近年、日本のビジネスにおいて注目されているインテグリティとは一体どのようなものなのでしょうか。なぜ今、インテグリティが重視されているのか。その理由や具体的な企業例をご紹介します。
インテグリティとは?
インテグリティの意味と語源
日本においてインテグリティとは、誠実、真摯、高潔などの概念を意味するものとして使われます。
インテグリティは(integrity)は元々ラテン語で、本来は全体性(wholeness)や完璧性(completeness)、清廉性(purity)などを意味する単語です。
このインテグリティが欧米の企業において、経営やマネジメント上、重要視される価値観として広く使われるようになり、近年は日本の企業においてもこの価値観が注目されつつあります。そして、企業がインテグリティを重視し、法令順守だけでなく、幅広い社会責任の遂行と企業倫理の実践を目指す経営のことをインテグリティマネジメントと言います。
インテグリティの定義
前述の通り、インテグリティの語源やイメージは少し掴めたのではないかと思います。一方で、そもそもインテグリティの定義とはどのようなもので、何を目指せばインテグリティのある企業・人になれるのでしょうか。
インテグリティの重要性は、経営学者のピータードラッカーという人物によって提唱されました。自身の著書「現代の経営」において、インテグリティが組織の経営において最も重要であると、様々な言葉で繰り返し強調しています。
しかし、提唱者のドラッカーでさえも、インテグリティは概念であり、定義することはできないと考えており、インテグリティを持たない例をいくつか挙げることで、インテグリティについて説明しようと試みています。
インテグリティを持たない人物の例
- 人の強みでなく弱みに注目する者
- 冷笑家
- ”何が正しいか”ではなく、”誰が正しいか”に関心を寄せる者
- 他人の人格ではなく、頭脳を重視する者
- 有能な部下を恐れる者
- 自分の仕事に高い基準を設定しない者
コンプライアンスとの関係性
誠実、真摯、高潔さを表すインテグリティと意味が似ているのではないかと指摘される言葉として、コンプライアンスが挙げられます。しかし、これらは似て非なるものです。コンプライアンスは順守という意味で使われ、規律を守るためのものである側面が強いのですが、一方、インテグリティは自発的に行うものであるという側面を持ちます。
これらは無関係であるという意味ではなく、インテグリティとコンプライアンスは密接に関わりあっています。インテグリティを持っていなければコンプライアンスを守ることは難しいでしょう。
企業の経営やマネジメントにインテグリティが重視される理由
企業の経営やマネジメントにおいて、インテグリティが重視されるようになった理由としては、前述のコンプライアンスが重視される世の中になったことが挙げられます。日本では、1990年代頃から従来の年功序列の形態が徐々に成果主義へと変化しました。これにより、社員が過度に成績を挙げようと、不正や不祥事などが度々起こるようになりました。
このインテグリティの欠如と言える問題を解決するため、経営やマネジメントにおけるインテグリティが注目されるようになったのです。企業は法令を順守することに加え、社会的責任を果たすことが求められるようになりました。倫理的に組織全体をより良く運営する必要もあり、これらのコンプライアンスを順守する形の経営は、インテグリティ・マネジメントと言われます。
インテグリティのある人とは
では、インテグリティのある人とはどのような人でしょうか。
インテグリティを持つ人物の例
- 自分のためではなく他人のために考え、動くことができるような人
- 正義感を持ち、公正な判断を行うことができる人
- 法令と倫理に従いながら利益を追求することができる人
- 倫理的に物事を考え、進めることができる人
などの要素を持つ人物です。インテグリティのある人には、判断や行動を起こす際、俯瞰的に公平な目線であることが求められます。
経営者の場合
インテグリティのある経営者は、自己の利益ばかりを追い求めるのではなく、ステークホルダー全体への利益を追求し、社会貢献などを行う人物であると言えます。経営者の行動は影響を与える範囲が広いため、インテグリティの欠如した行動を取れば、それは全社に、社会に広がってしまうと考えられます。
経営者は、積極的に法令や倫理を順守しながら、社会に貢献可能な利益を追求する企業経営を行うようにすると良いでしょう。
人事の場合
インテグリティのある人事になるためには、適切な採用活動や人事評価を行い、それによって従業員全体がインテグリティを持つ人になるように促すことが重要であると考えられます。公平な評価は、過度な不正を伴う成果主義の抑制にも繋がるでしょう。
管理者の場合
インテグリティのある管理者を目指す場合、部下への接し方を常に意識し、従業員のモチベーションを向上させるように行動すると良いでしょう。自身の利益のために、上司からの評価を注視するのではなく、部下やチームのメンバーのために行動することが求められます。コミュニケーションを取って部下に寄り添い、それぞれに適した業務の割り振りなどを行うことで、チーム全体の効率向上が見込まれます。
従業員の場合
インテグリティのある従業員になるためには、自分の身の保身や成績の獲得などにばかり注意を向けるのではなく、企業全体の長期的利益を獲得できるよう、誠実な働きを行うことが大切であると言えます。自分の業務やチームとしての働きに責任感を持ち、自発的に全社的な利益を追求した行動ができると良いでしょう。
インテグリティを重視する企業例
インテグリティを重視して経営を行っている例には、以下のような企業が挙げられます。
伊藤忠商事株式会社
「先見性、誠実、多様性、情熱、挑戦」5つの質問を示し、社員が毎日、自身の判断や行動を確認できるようにすることで、それぞれが常にインテグリティを持つ人であるように促しています。
シスコシステムズ合同会社
シスコシステムズは「ゆるぎないインテグリティ」を示し、行動の規範として社員が正直さや誠実さを貫いて行動することを求めています。また、社員が難しい状況に置かれた際に有用であるツールをシスコは提供しており、これを使うことで判断基準になる価値観などが正しいかどうか、確認しながら俯瞰的な決定を下すことができます。
花王株式会社
花王株式会社は、経営方針においてインテグリティを重要な項目であると位置付けています。花王は創業当初から、法令と倫理に従って行動し、誠実な事業を行うことを基盤としています。社内のコンプライアンス教育に注力し、コンプライアンス通報・相談窓口の設定、監査とモニタリングなどの取り組みを行うことで、法令や倫理を遵守した「よきモノづくり」を徹底する決意を示しています。
企業のインテグリティを向上させる方法
インテグリティを推進するための研修や説明会を行う
インテグリティを向上させるには、社内全体に広くインテグリティの重要性を伝えなければなりません。インテグリティは、短期で身につく価値観ではなく、常に意識し続けることで身に付き、行動に反映されます。社内の一部のみが取り組むのではなく、全社的に取り組むことでインテグリティのある組織づくりを目指しましょう。
そのためには、社員に向けたインテグリティに関連する研修や説明会を実施することで、インテグリティを意識するメリットや心構えについて従業員に伝える場を設けると良いでしょう。
管理職の意識を向上させる
管理職のインテグリティに対する意識を向上させることも有効です。管理職がインテグリティを重視するようになれば、部下にもその姿勢が伝播すると考えられます。具体的には、上記の研修や説明会に加えて、管理者に向けたインテグリティに関する研修を行うとより良い組織づくりに繋がるでしょう。
適切な評価制度とインテグリティを取り入れた評価
また、インテグリティを取り入れた適切な評価を行えば、従業員のインテグリティに対する意識は向上すると考えられます。不正や不祥事による利益などを良しとせず、適切な評価を行うことにより、従業員は目先の保身に囚われるのではなく、長期的な利益を追求するようになります。評価制度として、コンプライアンスの順守や、企業と社会に対する貢献性などを項目として設けると良いでしょう。
データインテグリティとは
最後に、近年注目されているデータインテグリティについてです。データインテグリティとは、データの完全性を表す言葉です。主に製薬業界で用いられることが多く、データインテグリティに基づいてデータの改ざんや不正データを取り締まり、安全な取り組みを行うことが求められています。
まとめ
以上、インテグリティについて解説しました。インテグリティとは、明確に定義することは難しい言葉でしたが、企業におけるコンプライアンス順守の流れから重要視されるようになった価値観でした。企業と社員はインテグリティを向上させ、ステークホルダーに対して広く利益を与えることが求められます。
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