レンジレートとはどんな賃金制度?3つのタイプについても紹介

給与明細

基本給の決め方には、レンジレート、シングルレート、評価替方式、スライド方式の4つの方式があります。この4つの方式の中で、レンジレートは最も一般的なものとなっています。レンジレートはさらに、接合型、開差型、重複型の3つのタイプに分けられ、それぞれにメリット・デメリットがあります。企業ごとに賃金制度は異なっており、企業の性格に合った方式で賃金設定となっています。

レンジレートとは?

レンジレートとは、賃金制度の方式の1つで、一般的な方式になります。レンジレートでは、1つの等級やポジションに対して、複数の基本給の額を設定します。1つの等級を複数の号俸に分け、各号俸ごとに基本給を設定します。等級が上がらなくても、号俸が上がれば昇給するという仕組みです。同一等級内でも年数や能力の習熟によって基本給に差をつけることが可能です。また、定期昇給があることもレンジレートの特徴の1つです。定期昇給は、従業員のモチベーション維持に繋がります。

基本給の決め方にはレンジレート以外に3つの方式がある

基本給の決め方には、レンジレートの他に、シングルレート、評価替方式、スライド方式の3つの方式があります。この3つについて、メリット・デメリットを含めて説明していきます。

シングルレート

シングルレートとは、1つの等級やポジションに対して、1つの基本給の額を設定している賃金制度です。等級が上がれば昇給します。等級と賃金額が1:1のため、シンプルで分かりやすく、また、従業員の成果に対するモチベーション維持に繋がります。しかし、定期昇給がなく、等級が上がらない限り基本給は上がらないため、場合によってはモチベーションの低下にも繋がります。

評価替方式

評価替方式とは、毎年の人事評価によって、等級や号俸が決まる方式のことです。この評価は、過去の評価とは関係なく、その年の成果に対して行われるため、昇給もあれば減給もあります。レンジレートのように定期昇給はありませんが、従業員の努力が反映されやすい仕組みとなっており、従業員の成果に対するモチベーションを高めることができます。また、定期昇給がないため人件費管理もしやすいです。しかし、結果を出さなければ昇給しないため、場合によっては従業員のモチベーションが低下することもあります。

スライド方式

スライド方式は、評価替方式と同様に毎年の人事評価によって昇給も減給もある仕組みです。評価替方式とは違う点は、前年までの評価も翌年に持ち越すことができることです。スライド方式では、同一等級内を複数のエリアに分け、各エリアごとに評価に応じた更改額を設定していきます。前年の基本給額を翌年に持ち越せ、その基本給に翌年の評価に応じた更改額がプラスされていく仕組みです。成果を出せば昇給し続けるため従業員のモチベーションを維持することができます。また、定期昇給による大幅な人件費の増加を抑えることもできます。しかし、成績が悪ければ前年の基本給から減額する可能性もあります。

レンジレートには3つのタイプがある

等級のイメージ

レンジレートには、隣り合う等級間の賃金差をどのように設定するかで、開差型、接合型、重複型の3つのタイプに分類されます。ここでは、それぞれのタイプの特徴と、メリット・デメリットについて説明します。

開差型

ある等級の上限額と、その1つ上の等級の下限額が接しておらず離れている賃金制度のタイプを開差型といいます。年功的賃金制度から実力主義・仕事主義への移行に伴い、近年はこのタイプが増えてきています。等級が上がると大きく基本給が上がるため、昇格インセンティブが確保でき、能力と給与の間に乖離が生じにくいというメリットがあります。しかし、同じ等級に留まっている従業員に対する昇給インセンティブは確保できず、また、等級間の賃金差に開きがある分、各等級内の賃金幅は小さくなり、昇給の幅も小さいです。

接合型

ある等級の上限額と、その1つ上の等級の下限額が同じであり、2つの等級の賃金レンジが重なっていないタイプを接合型といいます。等級間の賃金差がない分、各等級内の賃金幅は大きくなります。そのため、昇給の幅も大きくなり、所得の増加感を与えることができる一方で、昇給インセンティブは開差型よりも確保しにくくなっています。

重複型

ある等級の上限額が、その1つ上の等級の下限額よりも高くなっているタイプを重複型といいます。年功的賃金制度では主流であったタイプです。上の等級に昇格するときに賃金が決めやすく、同じ等級に留まっている従業員に対する昇給インセンティブも確保できます。一方で、年功的になりやすく、また、下の等級の者が上の等級の者より賃金が高いという逆転が起こる可能性があります。

ジョブ型雇用におけるレンジレート

近年、ジョブ型人事制度が求められています。その背景には、コロナ禍でのテレワーク導入やグローバル化があり、グローバル化に対応しつつビジネスの専門性を高めるにはジョブ型雇用を進めるべきではないかと考えられているのです。ジョブ型雇用での賃金制度では、シングルレートが原則となっています。しかし、日本では、定期昇給は当たり前だという文化が根付いているため、シングルレートよりもレンジレートを用いる方が良いとされています。ジョブ型雇用において、レンジレートを用いる場合、ゾーン別昇給方式のような賃金制度が良いとされています。ゾーン別昇給方式では、同一の評価ランクでも、基本給の金額によって昇給額が異なり、基本給が上がるほど、昇給額は小さくなっていき、ポリシーラインという水準を超えると減給となることもあり得る仕組みになっています。

レンジレートとシングルレートを組み合わせる方法もある

最近では、雇用環境や従業員の多様性を反映し、オリジナルの賃金制度で基本給を設定している企業が増えてきています。例えば、等級が低いうちはレンジレートを用いて、上位の方の等級ではシングルレートを用いるというシングルレートとレンジレートを組み合わせた例もあります。他にも、管理職の職能給をシングルレートで設定し、職責給をレンジレートで設定するといった組み合わせ方もあります。

まとめ

近年、社会の流れに対応した賃金制度を用いることが求められています。年功的賃金制度からの脱却、成果主義、グローバル化、人材の多様性、テレワークの導入などの背景により、個々の企業に適切な賃金制度を設定することが必要でしょう。人件費の高騰を抑えつつ、良い人材を確保するためには、複数の方式を組み合わせつつ、柔軟に賃金を設定していくことも考えていくべきなのかもしれません。

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