「働きがい」とは?「働きがいのある職場」の特徴や作るためのポイントもあわせて解説

昨今、「人材資本経営」という言葉を耳にしますが、それがどのような内容かよくわからないという人も多いのではないでしょうか?人的資本経営とは人材を「資本」として捉え、企業価値を高める経営手法です。経済産業省が「人的資本経営調査レポート」を発表し、推進しています。

このような流れの中、人的資本経営を実現する重要な要素のひとつとして注目を集めているのが、「働きがい」です。この記事では、「働きがい」が注目を集めている背景、働きがいのある企業の特徴や取り組み事例などについて詳しく紹介します。

「働きがい」とは?

「働きがい」とは、働くことで得られる喜びや価値を意味します。働きがいを感じることでモチベーションも高くなり、仕事に継続的に取り組むことができます。そして、それは充実した人生を送ることにもつながります。

米国の臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱している「ハーズバーグの二要因理論」によると、働きがいは「動機付け要因」と「衛生要因」に分かれます。「動機付け要因」は、達成感や裁量範囲の拡大など、やる気につながるものです。一方、「衛生要因」は、待遇、労働環境、会社の方針や管理方法など、整理されていないと不満の要因になるものを指します。

このため、まずは自社の「衛生要因」を見直し、もし改善点があれば改善をして、その上で「動機付け要因」にアプローチするのがよいでしょう。

働きがいが注目されている背景

では、なぜ今、働きがいに注目が集まっているのでしょうか?注目される背景として、以下のようなことがあげられます。

1つ目は「SDGsの目標の1つに”働きがいも経済成長も”が掲げられている」ことです。多くの企業がSDGsへの取り組みを表明しており、それとともにこの目標も注目を集めています。

2つ目は「経団連が”働き方改革 toward Society 5.0”を掲げており、大企業を中心に取り組む企業が増えている」ことです。また、経団連もこの活動を強く進めています。

3つ目は「成果ややりがいを重視した働き方がより重視されている」ことです。コロナ禍でのテレワークの普及に伴い、成果ややりがいを重視した企業の姿勢の変化も影響しているでしょう。

働きがいと似た意味で使われる「働きやすさ」・「やりがい」・「従業員エンゲージメント」との違い

「働きがい」に似たような言葉に「働きやすさ」・「やりがい」・「従業員エンゲージメント」があります。ここでは、これらの言葉と「働きがい」の違いについて解説します。

「働きがい」とは個人の内面から現れるものです。それに対して「働きやすさ」とは、外的な要因や外側から提供されるものを指します。具体的には「残業が少ない」「評価が公平」「人間関係が良好」「福利厚生が充実している」などです。

「やりがい」とは、「仕事を通じて自分が成長している」「達成感を感じる」など、自分の実感やメリットを感じている状態などを表します。このような実感があれば仕事に対するさらなるやる気も出ますし、適切な評価が与えられれば、さらなる「やりがい」につながります。

「従業員エンゲージメント」は企業と従業員の相互理解や結びつきの度合いを表します。従業員の会社に対する信頼度や貢献意欲などです。「愛社精神」や「愛着心」と訳されることもあります。

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「働きがいのある職場」の特徴

GPTWが考える働きがいのある会社

「働きがいのある企業」を表す指標の一ひとつに「働きがいのある会社ランキング」があります。これは、世界約60カ国で働きがいに関する調査を行っているGreat Place to Work®(GPTW)が働きがいがある企業をランキング形式で発表しているものです。GPTWは、先に述べた「ハーズバーグの理論」をもとに、「働きやすさ」と「やりがい」の両方を備えた企業や組織を「働きがいのある企業」として選出しています。

また、GPTWのレポートでは、以下の切り口で「働きがいのある会社」を評価し、発表しています。

  • ベストカンパニー
  • 「働く人へのアンケート」結果
  • 管理職における男女の割合
  • ダイバーシティ担当者導入率
  • フレックスタイム導入率

働きがいを構成する5つの要素

先に紹介したGPTWでは「働きがい」を「信用・尊厳・公正・誇り・連帯感」の5つから評価しています。これらの5つの評価観点は以下の通りです。

  • 信用:従業員の経営層に対する信頼度を測定する。具体的には、経営層の能力やコミュニケーションの取り方などに対する社員の認識などを評価する。
  • 尊厳:経営層が従業員からどれだけ評価されているかを測定する。具体的には、経営層の社員に対するサポートや協力体制などを評価する。
  • 公正:経営層が従業員を公平・公正に扱っているか、評価しているかなどを測定する。
  • 誇り:従業員の仕事に対する誇りを測定する。具体的には会社や職場に対して従業員がどれだけ誇りを感じているかなどを評価する。
  • 連帯感:従業員が職場で感じている連帯感を測定する。

「働きがい」が職場にもたらすメリット

業績が向上する

「働きがい」が職場にもたらすメリットの1つ目は、「業績が向上すること」です。働きがいを感じている従業員は、「もっと活躍したい」と主体的に業務に取り組みます。その結果、生産性が向上し、業績向上につながります。

人材の定着力があがる

「働きがい」が職場にもたらすメリットの2つ目は、「人材の定着力があがること」です。社員は自分が会社から期待される職務や職責を理解しているため、会社に対する貢献意欲が沸きやすいでしょう。また、仕事に対する満足感も高いため、結果として社員の定着率があがります。

新しいアイディアやビジネスが生まれる

「働きがい」が職場にもたらすメリットの3つ目は、「新しいアイディアやビジネスが生まれること」です。従業員は自分の得意分野や強みを活かしながら「自分事」として取り組みます。その結果、新しいアイディアやビジネスが生まれる土壌がつくられます。

人材が成長する

「働きがい」が職場にもたらすメリットの4つ目は、「人材が成長すること」です。従業員の仕事に対する意欲やモチベーションが高いため、より主体的に働き方ができるようになります。そして、仕事を行う過程の中でさまざまな経験やスキルを身につけて、従業員は自身の成長を実感するでしょう。

「働きがいのある職場」を作るためのポイント

経営理念を従業員にシェアする

働きがいのある職場をつくるためには、「経営理念を従業員にシェアする」ことが必要です。働きがいのある職場では、企業の理念や価値観と社員の価値観が概ね一致しています。なぜなら、会社の理念やビジョンなどが社員に浸透し、社員も納得して働いているからです。このような会社は、経営層と社員がカフェテラスなどで親しく会話するなど、経営層と社員との間に心理的な隔たりがなく、関係性が良いのが特徴です。

また、「なぜそのビジョンがあるのか?」「そのビジョンが実現できた先には何があるのか?」など、会話を通じて社員一人ひとりの中でビジョンがよりリアルなものとして感じられます。

円滑なコミニュケーションが取れる環境を作る

働きがいのある会社は社内コミュニケーションが円滑です。そして企業側も社内コミュニケーションが円滑となるよう、環境作りに積極的に取り組んでいます。社内コミュニケーションが円滑であれば、企業にとって3つのメリットがあります。

1つ目は「生産性の向上」です。社内コミュニケーションが円滑に進むと、仕事の進め方や業務分担などがスムーズに進み、その結果、仕事が進めやすくなり、生産性向上につながります。

2つ目は「社員満足度の向上」です。社内コミュニケーションが円滑であれば、上長も部下の要望や提案を吸い上げやすく、社員満足度向上のための施策や改善策を打ち出しやすくなります。

3つ目は「社員定着率の向上」です。上長に相談しやすい環境をつくっておくことで、仕事上の悩みの解決を図ることができ、離職率の低下につながります。

「働きがいのある職場」の取り組み事例

ディスコ

株式会社ディスコは精密加工装置やツールを開発・製造・販売しています。ほとんどの製品で世界で7割のシェアを誇っています。

ディスコは企業としてのあるべき姿を明文化した「DISCO VALUE」を社員に共有し、福利厚生施設の充実などを行ってきました。しかし、「働きがい」という切り口で社外の調査会社を利用して行ったところ、「連帯感に課題がある」という結果が見えてきました。

このため、ディスコは関係性の質を高めるために社内アンケートの設問の回答に点数をつけることで数値化し、「信頼関係の見える化」に取り組んできました。その結果、数値全体が向上し、「働きがいのある会社」に選出されると同時に企業信用力も向上しました。

Slack Japan

Slack Japanは世界17カ国でビジネスコラボレーションツール「Slack」を展開している企業です。また、2020年の「働きがいのある企業ランキング」では11位に選ばれています。

Slack Japanは「みなさんのビジネスライフをよりシンプルに、より快適に、より有意義に」をミッションとして、そしてその実現のために「共感」「匠の精神」「思いやり」「遊び心」「向上心」「チームワーク」の6つのコアバリューを掲げています。

また、日本にSlackを普及させるために、「自分たちがモデルカンパニーになろう」と働きがいのある企業になるための努力を続けています。その具体策が「コアバリュー」と「社員に求める4つの性質」による社員の意識づくりです。その結果、生産性の維持、イノベーションや新しいアイディアの創出につながっています。

テイクアンドギヴ・ニーズ

株式会社テイクアンドギヴ・ニーズは国内ウェディングの最大手企業です。そして2022年版「働きがいのある会社ランキング」では大規模部門(従業員1,000人以上)でベストカンパニーに選出されました。

テイクアンドギヴ・ニーズはコロナ禍で結婚式の施行中止を決断したとき、離れていても会社と全従業員のコミュニケーションが取れるようにビジネスチャットツールを導入しました。

経営陣が心の内を明らかにし、それを従業員に伝えて次々と手を打った結果、従業員は経営陣への信頼につながっています。また、コロナ禍での離職率も平時よりも低下しています。

まとめ

この記事では、働きがいが注目を集めるようになった背景や「従業員エンゲージメント」との違いなどについて解説しました。

「働きがい」とは、働くことで得られる喜びや価値、結果を意味します。働きがいを感じると、おのずとモチベーションも高くなり、仕事に継続的に取り組むことができます。

「働きがいのある企業」を表す指標のひとつに、GPTWが発表している「働きがいのある会社ランキング」があります。ランキングに登場する企業は、働きがいの向上に取り組んだ結果、「業績向上」や「定着率の向上」などのメリットを享受できました。

「働きがいある職場づくり」に取り組みたいと考えている企業は、是非、この記事を参考にしながら取り組んでみてください。

https://survey.lafool.jp/
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