近年は、様々な場面において変化の激しい時代であり、この流れに対応するべく多く着目されている組織形態として「自律型組織」が挙げられます。本記事では、自律型組織とはなにか、そのメリットとデメリットだけでなく、関連する自律型人材や事例について紹介しています。
自律型組織とは
自律型組織
自律型組織とは、組織を構成する従業員が自律しており、自身の業務において意思決定ができるなど、権力が分散している事で、従業員が自らの意志で主体的に行動できる組織形態のことです。しかしながら、無秩序に意思決定を行うのではなく、「規律に従って自ら行動、思考すること」が個々の従業員で起こることが自律型組織では重要です。
不確実性や変動性、複雑性や曖昧性が多い近年では、これに対応するために従業員が自ら考え行動する「自律型組織」が注目されています。
自律型組織には以下のような種類があります。
アジャイル組織
アジャイル組織は組織を取り巻く状況が変化した場合の対応に柔軟性があり、素早い対応を行える組織構造です。責任と権限が広く付与されており、従業員が主体的に仕事を進められます。特に、計画に重きを置かず、実行しながらフィードバックをしていく特徴があり、現場に一定の権限があり、またフィードバックにより改善を前提とするため素早い意思決定が可能です。素早い意思決定の一方で、従業員らは組織の一貫性を保っていることもアジャイル組織の性質と言えます。
ティール組織
ティール組織はフレデリック・ラルーにより提唱された概念で、上司の指示などのマイクロマネジメントはなく、従業員が自己管理・自己決定を行うという原則のもとに就業します。
個人の感情、直観等も重視されるためどのように組織内の権力を分配するのかや、社員同士の自律性と調和が重要となります。これらにより、社員同士によって組織の方向性が形成されるという特徴のある組織形態と言えます。
ホラクラシー組織
ホラクラシー組織は、ティール組織の一つに分類される組織形態で、上司や部下と言った関係性などの階級がなく、従業員同士が平等な立場で働くことができる組織形態です。また、事業や役割に合わせて従業員を決定し、グループを作り業務を自主管理型で進めるといった特徴があり、 事業等が終了するとホラクラシー組織は解散や編制が行われます。立場の違いは無いものの、便宜上は管理のための進行管理役を設置する場合も多くあるとされています。
階層型組織
自律型組織に対して階層型組織(管理型組織・ピラミッド組織)は、従来のビジネスモデルでは一般的な組織構造です。
組織は、上司や部下など明確な階層があり、各役職者に特定の権限や責任が与えられています。この様な形態は、今までは実に生産的であるとされてきましたが、現代の事業環境の変化によって、求められる組織構造としては適さなくなってきたとされています。
自律型組織のメリット
自律型組織には以下のようなメリットが挙げられます。
メリット 1:課題などに対して早く対応できる
自律型組織では、従業員個人の裁量が大きいため、事業や問題解決を進める際に周囲への相談をする必要がありません。そのため、すぐに対応しなければならない課題などに対して、自身の裁量で対応することができます。
また、個人に裁量がある事で顧客の変動するニーズに対しても、素早く対応することができます。この様に、意思決定が速くなることで、効率の良い業務環境が実現できます。
メリット 2:社員のモチベーション向上につながる
自律型組織では、それぞれに裁量がある事で個人の意見が反映されやすく、主体的に業務に取り組むことができます。階層型組織では仕事の評価は「上司の指示に対し期待に沿えるか」によって決まることが多くありますが、自律型組織では自分で問題提起し、自分で解決することができるので、自分自身で業務の結果について評価することができるようになります。つまり、主体的に取り組める環境であることで、仕事に対しての自分の満足度が仕事での評価の基準となり、仕事への貢献度合いによって従業員のモチベーションが上昇することが期待できます。
メリット 3:社員のビジネススキル向上につながる
自律型組織では、従業員が主体的に問題や課題に取り組むに際して、通常業務では得られない考え方や情報を得る機会が増えることもメリットとして挙げられます。課題によっては調べ学習だけでなく、他部署等との折衝を行う事も増えることが想定でき、さまざまな経験を通し、より従業員ひとりひとりがスキルアップすることが期待できるでしょう。
これにより、一度育成した従業員はどんどんと生産性や人間性に長けた人材へと成長することができるでしょう。
自律型組織のデメリット
自律型組織にはメリットがある一方でデメリットがある場合も存在します。
デメリット 1:環境整備が難しい
従来の階層型組織から自律型組織に移行するには、自律型人材だけでなくそれを受け入れ、推進するような環境が必要です。
しかしながら、そういった環境を作る中で初めは組織内での戸惑いや困惑が生まれることが想定できます。
また、管理職が撤廃されることで、彼らの経験が無駄になってしまうなどの悲観的な意見が出る場合もあるとされています。
他にも、移行に際して一時的な生産性の低下も懸念されます。
実際の組織改革には、従業員らに丁寧に理念や目的の共有を行い、納得してもらうためにも時間などのコストがかかると言えるでしょう。
デメリット 2:従業員育成に時間がかかる
新たに、自律型組織に移行するには、会社のルールを改定し、それを教育するだけではなく、更に主体的な行動が出来るように従業員を育成する必要があります。既存の組織形態に慣れてしまっている場合には、自主的な行動に対して戸惑いが生まれてしまうため、より育成し直しには時間がかかってしまいます。
こういった場合には、自律型組織での経験者の採用や、自律的な社員を手本とするなどの実装を行うことで、従業員の育成をより効率よく行うことができます。
デメリット 3:各従業員への負担
多くの従業員に、決定権を与える事で仕事の管理や進行が煩雑になることが懸念されます。特に、育成が不十分であった場合には業務の優先順位が付けられなかったり、意思決定の判断にミスが生じてしまう恐れも考えられます。
これでは、上司や先輩の意見を必要とする従業員が現れてしまい、階級制組織の方が良かったというような結果になってしまいます。
また、裁量が各従業員に与えられることで人事的な評価や、給与体系についても管理がしにくくなると言ったデメリットも挙げられます。
自律型組織と自律型人材
さて、自律型組織には自律型人材が必要です。しかしながら、自律的な人材が集まるだけでは、自律型組織はできません。
自律型人材を確保、育成するだけではなく、個々が組織としての方向性や行動規範を理解し、そのなかで決定を下し、適切な判断が出来るようにする必要があります。
そのためには組織全体が自律的な行動を促進するような環境であることが求められます。
自律型人材とは
自律型人材とは、自分で考え行動でき、責任をもって業務を遂行できる人材のことです。
特に、ホラクラシー組織や、ティール組織といった、従業員が大きな裁量を持ち、上下関係が存在しない組織においてその活躍が期待されています。
また、創造的なアイディアを仕事に反映することができる点も大きな特徴で、周りの意見も取り入れながらよりよい仕事をしたいという姿勢を持つ人材と言えるでしょう。
この様な存在は、自律型組織には不可欠です。
自律型人材の育成のポイント
自律型人材を育成するには段階を踏んでいくことが重要です。
特に自律型人材と一言に行っても、組織や会社によって必要な人材は少し違うため、最初に自社での自律型人材の定義・目標を設定する事し、人材育成の指標を決めましょう。
まず、自社に必要な自律型人材はどのようなものであるかを検討する必要があります。
企業理念や企業戦略に合わせて、どこまでの裁量を与えるのか、どの様な人材になることが目標なのか、そのためにどう行動して欲しいかなど、ある程度の規定を明確にすることで従業員が主体的に動きやすいように育成を行いましょう。
特に、ロールモデルとなるような人材を用意し、その行動や能力について分析した上で人材の定義や目標を設定することが有効です。
自律型組織の事例
最後に、自律型組織を導入している企業事例について紹介します。
double jump.tokyo株式会社
ブロックチェーン専業のゲーム会社double jump.tokyo株式会社
は、社員7人業務委託70人(バックオフィス以外は業務委託)で構成されており、組織や風土でメンバーを繋ぎとめていないような組織を形成しているそうです。
この会社ではDAOと言った分散型組織を目指しており、中央集権的なリーダーがいないことや、民主的に組織が運営されることが特徴として挙げられるそうです。
働く意味やモチベーションはメンバーによって異なるが、仕事に対する熱量が同程度であるといった点で自律型組織としての軌道に少しずつ乗り始めているようです。
引用元:「自律型組織とは?種類や取り組み事例、組織作りのポイントを解説」、「社員7人で業務委託70人!?DAO組織ってどんなんDAO?」
さらに事例を知りたい方はこちら→「【8社の事例】階層に頼らない「自律型組織」実現のカギは、ガバナンスと伴走支援!」
自律型組織を作るのためのおすすめのサービス
自律型組織には、自律型人材が必要不可欠です。また、自律型人材を育成する際にはロールモデルを立てることが有効です。ロールモデルとなる人材は、既存の従業員の中から選ぶ事も良いですが、既に自律型組織で経験を積んだ人材を追加することでより有能なロールモデルを立てられる可能性が高まります。
また、新卒の人材を選ぶ際にも、自社で必要な自律型人材として育成しやすい主体性に富んだ学生を採用することで、より効率よく自律型組織を作ることができます。
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