採用活動や就職活動において、「売り手市場」「買い手市場」という言葉がしばしば使われます。企業の規模や職種、そして地域によっても傾向に違いはありますが、近年の採用市場は「売り手市場」と言われています。そこで本記事では、売り手市場と買い手市場の基礎的な知識について紹介していきます。
採用における売り手市場及び買い手市場とは
「売り手市場」と「買い手市場」とは、採用市場における需要の状況を示す言葉であり、有効求人倍率の数値によって判断されます。
売り手市場とは
売り手市場とは、人材を求める売り手である企業の求人数が多く、買い手である就職候補者が少ない状態を示します。求職者よりも企業の求人数が多い状態が成り立っているため、就活生や転職者にとっては複数の求人を吟味できる一方で企業側は応募が集まらないなどの懸念が挙げられます。
買い手市場とは
買い手市場とは、買い手である就職候補者が多く、売り手である企業の求人数が少ない状態を示します。リーマンショック時などの、就職氷河期などと言われた時期がこの「買い手市場」に当たります。買い手市場では、求人数が求職者よりも少ないため、就職活動は激化し、就職し難い状態であると言えます。
有効求人倍率とは
採用市場において、雇用動向を知るための指標となる「売り手市場」と「買い手市場」を判断するための基準として「有効求人倍率」が使用されます。有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合によって算出される値であり、景気と一致して動く場合があるともされています。
有効求人倍率は、厚生労働省が全国のハローワーク求職者数と求人数を基に算出しており、「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で毎月発表されています。(有効求人数/有効求職者数)≧1であれば売り手市場であり、(有効求人数/有効求職者数)≦1であれば買い手市場であると言えます。
現在の採用市場は売り手市場である
リクルートワークス研究所がだしている「ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)」によると、2024年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は「1.71倍」であり、売り手市場であると言えます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大が流行した2021年卒では、求人倍率は1.53倍であったことも報告されている事から、ここ数年を通してコロナ禍の影響を受けつつも大学生・大学院生における有効求人倍率は常に1.50倍以上であり、売り手市場であると言えます。
一方で、厚生労働省が報告しているハローワークにおける求人、求職、就職状況から算出された有効求人倍率についてはコロナ禍の影響による落ち込みが見られ、新型コロナウイルスの流行前である2019年の有効求人倍率が1.60倍であったのに対し、2022年では1.28倍となっています。
よって、全国の求職者を対象にした場合にも、市場はやや売り手市場であると言えます。
全体を通して、採用市場は売り手市場であり、求人倍率がコロナ禍前の水準に戻りつつあります。また、グラフから読み取れるように新型コロナウイルスの5類移行などに伴い、経済活動の活性化が予想されるため今後も売り手市場が続くことが考えられます。
売り手市場のメリット
企業、会社の環境改善を行うきっかけに繋がる
一般的に売り手市場は学生優位とされています。企業側のメリットとして挙げられるものは多くはありませんが、その一つとして「企業の環境改善」に繋がるという事が言われています。
売り手市場では、求職者の数よりも多くの求人が出回るため求職者はより条件の良い求人を選ぶことができます。
そのため、応募が集まらない・内定辞退者が多い場合には他社と自社の条件を比較することで、企業の労働環境を改善するきっかけとなる場合があります。
ある企業の調査では「内定を複数獲得した際、入社を決める上で何を重視しますか?」というアンケートを行った際の結果を掲載しています。このデータからは、福利厚生や給与の他にも、人間関係や自分が成長できるかに重きを置く学生が多いことが分かります(引用元:新卒売り手市場の現状と2025年卒の見込みを企業規模・業種別データで解説)。
他にもマイナビが公開している「マイナビ 2024年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況」では、「企業を選ぶときに注目するポイント」について以下のようなグラフが掲載されています。
やはり、この調査からも人間系や自分と企業の相性が大切という意見が多いことが分かります。
この様に、売り手市場だからこそ集められるデータを基に企業改善を行うことは、採用だけでなくその後の従業員幸福度の上昇や健康経営などにもつながるためメリットと言えるでしょう。
売り手市場のデメリット
企業にとって、売り手市場ではデメリットが多いことが一般的です。
どの様なデメリットがあるのか、また対策として何ができるのかについて解説します。
1.求人が埋もれてしまう
売り手市場では、求人サイトに掲載される求人数が増加することで、学生や求職者に求人を見つけてもらえない事がデメリットとして挙げられます。
2.応募が集まらない
全体の求人数が多いだけでなく、売り手市場化がより進んでいるエリア・職種においては応募が集まらないこともデメリットとして挙げられます。
3.求める人材が集まらない
優秀な経験者や即戦力のある人材を採用したい場合には、求人数が多い事だけでなく、企業側からのスカウトメールも多くなっている事で求める人材からの応募が集まらないというデメリットも挙げられます。
1~3に対する対策
求人が埋もれてしまう事や応募が集まらない場合には「求人の露出頻度」と「スカウトメール」について見直すことが重要です。
露出頻度については、求人サイトやそのプランによって改善することができるため、複数の求人サイトを用いる事や掲載プランの変更を検討することで対策が可能です。また、スカウトメールを活用することで、直接学生や求職者にアプローチを行うことで、求人を見てもらえるようにすることも有効です。
4.面接辞退者が発生
売り手市場では、求人が多いことで学生や求職者が複数の企業に応募することができ、他社で内定をもらった場合や、面接が多くなった場合には、優先度が高くない企業は面接を辞退されてしまいます。
5.内定辞退者が発生
学生や求職者が複数の企業に応募するだけでなく、複数の内定を保持していることで、内定が承諾してもらえない場合も多々あります。
4,5に対する対策
面接や内定の辞退者が多い場合には「選考回数」と「面接の連絡」及び「面接の内容」について見直すことが重要です。
選考回数が多いと、他社で内定が決まってしまうことで面接辞退されてしまう事が多くなります。一般求人では、応募から内定まで平均2週間以内とされている事もあり、選考回数を改善することで、面接辞退を防ぐことに繋がります。
また、面接に関する連絡を早く行うことで、面接及び内定を早く出してしまうことで、面接と内定のどちらの辞退もより防ぐことができます。また、面接において学生や求職者に対し自社の魅力を伝える事も重要なポイントとなります。特に、学生は採用担当者の人柄や、企業との相性、人間関係などを決め手として入社を決めるといったアンケート結果も出ている事から、面接での対応の仕方や企業の内容をより理解してもらえるように務める事で内定辞退を防ぐことに繋がります。
売り手市場における就職生の動向及び悩み
就活生の悩み
マイナビが公開している「マイナビ 2024年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況」のうち「就職活動で不安に思う要因」として、以下のようなグラフが掲載されています。
・志望企業からの内々定
・面接で上手く話せるか
・エントリーシートの負担
これらに対する不安が挙げられる一方で入社後のミスマッチなどについても不安視されていることが分かります。
売り手市場において採用ミスマッチを防ぐ ミライ適性検査「テキカク」
全体を通して、現在の市場は売り手市場で有効求人倍率が1以上であり、就活者が企業を選びやすいのに対し、企業側は採用のために様々な工夫が必要なことがお分かりいただけたと思います。
また、特に学生においては企業との相性に重きを置いている事から、それに対応した採用活動を行う必要があります。更に、売り手市場において様々な人材のなかから、必要な人材を見極めるためには、適性検査を用いることも有効で、これにより採用ミスマッチを予防することもできます。
ミライ適性検査「テキカク」なら、候補者が今の組織だけでなくこれから目指す組織において貢献できる人材かどうかを示し、組織と人材のミスマッチを防ぎます。組織改善ツール「ラフールサーベイ」で蓄積されたサーベイデータと、心理学×データ×AIで導かれた分析による裏付けにより企業と採用候補者のマッチ度を算出することができるのです。
採用段階からミスマッチを減らして早期離職を防止し、自社にマッチした人材に長く活躍してもらいたい!という人事担当者や経営者の方は、ぜひミライ適性検査「テキカク」を詳しくご覧ください。