終身雇用とは従業員を定年まで雇用する制度!メリット・デメリットを解説

終身雇用は、企業が従業員を原則として定年退職まで雇用し続ける日本的雇用慣行です。この制度のもと、従業員は入社から定年まで、特別な事情がない限り解雇されることはありません。終身雇用には、従業員の長期的育成や企業への忠誠心向上というメリットがある一方で、企業の柔軟性低下や従業員のモチベーション低下リスクなどのデメリットも指摘されています。この記事では、そんな終身雇用について詳しく解説します。

終身雇用とは従業員を定年まで雇用する制度

終身雇用制度は、企業と従業員の間に長期的な信頼関係を築くことを目的としています。この制度下では、企業は従業員の生活を保障し、従業員はその企業で長く働くことが前提となっていました。日本の高度経済成長を支えた要因の一つとして、この終身雇用制度が挙げられることも多々あります。

終身雇用の目的

終身雇用制度の主な目的は、従業員の生活安定、長期的な人材育成、そして強固な企業文化の醸成です。長期的な雇用保障により、従業員とその家族の生活基盤が安定し、企業は長期的視点で人材を育成できます。また、長期勤続を前提とすることで、従業員間の結束力が高まり、独自の企業文化が形成されやすくなります。

終身雇用の歴史

終身雇用制度の歴史は、日本の高度経済成長期に遡ります。1950年代後半、労働力不足を背景に大企業を中心に広がり始めました。1960年代から1970年代にかけて、日本的経営の特徴として定着し、日本の経済発展を支える重要な要素となりました。1980年代のバブル経済期まで、終身雇用は日本企業の強みとして広く認識されていました。

終身雇用の現状

現在、終身雇用制度は大きな変化に直面しています。非正規雇用の増加により、終身雇用の対象となる正社員の比率が低下しています。また、年功序列から能力・成果ベースの評価へのシフトが進んでいます。経済のグローバル化や技術革新により、従来の形での終身雇用維持が難しくなっており、多くの企業が新たな雇用形態を模索しています。

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終身雇用が崩壊した理由

終身雇用制度の崩壊には、複数の要因が関係しています。バブル経済崩壊後の長期不況により、企業の業績が悪化し、人件費削減の必要性が高まりました。グローバル競争の激化に伴い、国際競争力強化のため、より柔軟な雇用体制が求められるようになりました。

産業構造の変化、特にIT化やサービス業の台頭により、従来の雇用形態が適さなくなってきました。労働者の価値観も変化し、終身雇用よりも自己実現や多様な働き方を求める傾向が強まっています。さらに、少子高齢化による人口構造の変化も、従来の年功序列型賃金体系の維持を困難にしています。

これらの要因が重なり、多くの日本企業は終身雇用制度を見直し、より柔軟な雇用形態への移行を進めています。終身雇用制度は日本の経済成長を支えた重要な要素でしたが、現在は大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。企業と従業員の双方にとって、新たな雇用関係の構築が課題となっています。

【企業】終身雇用のメリット

終身雇用制度は、企業にとって様々なメリットをもたらします。以下では、主な利点について詳しく説明します。

採用コストの削減

終身雇用制度を採用している企業は、頻繁な採用活動を行う必要がありません。新卒一括採用が主流となり、定期的な中途採用の必要性が低くなるため、採用にかかる広告費や選考にかかる人件費などのコストを大幅に削減できます。また、長期的な人材育成が可能となるため、即戦力となる高給の中途採用者を雇う必要性も低下します。

人材の定着率向上

従業員に長期的な雇用を保証することで、離職率が低下します。これにより、優秀な人材の流出を防ぎ、企業の競争力を維持することができます。また、従業員の長期勤続により、業務や組織に関する深い理解が蓄積され、業務効率の向上にもつながります。

従業員のモチベーション向上

雇用が保障されることで、従業員は将来の不安なく仕事に専念できます。また、長期的なキャリアプランを立てやすくなるため、自己啓発や能力開発に積極的に取り組む従業員が増えます。これにより、全体的な従業員のスキルレベルと生産性が向上します。

組織力の強化

長期雇用により、従業員間の信頼関係や協力体制が強化されます。また、企業文化や価値観の共有が進み、組織としての一体感が醸成されます。これにより、チームワークが向上し、組織全体の生産性が高まります。

経験やノウハウの蓄積

従業員が長期間勤務することで、企業特有の業務ノウハウや暗黙知が蓄積されます。これらの知識や経験は、新入社員への効果的な技術伝承を可能にし、企業の競争力維持に貢献します。また、長年の取引先との関係性など、数値化しにくい無形資産の蓄積にもつながります。

【企業】終身雇用のデメリット

一方で、終身雇用制度には企業にとっていくつかのデメリットも存在します。以下では、主な問題点について詳しく説明します。

人件費の高騰

終身雇用制度では、従業員の年齢や勤続年数に応じて給与が上昇する年功序列型賃金体系が一般的です。これにより、従業員の平均年齢が上がるにつれて人件費が増大し、企業の財務を圧迫する可能性があります。特に、経済環境の変化や業績悪化時には、固定費である人件費の削減が困難となり、企業の経営を圧迫する要因となります。

組織の硬直化

長期雇用を前提とするため、新しい人材や斬新なアイデアが組織に入りにくくなります。また、既存の従業員が既存の方法や慣習に固執しがちになり、環境変化への適応が遅れる可能性があります。これにより、イノベーションの創出や業務改善のスピードが低下し、企業の競争力が損なわれる恐れがあります。

年功序列によるモチベーションの低下

年功序列型の人事制度では、個人の能力や成果よりも勤続年数が重視されがちです。これにより、若手従業員の昇進や給与上昇が遅れ、モチベーションの低下を招く可能性があります。また、中堅社員や管理職においても、努力や成果に関わらず昇進や昇給が保証されるため、競争意識が薄れ、組織全体の生産性低下につながる恐れがあります。

多様性の欠如

新卒一括採用と長期雇用を前提とする終身雇用制度では、組織の同質性が高まりやすくなります。多様な経験や価値観を持つ人材が少なくなることで、新しい発想や創造性が生まれにくくなる可能性があります。また、グローバル化が進む現代のビジネス環境において、多様性の欠如は国際競争力の低下につながる可能性があります。

これらのデメリットを認識し、適切に対処することが、現代の企業経営において重要な課題となっています。多くの企業が、終身雇用制度の利点を活かしつつ、これらの問題点を克服するための新たな人事制度や組織体制の構築に取り組んでいます。

【従業員】終身雇用のメリット

終身雇用制度は、従業員にとって多くのメリットをもたらします。以下では、主な利点について詳しく説明します。

雇用・生活の安定

終身雇用制度の最大の利点は、雇用と生活の安定です。定年まで雇用が保障されるため、従業員は将来の失業の不安なく仕事に専念できます。この安定性により、長期的な人生設計が可能となり、住宅ローンの取得や家族計画など、重要なライフイベントに対して前向きに取り組むことができます。また、安定した収入により、生活水準の維持や向上が期待できます。

長期的なキャリア構築の実現

終身雇用制度では、長期的な視点でキャリアを構築することができます。一つの企業で長く働くことで、様々な部署や職責を経験し、幅広いスキルと知識を獲得する機会が得られます。また、昇進や昇給のプロセスが比較的明確であるため、自身のキャリアパスを見通しやすく、目標を持って仕事に取り組むことができます。

研修制度の充実

多くの終身雇用を採用する企業では、従業員の長期的な成長を支援するため、充実した研修制度を設けています。新入社員研修から管理職研修まで、キャリアステージに応じた体系的な教育プログラムが用意されていることが多く、これらを通じて継続的なスキルアップが可能です。また、長期的な人材育成の観点から、留学や資格取得支援など、個人の能力開発をサポートする制度も充実していることが多いです。

社員同士の絆

長期間同じ職場で働くことで、同僚や上司との深い信頼関係を築くことができます。この強い人間関係は、職場の雰囲気を良好に保ち、ストレスの軽減やモチベーションの向上につながります。また、長年培われた人間関係は、業務上の協力体制を円滑にし、効率的な仕事の遂行を可能にします。さらに、こうした絆は仕事以外の場面でも生活を豊かにする要素となり得ます。

【従業員】終身雇用のデメリット

一方で、終身雇用制度には従業員にとっていくつかのデメリットも存在します。以下では、主な問題点について詳しく説明します。

スキル・経験の偏り

一つの企業で長期間働くことで、その企業特有のスキルや経験に偏りが生じる可能性があります。これにより、他の企業や業界で通用する汎用的なスキルの習得が遅れ、キャリアの選択肢が限定される恐れがあります。特に、急速に変化する技術やビジネス環境において、この偏りは大きな不利益となる可能性があります。

会社都合による退職のリスク

終身雇用制度は従業員に長期的な雇用を約束しますが、企業の業績悪化や倒産などの場合、突然の退職を余儀なくされるリスクがあります。特に、長年同じ企業で働いてきた中高年従業員にとって、新たな就職先を見つけることは困難な場合が多く、キャリアの断絶や収入の激減といった深刻な問題に直面する可能性があります。

専門性が獲得できない可能性がある

終身雇用制度では、ジョブローテーションによって様々な部署を経験することが一般的です。これにより幅広い知識と経験を得られる一方で、特定の分野における深い専門性を獲得しにくい環境となる可能性があります。専門性の不足は、個人の市場価値を低下させ、キャリアの選択肢を狭める要因となりかねません。

終身雇用制度は従業員に多くの利点をもたらす一方で、これらのデメリットも存在します。従業員は、これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自身のキャリア計画を立てることが重要です。また、終身雇用制度下でも、自己啓発や外部での学習を通じて、汎用的なスキルや専門性を身につける努力を続けることが、長期的なキャリア成功の鍵となるでしょう。

まとめ

終身雇用制度は、従業員の生活安定と長期的な人材育成を目的とし、高度経済成長期に定着しました。企業にとっては、採用コスト削減や組織力強化などのメリットがある一方、人件費高騰や組織の硬直化などのデメリットもあります。従業員にとっては、雇用安定や長期的キャリア構築のメリットがありますが、スキルの偏りや専門性獲得の難しさといった課題も存在します。現在、経済のグローバル化や労働者の価値観変化により、終身雇用制度は転換期を迎えており、企業と従業員の双方が新たな雇用関係の構築を模索しています。

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