勤めている会社を退職するとき、どのような理由を人事部や上司に伝えるべきか悩む人は多いのではないでしょうか。
重要なのは「本音と建て前」を適切に使い分けること。
ネガティブな理由や引き留める余地を残す理由は、前向きな理由に変換して伝えることで、納得感を伴って理解してもらえやすくなります。
この記事では、これから退職をしたい方に向けて、上手な退職の意志の伝え方をご紹介します。
退職理由として多いのは「給与」や「人間関係」
退職理由として多い理由 上位3位は給与・人間関係・会社都合(倒産等)
「マイナビ転職動向調査2021年版(2020年実績)」では、退職理由のランキングは以下という結果に。
2020年
- 1位 給与が低かった
- 2位 職場の人間関係が悪かった
- 3位 会社倒産やリストラ・ハラスメント等の非自発的理由があった
2019年
- 1位 職場の人間関係が悪かった
- 2位 給与が低かった
- 3位 休日や残業時間などの待遇に不満があった
2018年
- 1位 給与が低かった
- 2位 職場の人間関係が悪かった
- 3位 休日や残業時間などの待遇に不満があった
給与・人間関係・会社の都合や待遇の不満が上位となっています。
円満退社のための退職理由
前章にある退職理由をそのまま伝えると、残念ながら会社側は良いイメージを抱きません。
言い方によってはトラブルになり、スムーズに退職できない場合もあります。
仮に退職できたとしても、次の転職先で取引先として関わることになったり、また、同じ業界で転職する場合はどこかで顔を合わせることもありえます。できるだけ好印象を残しながら円満に退社するのが社会人としてベターです。
人事部や上司に理由を伝える際のポイントを解説します。
やりたいことや目標が見つかった
「今の会社ではできないことで、やりたいこと・目標が見つかった」は好印象を与える理由の一つです。
起業や独立を目指すなど、夢や熱意に溢れたビジョンや目標があれば、しっかり伝えることで周囲の納得度を高めることができます。
ただし、やりたいことや目標がないのに理由として伝えると「本当だろうか?」と疑念を生み出してしまうので要注意です。
新しい分野にチャレンジしたい
今の業界とは別の分野を目指す人には適切な理由の一つです。
「チャレンジしたいこと」が現在の会社や業界でできるのであれば、引き留められる可能性がありますが、全く新しい分野であれば理解してもらいやすくなります。
家庭の事情で
親の介護との両立が難しい、実家の家業を手伝うために地元に戻る、子育てに専念するなど家庭の事情が理由であれば、会社側も反対しづらくなります。
ただ、もし本当に家庭との両立の難しさが理由で退職を検討している場合、それを素直に伝えることで配属や勤務時間などを調整してもらえる場合も。相談する余地はあります。
一身上の都合で
どうしても理由を伝えにくい場合は、「一身上の都合で」とします。
一身上の都合とは、会社とは関係なく、自己都合でやめたいという意味となります。
たとえば、持病の悪化など、プライベートなことで会社側に立ち入られたくない場合や、それ以上深く追求されたくない場合に有効です。
伝えないほうがよい退職理由は?
円満退職を望むなら、以下のような内容を退職理由に挙げるのは避けた方がいいでしょう。
会社や個人への批判・不満
会社への批判や不満は、ストレートに伝えないことが無難です。また、特定の個人への批判・不満も同様に避けましょう。
相手の心象を悪くする可能性があり、円満退社を妨げます。また、退職を阻まれたり、嫌がらせを受けたりする「ヤメハラ」に遭う可能性も。
会社側は、「何か不満があるのなら教えてくれ」と尋ねてくるかもしれませんが、退職の決意が固まっているのであれば、改善する余地も不要ですので、伝えない方がベターと言えます。
給与や待遇への不満、他社との比較
人員不足の会社であれば、「給与を上げるから」と引き留められてしまう可能性も。
給与や待遇のみが退職の理由であれば、給与交渉の場として退職面談を活用するのも手です。
給与や待遇以外の理由で退職する場合は、引き留められてしまうので要注意です。
また、他社と比較するのは相手の心象を悪くするのでおすすめできません。
仕事がおもしろくない、やりがいを感じない
特に入社から1年未満など日が浅く、十分な実績を作れていない場合は、「仕事が面白くない」を退職理由としても説得力が生まれません。
「あと数年頑張ってみては?」と引き留められてしまうかもしれないため、こういった内容を理由にするのは避けましょう。
ネガティブな退職理由はポジティブな理由に変換する
ネガティブな理由はポジティブな理由に置き換えることで円満退社になりやすいといえます。転職活動でも同様にポジティブな理由を伝えると良いでしょう。
具体的な言い換えについて例を挙げながら説明します。
給与や待遇への不満は、自分の実績・評価に置き換える
ストレートに「給与が安かった」では退職する会社も、転職先の会社も納得感が低かったり、不信感が生まれがちに。直接的な表現は避けた以下のような表現に変換できます。
例)
- インセンティブの高い企業で、もっと自分の可能性を試したいと思ったから。
- より専門性の高い企業へステップアップしたいため。
辞める理由に給与の低さを挙げると、給料を上げるから残ってほしいと引き止められる可能性があります。
もし、給料が上がるなら残ってもいいと思えるならいいでしょう。
ですが、一度辞めると伝えると、会社側はまた将来辞めると言ってくるかもしれないと、信用されにくくなったり、また上がった給料も続く保証はありません。
給与交渉と退職の申し出は分けて相談する方がベターです。
<H3>人間関係への不満は、「パフォーマンスを上げる組織風土で働きたい」
「人間関係が苦だった」という理由では、後ろ向きな印象を残しがちで、残る側も良い気持ちがしません。また、会社側は部署異動や別拠点への異動の提案によって引き止めることも。
人間関係の不満は以下のような言い回しに変換できます。
例)
- パフォーマンスを上げる組織風土で働きたい
- 自らの判断で仕事が進められる環境にいきたい
転職活動では「個々の社員を互いに尊重する社風に惹かれて」などを添えることで、転職先の会社にも好印象を残すことができます。
労働環境への不満は、「ワークライフバランス」
もし、残業が多いことが理由の場合、単に「残業が多い」と伝えても、相手も同じ土俵で判断しづらい状態です。週の残業時間が平均○時間を超えており、体力的に厳しいというような、具体的な数字とともに伝えると良いでしょう。
例)
- 現在、週の平均残業時間が20時間を超えており、体力的に厳しい
- 親の介護(看護)のため、時間の融通がきく仕事に移りたい
ポイントは体力や家族のことなど、個人的なことを理由に挙げると、会社は引き止めにくくなります。
退職するまでの流れと注意点
退職するまでの流れと注意点を解説します。
退職を伝えるのは1~2か月前が一般的
労働基準法上は、原則2週間前までに退職の申出を行うと定められていますが、一般的に就業規則や雇用契約書に「退職は○か月前に申し出なければならない」と記載があるため、会社の規則を確認しておきましょう。
円満退社を希望するなら、引継ぎや後任の配属・採用を考えると退職希望日の1,5〜2か月前に伝えるのがおすすめです。
失業保険の申請や健康保険の手続きを忘れずに
次の転職先が決まっていない場合は、失業給付金の申請を行います。
条件は、離職の日から遡って2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あることです。
ただし、倒産や解雇など、会社都合の退職は、離職の日からさかのぼって1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給可能です。
退職とともに加入していた健康保険の被保険者資格は喪失しますので、以下のいずれかの手続きをしましょう。
1. 任意継続被保険者制度の利用
2. 国民健康保険への加入
3. 家族の扶養に入る
まとめ
退職理由の多くは、「給与」「人間関係」「職場環境」への不満です。
円満退社をしている人は、それらの理由をそのまま伝えるのではなく、ポジティブな表現に変換して伝えています。
そうすることで、トラブルを避け、スムーズな退職手続きに繋げることができます。
気持ちよく退社できれば、次の会社へも気持ち良く移ることができるでしょう。
これから退職を申し出る予定の方は、ぜひ参考にしてみてください。