注目のワークスタイル「ABW」働き方改革やコロナ禍に合わせた働き方の実現へ

ワーク・ライフ・バランスや働き方改革の一環で推奨されてきたテレワーク。コロナ以前から、大企業や情報通信業を皮切りに導入が進んでいましたが、コロナ到来により、業種問わず急速に普及しています。各企業でITツールを効果的に活用するようになり、ウェブ形式の会議も今では日常化しています。

そして、これからのニューノーマル時代の働き方として新たに注目されているのが「ABW」です。テレワークと同様に、場所をオフィスに限定しない働き方ですが、従業員に場所や時間を決める決定権があり、仕事に合わせて柔軟に選択します。

より効率的に、自然体で仕事ができる「ABW」は、生産性だけでなく従業員の幸福度にも寄与します。ABWを採用した先進的な働き方について、実践する企業の事例も交え、解説していきます。

ABWとは?

ABWは「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の頭文字を取ったもので、仕事に合わせ、時間や場所を自由に選ぶ働き方のことです。発祥の地はオランダで、欧米やオーストラリアなどでも人気が高まっていますが、日本でも、政府や自治体による働き方改革の推進やコロナ禍でのテレワーク推奨が追い風となり、導入企業が増えています。

仕事内容に応じて最適な場所と時間を選択できるため、育児や介護中の人でも仕事を諦めずにすみ、雇用確保にもつながります。サスティナブルの観点からも、場所や時間に捉われず持続可能な働き方として期待されるワークスタイルです。

ABWとフリーアドレスとの違い

以前より、固定席を持たずオフィス内で自由に居場所を持てる「フリーアドレス」がありました。座席表があり、チームでまとまり、決まった席に座ることが一般的だった仕事風景を大きく変える、画期的なアイデアです。

ABWは、さらに「オフィス」という箱さえも取っ払い、自宅やカフェ、コワーキングスペースなど本人が最善と判断した場所で働けます。

企業の視点で考えると、フリーアドレスは席数減少やPCの軽量化、会議スペースの削減など、コスト面でメリットがありますが、ABWは、従業員が働きやすい環境作りが主なねらいです。

場所が多様化することでITの有効活用が進み、スマートな働き方に加速がかかるため、フリーアドレスの進化版とも捉えられます。

ABWのメリット

ABW導入がもたらす企業側のメリットと従業員側のメリットについて整理します。

従業員の定着率アップ 

これまで家庭の事情や、自身の身体的な理由などで退職せざるを得なかった従業員も、事情を考慮した働き方ができるため、退職者が減ります。

また、職場で受けるストレスから解放されやすくなり、従業員のモチベーション維持も果たせます。

コストの削減   

従業員全員が入るオフィススペースの確保、備品の確保、水道光熱費、オフィスまでの交通費などがABWによりスリム化します。必然的にペーパーレス化も進むため、印刷コストも削減できます。余剰金を備品やPC購入、従業員の自宅環境改善に回すのも良策です。

採用希望者の増加

ABWの導入は、採用面で有利になります。求職者にとって、企業の働きやすさは応募基準の1つであり、長く働ける環境を希望しています。結婚、出産、育児など、さまざまなライフイベントとの両立を念頭に置いて選ぶため、福利厚生面に加え、自由度の高い働き方はメリットに感じるでしょう。

従業員が仕事とプライベートを両立しやすくなる

ワーケーションという言葉もあるように、仕事とプライベート、仕事と休暇の境界線が曖昧になりつつあります。通院や習い事などの計画が立てやすかったり、家族との時間、リラックスする時間などを適度に持てたりすることで、ストレスがたまらず満足度が上がり、仕事にもポジティブに向き合えます。

仕事の効率を最大限に高められる

個人作業であれば1人で集中できる部屋を選んだり、アイデア出しであればカフェに集まってカジュアルにブレストをするなど、仕事内容に合わせて環境を選ぶことで生産性が上がります。コミュニケーションにおいても、ライトにやり取りできるチャットツールなどを導入することで、スピーディーな情報共有や意思決定が可能です。

創造的なアイデアが生まれやすい

いつも同じ眺め、同じ席では、新たな着想にたどりつきにくいですが、違う場所で視覚や聴覚などに刺激を受けると、思いもよらないアイデアが生まれやすくなります。諸外国では新たなアイデアを考える時は職場を離れ、思考が活性化する場所を選んで仕事をする、というスタイルが一般化しています。企画や戦略、クリエイティブの仕事で特に効果的です。

ABWのデメリット

すべての従業員にとって、働き方の選択肢が増えることが必ずしもいいとは限りません。また、お互いの信頼関係の上で成り立つワークスタイルのため、関係値によってはマイナスな面もあります。

従業員同士のコミュニケーションの機会が減る

職場に毎日出社していれば、挨拶など気軽に声をかけられますが、離れた場所にいる相手に対し、打ち合わせや連絡などはツールで円滑にやり取りできても、ちょっとした会話がしづらくなります。また、予定が流動的になりお互いの動きが見えづらくなるため、すれ違いが起きてしまう可能性があります。離れて仕事をする上で、信頼関係がより重要になってきます。

従業員によっては生産性が低下する

働き方の自由度が大きくなる分、従業員自身の自己管理能力で動くことになります。例えば、自宅で仕事をする場合、家族や周囲の物音が気になり生産性が落ちたり、人目がない空間でメリハリなく仕事をしてしまったりするケースもあるため、オンオフの切り替えが大切です。

勤務管理や人事評価が難しくなる

時間に縛られないため、通常の定時よりも早い時間帯に仕事をしたり、没頭して長時間化してしまうケースもあるようです。また、仕事ぶりも見えづらくなるため、何をもって評価するのかを明確化する必要があります。

セキュリティの面でリスクが高まる

自宅や公共のWi-Fi環境を利用して仕事をしたり、第三者からパソコンの画面が見える状態で仕事をするなど、社内に比べセキュリティリスクが高まります。また、パソコンが盗難される危険性も考えられます。従業員1人1人の意識を高め、機密情報の扱いについてルールを決めるなどの対策をすると良いでしょう。

結局普段通りであまり変化が起きない 

長年の仕事スタイルが習慣化しているため、ABW導入後もオフィスで仕事をする方が性に合っているという従業員もいます。型が決まっていた方が身動きが取りやすい、というタイプの人には、逆に苦労する働き方かもしれません。従業員のニーズや希望をヒアリングしたり、テスト的に一部部署や職種に限定してスタートするなど、自社に合った進め方を選ぶと良いでしょう。

導入に時間・費用がかかる

いざ導入してから、社内が混乱しないように、社内規定やルールを決め浸透させたり、オフィスで日々発生していた業務フローがどう変わるのかなど、時間をかけて周知が必要です。また、自宅用のPC購入などをはじめ、環境づくりに関する初期費用は大きくなります。

ABW導入後の効果を見極めるポイント

ABW導入後の効果を見極めるポイント

「思ったように生産性が上がらない」という結果を避けるために、ABW導入後の効果を見極めるポイントを解説します。

ABWを導入しやすい職種・しづらい職種を理解する

自由で身軽に仕事ができるABWですが、職種によっては合わないこともあります。日中はフレキシブルに動いて仕事をする営業や企画職などはマッチしやすいですが、専用の機材が必要な研究、製造、ハイスペックなPCが必要なエンジニアやデザイナーなどは、複数拠点を移動することは非効率になりえます。バックオフィス系の仕事も、従業員の個人情報や経営情報などを扱うため、場所を制限する必要があるかもしれません。

ABWで統一することが重要なのではなく、仕事に合わせた働き方を推進する、という概念に目を向けて導入範囲を考えると良いでしょう。

ABWの導入事例から、自社の導入イメージを固める

実際に導入した企業の事例を参考に、自社でのイメージを固めると導入がスムーズに行えます。導入前の課題、課題解決を含めた導入目的、ABW導入で実現した環境、さらに効果を上げるための施策など、会社や従業員にとってどんな良い変化を期待するのか、複数事例をケーススタディとして分析します。似た業種や事業規模の事例だと、イメージしやすいでしょう。

ABW導入後の費用対効果を確認

導入した企業の多くは、「費用対効果が高い」と実感しています。

三井デザインテックが実施した「Activity Based Working(ABW)に関する調査研究」によると、固定席、フリーアドレス、ABWでは、個人のパフォーマンスにおいても、仕事へのモチベーションにおいてもABWが最も高い評価となっており、心理や身体のストレス数値は最も低くなっています。

出典:三井デザインテック|Activity Based Working(ABW)に関する調査研究

また、国際的な不動産サービスを手掛けるシービーアールイー株式会社では、2014年のオフィス移転をきっかけにABWを導入しました。導入以前に比べ「生産性が向上した」と回答した従業員は8割近くという結果でした。また、オフィス面積の2割削減と有効化、固定費や時間外手当なども圧縮できています。

ABWの導入方法

事前に検討すべきことや環境準備、社内周知、効果を上げるための取り組みなど、AWD導入におけるPDCAについて説明します。

従業員のニーズを徹底的に調査

まず何より、従業員が働き方にどんな課題を感じているか、要望があるかをヒアリングすることが大切です。固定席で生じる問題点や、どんなスペースや部屋を必要としているか、日頃感じていることを吸い上げるためにも、直前にアンケートを取るだけでなく、面談や普段のコミュニケーションで意見を聞くのも有効です。こうすることで、従業員が当事者として捉え、積極的な提案が出やすくなります。

ABWの導入が適切なのか判断

社内調査の結果を加味して導入を判断します。そもそも元の働き方がやりやすいと感じていれば、導入に踏み切るのは避けるべきですが、期待の声や満足度向上につながるようであれば具体的な構想に踏み出します。

調査結果をもとに、どんなデスクや椅子、間取りを用意したらいいか、共有スペースはどんなコンセプトにするか、オフィス内外の利用頻度はどれくらいかなどを把握し、人数や業務割合によって最適な数を割り出します。

専門家とともに最適なレイアウトを考案

レイアウト検討時は、実際に導入しているオフィスを見学したり、専門家に相談すると安心です。デザイン性と機能性両面から、自社にとってベストなレイアウト作りを実現できます。スペースごとにどんな役割を持たせるか、今後の事業展開や増員なども見据えた空間になっているか、ブランド力の向上につながっているかなど、従業員の声以外にも考える要素は多くあります。

また、一度レイアウトを確定すると、それに合わせ機材搬入や配線などの工事が進み、安易に変更できません。予算内でどう最適化するか、経験や知見のある人に相談しながらレイアウト案を組み立てていきます。

従業員へ周知・説明

オフィス環境や働き方を切り替える前に、社内でルールを説明します。マネジメント層へは勤怠管理や部下のタスク管理、メンタル面の管理に対する意識を統一させる必要があります。また、全体に対しては、何を目指した導入なのか、どんな課題を改善できるのかといった説明や、困りごとがあれば意見を挙げてほしいといった協力を依頼すれば、大きなトラブルも起きにくくなります。また、新しいツールを導入する場合は、ITリテラシーに合わせてレクチャーも必要になってきます。

運用後は一定期間、戸惑いや混乱が発生しがちのため、可能な限り事前に不明点を洗い出し、回答をまとめておくことが賢明です。

振り返り・改善

導入して3カ月後、半年後、1年後と、定期的にアンケートを取ると、慣れと同時にメリットを感じやすくなったり、新たな問題が浮上したりと変化が表れます。従業員自体も効果を知りたいと思っているケースが多いため、効果は定量的な形で社内共有すると良いでしょう。合わせて、改善計画や施策案を表明し、PDCAを効果的に回していきます。

従業員の健康状態やチームの雰囲気など、見えづらくなる側面もあるため、別途従業員サーベイなどを実施するのも有効です。

ABWを導入している企業事例

ここからは、自社ならではのコンセプトでABWを確立した3社の事例を紹介します。

株式会社イトーキ

株式会社イトーキは、オフィス家具や事務用品の販売、オフィスの空間ソリューションを手掛ける会社です。

次世代の新しい働き方として2018年から「XORK Style(ゾークスタイル)」という、ABWを取り入れたワークスタイルを掲げ、社員の幸福度や組織の創造性、革新性を重視した働き方を実践しています。また、社員の活動を10個に分類し、役割や比重などを精査してレイアウトに落とし込むことで、無駄な作業や改良が必要な部分が見え、働き方の再定義ができたようです。

実際に稼働してからは、社員一人ひとりが場所依存ではなく仕事内容を軸に動くマインドに変化しました。

コクヨ株式会社

コクヨは国内に主要拠点を8カ所構えており、そのうち品川オフィスについては、従来より長時間労働が課題でした。そして社員の健康面や業務効率化を目的に、移転と合わせてABWを導入しました。

通勤経路や移動によるロスタイムなどを調査し、シミュレーションをもとに、オフィスでも自宅でもないサードプレイスを拡充した結果「有効に活用できた時間」が35%増加するなど生産性向上が効果として出ています。

社員の時間に対する意識も上昇し、ABWの導入を機に、メリハリある働き方に転換できました。

株式会社オカムラ

家具販売や産業用機器などの製造を手掛けるオカムラでは、2021年1月より新オフィス「HEADQUARTERS OFFICE」を稼働しました。社内外の人が集まり交流し、新たなコラボレーションを生み出す場を目指して、コミュニケーションが弾む執務エリア、集中力を高めるコンセントレーションエリア、ライブラリーやカフェスペースなどのスペースを備えています。また、オカムラの働き方改革の取り組み「WiL-BE」活動を発信する体験スペース「WiL-BA」も備えています。

稼働から2カ月で3割以上の社員が、部署を超えたコミュニケーションが増えたと感じており、オフィス賃料も14%削減できました。

社員の精神状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ

「ラフールサーベイ」は、社員の精神状態を可視化することのできるツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。

社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。

ラフールネス指数による可視化

組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。

直感的に課題がわかる分析結果

分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。

課題解決の一助となる自動対策リコメンド

分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。

154項目の質問項目で多角的に調査

従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。

まとめ

ABWは、従業員も企業も幸せにする働き方です。

従業員は、会社という場所や仕事のhowtoに縛られることなく、仕事の効率を最大限に高められます。

また、仕事とプライベートの両立で時間を有効活用でき、視野を広げ人生を豊かにします。

会社は、モチベーションの高い従業員により、新たな創造やスピーディな事業推進が可能になります。従業員の多様性や、ますます加速するビジネスにおいて、ABWは持続可能な働き方の一つになりそうです。

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