「5年後、10年後にはこうなっていたい」「あの人のように働けるようになりたい」そんな風に思える人に出会ったことはありますか?
ロールモデルは、自分が目指すべき人物像を身近な人の中から見つけ、成長する仕組みのことです。ロールモデルを持っている企業と持っていない企業では、企業全体としての成長に差が出ると言われています。
企業にとって不可欠とも言えるロールモデルの意味やメリット、見つけ方、効果的な活用法などを詳しく解説します。
ロールモデルの意味とは?
ロールモデルとは、仕事をする上で自分の考え方や行動のお手本になるような人のことです。「こんな人になりたい」そう思える人が身近にいることで、その人の考え方や行動を模倣したり学習したりすることができます。
ロールモデルはなぜ注目されている?
今、企業の間でもこのロールモデルが注目されつつあります。その理由として、働き方や価値観の多様性が広がっていることがあげられます。例えば女性の場合なら、育児と仕事を両立しながらキャリアを築いていく女性社員をロールモデルとし、後輩を導くことが期待されることもあるでしょう。
ロールモデルは個人や企業にとってさまざまな効果が期待されています。
ロールモデルとして最適な人物
ロールモデルは、誰でもいいわけではありません。
最も理想的なロールモデルは、直属の上司や先輩です。その人の働いている姿を見ることで、仕事に対する考え方や行動、意識の高さなどを日々学ぶことができるからです。同じ部署や社内にロールモデルが見つからない場合は、同業他社や取引先など社外の人でも問題ありません。直接関わりのない有名人や著名人でも良いでしょう。
また、ロールモデルを複数名設定するのも効果的です。その際は、スキルやジャンルごとにそれぞれのロールモデルを設定することをおすすめします。
ロールモデルの設定による効果
ロールモデルの設定には、身近な人を自主的に設定するパターンと、企業側がロールモデルとなる人物を育成して設定するパターンの2種類があります。後者の場合は企業側にとっても大きなメリットがあります。
成長スピードが向上する
成長に必要なことは、今の自分を客観的に知ることです。それは自分一人では難しいことでもあります。しかしロールモデルとなる人物が身近にいることで、その人と現状の自分を比べることができます。今の自分を客観的に把握することができ、具体的な目標を設定することができるようになります。
「今の自分に何ができていないのか」など現時点での課題が明確になり、結果的に成長スピードが向上するでしょう。
キャリアプランを立てやすくなる
同じ部署の先輩や上司をロールモデルにすることで、その人に近づくためにはどうすればいいのかを具体的に考えられるようになります。経験豊富な先輩の仕事の進め方、上司のマネジメントスキルなどを身近で見て学ぶことで、自分に足りないものが何か把握できます。具体的な目標がわかれば、段階を踏んだスキルアップを目指すことができるでしょう。
3年後、5年後、10年後の自分をイメージすることができ、キャリアプランが立てやすくなります。
組織内のコミュニケーション改善
目標となるロールモデルに近づくため、その人がどのような過程を経てきたのかを知る必要が生まれます。知りたいことがあれば、普段は話しかけにくい上司や先輩にも声をかけやすくなります。上司や先輩も、自分の仕事への意識や心がけていることなどは話しやすい話題のはずです。普段の仕事の指導とは違ったコミュニケーションが生まれるでしょう。
共通の話題があることで、社内のコミュニケーションが良好になるという効果が期待できます。
組織全体の活性化
ロールモデルに近づくため、社員はその人とコミュニケーションを多く取り、行動や考え方を学ぼうとするでしょう。目標が明確になれば、これまで以上に業務に前向きに取り組む社員が増えます。こうした良い影響はやがて組織全体に広がります。
また、ロールモデルを設定することで企業が育成したい人材、組織づくりなど進みたい方向性も統一しやすくなります。全社員が高い意識を持ち、同じ方向に向かって成長する組織になれば会社全体が活性化するでしょう。
多様な人材が活躍しやすい環境に繋がる
社内にさまざまなロールモデルを設定することで、それをお手本にして頑張る人が出てくるでしょう。例えば育児と仕事を両立している人、病気の治療をしながら働いている人、新卒や中途採用、非正規からの正社員登用などさまざまな働き方を知ることで自分の働き方にも柔軟な考えを持つことができます。
多様性が重要視される今の社会において、年齢や性別に囚われることなく、誰もが活躍できる環境づくりにつながるでしょう。
離職率の低下
「この仕事を続けていても将来が見えない」「成長が期待できない」そんな理由で転職する若手社員は多くいます。実際に、今はどの企業でも人材不足で転職希望者の売り手市場とも言われています。ある程度の経験があり、待遇面などの希望がマッチすれば転職先を探すことは難しくありません。
将来のキャリアがイメージできるロールモデルを設定することで、こうした人材の流出をとどめる効果も期待できます。
社員別!ロールモデルに適する人物の要件
新入社員
新入社員に求められることは、先輩や上司からの指示を理解し、遂行することです。わからないことはタイミングを見計らって質問したり、自分の意見を伝えることも重要です。
新入社員のロールモデルに設定する人物には、こうした行動ができ、予定通りの成果をあげることができる入社年数の若い社員をおすすめします。さらにある程度自分で考えて主体的に業務に取り組む姿勢のある人物であれば、なお良いでしょう。
中堅社員
中堅社員になると、社会人としての基礎があるのは当たり前で、指示を的確に部下に伝えることが求められます。また、業務や組織の課題とリスクを把握・対応したり、他部署との調整や案件などのスケジュール管理をしたりする能力も必要になります。
自分の仕事だけではなく、周りの社員のことも把握でき、さらに自分のスキルアップも目指す社員をロールモデルとして設定すると中堅社員の成長につながるでしょう。
ベテラン社員
ベテランの社員になると、社員をまとめて事業を進めたい方向へ導き、組織としての力を最大限に引き出すことができる社員がロールモデルとして相応しいと言えます。
どんな相手の意見にも耳を傾け、議論にも加わっていなかった相手に現状や経緯を端的に伝え、チーム全体の作業効率を高めたり、広い人脈を持っていたりするなど、より多くのスキルが求められます。柔軟な考えと臨機応変な対応力を持つ管理職をロールモデルにすると良いでしょう。
ロールモデルの見つけ方や簡単な活用の手順とは?
具体的なロールモデルの設定
社員が個々にロールモデルを設定できない場合は、企業が適切な人物を選定すると良いでしょう。ロールモデルは立場によって異なります。求めるスキル、どのようなキャリアを積んでほしいか、仕事とプライベートや育児との両立といったワークライフバランスなどを意識することをおすすめします。
企業が求める条件から、それぞれのキャリアや年代、部門ごとにロールモデルに相応しい人材がいるかどうかも把握しておく必要があります。
ロールモデルに適する人材の育成と選定
ロールモデルを設定した後は、その人材を育成しなければなりません。集団研修では、ロールモデルに相応しい人物像を伝えるだけではなく、コミュニケーションの取り方や他部署とのネットワークの作り方などを伝えることも押さえておきたいポイントです。さらに個別研修では、個々のレベルに合わせた研修や身につけてほしいスキルの取得、個別でのメンターとの対話などを行うことが可能です。
こうした育成を経て、ロールモデルに最適な人材を選定します。
ロールモデルの思考や行動の分析
せっかくロールモデルを設定しても、ただ「ああなりたい」と思っているだけでは有効的に活用できているとは言えません。業務のさまざまなシーンでどのような対応をしているのか、なぜその対応にしたのか、その人の行動パターンや理由などを具体的に観察し、分析することが重要です。
漠然と憧れるだけではなく、具体的に理解することで少しずつ模倣することができ、スキルアップにつなげることができるでしょう。
ロールモデルの伝達と模倣
ロールモデルとなる人物が設定できれば、次はその存在を社内に広く周知します。会社によってはロールモデルが十分に知られていないこともあります。多くの社員に知ってもらうことで、ロールモデルの仕事の進め方や考え方を模倣する人が増えるでしょう。
まずは模倣からスタートし、繰り返すことでパターンが身についていきます。常に自分の行動を振り返り改善を続けることで知識やスキルの習得が早くなり、一人ひとりの成長、さらには組織全体の成長につながるでしょう。
まとめ
ロールモデルを設定することで社員のスキルアップ、ひいては会社全体の成長を促す効果が期待できます。また、ロールモデルによって成長した社員はロールモデルの有効性を実感しているため、自分の後輩や部下の指導にも力を発揮するでしょう。
ロールモデルが、次世代のロールモデルを生み出すという好循環が生まれ、さらなる企業の活性化につながるはずです。今後の組織体制に不可欠なロールモデルは、計画的に育成することをおすすめします。