サクセッションプランとは?作り方や成功事例などを詳しくご紹介!

サクセッションプランの後継者候補を探す

近年、企業が長期的に成長するために必要な「サクセッションプラン」の取り組みが注目されています。 この記事では、サクセッションプランの意味や注目されている理由、基本的な作り方、成功事例・有価証券報告書における開示例などについて詳しく紹介していきます。

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サクセッションプランとは?

サクセッションプランの意味

サクセッションプランとは、企業の経営層や事業を取り仕切るリーダー層を後継する次世代の人材を育成するための「後継者育成計画」のことを指します。

欧米では先行して主流な考え方として定着しており、サクセッションプランニング(=succession planning)と呼ばれています。

優秀な人材をCEOや経営幹部の後継者として前もって計画的に育成することで、企業を経営するに当たって重要となるポストをスムーズに次世代へ引き継ぐことができます。

サクセッションプランと研修等による人材育成の違い

サクセッションプランと一般的な人材育成の違いとしては、「対象となる人材」「指導の担当者」「育成の内容」といった面が挙げられます。

一般的な人材育成では、全ての社員を対象として研修等が行われますが、サクセッションプランにおいては、まず社内全体の人材を選別し、後継者に相応しい優秀な人材のみを育成の対象とします。

指導の担当者に関しては、一般的な人材育成は主に人事部や部署の先輩社員を中心として行われますが、サクセッションプランは経営層主体で計画の立案や指導が行われます。

育成の内容としては、一般的な人材育成では主に業務に役立つスキルや経験、考え方を教育することに対し、サクセッションプランではグループを横断した長期的な経営の目線に立ち、企業を動かしていくことのできる経営者像に近づくためのスキルや経験、考え方を指導します。

サクセッションプランの目的と必要性

サクセッションプランは、経営層などの企業の中心を担う役職を適切な時に優秀な後継者へ引き継ぐことで、企業を持続的に成長させ、中長期的に企業価値を向上させることが目的です。

経営層の代替わりは企業に与える影響が非常に大きいため、様々なリスクを低下させるためにも常日頃から後継者の育成や人財の持つスキルの傾向などを把握しておくことが必要です。

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サクセッションプランが重視されている理由

続いて、サクセッションプランが重視されるようになった理由や出来事について詳しくご紹介します。

コーポレートガバナンスコード

コーポレートガバナンスとは、「企業統治」を意味するものです。つまり、企業がステークホルダーである「株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み※」のことを指します。

2015年に東京証券取引所によって策定されたコーポレートガバナンス・コードは、この仕組みを実現するための原則や行動規範、指針をまとめたものです。

このコーポレートガバナンス・コードは2018年6月に改訂され、「サクセッションプラン」についての記述が追加されるようになりました。

詳しい内容としては、「補充原則4-1③ 取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。※」等の記載があります。

サクセッションプランにおいて、後継者の育成に関しては「取締役会」を、幹部候補者の絞り込みや指名に関しては「報酬・指名の諮問委員会」を設け、管理監督を行うことも推奨されています。

このように、コーポレートガバナンス・コードの改訂により、サクセッションプランへの注目度が高まったことが伺えます。

【引用元】改訂コーポレートガバナンス・コードの公表 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

ISO30414

さらに、ISO30414の存在もサクセッションプランが重視されるようになったきっかけの一つです。

2018年12月に国際標準化機構(ISO)によって定められたISO30414は、人的資本の情報開示に関する国際的な規格のことを指します。

2020年には米国証券取引委員会(SEC)が一定の条件を満たす企業に対して人的資本の開示を義務付け、このISO30414が人的資本の開示におけるフォーマットとして増々注目されるようになりました。

ISO30414の中には、「succession planning」の項目が設けられており、サクセッションプランに関して、「後継者の有効率」「後継者カバレッジ率」「後継者準備率」を開示を行う上での指標として挙げています。

人的資本の開示義務化

日本でも、ESG投資やSDGsに対する注目度の高まりを受けて、2023年度から上場企業に対して人的資本に関する情報を有価証券報告書内において開示することが義務付けられました。

サクセッションプランは、人的資本に関する情報を開示する際に記載することが推奨される7つの任意開示項目「流動性」の内の1つの構成要素として挙げられています。

そのため、日本の企業においてもサクセッションプランへの注目度が急速に高まっていると考えられます。

サクセッションプランのメリット・デメリット

サクセッションプランは企業にとって重要であることがわかりましたが、サクセッションプランによって発生するメリットやデメリットにはどのようなものが考えられるのでしょうか?

サクセッションプランニングを実施するメリット

第一に、サクセッションプランニングを実施すると、経営層の辞職に伴う社内の混乱や業績の低下を防ぐことができます。経営層が居ない期間には、事業に関する重要な意思決定を行うことが難しくなるため、社内や事業運営の混乱に繋がる可能性があります。サクセッションプランを進めていれば、このような混乱を防ぐことが可能となるのです。

また、企業の方針や文化に一貫性を持たせやすくなるというメリットもあります。サクセッションプランによって、経営に関する考え方や意思決定を行う際のポイントを後継者となる人財が継承していくことになるからです。

加えて、経営層に必要なスキルや経験などを見える化し、人材育成や採用活動に活かすこともできます。これは、従業員の目指すべき方向性を明確にし、一人一人の成長意欲を高めることにも繋がるため、組織の活性化や人材の定着といった効果も期待できます。

サクセッションプランニングを実施するデメリット

一方、大きなデメリットとしては、中長期的に人材育成を行うため、多くの費用や手間がかかるということが挙げられます。経営層として人財を育成するためには10年近い時間をかけて、企業全体の経営戦略に合わせて計画を進めていくことが一般的です。

同時に、時間をかけて候補者として育成した人材が退職した場合には、かけた労力や費用が全て無駄になってしまうというリスクもあります。

また、後継者候補になれなかった従業員の意欲低下による生産性の低下、退職のリスクが発生する可能性もあるため、それらの従業員に対するサポートの仕組みも整えていく必要があるでしょう。

サクセッションプランの基本的な作り方-経済産業省7つのステップ-

経済産業省は、「指名委員会・報酬委員会及び後継者計画の活用に関する指針-コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン) 別冊-」(2022年7月19日)において、後継者計画の策定・運用に取り組む際の7つの基本ステップを紹介しています。そのステップは以下の通りです。

サクセッションプランの後継者候補の評価
  1. 後継者計画のロードマップの立案
  2. 「あるべき社長・CEO 像」と評価基準の策定
  3. 後継者候補の選出
  4. 育成計画の策定・実施
  5. 後継者候補の評価、絞込み・入替え
  6. 最終候補者に対する評価と後継者の指名
  7. 指名後のサポート

サクセッションプランを作成する際には、上記の基本のステップを参考にしつつも、自社や候補人材の状況に合わせて柔軟に変化させ、自社独自のサクセッションプランのテンプレートを作成していくことが大切です。

【引用元】コーポレートガバナンスに関する各種ガイドラインについて (METI/経済産業省)

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サクセッションプランの成功事例・開示例

サクセッションプランの成功事例として、金融庁が発行する有価証券報告書における情報開示の「好事例集」に取り上げられている企業についてご紹介します。

オムロン株式会社

オムロンは、サクセッションプランに関する取り組みとして、社長指名諮問委員会という組織を設置しています。この組織は社長が指名した人財で形成されており、緊急事態が発生した際の継承プランやサクセッションプランについて毎年審議を行うなどの活動が進められています。

オムロンは、人的資本に関する開示の面でも金融庁から「好事例」の1つとして取り上げられている企業です。明確なサクセッションプランに関する情報は開示されていませんが、「次世代リーダーの育成による女性活躍の推進」を経営の重点戦略に位置付けて、人的資本に関する取り組みを進めています。

花王株式会社

花王では、サクセッションプランを経営における最も重要な課題として位置づけ、取締役会や取締役・監査役選任審査委員会で継続的に議論を行っています。その際には、将来の経営環境を予測した上で人財要件や必要なスキル・経験を明らかにし、後継者候補を管理・育成しています。

開示に関しては、花王もオムロンと同様に「好事例」の1つとして取り上げられています。「次世代リーダーの持続的育成」という項目を設け、重要ポジションの将来の後任候補となる人財を早い段階から見出し、計画的に育成していく方針を示しています。また、これに関する指標として、「後任が必要なポジションに対し、計画されている候補者の数(倍率)」の目標を掲げています。

セイコーエプソン株式会社

セイコーエプソンも「好事例」として取り上げられており、過半数が社外取締役で構成される取締役選考審議会・取締役報酬審議会を設置していることを開示しています。この組織において、後継者計画の策定や役員の指名プロセスの検討、ロードマップの確認、候補者の選出、育成計画の策定・実施、候補者の評価・絞り込み・入れ替え、役員報酬制度、基本報酬・賞与の個別支給額の確認などを行っており、前章でご紹介した「経済産業省7つのステップ」を意識したサクセッションプランが作成・実施されていることが伺えます。

人材育成においては、年に一度それぞれの組織において要員状況の確認や重要ポジションの要件定義を行い、後継計画に反映しています。加えて、将来の経営層や管理職層の候補となる人財をリストアップし、育成計画を進めることで、社員の成長や生産性の向上に繋げています。

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

エヌ・ティ・ティ・データも、「好事例」として取り上げられている企業です。海外事業の拡大や、市場や環境の変化に柔軟に対応していくため、「グローバルに活躍できる幹部人財の育成」を軸として取り組みを推進しています。ここでは、世界中にあるグループ会社が「合同」で経営層を育成するプログラムを実施し、サクセッションプランを進めていることが特徴です。

これに対応する指標としては、「グローバル経営人財育成プログラムの新規修了者」を掲げており、設定した次年度の目標人数や今年度の実績を合わせて開示しています。

まとめ

サクセッションプランは、企業が成長しつづけるために必要な取り組みであることがわかりました。

サクセッションプランを活用し、取り組みを進めるだけではなく、適切に開示も行っていくことで、企業価値の向上に努めていきましょう。

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