タレントマネジメントシステムとは?メリットや選定方法、事例を徹底解説

タレントマネジメントとは、欧米で活用されている人事管理手法の1つです。グローバル化や人材の流動化の影響を受け、2010年頃から日本でも導入されています。 本記事では、タレントマネジメントの概要や歴史、メリット・デメリットなどを説明します。

人材戦略が企業の競争力を左右する今、社員一人ひとりのスキルや経験、適性を可視化・活用できる「タレントマネジメントシステム」に注目が集まっています。 本記事では、タレントマネジメントの概要やメリット・デメリット、選定方法などを説明します。

社員のスキルや経験を活かす、タレントマネジメントシステムとは?

タレントマネジメントシステムとは、社員のスキルや経験、評価、キャリア情報などを一元管理し、人材の活用や育成に役立てるためのシステムです。

“talent”には「才能・資質・能力」という意味があり、従業員に関する情報を集約し、共有することで適切な人材配置や人事評価人材育成などに役立てます。

個々の社員のスキルや経験などの情報をデータ化して一元管理するため、必要に応じて検索したり、共有したりする事が可能です。属人的な判断に頼らず、客観的なデータに基づいた人事施策を可能にするツールです。

タレントマネジメントシステムと人事システムとの違い

タレントマネジメントシステムと人事システムは、いずれも人材に関する情報を扱うものですが、目的と活用領域が異なります。

タレントマネジメントシステムは、社員のスキルやキャリア、評価情報などをもとに、育成や適材適所の配置、後継者計画といった「人材活用と戦略的人事」を支援するシステムです。

一方、人事システムは、氏名・所属・勤怠・給与などの基本情報を管理し、日常的な人事・労務業務の効率化や法令対応を目的とした「人事管理の基盤」です。

前者は人事企画や経営層が主に活用し、後者は人事・総務部門での運用が中心です。近年では、これらの機能を統合したクラウド型プラットフォームも登場し、よりシームレスな人材マネジメントが可能になっています。

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タレントマネジメントが注目されている背景

タレントマネジメントシステムが注目されているのは、社会やビジネス環境の変化によって、「人材をどう活かすか」が企業競争力に直結する時代になったからです。ここでは、その主な背景を解説します。

労働者の流動化、労働人口の減少

少子高齢化の影響により、国内の労働人口は年々減少傾向にあります。あわせて、転職や副業など働き方の選択肢が広がることで、人材の流動性も高まっています。そのため、新たに人材を採用するだけでなく、既存の社員のスキルや経験を把握し、戦略的に活かすことがこれまで以上に重視されるようになっています。

働き方改革の推進

働き方改革が進む中で、企業には長時間労働の是正や業務の効率化、多様な働き方への対応が求められています。こうした取り組みを支えるには、社員のスキルや業務状況を可視化し、適切な人員配置や業務分担をおこなえる環境が不可欠です。また、目標管理や評価の透明化により「どこで」「どのように」働くかではなく、「何を達成したか」という成果を重視するマネジメントスタイルへの移行も進んでいます。

このような背景から、多様な働き方やキャリア支援にも対応でき、働き方改革の実現を支える基盤としてタレントマネジメントシステムが注目を集めています。

価値観・働き方の多様化

働く人々の価値観やキャリア観は、近年ますます多様化しています。仕事のやりがいを重視する人、家庭・プライベートとの両立を大切にする人など、重心するポイントは人それぞれ異なります。こうした変化に対応し、柔軟な勤務形態やキャリアパスを用意することは、多くの企業にとって避けて通れないテーマとなっています。こうした変化の中で、社員一人ひとりの特性や志向を把握し、適切に活かしていくタレントマネジメントが重要性が高まっています。

グローバル競争の激化

技術革新によりビジネスのボーダーレス化がすすみ、海外企業との競争は激化しています。自社の競争力を高めるうえで「どのような人材をどこでどう活かすか」が重要な経営課題となっています。タレントマネジメントシステムを活用することで、社員のスキルや実績、志向などを可視化・一元管理することで、グローバル全体での適材適所の配置やリーダー人材の早期発掘を可能にします。さらに、多国籍拠点間で共通の評価・育成指標を用いることで、公平な人事運用と人材の流動性向上を実現します。

タレントマネジメントシステム活用のメリット

メリットとデメリットの文字

タレントマネジメントシステムの導入によって、得られるメリットを説明します。

社員のスキルや経験などの一元管理化

タレントマネジメントシステムで社員のスキルや経験を一元管理することにより、人材の適切な配置や育成が可能になります。

全社員のスキルや経歴、評価履歴が可視化されることで、属人的な判断に頼らず、根拠ある人材活用ができるようになります。

また、スキルのギャップを把握することで、教育やリスキリング施策を戦略的に設計できます。

内部人材の発掘

タレントマネジメントシステムの導入により、従業員のスキルや経験をデータで把握できます。従来のシステムでは見えてこなかった従業員の才能や能力を発見できるため、効果的に内部の人材発掘が進められます。

適材適所の人材配置

個人のもつ才能、能力、スキルをデータで把握することで、客観的かつ最適な人材配置が可能です。社内の派閥や性別、年齢といった偏った見方から解放されるといったメリットも見込めます。

計画的な人材育成

職務と従業員のスキルのギャップが可視化できるため、より適切で計画的な人材育成が可能となります。データを元に方向性を確認しながら、人材リソースの最大化につながる育成計画を立てましょう。

従業員のモチベーション維持・向上

人材の能力を最大限に活かす配置は、働きがいや充実感が得られやすく、従業員のモチベーションの維持・向上につながります。

公平な評価の実現

タレントマネジメントシステムの導入により、社員一人ひとりの目標、業績、行動特性、スキルなどを可視化・一元管理することで、評価に必要な情報を網羅的かつ客観的に把握できます。

また、評価プロセスや基準を統一し、部門や評価者ごとの差異を最小限に抑えることが可能になります。

さらに、過去の評価履歴やフィードバックも蓄積できるため、継続的な成長の追跡や評価の透明性向上にも寄与します。

こうしたデータに基づく運用は、評価を感覚や主観に頼らないため、社員の納得感を高め、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。

タレントマネジメントシステム活用のデメリット

タレントマネジメントシステムのメリットをご紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。

社員の理解が得られない場合がある

タレントマネジメントシステムでは、社員の属性や能力、キャリア、勤怠、価値観などの情報を集めます。自分の情報を収集されることから能力をランクづけされているようで不快に思う社員もいるでしょう。社員が情報収集に協力的でなければ、情報収集はスムーズに行われません。そのため、タレントマネジメントシステムの目的や手順について周知しておき、社員の理解を得ることが重要です。

システム導入にコストがかかる

タレントマネジメントシステムの導入には、やはりコストがかかります。価格はシステムによって様々ではありますが、少なくない額が必要となるのは確かです。タレントマネジメントシステムを活用できなければ、システム導入のコストが無駄になってしまいます。

データを活かしきれない

タレントマネジメントシステムの目的は、社員一人一人の才能を最大限に活かし、企業が成長することです。

しかし、タレントマネジメントの準備段階であるデータの収集だけで時間がかかってしまい、収集するだけで終わってしまうということもあります。また、データを収集したとしても、それを現場と連携できずにデータを活かしきれないといったこともあります。

タレントマネジメントシステムの目的や手順について、理解した上で進めていくことが重要です。

タレントマネジメントシステムの機能

タレントマネジメントシステムにはどのような機能があるのでしょうか。どのシステムにも搭載されている基本的な機能について説明します。

人材データベース(スキル)の構築・管理

タレントマネジメントシステムとは、従業員の能力やスキルなどを一元管理できるシステムです。知識、経験、資格をはじめ、資質、適性、考え方、行動特性、交渉力、コミュニケーション能力、企画力といった項目も登録できます。

このデータを元にして人材育成や配置につなげるため、タレントマネジメントシステムのもっとも重要な機能といえます。

人事評価/目標管理機能

従業員の目標を設定し、実績や達成度を評価・管理する機能です。

従業員の目標を可視化することで、目標に向けたアクションを起こせているかを確認しやすくなり、目標達成の精度を高めるといった効果が期待できます。

またソフトによっては、部門単位での評価集計や、高い業績をあげている従業員の行動特性を人材評価の指標とする機能も搭載されています。

後継者育成機能

求める能力やスキルを設定し、そのポテンシャルを備えたリーダー候補を選抜し、育成する機能です。早期に後継者候補をピックアップすることで、次世代を担う人材を計画的に育成できます。

採用計画

社内にどのようなスキル・経験を持つ人材がどれだけ在籍しているかを可視化でき、組織全体の人材構成やスキルギャップを把握できます。これにより、現場ニーズと将来の事業戦略に基づいた「本当に必要な人材像」が明確になり、無駄のない採用計画が立てられます。また、過去の採用データや定着率・活躍度合いの分析を通じて、採用要件の見直しやチャネル選定の改善にも活用可能です。タレントマネジメントシステムは採用活動を感覚ではなく、データに基づいて設計・改善できる体制を支えるツールです。

優秀人材の特定抽出

タレントマネジメントシステムには社員のスキル、業績、評価結果、資格、行動特性など多様なデータが蓄積されるため、これらをもとにパフォーマンスの高い人材や将来のリーダー候補を客観的に把握できます。

また、評価や目標達成度、360度フィードバックなどを組み合わせて分析することで、多面的な視点からの選抜が可能になります。さらに、過去の人材データと比較して共通傾向を導き出し、優秀人材の要件を明確にすることで、採用や育成の基準づくりにも役立ちます。

タレントマネジメントシステムの選び方

タレントマネジメントシステムは製品ごとに機能や特長が異なり、導入目的や組織規模によって適切な選択肢も変わってきます。システムを効果的に活用するためには、自社の課題や運用体制に合った製品を見極めることが重要です。

ここでは、タレントマネジメントシステムを選定する際に押さえておきたい主なポイントをご紹介します。

自社に必要な機能が搭載されているか

タレントマネジメントシステムは、ソフトによって収集できるデータや搭載されている機能が異なります。外部ツールとの連携に特化したものや、人事システムの機能を兼ね備えるものなどさまざまです。

自社の人事システムにあった製品を選ぶためには、自社の課題をよく分析し、どういった目的で何のために、タレントマネジメントシステムを導入するのかを明確にしておくことが大切といえます。

またパッケージの製品で自社に見合った製品がない場合は、柔軟に対応できるカスタマイズが可能な製品を選ぶのもひとつの選択肢です。

十分なセキュリティレベルか

個人情報の漏洩は、企業の信頼性やイメージに大きな影響を与えます。強固なセキュリティ機能を備えたシステム選びは必須といえます。

IDやパスワード管理はもちろん、端末認証機能や特定IPからのアクセス許可・除外機能、デバイス紛失時の遠隔データ消去機能を含む、セキュリティがしっかりしたものを選びましょう。

さらに、自動バックアップ機能やデータベースの二重化に対応していると、より安全性が高まります。

十分なセキュリティレベルか

個人情報の漏洩は、企業の信頼性やイメージに大きな影響を与えます。強固なセキュリティ機能を備えたシステム選びは必須といえます。

IDやパスワード管理はもちろん、端末認証機能や特定IPからのアクセス許可・除外機能、デバイス紛失時の遠隔データ消去機能を含む、セキュリティがしっかりしたものを選びましょう。

さらに、自動バックアップ機能やデータベースの二重化に対応していると、より安全性が高まります。

目的に合ったシステムか、費用対効果は見合っているか

初期費用だけでなく、運用にかかる継続的なコストも含めた金額をしっかり把握することが重要です。

また、システム導入によって期待される効果を把握し、費用に対して得られる成果が明確かつ測定可能かを確認する必要があります。

さらに、過剰な機能やサービスがないかどうかもチェックポイントの一つです。

短期的なコストの安さだけで判断せず、長期的な視点での投資価値を評価し、組織の成長に貢献できるシステムを選ぶことが、費用対効果を高めるために重要です。

自社に合った提供形態か

主な提供形態は、クラウド型とオンプレミス型の2種類です。それぞれのメリット・デメリットを把握し、自社にあったものを選びましょう。

クラウド型

クラウド型では、インターネット上でサービス提供会社が構築したシステムを利用します。オンプレミス型に比べ初期費用が安く、導入までの期間も短く済むため、タレントマネジメントシステムをはじめて導入する中小企業に向いています。

メリット

  • 自社サーバが不要なため短期間で導入できる
  • 導入コストを抑えられる
  • 運用・保守は提供会社側で行うため、自社メンテナンスが不要
  • 常に最新のバージョンを利用できる

デメリット

  • カスタマイズができないことが多い

オンプレミス型

オンプレミス型は、自社サーバーにソフトウェアをインストールして利用します。クラウド型に比べて導入費用がかかり、管理のリソースも必要になるため、カスタマイズ機能をしっかり活用したい大規模企業に向いています。

メリット

  • 自社に合わせたカスタマイズがしやすい
  • 自社のセキュリティポリシーに合わせた管理ができる

デメリット

  • サーバの用意や構築費用など、初期コストが高額
  • 保守運用など自社によるメンテナンス管理が必要

タレントマネジメントシステムの導入事例

日産自動車株式会社

日産自動車は、グローバルに多様な人材を抱えるため、タレントマネジメントプログラムを活用して社員のスキルやキャリア情報を一元管理しています。

これにより、国内外の人材配置を最適化し、グローバル人材の育成や後継者計画を効率的に進めています。

また優秀な人材を発掘する社内スカウトマンが存在し、世界中の優秀人材を選定し、キャリアコーチとしてリーダー育成用のプログラムへ参加を促しています。この制度は、優秀な人材に求める人物像や条件などが明確化されている他、個々の適性に合わせた育成プログラムが提供されているため、抜擢された社員のモチベーションやエンゲージメント向上に貢献しています。

【出典】日産自動車日本タレントマネジメントの取組/日産自動車株式会社
https://www.niad.ac.jp/n_kenkyukai/data/no13_290310_shiryou01.pdf

サントリーホールディングス株式会社

サントリーホールディングスは、全社員を対象としたタレントマネジメントを推進するため、統合人事システムを導入。これにより、人事給与情報から従業員のキャリアビジョンまでを一元管理し、適材適所の人材配置や自律的なキャリア形成を支援するとしています。

このシステムにより、評価やスキル、キャリアビジョンなどの情報を統合的に管理し、後継者育成計画や人材配置の検討に活用できるようになりました。

この取り組みにより、サントリーは人材の特性を活かした戦略的な人材育成と組織改革を推進し、全社員が自立したプロフェッショナルとして成長できる環境を整備しています。

【出典】プレスリリース「サントリー、統合人事システム「COMPANY」で全社員型タレントマネジメントを推進」/株式会社Works Human Intelligence
https://www.works-hi.co.jp/news/20240131

KDDI株式会社

KDDIは、ジョブ型人事制度の実現に向け、クラウド型タレントマネジメントシステムを導入。

このシステムは、社員のスキルやキャリア情報を一元管理し、上司と部下の継続的なコミュニケーションを促進する機能を備えています。

また、新たな評価制度への対応や、公募・副業による人材交流の活性化など、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる環境を整備しています。

この取り組みにより、KDDIは新たな人事制度の定着と社内DXの推進を図っています。 

出典:プレスリリース「KDDI、「ジョブ型人事制度」の実現に向け タレントマネジメントシステムを「SAP® SuccessFactors®」で刷新」/SAPジャパン株式会社
https://news.sap.com/japan/2021/06/kddi

楽天株式会社

楽天は、社員の成長支援と将来のリーダー育成を目的に、2012年からタレントマネジメントを本格導入しました。評価制度として「パフォーマンス」と「コンピテンシー」の2軸を導入し、行動指針「楽天主義」に基づいた成長支援を実施。また、全社員対象のタレントレビューを通じて、個々の強みや課題を把握し、上司と人事が連携して人材育成を進めています。

【出典】経営×人事×タレントマネジメント/HRPRO
https://www.hrpro.co.jp/sp_talemane_v02_1.php

ソニー株式会社

ソニーグループは2008年頃から優秀な人材(タレント)を、研修と配属を組み合わせて育成していく「レバレッジ・タレント」という仕組みを構築するなど、日本においては早い段階でタレントマネジメントの仕組みを取り入れてきました。

またソニーは「個」の自立性と挑戦を尊重しており、人事戦略のフレームワークを多様な「個」を軸に「個を求む」「個を伸ばす」「個を活かす」と定義しています。

「個」にフォーカスすることで、社員一人ひとりのエンゲージメント向上につなげています。

【出典】2020の未来予測 人事マネジメント /リクルートワークス研究所
https://www.works-i.com/column/taidan/detail012.html

サステナビリティレポート 2023 人材/ソニーグループ株式会社
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/csr/library/reports/

組織改善に役立つツール「ラフールサーベイ」

こちらの記事ではタレントマネジメントシステムについてご紹介しましたが、同じく人材マネジメントを支援する仕組みにはサーベイも存在します。

両者の違いは、タレントマネジメントシステムは社員のスキル、経験など「人材の活躍・育成」に焦点の当てたツールですが、サーベイはエンゲージメントや組織風土を可視化し「組織の現状把握と改善」に重きを置いたツールです。

ラフールサーベイは、社員のストレスや満足度、人間関係、仕事に対する意識などを知ることができるため、社員がより働きやすい環境を作ったり、適材適所な人材配置を行ったりすることに活用できます。しかしこれは人材の活躍育成を目指せるものの、本来の目的はその先にある組織改善です。

ツール導入の際は、それぞれの特性を理解してご活用いただければと思います。

https://survey.lafool.jp/

まとめ

タレントマネジメントは、現代において、人材を適材適所に最大限に活用するために重要です。

タレントマネジメントシステムを活用すれば、データの分析、抽出、活用がより効率的にできるようになります。人材配置や人材育成について見直すために、自社にあったシステムを導入してみましょう。

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