人材ポートフォリオとは?基礎知識や作り方を詳しく紹介

ポートフォリオとは元々「紙ばさみ」という意味です。そこから派生し、「複数のものを一つにまとめたもの」という意味合いで使われています。人材ポートフォリオとは、人材の内容を一つにまとめたものを指し、近年重視されている人事マネジメント法です。

人材ポートフォリオとは?

人材ポートフォリオとは、経営戦略に基づいた人的資源の構成内容のことで、どこ(部門・ポジション)に、どんな人材(職種・スキル)が、どのくらい(人数・年数)存在しているかを分析・設計したものです。人材ポートフォリオを作成することで、人的資源情報を正しく把握できるため、人材を適材適所に配置することで効率的に成果を上げていくことができます。採用計画、人材育成、配置、評価などに役立てることができるのです。

人材ポートフォリオが重視されている背景

近年、人材ポートフォリオが重視されている背景には、人材の多様化があります。

人的資本経営への注目

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を言います。2020年に経済産業省による「人材版伊藤レポート」が公開され、人的資本経営は企業から注目をされるようになりました。2022年には内閣官房による「人的資本可視化指針」が公表され、また、2023年からは人的資本情報の開示が義務化されます。

働き方の多様性

働き方改革や女性の社会進出、労働者派遣法による正社員以外の人材の活用、柔軟な働き方を選ぶ人が増えていることなどを背景に、人材の契約形態、能力、キャリアに対する考え方、業務量などが多様化しています。また、新型コロナ感染症によるリモートワークの導入も多様化の背景の一つとしてあります。このような多様化の中で、企業が成果を出していくには、人材に合った働き方を設定し、個々の人材が力を発揮できる環境が求められます。

グローバルでの競争力低下

経済のグローバル化により、労働市場もグローバル化しています。それにより国内、国外を問わず優秀な人材を採用できるようにんりました。しかし、企業同士の人材競争も激しく、特に中小企業にとって限られた資源で競争を勝ち抜くためには、人材を最大限に活用していく必要があります。

労働人口の不足

少子高齢化により、日本の労働力は減少しつつあります。経済産業省によると、労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は、2022年平均で6902万人と前年に比べ5万人減少しており、また、15歳〜64歳の労働力人口は、2022年平均で5975万人と前年に比べ6万人減少している。今後も減少が見込まれており、少ない労働力をより効率的に活用することが求められています。

人材ポートフォリオを作るメリット

最適な人材配置ができる

人材ポートフォリオを作成するメリットとして、まずは、最適な人材配置が可能になることが挙げられます。各従業員の能力、強みや弱み、キャリアに対する考えを把握することで、各部署や業務に適した人材を配置できます。それにより、人材育成につながるとともに、従業員が自身の特性・希望に合った業務に携わることでモチベーションのアップにもつながります。

従業員一人ひとりにあったキャリア支援ができる

人材ポートフォリオの作成は、従業員のキャリア支援にも役立ちます。働き方が多様化する中で、従業員一人ひとりのキャリアを支援し、それぞれに適した経験やチャンスを与えることは、企業として重要です。各従業員の強み・弱み、キャリアの志向を把握することで、各々に適したポジションを提案できるようになります。これは、従業員のモチベーションアップ、そして生産性の向上につながっていきます。

生産性が向上する

前述の通り、最適な人材配置や従業員一人ひとりに合ったキャリア支援の結果、従業員のスキルや能力が最大限発揮されるとともに、モチベーションも向上し、結果的に生産性向上につながります。

人材の過不足を正確に把握できる

人材ポートフォリオを作成する4つ目のメリットは、人材の過不足を正確に把握できるということです。人材ポートフォリオは、どこに、どんな人材が、どのくらい存在しているかを可視化したものです。この可視化により、自社にどんなタイプが多く、どんなタイプが不足しているかを把握できます。それにより、多すぎるタイプの配置の調整、不足しているタイプを採用・配置・育成するといった適切な対応が取れるようになります。

人材ポートフォリオの作り方

人材ポートフォリオの作成は専門のコンサルタントに依頼することが多いかもしれませんが、知識として流れを把握しておくことも役立ちます。人材ポートフォリオを実際に作成する手順を、以下に紹介します。

自社での活用の方向性を決める

まずは、人材ポートフォリオを何のために活用したいのかを決めておくことが重要です。この目的なく、人材ポートフォリオを作成しても、効果的に活用していくことはできません。経営計画や事業計画の方向性をもとに、人材ポートフォリオを作成することが、人材ポートフォリオの活用につながります。

自社に必要な人材のタイプを分析する

次に、自社の経営計画や事業計画には、どのようなタイプの人材が必要かを決めます。この“タイプ“とは、「個人・組織」、「創造・運用」の2軸、4象限で分類することが一般的です。「個人×創造」、「個人×運用」、「組織×創造」、「組織×運用」の4タイプに分けられます。経営計画や事業計画に4つのタイプのうち、どのタイプが必要かを決めましょう。

従業員をそれぞれのタイプに当てはめる

必要なタイプが決まったら、次は従業員を4つのタイプに分類します。この際、主観的ではなく、客観的に判断することが重要です。適性検査の結果といった客観的なデータを用いて分類するようにします。特に適性検査は、採用試験にも使われており、人事マネジメントにおいても活用されつつあるため、おすすめです。

偏りがないかを確認する

タイプの分類ができたら、各業務や部署の人数や構成比に、人材タイプの偏りがないかを確認します。各業務や部署に適切なタイプの人材が配置されているか、過不足がないかを見ていきます。人材の過不足が明確になることで、必要な人材の配置や採用、育成を決定することができます。

多すぎる・少なすぎるタイプについて解決策を検討する

各業務や部署の人数や構成比に偏りがあることが分かったら、理想的な配置にするための手段を考える必要があります。多すぎる場合は再配置を行い、少なすぎる場合は採用や育成が検討されるでしょう。

人材ポートフォリオを作る際に気をつけるべきポイント

人材ポートフォリオを作成するにあたって、気をつけるポイントは以下の通りです。

  • 従業員の特性や能力を正確に把握すること

従業員の特性や能力を正確に把握できなければ、限られた人材を最大限に活かすことはできません。正確に把握するには、主観ではなく、客観で評価することが重要です。適性検査のような客観的な指標を用いるようにします。

  • 企業の経営戦略に沿って作る

人材ポートフォリオを用いて企業の成果を効率よく上げていくためには、企業の経営戦略に沿った人材ポートフォリオが必要です。企業にとって理想的な人材ポートフォリオを意識することで、最適な人材配置が可能となります。

  • 全ての雇用形態の従業員を対象に作成する

人材ポートフォリオは全ての従業員を対象として作成します。限られた雇用形態の人材を対象に作成してしまっては、全体の人材配置が可視化できず、効率的な人材の活用にはつながりません。

  • 従業員へのヒアリングも行う

従業員へのヒアリングも重要です。各従業員がキャリアや働き方についてどのように考えているのかを確認することで、より最適な人材配置ができるとともに、従業員のキャリア支援にもつながります。

まとめ

人的経営資本が求められ、人材が多様化している現代において、人材ポートフォリオは人事マネジメント手法として重要となります。限られた資本で、限られた人材を最大限活かしていくことで、企業は効率良く成果を上げていくことができるようになります。人材ポートフォリオの作成には、従業員の特性を正確に把握することが重要であり、それが人材の特性を活かした効率の良い活用だけでなく、従業員のモチベーションや生産性にもつながっていきます。

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