応方法も詳しく解説します。組織改革への理解を深めたい方や、実践的な手法を学びたい方はぜひ参考にしてください。
1. 企業に求められる組織改革とは
以下2つの項目に沿って、企業に求められる組織改革の概要を紹介します。
- 組織改革とはどのようなものか
- 組織改革を行うメリット
組織改革とはどのようなものか
組織改革とは、企業を取り巻く外部環境の変化に対し柔軟に適応する取り組みです。組織の構造や機能、運用方法などを変えることによって企業の持続的な成長を目指すことを目的とします。
企業に組織改革が求められる理由として、労働生産性の低下があります。労働生産性の低下は、労働人口の減少や長時間労働など日本社会が抱える現状によって引き起こされました。その結果、現状を改善しようとする取り組みとして、グローバル化や国が推進する働き方改革が進んでいます。しかしそもそも企業がグローバル化や働き方改革に対応できる体制を整えないと、その成果は得られません。そのため企業は目標である労働生産性の向上にむけ組織改革に取り組み、変化に対応できる体制となる必要があるのです。
また組織改革には行うべきタイミングがあり、代表的なタイミングが以下2つです。
- 利益が上がらず業績不振になっているとき
- 先を見据えた変化に備える必要があるとき
前者においては、業績不振の原因(長時間労働や社員のモチベーションの低下など)を特定し組織改革を行うと良いでしょう。後者における具体例としては、「多数の新規雇用を行い既存社員も含めた新たな意識統一が必要である」といったタイミングが考えられます。企業によってさまざまなや事例が考えられるため、まずは代表的なタイミングを覚えておくと良いでしょう。
効果的な組織改革を実現するには「組織改革の明確な目的を社員と共有すること」を意識するべきです。組織改革を行う目的にブレがあっては根本的な改革には至りません。また社員が改革に対し主体的に取り組むためには、社員自身が改革の意義や価値を感じる必要があります。そのため組織改革を行う際には、経営陣が現場の声を含んだ目的を明確に定め、社員が当事者意識を持って取り組めるようしっかりと共有することを心がけましょう。
組織改革を行うメリット
組織改革を行うメリットとして代表的なものが以下2つです。
- 業務効率のアップ
- 社員のモチベーション向上
労働生産性向上に向けて業務フローの改善や、長時間労働是正などを行うことで、業務効率が改善されます。また人事評価制度の改革を行った場合には、公平性や納得性の向上によって社員のモチベーションも高まるでしょう。
2. レヴィンから学ぶ組織改革の進め方
組織改革の進め方としてレヴィンの3段階プロセスを紹介します。概要から各フェーズの内容まで理解を深めましょう。
レヴィンの3段階プロセス
社会心理学者であるクルト・レヴィンは、3つのフェーズを踏んだ組織変革を唱えました。具体的には、「解凍」、「変革」、「再凍結」の3つのフェーズを経ることで、組織変革を成功に導くという考え方です。それぞれのフェーズの内容について解説します。
フェーズ1:解凍
既存の組織体制や価値観のままではなく、組織には新たな変革が必要であると社員に意識付けるフェーズです。社員は「今までのやり方では成果が上がらない」「このままでは業績が悪くなる一方だ」と現状への危機感を感じることによって、新たな意向の受け入れ改善に取り組む姿勢が構築されます。このとき注意すべき点は、社員が抱く変化に対する不安を和らげることです。必要性は感じつつも先行きの心配を感じ、場合によっては反発の声を上げる社員もいるかもしれません。少しでも不安な気持ちを生まないよう、変革への細かなプロセスの共有や、目的を達成した際の具体的なメリットを伝えるなどの工夫が必要です。また次の章で紹介する対応方法を参考に、あらかじめ反発の声が上がらないよう取り組むのも良いでしょう。
フェーズ2:変革
目的を実現するための新たな体制や業務フローなどを検討し、変革を起こし始めるフェーズです。新たな体制や業務フローは、より具体的な内容を検討し社員に共有する必要があります。危機感や必要性を感じている社員に対し、今できることを明確に示すことによって、変革への行動が能動的に起こりやすくなるためです。このとき注意すべき点は、必要に応じて学習機会や教育体制を整えておくことです。変革にはこれまでにない考え方や、従来行われなかった新たな取り組みが必要となる場合もあります。あらかじめ社内研修や育成プログラムを用意することによって、社員のスムーズな取り組みを促せるでしょう。
フェーズ3:再凍結
新たな行動や考え方を定着させ、変革の内容を習慣化させることに近づけるフェーズです。フェーズ2で取り入れた新たな行動や考え方は、習慣化させることによって新たな組織文化となります。一時の取り組みで終わらないよう、継続させ根づかせる必要があります。このときに意識すべき点は、社員個々に小さな成功体験を積んでもらうことです。新たな行動や考え方による取り組みで成果を得られることは、社員にとって高いモチベーションとなり、前向きな継続を促すことが可能です。
3. 組織改革の最難所:変革に反発する社員への対応はどうすればいい?
組織改革において頭を抱えやすいのが、変革に反発する社員への対応です。この章では、社員が反発する理由の解説に加え、具体的な対応方法について以下の項目に沿って紹介します。
- 【理論で解説】人間は利益よりも損失に敏感に反応してしまう
- 【対応策1】部下に依頼するような言い方で変革の説明をする
- 【対応策2】アンケート実施で部下の意見を知る
【理論で解説】人間は利益よりも損失に敏感に反応してしまう
社員が変革に反発する理由の1つに、プロスペクト理論という考え方があります。プロスペクト理論とは、1979年に行動経済学者のダニエル・カーネマン氏とエイモス・トベルスキー氏が提唱した理論です。一言で説明すると、人は予想される損失によって意思が変化するという意思決定方法をモデル化した理論です。プロスペクト理論は「損失回避性」という傾向が基となっており、得をすることよりも損をすることを避ける人間心理を指します。
組織改革に当てはめると、変革に反発する社員は、変革に対し損失を感じ避けようという気持ちから反発の意思決定を行うと言えます。より具体的に考えると、新たなシステムの導入の際にベテラン社員が「ずっと従来のやり方で行ってきたため取り入れられない」と反発します。その際の心理傾向として、「新しいものを覚えるより慣れたものの方が業務が短時間で済む」「習得までの時間が無駄」という考えから、時間の損失を恐れ反発していることが伺えます。
このように、社員が変革に反発する理由としては何かを失うことへの恐れが考えられます。そのため対応を行う前には、社員が具体的にどんな反発しているかをよく伺うことが重要です。
【対応策1】部下に依頼するような言い方で変革の説明をする
対応策の1つ目は、伝え方を工夫することです。具体的には相手に依頼するような言い方を心がけ、行動を強制するような言い方を避けましょう。なぜなら強制するような言い方は、心理的リアクタンスという作用によって反発を生み出すためです。
心理的リアクタンスとは、自分の行動を自身で決めたいという心理によって他人からの強制に無意識に反抗する反発作用です。例えば、部下との面談を行いたい際に「10時に面談をします」という言い方では、相手に選択肢を与えず行動を強制していることとなります。依頼するように言い方を工夫すると「10時から面談をしたいが予定は大丈夫?」などと、相手にお願いするような伝え方となります。伝え方を依頼の形に工夫するメリットは、相手が話の内容を受け入れやすくなる点です。また相手が自主的に動いている感覚を与えられるため、反発を起こしにくくなるでしょう。
【対応策2】アンケート実施で部下の意見を知る
対応策の2つ目は、アンケートを通し部下の意見を知ることです。アンケートによる改革への素直な意見や考えの把握によって、反発を生む前に防ぐことにつながります。素直な意見を集めるために、アンケートは匿名性を保証することや、社員の意見を取り入れた変革を行いたい意向を伝えると良いでしょう。アンケートの結果から社員の懸念点を集計し分析することによって、改革内容の改善にも活かすことができます。
4. 社員の現状把握に役立つツール
ラフールサーベイは、「社員の状況の把握・分析」や「職場/チームの状況に応じた改善策提案」をしてくれる、社員のメンタル状態や会社に対する考え方の把握に最適なサーベイツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。
社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、サーベイを通して組織課題と社員の心持ちを可視化し、社員も納得する組織改革に繋げましょう。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
19の質問項目に絞り、組織の状態を定点チェック
スマートフォンで回答ができるアプリ版では、特に状態変容として現れやすい19の質問項目を抽出。質問に対しチャットスタンプ風に回答でき、従業員にとっても使いやすい仕組みです。こちらは月に1回の実施を推奨しており、組織の状態をこまめにチェックできます。
適切な対策案を分析レポート化
調査結果は細かに分析された上で適切な対策案を提示します。今ある課題だけでなく、この先考えられるリスクも可視化できるため、長期的な対策を立てることも可能。課題やリスクの特定から対策案まで一貫してサポートできるため、効率良く課題解決に近づくことができます。
部署/男女/職種/テレワーク別に良い点や課題点を一望化
集められたデータは以下の4つの観点別に分析が可能です。
- 部署
- 男女
- 職種
- テレワーク
対象を絞って分析することで、どこでどんな対策を打つべきか的確に判断できるでしょう。また直感的にわかりやすいデータにより一目で課題を確認でき、手間をかけずに対策を立てられます。
5. まとめ
今回は組織改革について、企業に求められる組織改革の概要、進め方、反発する社員への対応方法を紹介しました。組織改革は企業における根本からの変化であるため、初めて取り組む方はもちろん、経験のある方にとっても簡単なものではありません。しかし組織改革の明確な目的の共有によって、一致団結した大きな力で改革に望むことも可能です。社員それぞれが取り組む意義や価値を感じられる改革は、一人ひとりに主体性のある働きも根づかせるでしょう。まずは社内の現状から課題を特定し、部下も納得する組織改革に取り組みましょう。