心理学からビジネスまで、幅広いところで耳にする機会のある「ハロー効果」。しかしながら、いざ「ハロー効果とはどんな意味か」と聞かれると、答えに詰まってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこでこちらの記事では、「ハロー効果」の意味や使い方について、詳しく解説しています。同じような文脈で使われることの多い「ピグマリオン効果」「ホーン効果」との違いも合わせて説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ハロー効果の基本的な意味
ハロー効果とは、「ある対象を判断する時、その一部の目立った特徴に引きずられて、全体としての評価が歪められる現象」を意味する用語です。経験に基づく先入観や周囲の環境、思い込みなどによって非合理的な判断をしてしまうことを「認知バイアス」と言いますが、ハロー効果はそんな認知バイアスの一種とされています。
「ハロー(halo)」はキリストなどの聖人の後頭部に描かれる後光・光輪を指す言葉です。背後からの強い光によって、対象物をありのままに捉えづらくなってしまう様子が、ハロー効果の由来となっています。
ハロー効果の種類
ポジティブ・ハロー効果
ポジティブ・ハロー効果とは、目立っている良い印象に引きずられて、別の項目も高く評価してしまう現象です。マーケティングなどの領域においては、高い評価を受けるために意図的に用いられることもあります。
ネガティブ・ハロー効果
ネガティブ・ハロー効果とは、ポジティブ・ハロー効果とは対称的に、ある悪い印象に引きずられて、別の項目も低く評価してしまう現象です。最初に抱いた悪印象に流されて、必要以上に全体を低く見積もってしまう状態に陥ってしまう現象を表します。
ピグマリオン効果やホーン効果との違い
ハロー効果と混同されやすい用語として、「ピグマリオン効果」や「ホーン効果」が挙げられます。
ピグマリオン効果とは、「期待をかけられた人物は、モチベーションが上がることによって、その期待通りの成果を出しやすい」という現象を表す用語です。ポジティブ・ハロー効果は、評価者が誤解して期待を抱くのに対して、ピグマリオン効果は、被評価者が期待通りに努力するというものです。したがって両者の違いは「誰の認知が変えられているか」に現れています。
またホーン効果はネガティブ・ハロー効果と同じ意味を表す用語で、「ホーン(horn)」は「悪魔の角」を指しています。
ハロー効果があらわれる場面の例
恋愛などの人間関係
対象の評価時に現れるハロー効果は、私たちにとって身近な日常生活の中でも度々起こる現象です。例えば、好意を抱いている相手の欠点が目に入らなかったり、「あばたもえくぼ」と言うように、欠点さえ良く見えてしまったりする状態がハロー効果に当たります。
マーケティング
マーケティングにおいては、ハロー効果を意図的に活用することが可能です。CMなどで有名人を起用するケースはとても多いですが、これは好感度の高い有名人を起用することで、その人のイメージに引きずられて、商品にも良いイメージが付随するという効果を狙ったものです。
人事評価や面接
採用の現場におけるハロー効果は、学歴や容姿、面接官との共通点などに左右されて、全体の評価に影響が及んでしまう現象として現れます。これは後々、「採用したが思っていた人材ではなかった」「自社に適した人材を逃してしまった」という事態に繋がる可能性があるため、できる限り避けたいところです。
ハロー効果以外の評価誤差
ハロー効果は評価誤差の一種とされています。評価誤差とは、人材評価の際に評価者の心理が影響し、実態とは異なる評価をしてしまうことです。ここでは、ハロー効果以外の評価誤差についても合わせて見ていきましょう。
論理的誤差
憶測で論理を組み立てて評価を行うことを、論理的誤差と言います。例えば、履歴書の「スポーツ経験あり」という記載を見て「忍耐力があって明るい人だろう」と考えるなど、評価項目の間に繋がりや関連性があるとして、事実によらず推論に基づいて評価判断を下してしまう現象がこれに当たります。
寛大化傾向
厳しい評価付けを避け、評価を甘くしてしまう現象を表します。評価者が自身のスキル・実績に対して自信が無い場合や、「優しく良い人」という印象の強い評価者の場合に発生しやすい評価誤差です。この反対に、厳しい評価ばかりつける現象を「厳格化傾向」と言います。
中心化傾向
非常に良い/非常に悪いといった極端な評価を避けることで、無難な評価に集中して優劣が出ない状態に陥る現象です。例えば5段階評価を行う場合であれば、一番高い評価である5や一番低い評価である1を避け、中央値の3に評価が集中してしまう状態が中心化傾向とされています。
対比誤差
対比誤差とは、絶対的な基準でなく、評価者自身など比較評価する人物を設定し、その人を基準として被評価者を相対的に比べることで生まれる誤った評価を示します。対比誤差により、被評価者に対して実際よりも過大ないしは過小評価を行ってしまう危険性があるため、注意が必要です。
近接誤差
最近の出来事を重要視してしまい、期間全体の評価が正しく行われないことを指します。例えば、期末において成果を残した従業員を特に高く評価したり、会議の場で最後に意見した人を組織の中心的人物と捉えたりすることが近接誤差に当たる現象です。評価期間全体を見通す視点が失われており、総合的な評価ができていない状態と言えます。
ハロー評価などの評価誤差を防ぐには?
評価基準の明確化
評価誤差を防ぐには、そもそも評価の基準が適切かどうか確認する必要があります。
- 成果評価:課題や目標の達成度をもとに行う
- 能力評価:知識や習熟度をもとに行う
- 情意評価:業務意欲や協調性などをもとに行う
以上3点の基準を見直し、明確な評価基準を設定することが、恣意的な評価を防ぐ上で重要なポイントです。
評価理由の明文化
評価者の主観に依拠することを防ぎ、事実に基づく評価を行うためには、評価理由を明文化することも大切です。評価者が客観的な判断を下せているかどうかを確認するのに役立つのみでなく、被評価者に評価を伝える際の説明を合理的に行うためにも、評価後に評価者の判断についてフィードバックを行うためにも有効になります。
評価者訓練
適切な評価判断ができる人材を育てることも、評価誤差を防ぐ上で必要なポイントです。評価訓練の実施によって、評価者に人事評価の仕組みや評価基準を理解させ、評価誤差が起きる可能性を低くする効果が望めます。また訓練の他にも、人事評価における手引きを作るのも有効と言えるでしょう。
まとめ
人に対してであれ、物に対してであれ、私たちは日々大小の評価判断を行っています。
自らの思い込みや偏見に無意識のまま評価すれば、誤った判断をしてしまい「こんなはずじゃなかった」と感じる結果に終わってしまうかもしれません。しかしハロー効果のような現象が起こり得ると意識できていれば、誤った評価判断を防げるだけでなく、企業のマーケティングのように効果的に活かすことも可能となります。
まずはその一歩目として、今回の記事を参考にハロー効果への理解を深めていきましょう。