変化が激しく不確実性の高い現在の市場環境。採用難も続き、企業は人材不足の深刻化と日々戦っています。そんな中、組織のパフォーマンスを最大限発揮するために注目されているのが「組織活性化」です。
そこで今回の記事では、「企業における組織活性化とはどんな状態を示すのか」という基本的な部分から、組織活性化を目指すために必要な具体的手法という実践的な面まで解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
組織活性化の基本知識
組織活性化とは?
「組織活性化」とは、企業などの組織に所属する構成員の一人一人が、組織の共通理念に基づいて、主体的に活動できる状態をつくることを指す言葉です。ここでの理念とは、組織の社会的使命(何のための組織か?)、中長期的目標(具体的に何を達成するか?)、企業文化や風土(どんな価値観や行動を重視するか?)を含むもので、社員にとっては行動規範となります。組織活性化の中では、個人同士が時に切磋琢磨し、時に助け合いながらチームワークを発揮できるような、有機的な組織を理想としています。
背景
組織活性化が求められる背景には、変化が激しく予測が立てづらい市場環境や、人手不足が続く採用状況があります。企業は今いる社員によってパフォーマンスを最大化しながら、短期的な成功のために無理をするのではなく、成長を続けられるような組織を目指す必要があるのです。
また、IT化が進み、業務が細分化されて対面でのコミュニケーションが減少したことも背景の一つと言えます。他部署の仕事に対する無関心や非協力的な姿勢が生まれやすくなったり、コミュニケーション不足によって業務が円滑に進まなかったりという問題が考えられるためです。
組織活性化の状態のポイント
組織の理念は浸透しているか
組織活性化のためには、従業員が組織の理念を共通認識としてもつことが根本的に重要です。「組織がどのような理念をもって経営活動を行っているか」を従業員個人のレベルにまで浸透させ、経営層と従業員の間にある意識の相違を解消する必要があります。
組織の理念を理解し、その理念が業務とどのように結びついているのか、自分の仕事が企業や社会に対してどのような影響を与えるかを把握できれば、自分の仕事の目的を組織の中で理解できます。組織の理念を従業員が自分事として捉えることで、社会的使命感をもち、仕事のやりがいを感じられるでしょう。
個人が主体的に活動しているか
共通認識としてもつビジョンを達成するために、個人がチームの構成員として自発的に活動できているかどうかは、組織活性化の大きなポイントの一つです。
一人一人のやりがいは組織活性化の原点とも言えます。受動的な姿勢で働いているままでは生産性が低く、モチベーションも生まれません。モチベーションは人材定着の観点においても重要な役割を果たします。そして従業員のエンゲージメント向上や離職率の低下は、組織としても大きなメリットです。
チームワークは発揮できているか
活性化した組織においては、円滑なコミュニケーションを通してチームワークが上手く発揮できています。ここでは上司から部下など一方向的なコミュニケーションだけではなく、積極的な意見交換など、循環的なコミュニケーションが自然に生まれる場づくりが重要です。
コミュニケーションを通して仕事のノウハウなどの情報を組織全体で共有することで、組織の全体的な能力向上が見込めます。またチームワークが発揮できている組織では、個人の仕事の遂行のみで終わってしまうことなく、チームとして最も適した効率的な動きや、組織にとって重要な新規事業などのアイデア出しなども生まれやすくなるでしょう。
組織全体で高い生産性を発揮できているか
組織活性化では、ここまで見てきた3つのポイントを経て、最終的に組織が全体として高い生産性を発揮できているかどうかが重要なポイントとなります。
組織全体として生産性が向上すれば、個人の能力によらず組織全体として、従業員個人の負担を削減できます。その結果として、残業時間が少なくなったり、ワークライフバランスを実現しやすくなったりと、さらに働きやすい環境も可能となるでしょう。
組織活性化のための具体的な手法
働きやすい環境づくり
働きやすい環境は、組織活性化において基礎的な条件の一つです。オフィス環境を整備する、福利厚生を充実させるなど、工夫できるポイントは沢山あります。
土台としての職場環境があって初めて、従業員は組織のもとで生き生きと働くことができるものです。そして上で述べたように、組織活性化の結果としてさらに働きやすい環境が可能となることからも、まず土台を整えることは必要不可欠と言えるでしょう。
人材育成システムの構築
組織を活性化させるには、成長できる場が整っているかどうかも重要です。従業員個人に適応できるような育成プログラムの構築と、それを実施できるシステムが必要となります。人材育成の過程で理念教育を行うことも、組織活性化にとって有意義な取り組みです。
また人材育成は、若手社員などプログラムを受ける側のみならず、育成担当にもメリットがあります。人材育成を担当する中で、業務を見直したり、他メンバーとのコミュニケーションを取ったりすることは、育成担当者にとって新たな刺激となるためです。
上司との定期面談(ななめ面談)
定期的な面談は、従業員の状況を把握するのに大きな役割を果たします。特に若手社員には、1on1ミーティングを通して上司と部下で対話し、こまめに状況を把握する機会をもつことが有効です。明確な目標や実際の業務に関する悩みなど、具体的な話題を挙げるようにし、一方的なアドバイスだけでなく、上司は耳を傾け、意見交換できるようにしましょう。そのためには、日頃から自由に話し合える関係性を構築していることが必要です。コミュニケーションのすれちがいによる誤解を減らし、職場内での意思疎通をスムーズに行えるようにしましょう。
また、他の部署や職種の上司との「ななめ面談」も重要です。ななめ面談を通して、直属の上司には話しにくい話題を共有できるのに加え、異なる視点からの意見を得ることができるのもメリットと言えます。
アチーブミーティング
1on1ミーティングやななめ面談が1対1の個人面談であるのに対し、アチーブミーティングはチーム全体で行うものです。個人、チーム、会社の目標をチーム全体で話し合います。組織の目標を従業員個人のレベルから自由に話し合うことで、企業理念に多角的に向き合い、より深い理解が可能となります。組織の目標と個人の目標を同じ並びで語ることで、自分の仕事を組織のミッションと結び付けて理解でき、組織と個人の目標のずれが少なくなると同時に従業員個人の社会的使命感を育てることができます。
マルチ担当制
マルチ担当制とは、1人が複数の部門を担当すること、あるいは一つの業務を複数人で担当することを指します。
前者に関して、専任担当だとプロフェッショナルとして専門的に業務を遂行できる点はありますが、自分の担当部分しか分からないのがデメリットです。そこで1人が複数部門を担当すると、全社的で俯瞰的な視点を身につけることができます。また自分の担当部門を外から客観的に見ることができたり、他の部門について理解できたりする点もメリットです。
そして後者に関して、担当者が限定的だと、業務が属人化されてしまい、担当者不在時の判断に困難が生じる可能性があります。複数人担当とすればこのようなリスクを防げるとともに、引き継ぎによる手間を省いたり負担のかたよりを軽減したりできます。また、複数人の視点があることから、業務を行う上で多角的に議論し判断できるのが利点です。
ITツールの活用
コミュニケーションを円滑かつ活発にするためには、ITツールを活用することも役に立ちます。チャットツールやSNSツールなどを取り入れることで、情報共有が正確かつ迅速に行えるようになるのがメリットです。
注意点として、まず業務を行う上で基本的なツールが全員使いこなせているか確認し、使いこなせていない人がいれば学習サポートを提供する必要があります。新たなITツールを導入する時は担当者を決め、操作に苦手意識がある従業員へのサポートを行うことも大切です。また、組織の規模やスタイルに合った、オンラインで会話しやすいツールを選択することも意識しましょう。
まとめ
こちらの記事では、組織活性化の基本知識から実現させるための具体的な手法までお伝えしてきました。
組織活性化は、組織がパフォーマンスを十分に発揮するためにも、個人が生き生きと働くためにも注目に値する取り組みです。組織の理念を基としてコミュニケーションを活性化させることは、企業において基本的な軸であり、それゆえに重視すべきポイントと言えます。
企業全体にとっても構成員個人にとってもプラスとなるよう、組織活性化の取り組みを検討してみてください。