「人材育成の仕組みが確立していない」「人材育成がうまくいかない」、そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?人を育てる時、最も重要なのは計画を立てることです。緻密な計画を立てることで、企業にとって理想の人材を育てられます。そして、その際に便利なのが「人材育成計画書」です。今回は人材育成システムの確立を目指す人向けに、人材育成計画や人材育成計画書についても徹底的に解説していきます。
人材育成計画の重要性、人材育成計画書の作成方法、使えるフォーマットも紹介します。
人材育成計画の重要性
そもそも人材育成計画とは、企業が求める理想の人材に成長させるための必要な項目を具体的に挙げたものです。計画に基づいて教育を行えば従業員1人1人の生産性が向上し、企業全体の業務効率も上がります。
生産性向上以外のメリットとして、教育の進捗状況が分かりやすい点が挙げられます。その人の教育がどこまで進んでいるのか一目瞭然なので、指導する側の負担が軽減されます。人材育成計画には今後の目標が確立されているため、指導される側にとっても自身の進捗状況を簡単に把握することが可能です。
また、少子高齢化やワークライフバランスの見直しなどにより、世の中の企業はさまざまな変化を遂げています。企業としても、人材育成計画によって教育システムを確立すれば、どのような環境にも適応でき、変化の激しい社会において生き残れるかもしれません。さまざまな課題を解決できる能力を向上させるためには、人材育成計画が必要不可欠です。
特に働き手が不足している現在、若手社員の戦力化は急務となっています。今後、経営戦略として人材育成計画を取り入れる場合は、企業全体でシステムを確立していくことが重要です。
人材育成計画を立てるのに必要な要素
人材育成計画を立てる際、ポイントを押さえないと「企業のニーズと合わない」「従業員のモチベーション維持ができない」といった事態が起こり得るため、注意が必要です。
組織の理念やビジョンなどが盛り込まれている
まず、人材育成計画で最も重要なのは企業理念やビジョンを取り入れることです。「世界を見据える人材を」「真心のある接客を」など、理念によって求めている人材は異なります。人材育成計画の大きな目的の1つは企業の求める人材を育てることにあるので、まずは企業の理念・ビジョンを再確認する必要があります。個人が達成した目標が企業の理念に自然と近づいているのが理想の形です。
将来の理想の人物像が具体化されている
計画倒れを防ぐためにも、理想の人物像が具体的に示されていることが重要です。具体化が難しい場合、「5年後どのような企業にしたいか?」をイメージしてみてください。その後、その企業へ近づくためには「5年後どのような社員が必要か?」を考えれば、理想像が見えてきます。
計画は具体的であるほど実現しやすいので、実際に働いている従業員から理想像を見いだす方法もあります。優秀とされている人材が持っているスキルなどをリストアップすれば、企業にとって必要な人材が分かるかもしれません。
ただし、実際にその目標を達成していくのは、育成される側です。育成される従業員がやりがいを見いだせる目標を設定しましょう。
現在の人材レベルに合致している
人材育成計画を成功させる秘訣は、頑張れば誰でも達成できる適度な目標を設定することです。そのため現在の人材レベルに合致しているか、確認する必要があります。その際、現在の企業及び従業員の強み・弱みを具体的に挙げてみてください。そうすれば現在の人材レベルと大きな差が生まれにくく、自社に合った人材育成計画となり得ます。
ただし、将来的に活躍できる人材育成を目的としているので、現在の業務状況だけに囚われず、視野を広げて従業員に目を向けることが重要と言えます。
目標が段階ごとに設定されている
目標をフェーズごとに設定することで、「やればできる」という従業員のやる気や達成感を生み出せます。人材育成は継続して行うことが重要なので、従業員のモチベーション維持は必要不可欠です。現在の状態から段階を踏んで理想の姿へ近付けるように、工夫して目標を設定してください。
人材育成計画の立て方|人材育成計画書の作成
人材育成計画を理解した上で、計画の実行には「人材育成計画書」、別名「OJT(On-the-Job Training)計画書」が必要です。現場での実務経験を通して教育するための計画書を指します。
指導は日常業務をこなしながら行う必要があるため、人材育成計画書があると業務の手を止めることなく指導を行え、非常に便利です。忙しい中でもスムーズに教育でき、若手社員の早期育成にもつながります。
人材育成計画書の作成には担当者と現場の従業員が協力することで、ノウハウを共有できるメリットがあります。同時に企業としての縦横のつながりを強めることも可能なので、人材育成計画書は組織が一丸になって取り組むことが非常に重要です。
一般的に人材育成計画は計画書として仕上げていきます。戦力となる従業員へ育てるために、以下の手順に従って作成してください。
計画の目標を設定する
フェーズごとに目標を設定する必要があるので、1カ月後・3カ月後…というようなフェーズで簡単過ぎず難し過ぎない目標を考えてください。難しい場合は最初の目標となる1カ月後と最終目標となる5年後、スタートとゴールを決めてからその間を埋めていくとよいかもしれません。
従業員のモチベーション維持のために、長期目標と短期目標を設定する方法も一案です。1カ月・3カ月という長期目標の間に、1日・1週間単位の目標を設けます。このように細かく段階を踏むことで、従業員の日々の成長を促せます。
現状を把握する
現在の人材レベルと合致しているか確認した上で、目標達成までにどれくらいの時間を要するか検討してください。部署・職種ごとにレベルのすり合わせを行い、あまりにも現状とレベルがかけ離れている場合は目標を再設定します。
また、計画と現状で大幅な差が生まれないように、人材育成計画書の完成後も現状把握はこまめに行う必要があります。
必要なスキルを洗い出して整理する
目標を設定したら、その目標達成に必要なスキルを洗い出していきます。案を出す際、種類や習熟日数に応じてあらかじめ分類しておくと、スケジュールを立てやすくなります。さまざまな案を出すために、部署や職種を超えて複数人で行うのが最善です。最終的には出たアイデアに優先順位をつけ、必要なスキルを整理していきます。
スキル獲得への手段を考える
外部講師による研修・先輩社員による座学・オンライン研修など、さまざまな方法でスキルを獲得できます。重要なのは企業にとって導入しやすく、従業員が参加しやすい方法であることです。例えばオンラインシステムが整備されていない企業であれば、対面による研修の方が向いています。
従業員の意向に沿った方が参加してもらいやすいので、アンケートや面談で希望を聞く方法も一案です。特にオンラインによるスキル獲得の需要も高まりつつあるので、希望に応じてオフライン・オンラインを使い分ける必要があります。
添削・対話を行う
実際に人材育成計画書が完成したら、上層部に添削してもらいましょう。これは人材育成計画が企業の理念に沿っているか、確認してもらうためです。
さらに、現場の人間にも確認してもらうことで、多方面からの意見を取り入れられます。必要であれば面談など、対話によって人材育成計画をブラッシュアップする方法も一案です。企業が長年利用できる人材育成計画書となるように、確認作業は徹底的に行いましょう。
人材育成計画書を作成する際の注意点
人材育成計画書を作成する際には、どのような点に注意をすればよいのか把握しておきましょう。
計画は必要に応じてアップデートする
人材育成計画書書はあくまでも計画書の一種なので、すべてをその通りに進めなければいけない訳ではありません。実際に目標達成ができているか否か、定期的に確認して改善することが大切です。PDCAサイクルを意識し、継続的に利用できる人材育成計画書を目指しましょう。
仕事への意味付けをしっかり行う
目標を設定して計画を立てる際、「仕事の全体像を捉えているか」「なぜその仕事(作業)が必要なのか」「なぜそのやり方なのか」の3点を意味付けしておく必要があります。
これら3点ががあいまいだと、従業員のモチベーションの低下を招く可能性があります。目標設定やスキルの洗い出しの時点で「それは本当に必要な仕事か」今一度、確認してみてください。
人材育成計画書のフォーマット
初めて人材育成計画書を作成する場合、フォーマットをうまく活用すると便利です。厚生労働省のホームページ「職業能力評価基準の策定業種一覧」「キャリアマップ、職業能力評価シートおよび導入・活用マニュアルのダウンロード」から、必要な資料を無料でダウンロードできます。ただし、あくまでも見本となる資料なので、企業理念などを取り入れて自社向けにカスタマイズする必要があります。
業種別”キャリアマップ”
キャリアマップとは理想的なキャリアへの道筋を図式化したものです。2021年5月時点では16業種が展開されています。さまざまな業種向けの資料が公表されているので、自社に最も合うものを選ぶことが可能です。習熟目安年数に基づいて目標が設定されているため、どのような目標を立てればよいか分からない場合に活用できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093584.html
キャリアマップ、職業能力評価シート及び
導入・活用マニュアルのダウンロード
職業能力評価基準のフォーマットサンプル・テンプレート
役割ごとに求められるスキルを具体的に記載しているのが、職業能力評価基準です。実際に教育の時に使用するチェックシートを評価シート、評価基準を記載しているものをサブツールと呼びます。どのような行動ができれば「レベル1」に到達しているのか、分かりやすく記載されています。2021年5月時点で展開されているのは、サービス・建設・金融など9職種・56業種です。ちなみに、職業能力評価シートは昇給・昇格の選定基準としても活用できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093991_00001.html
職業能力評価シート(事務系職種)のダウンロード
人材育成計画を実行するにあたり各社員に最適な手段
各社員に最適な手段を提供することで、目標達成により近づけます。
新入社員向け
人材育成計画は従業員の定着率アップにも有効な手段となり得ます。実は「このまま企業にいても成長できない」ことを理由に、新卒3年以内で離職する人が数多く存在します。人材育成計画によって段階的にやりがいを感じさせられれば、従業員の退職を防げるかもしれません。そのため将来有望な従業員を手放さない目的で、新入社員向けに人材育成計画を実行するケースが多く見られます。
内定時・入社時の集団研修
新入社員全員の成長を促せるため、内定時・入社時に研修を行う企業が増えています。この時期の研修によって企業で働く不安を払拭し、内定辞退を防げるメリットもあります。参加者を飽きさせないようにディスカッションやゲームなどを取り入れて、体験型研修にするとよいかもしれません。
外部講師によるビジネスマナー講座などが代表的な例です。その他に企業の経営層や従業員が講師を担当することで、将来像をイメージさせられます。
OJT
研修における時間やコストを削減したいなら、OJTを取り入れる方法もあります。教育することで教える側の成長も促せるため、中堅従業員の育成にもつながります。担当者によって教育に差が生まれないように、人材育成計画を周知することが大切です。また、個人によって成長スピードはさまざまなので、その都度臨機応変に対処する必要があります。
中堅社員向け
中堅社員は日常業務をこなしながらスキルアップする必要があるので、オンライン研修など気軽に参加できるものが向いています。オンラインなら時間・場所を制限しない分、忙しい中でも参加しやすいメリットがあります。
スキルアップ研修
語学やプログラミングなど、業種・職種に応じて求められるスキルはさまざまです。今後企業のためにどのような人材になってほしいのか考えた上で、研修を開催する必要があります。現状の問題点を洗い出しながら、従業員のレベルに応じてステップアップできるものが理想的です。
その際、全く違う業種から講師を呼ぶ方法があります。例えば飲食関係の企業にホテル業界の講師を呼び、より丁寧な接客を学ぶ研修が挙げられます。自社と異なる業界人による研修は新たな刺激を生み、従業員の成長を促せるかもしれません。
メンター制度
メンター制度とは、簡単に言えば社員の相談役です。上司に言えないような悩みを聞き、アドバイスするのが主な仕事です。成長を促すと同時にメンタルケアを行い、多方面から新人をサポートします。気軽に相談できる点に意味があるため、上司やOJT担当ではなく先輩・後輩という体制にすることがポイントです。
タイムマネジメント研修
忙しい中堅社員ならではの研修として、タイムマネジメント研修が挙げられます。これは日々の自身の時間の使い方を見直すものです。ワークライフバランスの見直しにもつながり、中堅社員が今後の働き方を考えるきっかけとなり得ます。
リーダー・管理職向け
企業内で地位が上がるほど、これまでとは違った働き方や考え方が求められます。労働者としてだけではなく、経営者として組織全体のことを考えて業務をこなす必要があります。そこで、研修によってリーダーとしての新たなスキルを身に付けてもらうことが大切です。
リーダーシップ研修
リーダーシップ研修は、管理職として必要な教育手段と言えるでしょう。現在リーダーの人だけではなく、管理職志望・管理職候補の人が参加することもあります。
具体的には理想の上司像・リーダーに求められる役割などを学べると、管理職としての意識がより一層高まる研修です。
経営戦略研修
分析方法・戦略の立て方・スケジューリングなどを学べる、経営戦略研修もリーダーや管理職に向いています。経営者ならではの考え方を学べるので、企業の今後を左右する重要な人材を育てることが可能です。
組織状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ
「ラフールサーベイ」は、社員のメンタル、フィジカル、エンゲージメントをはじめ、組織との関係やハラスメントリスクなど、組織状態の可視化に役立つツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい部分を包括的に可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。
社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
まとめ
人材育成計画は企業理念や現場の声を参考に目標を設定し、随時改善することが重要です。人材育成計画が完成したら、まずはリーダーや管理職、その後に中堅社員・新入社員と上から下へ実践することが成功の秘訣です。企業のトップに立つ人間が見本となることで、自然と従業員も企業が求める人材へ近づいていきます。社員のレベルが向上すれば企業としての力も増し、さらなる発展を目指すことが可能です。