近年、労働市場の流動化や働き方の多様化に伴い、社員の離職はどの企業でも大きな課題となっています。特に中小企業では、離職者の増加が組織運営に直接的な影響を与えるケースも少なくありません。本記事では、離職防止がなぜ重要なのか、離職の主な原因、そして企業が取り組むべき具体的な対策方法までを、データとともに徹底的に解説します。社員の定着率向上を目指す人事担当者・経営層の方は、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ今「離職の防止」が重要なのか?
離職防止は「リテンション」や「リテンションマネジメント」とも呼ばれ、組織にとって重要な経営課題となっています。
特に少子高齢化の進行と人材確保競争の激化により、一度採用した人材を定着させ、活躍してもらうことが企業存続のカギとなっています。
厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、令和5年1年間の入職者数は8501万2000人、同年の離職者数は7981万人で、前年と比べると、離職率は0.4 ポイント上昇しています。
離職を防ぎ、「採用する→辞める」サイクルを断ち切ることが、企業の持続的成長には不可欠なのです。

社員の離職を防止できないと生じるリスク
コスト増加
社員一人が離職すると、新たに採用・育成するためのコストが発生します。金銭面のみならず、離職者が出ると、その穴埋めを既存社員がカバーせざるを得ない状況が生まれます。
これが続くと、業務量増加によるストレス、さらには連鎖的な離職を引き起こす悪循環に陥るリスクも高まります。結果として、組織全体のモチベーション低下、パフォーマンス悪化へとつながってしまうのです。
これらはすべて目に見えない経営コストとして企業に重くのしかかります。特に即戦力社員の離職は、業務の停滞や売上減少にも直結し、ダメージが非常に大きくなります。
人材流出
長期間働く従業員は、企業のプロセスや文化について深い知識を持っています。これらの知識が失われると、業務の効率が低下し、ひいては企業の競争力にも影響を与える可能性があります。
顧客満足度の向上
経験豊富な従業員は、顧客との関係を築き、信頼を得ることが容易です。従業員の離職が増えると、顧客との関係が途切れがちになり、満足度の低下につながります。
チームの安定
高い離職率は、職場の士気やチームのダイナミクスにも悪影響を及ぼします。安定したチームは協力しやすく、生産性も高くなります。
企業イメージの低下
離職率が高い企業は、労働市場での評判が悪くなり、優秀な人材を引きつけるのが難しくなります。逆に、従業員が長く働き続ける企業は、求職者の間で魅力的な存在となります。
離職の主な原因とは?
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、令和5年の転職入職者が前職を辞めた主な理由は、男性では「定年・契約期間の満了」(16.9%)に次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」(9.1%)が挙げられました。一方、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」(13.0%)、次いで「労働時間・休日などの労働条件が悪かった」(11.1%)が挙げられています。
また、前年と比べた離職理由の増加幅では、男性は「仕事の内容に興味を持てなかった」が2.9ポイント、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」が2.6ポイントと、いずれも大きな伸びを示しています。
離職防止の対策
働きやすい環境の整備
働きやすい環境の整備は、社員の生産性を向上させるために欠かせない要素です。以下に、具体的な4つの施策について紹介します。
フレックス制度
フレックス制度とは、従業員が自分のライフスタイルや業務内容に合わせて働く時間を自由に決めることができる制度です。通常、コアタイムと呼ばれる一定の時間帯に就業することが求められますが、それ以外の時間帯は各自の裁量で勤務時間を設定できます。
この制度により、仕事と生活のバランスを取りやすくし、従業員のモチベーションや生産性を向上させる効果が期待されます。近年、多様な働き方が求められる中で、フレックス制度は多くの企業で導入が進んでいます。
テレワーク・在宅勤務
テレワークや在宅勤務は、通勤時間の削減や職場でのストレスを軽減するための重要な手段です。これにより、従業員は自宅や他の場所から柔軟に働くことができ、家庭や生活とのバランスを取りやすくなります。テレワークの導入により、働く意欲やモチベーションが向上し、業績向上にもつながります。
メンタルヘルス対策
社員のメンタルヘルスを維持・向上させるため、カウンセリングやメンタルヘルスケアプログラムを提供することが重要です。ストレスチェックや社員同士のコミュニケーションの促進を図り、心の健康を守る取り組みを強化します。メンタルヘルス対策を充実させることで、社員の満足度やパフォーマンスが向上します。
オフィス環境の改善
オフィス環境の改善は、従業員の満足度と生産性を向上させるために非常に重要です。まず、快適な作業スペースを提供することが基本です。また、共有スペースやリフレッシュエリアを設けることも、従業員同士のコミュニケーション促進が期待できるため、従業員のストレス軽減に役立つでしょう。
従業員のエンゲージメント向上
従業員のエンゲージメント向上は、企業の成功にとって不可欠です。エンゲージメントの高い従業員は、仕事に対する満足度が高く、生産性も向上します。ここでは、従業員のエンゲージメントを高めるための具体的な施策について紹介します。
能力開発・キャリア支援
従業員のエンゲージメントを高めるためには、能力開発とキャリア支援が非常に重要です。研修プログラムやメンター制度を導入し、従業員が自分のスキルを向上させる機会を提供しましょう。部下をもつ社員に対して、マネジメントスキルも向上させる機会を与えることも、企業全体にとってメリットをもたらします。
また、キャリアパスの明確化や昇進のためのロードマップを示すことで、従業員が自身の成長を実感できる環境を整えることが重要です。
コミュニケーション活性化
オープンなコミュニケーションを促進することで、従業員のエンゲージメントは大幅に向上します。定期的なミーティングや情報共有の場を設け、意見交換が活発に行われる環境を作りましょう。また、社内SNSやチャットツールを活用して、部門間や上下関係を越えたスムーズなコミュニケーションを促進することも効果的です。
従業員の意見を取り入れる仕組み
従業員の意見を積極的に取り入れる仕組みを構築することも、エンゲージメント向上に寄与します。
アンケート調査やフィードバックセッションを定期的に実施し、得られた意見やアイデアを業務改善や組織運営に反映させることで、従業員は自分が組織に貢献していると感じることができます。また、提案制度を設けることで、従業員が自主的に改善点を見つけ出し、提案する意欲を高めることができます。
報酬制度の見直し
報酬制度の見直しは、企業が従業員のモチベーションを向上させ、生産性を高めるための重要なステップです。効果的な報酬制度は、従業員の満足度を高め、優れた人材の維持や新たな人材の獲得にも寄与します。
ベースアップ
ベースアップとは、社員の基本給を一律に引き上げることを指します。
企業が継続的な成長を遂げるためには、優秀な人材の確保と従業員のモチベーション維持が不可欠です。そのため、定期的なベースアップは従業員の生活を安定させるだけでなく、企業の競争力を高める重要な要素となります。
業績連動・成果給
業績連動・成果給は、企業の業績や従業員の個別の成果に基づいて報酬を変動させるシステムです。この制度は、社員の努力や成果が直接報酬に反映されるため、モチベーションの向上に繋がります。また、企業側も業績向上を目指すインセンティブが強化されるため、双方にとってメリットがあります。
福利厚生
福利厚生とは、企業が従業員に提供するさまざまな待遇やサービスを指します。これには、健康保険、年金、休暇制度、教育支援、育児・介護支援などが含まれます。
福利厚生は、従業員の生活と仕事のバランスを保つために不可欠な要素であり、また企業にとっては優秀な人材を引き留め、魅力的な職場環境を提供するための重要な手段です。従業員が安心して働ける環境を整えることで、企業全体のパフォーマンスにも良い影響を与えることが期待されます。
離職防止対策の進め方と注意点
自社の離職率を把握する
まずは自社の現状を正確に把握しましょう。
- 年間の離職率
- 部門別、年代別の離職傾向
- 離職が集中している部署・職種
これらを可視化することで、問題のあるポイントが明確になります。
従業員が持つ不満を把握する
社員アンケートや1on1面談などを通じて、現場でどんな不満が蓄積しているのかを把握します。注意すべきは、表面的な不満だけでなく、「本音」を引き出す工夫が必要な点です。
匿名アンケート、外部カウンセラーによるヒアリング など、社員が安心して本音を語れる仕組みを作りましょう。
退職理由を調べる
退職者から退職理由を聞き取ることも重要です。ただし、退職者が本音を言わない場合も多い点に注意が必要です。
建前:「スキルアップのため」
本音:「上司との関係に耐えられなかった」
といったケースは非常に多いため、複数の情報源を照らし合わせながら真因分析を行うことが大切です。
最も重要なのは離職理由を明確にし、適切な施策をおこなうこと
従業員が退職する理由を明確にすることは非常に重要です。これにより、企業は問題点を特定し、適切な対策を講じることができます。
例えば、退職者へのアンケートや面談を通じて、職場環境や業務内容に関する不満点を洗い出すことが可能です。これらの情報を基に、労働条件の改善や研修制度の充実など、具体的な施策を実施することで、従業員の満足度を向上させ、離職率を低減させることができます。
結果として、企業全体の生産性や成長にも寄与することが期待されます。
組織の強みと課題を可視化する 組織改善ツール「ラフールサーベイ」
現代のビジネス環境では、組織の強みと課題を迅速かつ正確に把握することが、成功の鍵となります。そこで、組織改善ツール「ラフールサーベイ」が登場しました。このツールは、従業員の意見やフィードバックを基に、組織の現状を可視化し、強みと課題を明確にすることができます。
「ラフールサーベイ」は、簡単なアンケート形式で従業員の声を集め、その結果を分析してわかりやすいレポートとして提供します。このレポートを活用することで、管理者は組織の強みを再確認し、課題を特定して解決策を見出すことができます。また、定期的なサーベイの実施により、組織の変化や改善の効果を追跡することも可能です。
さらに、「ラフールサーベイ」は、カスタマイズ可能な質問項目やリアルタイムのデータ分析機能を備えており、組織のニーズに合わせた柔軟な運用が可能です。このツールを活用することで、経営層や人事部門は、より効果的な組織改善策を講じることができ、従業員の満足度と生産性の向上を図ることができます。
「ラフールサーベイ」は、組織の強みを最大限に活かしつつ、課題を迅速に解決するための強力なツールです。ぜひ、貴社の組織改善に取り入れてみてください。