【イベントレポート】「今、真剣に考える。少子化が進む日本にとっての新卒採用と学生の価値観のリアル」~選ぶ側から選ばれる側への急速な変化に日本企業はどう戦うのか~

昨今、企業の価値を世の中に示すひとつの大きな要素として、「企業で働く従業員が心身共に健康であり、幸福を感じて働くことができる状態になっているか」が、日本でも注目を集めています。その概念が”ウェルビーイング”であり、一般的に”ウェルビーイング”とは、精神的、身体的、そして社会的に心身ともに健全な状態を指します。

また、2023年には、上場企業による人的資本の情報開示が義務化となり、統合報告書などによる非財務情報の開示をする企業が多く見受けられました。生産年齢人口が減少し、ひとりひとりの生産性を高めることが急務になってくる時代において、人的資本経営をはじめ、ウェルビーイング経営実現の重要度はより高まっていきます。

そこで当社は、ウェルビーイング経営の最先端情報から、リアリティのある取り組み、成功事例を広くシェアし、日本社会全体のウェルビーイングの意識を一歩先に進めたいという思いから、昨年に続き『Well-Being Workers®︎ Awards 2024』を開催しました。

本稿では、北海道大学特任教授 吉野正則氏をお招きし、株式会社ラフール執行役員大木と基調講演を行いました。「今、真剣に考える。少子化が進む日本にとっての新卒採用と学生の価値観のリアル~選ぶ側から選ばれる側への急速な変化に日本企業はどう戦うのか~」をテーマにお伝えします。

北海道大学
特任教授/産学・地域協働推進機構
社会・地域創発本部 本部長  吉野 正則

北海道 佐呂間産まれ(1957年)

1980年 日立製作所入社、アメリカ駐在を経て、Audio/Visual の商品企画、マーケティング、事業企画を担当。インフラ、ヘルスケア等の新事業創出事業を推進。2015年から、文部科学省/JSTの北海道大学COI『食と健康の達人』拠点長 2016年 日立北大ラボ 初代ラボ長、2021年からCOI-NEXT(共創の場)で「こころとカラダのライフデザイン」プロジェクトリーダー。若者が”他社(ひと)とともに、自分らしくいきる社会”の実現を、学生、若者とともに創っていくことを目標としている。ヘルスリテラシーとジェンダー意識の低い日本で、プレコンセプションケアを自分事にできる研究開発、社会実装、人材育成を目指している。2022年4月より、北海道大学 社会・地域創発本部 本部長を兼務し、北大全体のオープンイノベーション事業を担当する。

株式会社ラフール
執行役員 Well-Being事業部 部長
ISO30414 リードコンサルタント/アセッサー 眞木 麻美

新卒で広告代理店経験後、2012年にリクルートグループの人材領域カンパニーに入社。営業、キャリアアドバイザーの他、業務企画や新規事業開発など幅広く経験。特に社内における業績悪化時の業務設計や従業員ケアなどで多くの部署を経験。2019年10月に株式会社ラフールにジョイン。インサイドセールスチームの立ち上げに従事。現在はセールス・マーケ・CSの属するプロダクトマーケティング事業部の部長をやりながら顧客へのアドバイザーとしても活動。

少子高齢化と日本企業の危機

眞木:
最後のセッションでお迎えするのは吉野さまです。吉野さまは1980年の日立製作所入社後、アメリカ駐在を経て、商品企画やヘルスケアなどの新規事業創出に携わってこられました。2015年からは、北海道大学特任教授としてもご活躍中です。本日は、「今、真剣に考える。少子化が進む日本にとっての新卒採用と学生の価値観のリアル~選ぶ側から選ばれる側への急速な変化に日本企業はどう戦うのか~」というテーマでお話しいただきます。

吉野:
北海道大学の吉野といいます。今日はラフールさんと一緒に、子供たちの価値観の変化に関して、一緒に考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

これは、日本の人口の変化を表しています。2008年ぐらいがピークで、このまま行くと、5000万人になるといわれていますが、急激に減ると、いろいろなところにずれが生じてきます。

最近、日本の教育や学びは、自分が大学を出た40年前とあまり変わっていないんじゃないかと不安になっています。かつては人材を代替可能なコストとして扱うことがありました。今は一人一人が大切になる時代なのに、学校も企業も、そうなってないことに気づいたのです。

分母が減れば、生産人口を増やすしかありません。今までは会社の中のミッションだったけれども、社会の中での自分のミッションと捉えて、いろいろなところで働く時代にしないといけません。兼業、副業が増えてきているのも、そういうことだと思うのです。

いま0歳が少ないわけだから、今後20年間は黙っていても人口が減っていきます。一方、世界では子供たちが増えている。日本とは真逆のことが起こっているのです。国内の需要が減ると、企業は外へ出ていかざるを得なくなる。それに釣られて学生も出ていく。そう考えていくと暗くなるので、私は、世界の人たちが日本に来て学んだり働いたりできるように、何かできないかと考えています。

日本は大学に進学する人が50〜60%です。高校卒業後に入って、卒業すると就職するケースがほとんどです。他の国では大学在学中にギャップイヤーがあったり、企業に入ってからまた大学に戻ったりする。いつまでも一緒に学んでいくということができます。日本でもそうなっていけば、世界で戦える感じになるんじゃないかと思います。最近では新卒採用をやめる会社も出てきましたね。日立製作所も中途が多いですし、日本人は4割を切っています。

眞木:
実際、吉野さんが学生を見られていて、世界に出ていきたいという傾向を感じられますか?

吉野:
日本の企業は仕事のバリエーションが少ないようです。高校生や親御さんと話をしていても、大学から留学したい、機会があれば海外で学びたいという人が増えてきています。 かつて世界的な大企業といえば日本の会社が多かったのですが、今はGoogleやAmazonなど海外勢が目立っています。給料もかなり高くなってきているようです。

新卒採用と学生の価値観のリアル

眞木:
今の学生にとって選びたくなる企業とはどんな企業でしょうか。私は今、ラフールでも新卒採用をやっていますが、「学生さんはよく考えているな」という印象があります。みなさん話をするのがうまいですし、学生の価値観が変わってきている感覚があります。

ここからは、調査結果を基にお話を進めていきましょう。若手に「働く上で企業に求めるものは何ですか?」と聞くと、「長期的な安定性や将来の成長性」と答える人が多いです。一方で、数年前にはなりたい職業のトップが公務員だったのに、今は内定辞退率が非常に高いそうですね。

吉野:
某市役所では、4割の人が内定を辞退すると聞いています。

眞木:
今の学生さんの「安定」や「安心」というキーワードの意味は、地位や収入ではなく、社風が自分と合っているかどうかに紐付くわけですね。

吉野:
社風は会社に入るまではわからないし、部署にも大きく依存します。学生さんに「どういう情報が欲しいか」と聞くと、ほとんどが「うまくいった先輩の日記が欲しい」といいます。学生が目指している人がどういう大学生活をしていたか、その先がどうなのか、つながれるものが欲しいということでしょう。入る前から、失敗しないようレールを考えているのです。社風が合っているか、価値観が合っているかということも、そういう意味だと思います。

眞木:
自分がその道を歩いていったときに、間違えないか、楽しくいられるかどうかを、入る前に確認したいということですね。

吉野:
ゲームをするにも、ゲームのクリアの仕方を学んだ後にゲームを始める人が多いようです。「それって楽しいのかな」と思ってしまいますが。どんなことにもチャレンジしてほしいという採用側の期待とは違ってきている。

それから、日本人は職業というと会社名が先に来る傾向があります。本来は、どこの会社にいようが、何をやっていようが、自分は人を助けたいとか、子供に貢献したいとか、「ジョブ」で考えられるとよいのですが。

眞木:
ラフールサーベイでご支援していても、何をしたいかわからない、とりあえず仕事に就くという感覚があります。特に会社のブランドイメージが高いと、自分よりも先に会社の名前が出てくる。日本人の慣習として多分にあると思います。

吉野:
それに、所属とか生まれとか血液型とか、人をフレーミングしがちですよね。

眞木:
相手の本質やキャラクターを本当に知りたいとき、採用選考でもそうだと思うのですが、どこの大学出身でどういう部活に入っていて。そこで役割がどうだと、そのフレームから相手を評価して採用する手法が、日本ではいまだに残っています。社風が合っているかどうかが若い方たちの要望だとすると、そのフレームはあまり意味をなさないと思うのですが。

吉野:
好きなものを探して仕事にできればいいですが、なかなかそうもいかない。目の前から振ってくる仕事も一杯あるわけです。それを好きか嫌いかという軸ではなく、「これは譲れない」というものをもって選んでいくやり方もあると思います。恋愛でも最初に好きなところで選んでいくと、あとは減点されるだけです。でも「ここはちょっと」というところだけお互い納得していれば、そこからは加点です。

軸を持つのはなかなか難しいし、時代とともに変わっていけばいい。人に見せる軸も、違ったものがあっていいと思うときがあります。アメリカで「俺は10個の名前を使ってFacebookやっている」と聞いたときは、目から鱗でしたね。

日本は仕事と本人のキャラクターを結びつけがちで、仕事ができない人は人間的にも弱いと見られてしまう。しかしアメリカにいたとき、彼らは仕事で5時までは大喧嘩するけれども、5時になったら仲良く食事に行ったりする。仕事は分けられるということを言いたいです。それを許容できる会社がいいんでしょうね。

眞木:
「今の若い子は宇宙人みたいで価値観がわからない」とおっしゃられる方も多いですが、海外の価値観に影響されている部分も多そうな気がします。

吉野:
いつの時代も、若い人は常に年上の人からそう言われるんじゃないでしょうか。若者が作っていくことを推してあげるといいんです。そんな人がいるところが、安心できるところなのかもしれませんね。

眞木:
次に、就職観の変遷を見ていきたいと思います。これを見ていると、1番上のグラフのところで、「楽しく働きたい」という希望が圧倒的に大きいです。新卒担当の方は悩みますね。楽しくってなんだろうと。

吉野:
楽しくというのも変わってきているんでしょうね。バブルの頃、確かに経費は使えましたが、給料が上がっているわけでもないですし、意外とモチベーションで変わるんだろうと思います。最近では、コロナ禍を経て働くということをもう一度見直せた人もいたでしょう。リモートワークが始まると、通勤時間を他のことに当てられます。

眞木:
この23卒から24卒の間では、「収入さえあればいい」という人がグっと上がっていますね。副業をするなど、一つの仕事に縛られない働き方を選択していかれる方も、増えてきたのかもしれません。

吉野:
個人的には、ベーシックなもので暮らせて、それ以外のこともできるのなら、働き方としてはいいんじゃないかと思います。一つの職業は、ベースの給料をもらうためだと割り切ったら、空いている時間でやりたい仕事、例えば農業をやってもいいわけですから。

眞木:
ちなみに採用する会社側は、選ばれる会社になるためにも、副業を許容した方がいいと思われますか?

吉野:
個人的には許容した方がいいと思います。働くということに関しては、自由な方がいい。本来は会社の中で、閉じて何かをやっていくよりは、外に繋がるような働き方ができる方がいいと思います。採用する側もそういうことができる人を採用していきたいと思っているんじゃないでしょうか。その流動してく人たち自身も、一種の仲間って考えていく方が、一つの業界の中で何かを作っていくよりも、知らない人たちに出会うことができる会社になる方がいい。出たり入ったりできる、戻ってきても優しい。いつでも戻れる会社は面白いと思います。

眞木:
そういう優秀な方をシェアしていくことで、会社は良くなっていかれると思いますか?

吉野:
絶対そう思うし、新しい産業を創るとなれば、さまざまな会社が集まらないとできません。人口が減ると、内需だけでやっていけなくなることもあります。世界の会社と、世界のニーズに追いついていくように考えていくことになると思います。

眞木:
海外からも、日本で働きたい学生を受け入れていくことが必要だということですね。

吉野:
そう思います。大きなダイバーシティという気持ちはあります。

<入社後のフィット感をずらさないためには?>

眞木:
難しいご質問になるのですが、入社後のフィット感をずらさないためのすり合わせは、何をしていくのがよいのでしょうか?

吉野:
ある会社では、何歳か上の人とペアをつくって、悩みを聞く仕組みがあるそうです。また、アメリカの会社で、研修期間が6カ月というところがありました。長い研修期間を持つというのは、会社としてはいい手だという気がします。長い研修の中で適性を見ていくことで、こういうことが向いていると本人も気づく。そんなフリーな時間があることで、お互いの満足度が上がる気がします。

眞木:
ちなみに、時間をかけても擦り合わない場合とか、そもそも入り口が間違っていたということもあるのでしょうか。どこは事前にすり合わせておくべきで、どこは入社後に歩み寄ればいいという、そのボーダーはありますか。

吉野:
自分には、どうしてもできないことはあると思います。例えば私の場合は営業的なセンスがない。でも、部署名だけではわかりませんよね。そういう意味では、一緒に作っていくのがいいような気がします。

会社としては入ってきてくれて嬉しいわけですから、育てていこうという気持ちはある。だから、いろいろと聞いてくれると思います。その中で、どうしても自分ができないとか、やりたくないとか、自分は違う方向が合っていると思ったら、ジョブが自分の目指すものだから、「この場所でなくてもいいんじゃないかな」と考えた方が幸せだと思います。

副業や兼業をしながら合うものを見つけていくのもいいでしょう。でも、目の前にあるものを今日やろうかということだけでも、いいような気もします。3年後を考えてもわからないし、今が充実していて、朝起きて元気だなということが続くことが、いいことのような気がします。

眞木:
最後に吉野さんから、今、大学生に向き合って採用担当をされていらっしゃる方に、一言メッセージがあれば、ぜひお願いします。

吉野:
若者は圧倒的に心に秘めている力があると思うので、それを引き出せるかどうかは私たちの力に大きく依存すると思います。優しい気持ちで長い目で見てあげてほしいですね。

眞木:
ありがとうございます。会社の経営を思うと、ついつい明日成果が出ることばかりを期待してしまうのですが、常に信頼し、成果が出るまで長い目で支援をしていくというのも、私たちに課せられた課題なのかなと思います。

吉野さん、今日はお時間いただきましてありがとうございました。

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執筆者

株式会社ラフール

編集部員

株式会社ラフールの中の人。部員持ち回りで執筆をしています。採用から定着まで。採用適性検査「テキカク」と組織改善ツール「ラフールサーベイ」でウェルビーイング経営の実現を本気で支援しています!

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