企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するためには、組織の生産性を牽引する「ハイパフォーマー」の存在が不可欠です。 しかし「ハイパフォーマー」の具体的な定義や、共通の特徴を正確に理解し、効果的な育成・採用戦略を立てられている企業は少ないかもしれません。 本記事では「ハイパフォーマー」の明確な定義から、共通して見られる具体的な特徴、そして組織内でその数を増やすための実践的な育成・採用のアプローチを徹底的に解説します。 この記事を読むことで、貴社のハイパフォーマー戦略を具体化し、組織全体のパフォーマンス向上に繋がる一歩を踏み出しましょう。
ハイパフォーマーとは
ハイパフォーマーとは、組織が設定した期待値を大きく上回り、それを継続的に達成する、高い生産性を有した人材のことを指します。
単に「仕事ができる人」という評価に留まらず、彼らの行動と成果には再現性があります。
ハイパフォーマーの存在は、その高いスキルと成果によって周囲のメンバーのモチベーションや生産性を飛躍的に高めます。
結果として組織全体の士気が向上し、課題解決が円滑に進むなど企業競争力を高める原動力となります。
特に少子高齢化や労働人口減少による人手不足が深刻化する現代において、企業が持続的に成長するためには、個々の生産性を最大化し、成果を組織全体に波及させるハイパフォーマーの存在が不可欠です。
近年、多くの企業で「ハイパフォーマーの行動特性を分析し、それを組織全体の育成戦略や採用基準に活用する」取り組みが積極的に行われています。

ハイパフォーマーに共通する要素
ハイパフォーマーの具体的な定義は、企業や業種、組織の状況によって異なります。
しかし、目覚ましい成果を継続的に叩き出す多くのハイパフォーマーには、その成果を裏付ける共通した思考様式と行動特性(コンピテンシー)があると言われています。
①結果を出すことに尽力する
ハイパフォーマーは単に目の前の目標達成で満足せず、「どのように成功したか」という成功要因を徹底的に分析します。
これにより、同じ状況下や異なる課題に対しても成功を再現できるよう、プロセスそのものにこだわります。
目標達成に必要なストレッチな目標設定を行い、自己裁量を持ちながら、諦めずに粘り強く試行錯誤を繰り返す傾向があります。
②周囲を巻き込み、成果を最大化する「影響力」と「傾聴力」
ハイパフォーマーのコミュニケーション能力は、単なる円滑な人間関係構築に留まりません。
彼らは必要な情報を正確に伝え、異なる部署や立場の関係者を共通の目標に向けて動かす「影響力」に優れています。
また、相手の本音や潜在的なニーズを引き出す「戦略的な傾聴」により、仕事の連携を最適化し、社内外の信頼を勝ち取ることで、個人では成し遂げられない大きな成果へとつなげます。
③失敗を恐れず、仮説検証を繰り返す「当事者意識」と「実行力」
ハイパフォーマーの行動力は、「まずはやってみる」という強い当事者意識に支えられています。
彼らは完璧を待たず、現状の課題に対して具体的な「仮説」を立て、その検証のために迅速に行動します。
たとえ結果的に失敗に終わったとしても、感情的にならずに客観的に問題を分析し、次の行動に活かすという高速なPDCAサイクルを回す能力に長けています。
④自己管理能力が高い
ハイパフォーマーは自身の仕事量を適切に把握し、緊急度と重要度に基づいてタスクを分類する高度な時間管理能力を持っています。
さらに、精神的な疲労や肉体的なコンディションも「資本」と捉え、適切な休憩やプライベートとのバランスを戦略的に確保します。
これにより重要な局面で最大のパフォーマンスを発揮できる状態を常に維持できます。
⑤現状に満足せず、常に「自己成長」を追求する姿勢
ハイパフォーマーは、単に知識や技術を学ぶだけでなく、自身の仕事やキャリアを通じて「成長し続けたい」という内発的な欲求を持っています。
彼らは、自身の目標達成や課題解決に直結する知識・スキルを明確にし、効率的にインプットします。
その学びを「インプット」で終わらせず、具体的な業務で試行し、成果に変えるところまでを一連のプロセスとして捉えています。
自身の能力開発に時間や投資を惜しまない姿勢も特徴です。
ハイパフォーマーの「採用」と「見極め」のポイント

ハイパフォーマーの採用は、単に高いスキルや経験を持つ人材を選ぶことではありません。
重要なのは「自社で成果を再現できるかどうか」を見極めることです。
ここではハイパフォーマーを発掘するための戦略的なアプローチを解説します。
採用時に着目すべきコンピテンシー評価
面接においてハイパフォーマーを見極める最も効果的な手法の一つが、コンピテンシー評価です。
コンピテンシーとは、高い成果を出す人材に共通して見られる「行動特性」や「思考パターン」を指します。
採用面接では応募者の過去の成功体験に対して、単に「何を達成したか」だけでなく「その成果を出すためにどのような状況で、どのような思考に基づいてどのような行動(行動特性)をとったか」を深掘りすることが重要です。
この評価には、STAR(Situation、 Task、 Action、 Result)などのフレームワークを活用し、自社のハイパフォーマーが持つ「再現性のあるプロセス」と照らし合わせることが不可欠です。
見極めのためのアセスメント・ツール活用
面接官の主観的な評価を補完し、客観的なデータに基づいて行動特性を把握するために、アセスメント・ツール(適性検査)の活用が有効です。
ツールは、知的能力(地頭力)、性格・価値観、ストレス耐性、組織適応性といったハイパフォーマーが共通して持つ潜在的な特性を可視化します。
特に当事者意識の強さ、内発的なモチベーション、高いレジリエンス(精神的回復力)など、面接だけでは判断しにくいマインドセットを見極めるために、選考プロセスの初期段階や中盤に組み込むことが推奨されます。
潜在的なハイパフォーマーを発掘する視点
すでに高いスキルを持つ「即戦力」に加えて、将来的にハイパフォーマーになり得る「潜在的な人材」を発掘する視点も重要です。これは、現時点の具体的な知識やスキルよりも「ポテンシャル」と「成長意欲」に着目します。
学習意欲の高さ、フィードバックを求める姿勢、困難な状況に挑んだ経験とその後の成長などを重点的に確認します。
また、異業種・異職種の採用であっても、自社のハイパフォーマーのコアとなる行動特性(粘り強さ、構造的思考力など)を移植できる可能性があるかを評価することで、人材の多様性を確保しつつ、組織全体の生産性向上を目指すことができます。
採用ミスマッチを防ぎ理想の組織に導く適性検査「テキカク」
「テキカク」は、組織と人材のミスマッチを防ぎ、採用候補者が組織の”いま”と”ミライ”への貢献度がわかる採用適性検査です。
組織改善ツール「ラフールサーベイ」で蓄積されたサーベイデータと、心理学×データ×AIで導かれた分析による裏付けにより、企業と採用候補者のマッチ度を算出することができるのが特長で、生産性の高い既存社員と採用候補者の特性の類似度がわかるため、新卒・中途採用にもおすすめのツールです。
ハイパフォーマーを組織で「育成」し「定着」させる戦略
ハイパフォーマーが持つ潜在能力を最大限に引き出し、組織への貢献を継続させるためには、個人の努力だけでなく、企業側が戦略的な制度と環境を提供することが不可欠です。
モチベーションを維持する評価・報酬制度
ハイパフォーマーは金銭的報酬だけでなく、自身の成長と貢献が正当に評価されていると感じることで高いモチベーションを維持します。そのため、評価制度は「成果」と「行動(プロセス)」の両方を重視する設計が必要です。
具体的には、MBO(目標管理制度)やOKR(目標と主要な結果)といった成果指標に加え、コンピテンシー評価を組み合わせることで、成果に至るまでの再現性のある行動特性を評価します。
また報酬制度は公平性と透明性を確保し、高い成果には昇進や裁量権の拡大といった非金銭的な報酬も積極的に活用することで「頑張りが報われる」という納得感を醸成し、モチベーションを維持させます。
効果的な育成プログラムと環境整備
ハイパフォーマーの育成には、一般的な研修ではなく、彼らの高い成長意欲に応える「ストレッチ(少し背伸びした)な機会」の提供が有効です。
具体的には、既存の役割を超えた難易度の高いプロジェクトへのアサインや、次世代リーダー候補としての個別コーチングやメンタリングを実施します。
育成環境としては、知識や経験豊富な上司や先輩が継続的に質の高いフィードバックを行う仕組みを整えることが重要です。
これによりハイパフォーマーは自身の成長課題を明確にし、自己成長を加速させることができます。
定着率を高めるエンゲージメント施策
ハイパフォーマーの離職は組織にとって大きな損失となるため、高い定着率を維持するためのエンゲージメント施策が重要です。
彼らは仕事への「やりがい」と「自己実現」を強く求めるため、キャリアパスの明確化が特に重要です。
マネジメント職だけでなく、専門性を極めるエキスパート職(複線型人事制度)といった多様なキャリアルートを用意し、将来の展望を示します。
また、組織全体で心理的安全性の高い文化を醸成し、自律的に裁量を持って働ける環境を整えることで、ハイパフォーマーは企業への貢献意欲と愛着を高め、長期的な定着に繋がります。
ハイパフォーマーの離職を防ぐ方法
①業務量の調整をする
仕事ができるハイパフォーマーには仕事が集中してしまう、というのはどんな企業でもあり得ることです。業務が偏り過ぎてしまうことでモチベーションが下がったり、組織への不満につながったりする可能性があります。そのため、上司は業務量が歪に偏らないよう、調整する必要があります。
業務量の調整は、ハイパフォーマーでなければできない仕事と、他の社員でもできる仕事と区別することがポイントです。
また、ハイパフォーマーには十分な裁量を与えることも有効的です。そうすることで、全社員がそれぞれがより高いパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
②ローパフォーマーを減らす
ローパフォーマーは組織の中でも成果の低い人のことを表します。ローパフォーマーを減らすことでハイパフォーマーの業務上の負担軽減につながります。ローパフォーマーを完全になくすことは難しいことですが、レベルの底上げを目指すことで、長期的なキャリアサポートをしてくれる会社だという信頼も生まれます。
ハイパフォーマーが個々に指導するなどは避け、組織全体として研修を実施するなど生産性を高めるように努めましょう。
③適切な評価の実施
ハイパフォーマーの成果に対する評価も不可欠です。
ハイパフォーマーには仕事が偏りがちですが、そのような中でも彼らは仕事をやり遂げ、時には高い成果を出します。仕事の評価が他の社員と同じでは、不満が溜まることは避けられません。
高いパフォーマンスには昇進や昇格、昇給など高い評価ができる適切な評価基準を設けることが大切です。
成果主義におけるハイパフォーマーのバーンアウト(燃え尽き症候群)リスク
成果を追求するハイパフォーマーは、その高いコミットメントと責任感ゆえに、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥るリスクを常に抱えています。
成果主義の環境下では、一度高い成果を出すと組織から過度なプレッシャーと期待を寄せられる傾向にあります。
この期待に応えようとする強い内発的動機と業務集中が、結果として過重労働や自己犠牲的な働き方につながり、精神的な疲労が蓄積しやすくなります。
この状態が持続すると、仕事への熱意を失い、心身の健康を損なうメンタルヘルスリスクに直結します。
これは、貴重な人材の突然の離職や長期休養を引き起こし、組織にとって最大の損失となります。
企業は厚生労働省の定める労働安全衛生法や労働契約法に基づき、労働者が心身の健康を害さないよう適切な環境を整備する安全配慮義務を負っています。
持続可能な組織運営のためには、高い成果を出す人材であっても、適正な労働時間の管理や、ストレスチェック制度の適切な実施、そして心理的安全性の高い組織文化の醸成を通じて、彼らのウェルビーイングを最優先する姿勢が不可欠です。
まとめ
ハイパフォーマーの明確な定義から、彼らに共通する行動特性、そして彼らを組織で増やし、定着させるための具体的な戦略を解説しました。
ハイパフォーマーを育成・採用し、適切に配置する戦略は、単なる一過性の成果に留まらず、組織に持続的なメリットをもたらします。
ハイパフォーマーの存在は、組織全体の生産性や効率を飛躍的に向上させ、結果として企業競争力の強化、そしてイノベーションの創出を促進します。特に、労働人口が減少する現代において、「個の力」を最大限に引き出し、組織全体に成果を波及させる仕組みづくりは、企業の持続的成長のための最重要課題です。
人事担当者の方は、この記事で解説したコンピテンシー評価や育成・定着施策を貴社の人材戦略に活かしてください。
またビジネスパーソンの方は、自らがハイパフォーマーとなるための行動特性や自己管理能力を意識し、日々の業務に取り組むことで、キャリアアップと組織貢献を実現できるでしょう。


