価値観が多様化する現代社会において、採用活動を成功に導く鍵を握るとされる「採用ペルソナ」。しかし、その設計メリットが具体的に理解できなかったり、設計方法がわからなかったりという理由で取り組めていない企業もあるかもしれません。
この記事では、採用ペルソナを設計するメリットや、具体的な設計方法と注意点などを詳細に解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
ペルソナとは
そもそも「ペルソナ」とは、マーケティング戦略上で使われる概念で、「自社商材の購入層の人格」を意味します。性別・年代・職業などの属性に加え、趣味嗜好や価値観などを詳細にシミュレーションし、そのペルソナの行動パターンに合わせた戦略・施策を立案していくのです。
採用ペルソナとは
これを企業の採用領域に応用したのが「採用ペルソナ」です。自社が採用したい人物のイメージを詳細に設定して言語化し、採用プロセスの最適化を図ります。アウトプットとしては、以下のようにまとめられることが一般的です。
採用ペルソナとターゲットの違いとは
「ペルソナ」と混同されやすい用語に「ターゲット」がありますが、この2つの違いは、設定の細かさにあります。
「採用ターゲット」とは、性別や年齢、居住地、家族構成など基本的な属性による人物像の分類にとどまるのに対し、「採用ペルソナ」は、趣味嗜好や価値観、行動パターンなどを加味し、その人の見た目のイメージまで想像できるほど具体的な「人となり」を設定します。
採用ターゲット | 採用ペルソナ |
・30代・男性・都内近郊在住・年収500万円・3年以上の営業経験あり | ・31歳・男性・都内在住・年収500万円・食品会社で営業を8年経験・趣味はスポーツ観戦で、海外にも足を運ぶため、有給取得しやすい企業での勤務が理想的・チームプレイを得意としているため、仲良く働ける環境を好み、ランチや終業後の食事などは会社仲間と取るのが好き。・営業成績を伸ばすためのスキルアップやリーダーになるための研修などには積極的に参加したい。 |
採用ペルソナを設定するメリット
実際の採用活動を始めるに当たって、採用ペルソナを設定しておくことで、以下のようなメリットが生まれます。
自社が必要とする人物像の認識あわせができる
まず最初のメリットは、人物像のイメージを共有することで、採用に携わる社員間の認識のズレを防ぎ、より採用プロセスをスムーズに進行させられる点です。
自社が必要とする人材の具体的なイメージの共通認識がなければ、議論が噛み合わず、適切な合否判定が難しくなるでしょう。具体的なペルソナ設計を行い、人材イメージを言語化しておくことは採用プロセスの基盤になるとも言えます。
的確に求職者へ訴求できる
次に、採用ペルソナを設計すると、転職者の悩みや志向が具体的にイメージできるようになり、転職者への訴求ポイントも明確になります。
例えば、一般的にメリットとなり得るポイントの中でも、その採用ペルソナがメリットと感じるかどうかはわかりません。「企業が推したい情報」ではなく「求職者が求める情報」を発信していくためにも、採用ペルソナを設定することは効果的です。
自社で活躍できる人材を採用できる
採用ペルソナを設計すると、自社が求める人材が明確化するため、入社後のミスマッチによる早期離職を防ぎ、長期的に活躍してくれる人材の獲得につなげることができます。
採用ペルソナを設計する方法
それでは、採用ペルソナを設計する具体的な手順について解説していきましょう。
Step1.まずは採用の目的を明確にする
まずは、採用の目的を明確にします。例えば、欠員補充や事業拡大、案件増加による増員などが挙げられますが、この目的によって、人材に求める要件やその優先順位が変わってきます。
例えば、欠員補充と言ってもベテラン社員が退職した場合と、入社3年目の社員が人事異動した場合とでは、採用すべき人材や人数が異なるでしょう。案件増加による増員の場合は、どんな案件が増えているのかを把握し、その分野に長けている人材の採用が望ましいでしょう。
募集ポジションや採用人数、必要スキルなどの採用計画を的確に立てるためには、採用目的とその背景を詳細に理解することが大切です。
Step2.自社が求める人物像を具体的にイメージする
次に、その募集ポジションで活躍できそうな人物像を具体化していきますが、ここで注意したいのが、要望を全て詰め込んだ「理想像」を描いてしまいがちですが、そんな人材は存在しなかったり、実情とはマッチしない人材であったりする恐れがあります。
そのため、実際に活躍している社員数名に注目し、その人の属性や趣味嗜好、価値観や行動パターンを言語化してみると効率よく、かつ適切な「採用ペルソナ」に辿り着くことができます。この際、人事部の社員だけでなく、現場社員や経営層などにもヒアリングを行い、様々な角度から、ペルソナ像を設計していくと、より客観的な人物像が描けるでしょう。
Step3.自社の職場環境を整理する
さらに採用者が働くことになる職場環境の特徴や業務のスケジュールを可視化し、その人物が本当に活躍できるかどうかを検証します。
例えば、残業についてどう考えるか、休憩のとり方、休暇日数や休日の過ごし方、福利厚生への期待、重視している価値観など、事細かに洗い出しましょう。
「残業を推奨していない」企業にとって、「残業してもいいので給与を上げたい」と考える人は合わない、という具合で、ペルソナ設計に落とし込んでいきます。
Step4.求める人物像の要件をまとめて、言語化する
このように、細かい設計ができてきたら、第三者が見ても分かるように言語化します。資料ができたら、もう一度、経営陣や現場社員にフィードバックをもらい、議論した内容が反映された人物像になっているかどうかをチェックします。
設計していく過程や資料化する過程で、当初の採用目的や求める人物像からズレてしまうことも少なくありません。気をつけましょう。
Step5.市場も鑑みて、採用時の優先順位をつける
採用要件がまとまったら、「MUST(必須)要件」「WANT(あると望ましい)要件」「NEGATIVE(不要)要件」の3つに分類しながら優先順位をつけていきます。
必要不可欠な要件が抜けていないかをチェックするとともに、理想が高すぎたり、オーバースペックな場合は、MUST要件を減らしたり、NEGATIVE要件へ振りわけたりして、自社の実態に近づけましょう。また、市場の動向を見ながら、条件を引き上げたり引き下げたりする調整も必要になります。
採用ペルソナの設計時に気をつけるポイント
以上、採用ペルソナの設計フローを解説してきましたが、このプロセスにおいて気をつけるべきポイントが4つあります。それぞれ紹介していきます。
事前に現場の意見をヒアリングしておく
採用ペルソナの設計にあたり、現場社員との認識合わせはとても大切です。人事に携わる一部の担当者のみでペルソナを設計すると、本当に欲しい人材イメージとかけ離れた人を採用してしまったり、合否判定の際に現場と意見がまとまらなくなったりして、採用活動をスムーズに進めることが難しくなる恐れがあります。
事前に現場の意見を詳しくヒアリングして、その意見がしっかり反映された採用ペルソナになるよう工夫をしましょう。
設定したペルソナを適宜ブラッシュアップする
一度、採用ペルソナを設計したからといって、必ずしも採用活動が上手くいくとは限りません。市場が変化し、思い描いていたような人材が見つからない可能性もありますし、技術革新など第三の要因により、求職者の理想とする働き方がガラリと変化してしまう可能性もあります。また、企業の事業計画によって、求める人材が変化することもあるでしょう。
そのような場合は、臨機応変に採用ペルソナを見直し、再設定をする必要があります。
また、一度採用した人材が定着しない場合は、PDCAを回して、採用ペルソナをブラッシュアップすることで、採用効率を向上させることも可能です。
採用ペルソナは複数パターン用意しておく
採用ペルソナの設計は、必ずしも1つの人物像に絞り込むことが正解ではありません。募集ポジションで活躍できそうなペルソナを複数パターン用意しておくことで、採用候補者の母数を増やすことにつながります。
また、色々な人材を採用することで、組織に多様性が生まれ、活性化に繋がることも考えられます。ただし、あまりパターンが多すぎると、採用フローが煩雑になるため、多くても2、3パターンにしておくと現実的でしょう。
設定が細かくなりすぎないようにする
採用ペルソナは、その人物像を明確にイメージするために詳細に設定されますが、その設定は、絶対的な判断基準ではありません。
例えば「リーダーを勤めた経験がある」という設定をしていた場合、「リーダーの肩書を持ったことがある」ことに固執しすぎるのではなく、「仲間内で旅行に行く際は、しきり役になることが多い」というエピソードのなかでリーダー性の有無を判断するなど、柔軟に捉えることが大切です。
まとめ
以上、採用活動を成功に導く鍵を握る「採用ペルソナ」について、設計メリット、具体的な設計方法や気をつけるべきポイントについて詳しく解説しました。
設計した採用ペルソナに合った人材を選ぶために便利なツールも様々リリースされていますので、必要に応じて活用しながら、自社の採用活動をブラッシュアップしてください。
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