記事ではアセスメントツールの種類や導入するメリット、選び方のポイントや注意点を詳しく解説しています。
アセスメントツールとは、従業員のスキルや特性を客観的な基準のもとに評価するツールです。得られた結果は採用や人材配置の判断材料にできるため、すでに導入している企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、アセスメントツールの種類や導入するメリット、選び方のポイントや注意点を詳しく解説しています。
アセスメントとは?
「アセスメント」という言葉はさまざまな分野で使われているため、なんとなくの意味しか知らないという方も多いかもしれません。まずはアセスメントの概要と、人事領域で使われる「人材アセスメント」と「組織アセスメント」を紹介します。
アセスメントとは
アセスメントの直訳は「評価」で、「対象となる人や物を客観的な基準に基づいて評価・分析する」という意味があります。
人事領域では「人材アセスメント」と「組織アセスメント」の2種類が使われます。
人材アセスメント
人材アセスメントとは、人材配置、育成、採用に活用するために、従業員のスキルや特性、能力、性格を客観的に評価する手法です。
客観的な測定を行うために、適性検査や360度評価、アセスメント研修といったアセスメントツールが用いられることが一般的です。
組織アセスメント
組織アセスメントとは、組織の現状分析や課題解決のために、従業員の能力や適性の傾向を定量化することを指します。
組織アセスメントを行うことで、組織内で活躍している人材や定着する人材の傾向を分析できます。
アセスメントが注目される背景
人材アセスメントが注目される背景には、社会情勢の変化が大きく影響しています。
これまでの日本は、終身雇用や年功序列型の人事が主流でした。しかし、少子高齢化による労働人口の減少や働き方の多様化、人材の流動化が進んだことで、従来の人事制度は機能しにくくなっているのが実情です。
人材不足のなかでも成果をあげるためには、従業員一人ひとりの特性やスキルを最大限活用していく必要があり、企業におけるマネジメントの重要度はますます高まっています。
こうした状況から、従業員一人ひとりの能力を客観的・多角的に評価する必要性が高まっているため、人材アセスメントを導入する企業が増えています。
アセスメントツールとは
アセスメントツールとは、測定値や計算値などを用いて対象者を評価するツールです。
人材活用の領域で活用されるアセスメントツールにはいくつかの種類があり、代表的なものには、適性検査や360度評価などがあります。
人材アセスメントツールの種類
ここからは、代表的な人材アセスメントツールを8種類紹介します。
・適性検査
求職者が業務に適した素質をもっているかを測定する検査です。測定できる要素は大きく分けると「能力検査」と「性格検査」の2種類があります。
・360度評価
360度評価とは、自己評価と複数の関係者(上司・先輩・部下・同僚など)による他者評価を比較して行われる評価手法です。
・アセスメント研修
アセスメント研修とは、管理職のマネジメント力を評価するものです。外部の専門機関に依頼するのが一般的とされています。
・エニアグラム
人間の性格を9つのタイプに分類する性格診断のひとつです。対象者が自分自身の特性を可視化できるメリットがあります。
・コンピテンシー診断
コンピテンシーとは、高い成果を出すハイパフォーマーな人に共通する思考や特性を指します。コンピテンシー診断では、優秀な人にどれだけ近いかを測定・分析できます。
・知能検査
知能能力とは、言語能力や認知能力、推論能力などを測定する検査です。知能面の強みや弱み、特性などを分析できます。
・特性診断
潜在的に持っている特性を可視化する診断です。
・行動分析診断
コミュニケーションや行動の傾向・特性を測定する診断です。
人材アセスメントツールの活用で可視化できること
人材アセスメントツールの活用で測定できる要素には、具体的に下記のようなものがあります。
・個人特性
・意思決定能力
・対人関係能力
・業務遂行能力
・組織適性
・営業や事務など特定のスキル
人材アセスメントツールの活用により、個人の能力やスキル、特性など、これまで数値化しにくかった要素も定量的に測定・分析することが可能です。そのため、これまで気づかなかった潜在的な能力も明らかにできます。
アセスメントツール導入のメリット
人材アセスメントツールを導入することで、どのような効果が得られるのでしょうか?
ここからは、アセスメントツールを導入するメリットを5つ紹介します。
採用のミスマッチ防止に役立つ
人材アセスメントツールを活用すれば、自社に合う人材かどうかを数値で客観的に分析・判断することが可能です。
そのため、採用担当者の直感や好みが反映されがちな従来の採用手法に比べると、ミスマッチを最小限に抑えられます。
人材の個性や能力にあった育成ができる
従業員のスキルや特性は一人ひとり異なります。そのため、体系化された教育方法が全員に適しているとは限りません。
人材アセスメントツールでは、スキルや特性、ポテンシャルからメンタルヘルスの状況まで把握できるため、従業員一人ひとりに適切な教育が行えます。
適正な人員配置ができる
人材アセスメントツールの導入によって、適材適所に人員配置ができるようになります。
従業員それぞれの能力や特性、ポテンシャルを客観的な分析にもとづいて配置できるため、人事異動の際に起こりうるミスマッチの防止にも効果的です。
自分の強みと弱みを客観的に捉えられる
アセスメントツールの活用は、会社側だけでなく従業員側にも利点があります。
診断結果を通じて自分の強みや弱み、自覚していなかったポテンシャルまで可視化できるため、従業員自身の今後のキャリア形成にも活かせるでしょう。
管理職候補の選任にも活用できる
アセスメントツールはマネジメントやリーダーシップへの特性も評価できるため、管理職候補の選任にも活用できます。
高い成果を上げる人=管理職に向いているとは限りません。アセスメントツールの活用により、管理職に適した特性をもつ人材をピックアップできるため、長期的な組織育成にも役立ちます。
アセスメントツールの選び方のポイント
アセスメントツールを選ぶ際は、下記3点を参考にしてみてください。
・明確に導入の目的を設定する
・自社に必要な測定項目を選定する
・自社の導入目的を達成できるツールを選定する
明確に導入の目的を設定する
導入の目的や解決したい課題によって選ぶべきツールは異なります。ツールを導入する前には、必ず目的を明確にしましょう。目的があいまいなまま進めてしまうと最適なツールが選べず、十分な効果を得られません。
例えば「ミスマッチを減らし、新卒社員の定着率を向上させる」「スキルや特性を数値化し、人材配置に活かす」など、自社の課題に照らし合わせて目的を設定することが大切です。
自社に必要な測定項目を選定する
人材アセスメントツールの導入目的が定まったら、必要な測定項目を選定しましょう。アセスメントツールで何を知りたいのか、得られた情報をどのように活用したいのかに着目すると、項目を選定しやすくなります。
項目は多すぎても少なすぎてもいけません。項目が多すぎると受験者・人事担当者双方に負担がかかりますし、少なすぎると必要な情報が十分に得られにくくなります。
自社の導入目的を達成できるツールを選定する
目的と測定項目が決まったら、目的を達成できるツールを選択します。ツールによって測定項目や評価のまとめ方が異なるので、自社に必要な回答が得られるものを選びましょう。
また複数のツールを併用し、多角的なデータを得るのも方法のひとつです。
アセスメントツール活用時の注意点
アセスメントツールの診断結果を伝える際は、フィードバックに担当者の主観を入れないよう注意してください。
主観が入ると担当者によって伝える内容が変わってしまうため、評価の受け取り方に差が出たり、伝えられた側が混乱したりするおそれがあります。
アセスメントツールの目的は、客観的な基準を元に偏りのない評価を行うことです。主観を含めた良し悪しでなく、診断結果を元に客観的なフィードバックを行いましょう。
まとめ
アセスメントツールとは、客観的な基準を元に対象者を評価するツールを指します。個人の特性や適性などを定量化でき、採用のミスマッチ防止や人材配置などに活用できます。
アセスメントツールと一口にいっても、適性検査や360度検査などさまざまな種類があり、それぞれに測定できる項目や結果のまとめ方が異なります。まずは課題を洗い出し、実施の目的を明確にした上で、自社に合ったツールを選ぶことが大切です。