性格診断診断として世界的にも普及している「エニアグラム性格診断」。
この数年でビジネスの現場でも活用する事例が増えてきました。
この記事では、これからエニアグラムを導入しようと考えている企業向けに、エニアグラム性格診断の歴史から、9つの性格パターン、ビジネス現場で導入するメリットと注意点について紹介します。
エニアグラムとは?
エニアグラムとは、円周に9つの点を設け、それらを繋ぐ線から成り立つ幾何学図形のことを指します。この幾何学図形の起源は古代エジプト・古代ギリシャにまでさかのぼり、万物の本質を表す象徴と言われています。
このエニアグラムの図形をシンボルとして、性格判断に応用したものが「エニアグラム性格診断」です。
個人の特性を9つのタイプに分類することで、性格のパターンを捉え、自己理解や他者理解に役立てます。
エニアグラムの9つの性格パターン
エニアグラムでは9つの性格パターンに診断されます。
9つの性格タイプには優劣はありませんが、それぞれ優れているところや得意なところ、課題とするところがありますので、それらを理解することで自己理解が深まります。
9つの性格パターンについて、それぞれ解説します。
タイプ① 改革する人(正しくあろうとする人)
このタイプは、常に理想を高く持ち、努力をするタイプです。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・正義感が強い ・判断力や理解力に長けている ・バランス感覚が優れている ・完璧主義 ・責任感が強い ・仕事の精度が高い | ・理想通りに物事が進まないと憤りを感じる ・細かな箇所に目がいく半面、全体像を見失いがち |
タイプ② 人を助ける人
このタイプは、目の前に困った人がいれば手を差し出さずにはいられない人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・親切で寛大 ・コミュニケーション力が高い ・愛情深い ・感受性が豊か ・周りを穏やかにする | ・相手から必要とされていないと感じると落ち込む ・感謝されないと怒りやすい ・他者への感情移入で自分を見失う。 |
タイプ③ 達成する人
このタイプは、常に目標や目的を持って行動し、達成するためには手段を選ばない人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・成功に執着心がある ・計画性が高い ・リーダー的存在で組織を動かせる ・効率性を意識して行動する ・競争が好き | ・失敗に対して極度に恐れがある ・達成できないと思う事柄は避ける |
タイプ④ 個性的な人
このタイプは、普通という言葉を受け付けず、人とは違うもの、また独立個人主義な傾向があります。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・感受性が強い ・創造性が高い ・ユニーク ・他人の個性を捉える ・自分に正直。 | ・協調性に乏しい ・集団行動が苦手 ・他人から理解が得にくいと思い込んでいる ・他人に対して嫉妬心や羨望といった感情を持ちやすい |
タイプ⑤ 調べる人
このタイプは情報収集に重きを置いて行動するタイプの人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・知識が豊富 ・慎重に行動する ・独創的な着想で価値を生み出す | ・他人に知識を共有したいといった気持ちには欠ける ・行動までに時間がかかる ・興味がないことには気が回らない |
タイプ➅ 忠実な人
このタイプは安定思考で現実主義者、自分の周りの関係に重きを置くタイプの人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・真面目 ・誠実 ・協調性が高い ・責任感がある ・努力家 | ・自分の外側に依存しがち ・物事を自ら決めるのが苦手 ・結論を先延ばしにする傾向がある |
タイプ⑦ 熱中する人
このタイプは陽気で人生を存分に楽しみたいと思っている人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・挑戦する ・計画性がある ・聡明さがある ・快活である ・夢を追いかける | ・やや落ち着きに欠ける ・自分を縛るものを嫌う。 |
タイプ⑧ 挑戦する人
このタイプはマイペースで自分の強さに自信がある人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・挑戦する ・困難に立ち向かう ・人を動かす ・周囲に影響を与える | ・好き嫌いが激しい ・攻撃的な人を徹底的に排除する ・自己主張が強い。 |
タイプ⑨ 平和をもたらす人
このタイプは常日頃から落ち着きのある人で穏やかな人です。
優れているところや得意なこと | 課題や問題点 |
・周囲を穏やかにする ・平和主義 ・円満な日常生活が続く ・平和な人間関係を築く。 | ・新しいことへの挑戦や物事の切り替えが苦手。 |
エニアグラム性格診断を受けるメリットは?
エニアグラム性格診断を活用してどのようなメリットが得られるのか解説します。
自己理解を深める
自分で認識している自己の姿はあくまで氷山の一角にすぎません。それほど自分のことを客観的に捉えて理解するのは難しいことです。また、なんとなくわかっていても、言語化できない人も多いことでしょう。
エニアグラムでは、それらを見出す手助けとなります。自己理解を促進し、自己分析をするツールの一つとして活用できます。
より良い自分の姿、強み、課題を明らかにする
エニアグラム性格診断は、9つのタイプ別に強みと課題が診断されます。
それにより、潜在的な強み・得意分野、課題・問題点を客観的に理解することができます。
他人から自分の性格について指摘された場合に、すんなりと受け入れにくい課題や問題点であっても、客観的な診断結果では受け入れやすく、改善に繋げやすい傾向があります。
他者との関係性を向上させる
エニアグラム性格診断では、自分が他者をどのように認識し、どのようにてコミュニケーションを取る傾向があるか診断されます。
どんなタイプの人が相性が良いか、苦手なタイプとその対応方法なども診断結果で言及されるため、より良い人間関係を築くヒントを得られます。
日常や職場で周囲の人たちとより良い関係性をつくる一助として期待できるでしょう。
ビジネスの現場で活用されるエニアグラム
エニアグラム性格診断は、ビジネスでも活用されています。
自身の適職を見極めたり、社員の自己理解を深めたり、適材適所の人員配置に役立てられます。人事システムの一つとしてエニアグラム性格診断の導入は注目が高まっています。
具体的な活用について解説します。
適職を知るきっかけとなる
エニアグラム性格診断では、9つの性格タイプ別に得意とする仕事の進め方や、リーダーシップの取り方が解説されます。例えば以下のような気づきが得られます。
例)
タイプ②「助ける人」は、誰かに貢献し感謝されることで喜びを感じます。
そのため、教師や看護師、介護福祉士などが適職の一つとして考えられ、リーダーシップにおいては部下の良いところを見出し、褒めて伸ばすスタンスが特性を発揮できると考えられます。
タイプ③「達成する人」は、成功することに執着します。
そのため、何事もスポーツの勝敗のように競争したがります。自分たちが一番になりたいという意識が人一倍強いため、競争が付きまとう仕事が天職と言えます。数字で目標設定ができる仕事や、勝ち負けがはっきりする弁護士やプロデューサーといった仕事に向いています。
自己理解を深めることで社員のやる気を引き出す
エニアグラム性格診断では、検査を受けた人へのフィードバック機能があります。
社員が自己分析に活用したり、自身のリーダーシップの在り方を再考できる機会となるため、診断を受ける側にとっても魅力を感じていただけます。
自分や上司が気付かなかった、自身の優れている点や課題点を知ることで、職場での自己成長を促せるでしょう。
適材適所の人材配置に役立てる
エニアグラム性格診断を人事システムと統合することで、適材適所の人材配置に役立てることができます。部署毎の特性の傾向や、各部署の適性を一元化し、そこに見合う人材をエニアグラム性格診断の結果をもとに配置することでミスマッチを避けられます。
部下の育成や面談に活用する
部下のエニアグラム性格診断をもとに、個々の特性に合わせた育成方法を取ることができます。
例)
タイプ③「達成する人(成功を追い求める人)」では、得意な分野である「高い目標の追求」を提示することで、本人のモチベーションを引き出します。逆に、課題点である「失敗を恐れる傾向」を意識して、上司によるフォローアップ体制や声かけを綿密にするといった対策が考えられます。
タイプ④「個性を求める人」では、芸術的な才覚に優れているため、クリエイティブな仕事を提示することでやりがいを引き出します。逆に単調な仕事やルーティーンが多いと興味関心を示すことができなくなるため、個人の個性を活かすことに意識して接すると良いでしょう。
エニアグラム性格診断を受ける方法
エニアグラム性格診断を受ける方法について紹介します。
無料診断から有料診断まで多岐に渡る
最も手軽なのは日本エニアグラム学会、エニアグラム研究所などが提供している診断です。ウェブから無料で受けることができます。
有料の診断では、各社員の結果を統合することができ、組織マネジメントやチームビルディングに役立てられます。
また、他にもエニアグラム性格診断を使ってコーチングサービスを提供する企業がタレントマネジメントサービスを提供するなど、発展したサービスもあります。
導入時の注意点
エニアグラム性格診断を導入するにあたって注意しておきたいことを解説します。
エニアグラム性格診断に頼り過ぎない
エニアグラム性格診断は、歴史が長く、世界的にも認知度がある性格診断である一方で、様々な見解があります。例えば、性格診断としての科学的な信憑性について、また、特定の宗教の影響などが挙げられます。
全ての人の特性を9つにシンプルに分けることは実際には難しく、その時々の状態や周囲との関係性によって変わるのが自然です。
そのため、診断結果をもとにステレオタイプに走ることは避けましょう。
診断結果を鵜呑みにするのではなく、メリットと限界を理解した上で参考情報として役立てることが大切です。
まとめ
以上、エニアグラム性格診断について紹介しました。
エニアグラム性格診断をうまく利用することで、社員間のコミュニケーションや社員教育、そして個人の強みを伸ばし、課題に対して対策することで事業の発展に繋げることができます。メリットが多いエニアグラム性格診断は、取り入れて損はないと言えるでしょう。