中間管理職のストレス要因とは?「辞める」前の対処法と組織のあり方

ストレスに悩む会社員

中間管理職は組織の上下を繋ぐ存在です。上司と部下の間に立たされ、誰にも相談できないまま「中間管理職のストレス」を抱え込んでいませんか? プレイングマネージャーとしての業務過多に加え、ハラスメント対策や部下のメンタルケアなど、現代の中間管理職に求められる役割はあまりに多岐にわたります。ふとした瞬間に「もう辞めたい」「このままでは潰れてしまう」と感じる管理職は、決して少数ではありません。 しかし、責任感が強い人ほど、自分を責めてギリギリまで我慢してしまう傾向にあります。 本記事では、中間管理職を追い詰める具体的なストレス要因を紐解くとともに、心が折れてしまう前に実践したい対処法を解説します。また、個人の努力だけでは解決できない「組織としてのあり方」についても言及します。

なぜ中間管理職のストレスは限界を迎えやすいのか?

中間管理職のストレスが限界に達しやすいのは、決して個人の能力不足や忍耐力が足りないからではありません。現代の企業組織が抱える「構造的な問題」が、特定のポジションに負荷を集中させていることが最大の要因です。

ここでは、中間管理職を追い詰める主な3つの構造的要因について解説します。

「サンドイッチ症候群」の常態化

経営層からは「高い成果」と「方針の徹底」を求められ、現場の部下からは「不満の解消」や「業務負担の軽減」を要求される——。

この上下からの板挟み状態、いわゆる「サンドイッチ症候群」が常態化していることが、ストレスの根源です。

現場を知るからこそ部下の言い分も理解できる。しかし会社の方針も無視できない。このジレンマの中で調整役として奔走し続けることは、莫大な精神的エネルギーを消費します。双方のクッション役となることで感情労働の負荷がかかり続け、気づかないうちに心身の疲弊につながってしまうのです。

プレイングマネージャー化による業務過多

現代の中間管理職の多くは、「プレイングマネージャー」としてかつてないほど多様な役割を担わされています。

  • プレイヤー業務:現場の第一線で自身の数字・成果を作る
  • マネジメント業務:部下の育成、進捗管理、メンタルケア
  • 組織運営業務:上層部への報告、調整、コンプライアンス対応

この”トリプルロール”とも言える状況が慢性的な長時間労働を生み出しています。「自分の仕事が終わらない」「常に何かに追われている」という焦燥感に加え、平社員と同様の実務をこなしながら、管理職としての責任だけが重くのしかかる(いわゆる「名ばかり管理職」状態で残業代も出ない)ケースもあり、徒労感がストレスを増幅させています。

「弱音を吐けない」無言の圧力

管理職特有のストレス要因として見逃せないのが、「悩んでいること自体を誰にも言えない」という組織内の孤独です。

「弱音を吐けば、上司としての求心力を失うのではないか」
「部下に気を遣わせたり、不安を与えたりしてはいけない」
「管理職にもなって相談するのは、能力不足だと思われる」

このような「役職による自己抑制(無言の圧力)」が働き、SOSを出すことを躊躇させます。特に責任感が強く真面目な管理職ほど、「自分が我慢すれば丸く収まる」と抱え込んでしまいがちです。その結果、不眠や体調不良といったメンタル不調の初期サインを見逃し、倒れる寸前まで重症化させてしまうのです。

リモートワーク・ハラスメント対策など「時代の変化」

従来の業務に加え、働き方の多様化やコンプライアンス意識の高まりといった「時代の変化」への対応も、中間管理職に重くのしかかっています。

特に大きな負担となっているのが、以下の2点です。

オンライン・マネジメントの難しさ

リモートワークの普及により、部下の顔色や職場の空気感を直接感じ取ることが難しくなりました。「サボっていないか」という管理コストだけでなく、「部下のメンタル不調に気づけないのではないか」「チャットでの指示が冷たく伝わっていないか」という不安が常につきまといます。

画面越しでの「心理的安全性の確保」や信頼関係の構築には、対面以上の細やかな配慮とコミュニケーション工数が必要とされ、管理職の時間を奪っています。

ハラスメントリスクへの過度な緊張感

パワハラやセクハラに対する社会的な監視の目は年々厳しくなっています。もちろん是正されるべき問題ですが、現場の管理職は「どこまでが指導で、どこからがハラスメントなのか」という境界線に怯えながら業務を行っています。

「必要な指導をしただけで訴えられるかもしれない」という過度な緊張感は、部下とのコミュニケーションをギクシャクさせ、精神的な消耗を加速させています。

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中間管理職が抱える具体的な5つのストレス要因

構造的な問題に加え、日々の業務の中で中間管理職の心を削る具体的な要因は多岐にわたります。ここでは、多くの管理職が直面している5つの代表的なストレス要因を深掘りします。

1. 上司と部下の板挟み

単なる調整役ではなく、言語や視座の異なる両者の「通訳」を強いられることが中間管理職にとっての大きなストレスです。

  • 上層部から:現場の状況を無視した「高い成果目標」や「抽象的な経営方針」が降りてくる
  • 現場から:「リソースが足りない」「方針がコロコロ変わる」といった不満や突き上げが来る

上からの無理難題を、部下が納得するように噛み砕いて伝え、逆に部下の不満を、自分が悪者になって上層部に報告する——。この「翻訳作業」に膨大なエネルギーを使い、本音を吐き出せる安全地帯がない状態がメンタルを蝕みます。双方の言い分がわかるからこそ、自分の意志決定ができず、無力感に苛まれてしまうのです。

2. 「多岐にわたる業務」が生む疲労感

中間管理職は、自分の仕事に加え、部下のサポートやマネジメント業務が加わり、業務量が多くなりがちです。

さらにプレイングマネージャーの辛さは、単に時間が足りないことだけではありません。「プレイヤー脳」と「マネージャー脳」を頻繁に切り替えなければならない脳疲労が深刻です。

  • 自分の業務に集中したい時に、部下のトラブル対応で中断される
  • 日中は会議と部下のフォローで終わり、自分の仕事は定時後から始まる
  • 適切な管理人数(スパン・オブ・コントロール:Span of Control)の上限とされる「5〜8人」を大きく超える部下を担当している

常にタスクが割り込まれる環境では、深い思考が必要な業務ができません。「今日も何も進まなかった」という焦りと自己嫌悪が蓄積されて、大きなストレスへと繋がっていきます。

3. 責任の重さと権限の少なさ

多くの管理職が「割に合わない」と感じているのが、責任と権限の不均衡です。

何かトラブルが起きれば「管理職の責任」として矢面に立たされ、厳しいプレッシャーをかけられます。その一方で、問題を解決するための「予算」や「人事権」、「部下の給与を決める権限」はほとんど与えられていないケースが少なくありません。

  • 部下を評価する立場だが、給与を上げる権限はなくモチベーション管理が難しい
  • 成果を求められるが、必要なツールを導入する予算権限がない
  • 管理職手当はつくが、残業代が出ないため、時給換算すると部下より低い逆転現象が起きる

このように理不尽な状況が、仕事への意欲を奪う大きな要因となっています。

4. 部下の育成による負担

部下の育成は管理職の醍醐味である一方、最大の悩みでもあります。特に近年は「Z世代」をはじめとする若手社員との価値観のギャップに戸惑うケースが急増しています。

  • 成長意欲はあるが、失敗や叱責を過剰に恐れ、指示待ちになる
  • 「仕事は人生の一部」と割り切り、プライベートを最優先する
  • 対面のコミュニケーションを避け、チャットでの連絡を好む

かつての「背中を見て覚えろ」や「飲みニケーション」といった育成手法は通用せず、ハラスメントリスクも相まって、「どう接すれば正解なのかわからない」という心理的負担が増大しています。統計的にも「部下の指導育成」は管理職の悩みの上位に常にランクインしています。

5. キャリアの停滞感と将来への不安

目の前の業務に忙殺される中で、ふと訪れる「自分のキャリアはこのままでいいのか」という虚無感や不安も大きなストレス要因です。終身雇用制度の崩壊や、企業による長期的な雇用保障が期待できなくなった今、「会社に居続ければ安心」という価値観は過去のものとなりつつあります。

  • 部下の成長は喜ばしいが、自分自身のスキルが伸びている実感がない
  • 会社の方針に振り回されるばかりで、市場価値のあるスキルが身についていない焦り
  • 「この激務を定年まで続けられるのか」という体力・気力への不安

特に30代後半から40代はキャリアの分岐点でもあります。「今の会社にしがみつくしかない」という閉塞感と、変化の激しい時代に取り残される恐怖。この将来への見えない不安が、日々のストレスを底上げしています。

危険信号!ストレスが心身に及ぼす影響とセルフチェック

メンタル不調の前兆サイン

「できる管理職」ほど限界まで我慢してしまいます。管理職が壊れてしまうと、そのダメージはチームにまで広がります。以下のような前兆サインに気づくことが重要です。

前兆1:表情や言動に「感情の波」がなくなる

  • 笑顔が減った
  • 感情表現が平坦になった
  • 必要以上に無表情で淡々としている

これは感情を出す余裕までもなくなっている兆しです。表面的には冷静に見えても、内面では感情を”遮断”して自分を守っている可能性が考えられます。

前兆2:「全部、自分で抱える」ようになる

  • 周囲に頼らない
  • 業務を抱え込みすぎている
  • 一人で残業を続けている

「自分が頑張らないと回らない」という思考の硬直化が進んでいる状態です。特に責任感が強い人ほど、「人に任せること=迷惑をかけること」と捉えてしまいます。

前兆3:「自己評価」が極端に下がる

  • 「自分は管理職失格だと思う」
  • 「何をやっても成果が出ない」
  • 「チームの足を引っ張っている気がする」

これはメンタル不調の典型的な兆候の一つであり、事実よりも”自己否定感”が先行している状態です。

前兆4:小さな変化に対する「過剰反応」

  • 予定外の出来事に動揺しやすくなる
  • 小さなトラブルに強く責任を感じる
  • 些細な指摘に深く落ち込む

「いつもなら平気だったこと」が大きく感じられるとき、本人の中ではすでにバランスが崩れてきています。

ストレス限界時の身体的・精神的症状

メンタル不調が進むと、以下のような身体的・精神的症状が現れてきます。

身体面の症状

  • 強い疲労感が続く
  • 眠れない、睡眠の質が低下
  • 頭痛や胃痛といった身体症状
  • 食欲の変化(過食または食欲不振)

精神面の症状

  • 気分の落ち込みが長引く
  • 不安やイライラが増える
  • 仕事や勉強に集中できない
  • 涙が止まらない
  • 判断ミスや対応の遅れ

ストレスセルフチェック

まずは「自分の現状」を客観視することから始めましょう。

厚生労働省のウェブサイト「こころの耳」では、誰でも無料で利用できる「5分でできる職場のストレスセルフチェック」が公開されています。57項目の質問に回答するだけで、現在のストレスレベルやその要因を数値で客観的に判定してくれます。「まだ大丈夫」と思っていても、定期的にこのツールで心の健康診断を行うことが、深刻な状態に陥るのを防ぐ第一歩になります。

厚生労働省「5分でできる職場のストレスセルフチェック」

【個人編】今すぐできる中間管理職のストレス対処法・思考法

ここからは、個人のレベルで実践できる具体的な対処法を紹介します。まずは「心と体のケア」といった基礎的な部分から、管理職特有の「思考の癖」を変えるテクニックまで、取り入れやすいものから試してみてください。

1. 心と体のケアを行う

ストレスで交感神経が優位になり続けている管理職には、意識的なリラックスが必要です。

有酸素運動を取り入れる

散歩や軽いジョギングなどのリズム運動は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌を促し、ネガティブな気分を発散させる効果があります。

「腹式呼吸」で自律神経を整える

緊張状態にある時は呼吸が浅くなりがちです。横隔膜を動かして深く空気を取り込む「腹式呼吸」を数回繰り返すだけで、副交感神経が優位になり、心身の緊張をほぐすことができます。

睡眠と食事の質を見直す

「忙しいから」と削りがちな睡眠と食事こそ、メンタルの土台です。栄養バランスの良い食事と質の高い睡眠は、ストレス耐性を高める最強の防具になります。

2. 問題点や状況を紙に書き出す

頭の中だけで悩んでいると、同じ不安がグルグルと回り続け、脳の処理能力を圧迫します。状況を「可視化」することで、脳を休ませましょう。

【書き出しの実践ステップ】

1. 今抱えている不安、タスク、不満をすべて紙に書き出す
2. 書き出した内容を「自分でコントロールできること」と「できないこと」に分ける
3. 「できること」の中から、今日やることに優先順位をつける

これを行うだけで、「得体の知れない不安」が「解決すべき課題」に変わり、解決への道筋が見えてきます。また、不安を整理することで誰かに相談する際にも伝えやすくなるでしょう。

3. 「リフレーミング」で物事の捉え方を変える

リフレーミングとは、起きた出来事の「枠組み(フレーム)」を変えて、別の視点から意味づけを行う心理テクニックです。

基本的な実践例:

部下がミスをした
→ ×「また自分の仕事が増えた、最悪だ」
→ ○「これは部下が成長する機会だ。再発防止の仕組みを作るチャンスかもしれない」

上司から無理難題を言われた
→ ×「理不尽だ、自分ばかり損をしている」
→ ○「これを乗り越えれば、自分の交渉力や調整力がレベルアップする」

事実は変えられませんが、捉え方を変えることでストレスの重さは軽減できます。これを「思考のトレーニング」としてゲーム感覚で取り入れてみましょう。リフレーミングについてさらに知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

4. 職場と家庭以外の「サードプレイス」を持つ

管理職にとって、社内外に「弱音を吐ける場所」、すなわちサードプレイスを作ることは、精神衛生上とても重要です。

職場や家庭では、どうしても「上司として」「親・夫・妻として」の役割が求められます。そのため、利害関係のない友人との趣味の場や、一人になれる行きつけのカフェなど、「サードプレイス(第三の居場所)」を作りましょう。

ここでは仕事の話を一切せず、素の自分に戻ることで、心のバランスを取り戻すことができます。

5. 「自己認識」を高めてキャリアの不安を払拭する

自己認識とは、自分の価値観を明確にすることです。自分が何を大事にしたいかを明確にすることで、「自分はこれからどうなるのか」という漠然とした不安に対処することができます。

  • 自分にとって「仕事」とは何か?
  • 何をしている時に「充実感」を感じるか?
  • 将来、どんな生活を送りたいか?

これらを言語化し、自分の価値観と現在の業務とのズレを客観視してみましょう。「今の苦労は将来のこの目標につながっている」と腹落ちすれば、ストレスは「必要な努力」へと変わります。逆に、ズレが大きすぎる場合は、異動や転職といった次のアクションを考える判断材料になります。

6. 業務範囲を明確にし、「やることとやらないこと」を決める

中間管理職には多様な役割が求められますが、すべてのタスクを背負い込む必要はありません。「やるべき業務」と「自分がやらなくてもよい業務」の境界線が曖昧なままでは、どれだけ時間があっても仕事は回りません。以下のステップを踏んで、「やること/やらないこと」を見極めましょう。

1. 自分の業務範囲を洗い出す
2. 業務内容や責任範囲をきちんと明確化する
3. 業務の優先順位を決める
4. やらなくていい仕事を特定する

7. 「〜しなければ」という考え方を一旦やめる

責任感の強い管理職ほど、「部下の手本にならなければ」「完璧にこなさなければ」という「べき思考(Must思考)」に囚われがちです。しかしプレッシャーや焦りは、物事を円滑に進める上で大きな障害になり得ます。

「〜しなければ」と思った時には、一度思考を止めて深呼吸をしてみたり、「しなければ」と思った内容を具体的に書き出したりしてみましょう。

また、「自分でやった方が早い」という完璧主義を捨て、60点の出来でも良いので部下に任せることも、中間管理職がパンクしないための鉄則です。

8. 他の人に相談する

管理職は責任感が強いからこそ、「自分が誰かに相談する側になる」という考えに及びにくいことがあります。しかし、その捉え方は決して正しいとは言えません。「適切なリソース(他者)を使って問題を解決する」ことこそ、優秀な管理職のスキルです。

  • 信頼できる上司・先輩
    :経験に基づいた具体的な対処法を知っている可能性があります。
  • 社外の友人・コミュニティ
    :客観的な視点や、「あるある」という共感を得られます。
  • 専門家(産業医・カウンセラー・EAP)
    :社内の人には話しにくい本音は、守秘義務のあるプロに話しましょう。多くの企業が導入している「EAP(従業員支援プログラム)」は、外部の専門家に匿名で相談できる制度です。積極的に活用してください。

「辞めたい」と思った時の判断基準とキャリアの考え方

退職や転職を考えるべき4つのサイン

1. 心身に不調が出ている

中間管理職としての業務による疲労やストレスが原因で、心身の不調が現れている場合は、まず職場から距離を置き、治療や休養を優先することが重要です。状態を放置すると、深刻な事態につながる可能性も否定できません。無理をせず、「休職」や「転職」といった選択肢を前向きに検討してください。

2. 会社の将来性がない

現在勤めている会社に経営面での安定感や将来的な成長が見込めないのであれば、中間管理職であるあなたが心身をすり減らしてまで留まり続ける必要はありません。先行きが不透明な状況に身を置いているのと変わらないと言えるでしょう。

3. プレイヤーの方が向いていると感じる

日本では、優秀なプレイヤーから昇進し管理職になる傾向がありますが、プレイヤーとして優秀だったからと言って管理職が向いているかは別問題です。管理職よりも実務に専念する立場のほうが自分に合っていると感じているのであれば、能力を存分に活かせる分野や環境を見つけることを検討しましょう。

4. 職場環境が改善される見込みがない

  • 長時間労働やサービス残業がある
  • 仕事に対する報酬が見合っていない
  • ハラスメントが横行している
  • 人手不足が慢性化している
  • 社内でのコミュニケーションが少ない
  • 人事評価の基準が不明確である
  • 尊敬できる上司や先輩がいない

これらの環境要因が複数該当し、改善の見込みがない場合は、キャリアを見直すタイミングです。

キャリアを考える3つのポイント

ポイント1:働き方を見直すきっかけを大切に

「以前より疲れを感じやすい」「体調に違和感がある」といった身体からのサインや、周囲の人の働き方を目にすることは、自身のキャリアを改めて考えるきっかけになります。こうした気づきは、これからの働き方や将来の方向性を見直すための重要なタイミングと言えるでしょう。

ポイント2:小さなアクションから始める

人は変化に対して負担を感じやすいものです。そのため、最初から大きく環境を変えようとするのではなく、日常の仕事や生活の中で、まずは小さな部分から手をつけてみることが大切です。

例えば:

  • 仕事の進め方を少し工夫してみる
  • 休憩の取り方を見直してみる
  • 通勤ルートを変えてみる

それでもストレスが軽減されないようであれば、働き方や職場環境を思い切って見直すという大きな選択を検討してみるのも一つの方法でしょう。

ポイント3:「やりがい」や「できていること」に目を向ける

キャリアを考える際に重要なポイントは1つだけではありません。自分に適した役割や、やりがい・働きがいを実感できる場面、力を発揮できている瞬間に目を向けることで、困難やストレスに直面したときにも前向きに立て直す力、いわゆる「レジリエンス」を育むことができます。

ポイント4:転職活動を通じて視野を拡げる

実際に転職するかどうかに関わらず、一度外に目を向け、「他の選択肢」を探しながら視野を広げてみることも大切です。

転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談すれば:

  • 自分の経歴や仕事への価値観を改めて考えるきっかけになる
  • 転職市場や他の会社の情報を知ることができる
  • 自分を客観的に見ることができる

現在進んでいる道だけがすべてではないと知ることは、想像以上に心にゆとりをもたらし、大きな支えとなります。

【企業・人事編】中間管理職のストレスケア対策法

つながれた手

中間管理職のメンタル不調は、もはや個人の「ストレス耐性」の問題として片付けることはできません。優秀な人材が「サンドイッチ症候群」で潰れてしまうのは、組織にとって莫大な損失です。

企業・人事担当者は、精神論ではなく「仕組み」で彼らを支える必要があります。

1. ストレスケア体制を整える

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルス対策として4つのケアを提言しています。

セルフケア

従業員一人ひとりが自身のストレスに早期に気づき、適切に対応できるようサポートすること。セルフケアに関する研修を取り入れ、メンタルヘルスについて理解を深める機会を設けましょう。

ラインによるケア

管理監督者が行うケアのこと。職場の状況を把握し改善を図るとともに、部下のメンタルヘルス不調を早期に察知し、職場復帰に向けた支援を行います。研修により、管理監督者自身にもメンタルヘルスケアの正しい視点を持ってもらうことが重要です。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医や衛生管理者などによる支援。人事等と連携し、メンタルヘルスケア施策を立案・実行します。産業医に気軽に相談できる社内窓口の設置などが例として挙げられます。

事業場外資源によるケア

メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部機関やサービスを活用した支援。社内では相談しづらいケースもあるため、匿名で利用でき、プライバシーが確保される外部相談窓口があることを周知しましょう。

厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」

2. 中間管理職向けマネジメント研修を実施する

中間管理職の意識を見直すことは、ストレスケアの向上につながる可能性があります。管理職は業務が立て込んでいることが多いため、自己学習に任せるだけでなく、企業側が研修の機会と時間を確保することが重要です。効果的な研修テーマとして、次のようなものがあります。

EQ(感情マネジメント力)向上研修

  • 自分自身の感情を客観的に認知し、上手く扱う能力を高める
  • 円滑なマネジメントに役立つ
  • 部下のエンゲージメント向上やチームのビルドアップにつながる

世代間ギャップへの対応研修

  • 若い世代の価値観を理解する
  • 効果的なコミュニケーション方法を学ぶ
  • ハラスメントにならない指導方法を習得する

ストレスマネジメント研修

  • ストレスの正しい知識を身につける
  • ストレスコーピング(対処法)を学ぶ
  • 自己ケアの具体的方法を習得する

3. 上司層(経営陣)との対話機会を設ける

中間管理職が「孤立」しないために、経営層との定期的な対話の場を設けることが重要です。

具体的な施策:

  • 定期的な”マネージャー同士”の1on1ミーティング(横のつながり)
  • 経営層との隔月ミーティングで、業務以外の心身状態を確認する機会
  • 人事・産業医との非公開チャット窓口や匿名相談制度の設置

ポイントは「自分から声を上げる」ことに頼らず、企業側から話せる機会をつくることです。

4. 業務負担の見直しをする

中間管理職の業務過多を解消するための具体的な取り組み:

  • 業務の棚卸しと優先順位づけ
  • 管理職が本当にやるべき業務とそうでない業務を明確化
  • 部下に委譲できる業務の洗い出し
  • 不要な会議や報告業務の削減
  • ITツール・システムの導入
  • タスク管理ツールの導入
  • 1on1支援ツールの活用
  • 目標管理システムの導入
  • コミュニケーションツールの整備
  • 適切な人員配置
  • 管理職一人あたりが管理するメンバー数を5~8人に調整
  • サブリーダーの育成と権限委譲

5. ストレスチェックを活用して状態を把握する

ストレスチェック制度(従業員数50人以上の企業で義務化)を効果的に活用しましょう。

活用のポイント:

  • 個人のストレス状態の把握
  • 集団分析による職場環境の課題抽出
  • 高ストレス者への早期フォロー
  • 経年変化の追跡による施策効果の測定

ストレスチェックの結果を基に、具体的な職場環境改善策を立案・実行することが重要です。

6. 「がんばりすぎ」を評価しすぎない文化づくり

管理職が壊れる背景には、「限界まで頑張ることが評価される」空気があります。

文化改革の具体策:

  • 深夜まで残っている姿を称賛しない
  • 「休む=サボり」という価値観を明確に否定する
  • 成果だけでなく、”部下が健やかに働けているか”も評価指標に加える
  • トップメッセージで「管理職の健康も大切」と明言する

こうした取り組みによって、管理職が「頑張ること」ではなく「適切に助けを求めること」も評価される風土を育てることができます。

7. 組織改善ツールを活用する

中間管理職の負担を軽減するためには、ITツールや外部リソースを積極的に活用し、構造的な欠陥を解消するアプローチが不可欠です。

ITツールによる業務効率化

  • RPAやAIツールの導入
    :集計作業や定型的なレポート作成を自動化し、本質的なマネジメント業務に集中できる時間を捻出する。
  • コミュニケーションツールの整理
    :チャット、メール、Web会議などツールが乱立することによる「連絡疲れ」を防ぐため、運用ルールを統一する。

業務効率化は、プレイヤーやマネージャーの業務負担を縮小させるため、中間管理職のストレス軽減に直接つながります。

メンタルヘルスサーベイで「見えないSOS」を可視化

  • パルスサーベイの実施
    :簡易的なアンケートを週次や月次で実施し、コンディションの変化を早期に検知する。
  • ストレスチェック集団分析の活用
    :部署ごとの高ストレス判定率を分析し、特定の管理職に負荷が集中していないかモニタリングする。

管理職からの申告を待つのではなく、データに基づいて組織側からケアの手を差し伸べる体制を作ることが、離職防止のカギとなります。

よくある質問(Q&A)

Q1. 中間管理職のストレスは、私の能力不足が原因でしょうか?

A: いいえ、個人の資質ではなく「組織の構造的な問題」であることが大半です。

中間管理職は、上下からの要求が集中する「組織の結節点」に位置するため、誰がやっても負荷がかかる構造になっています。「自分が頑張ればなんとかなる」と抱え込まず、構造上の問題であることを認識し、周囲を巻き込んで解決する意識へシフトしてみましょう。

Q2. 上司と部下の板挟み状態で、精神的に限界を感じています。

A: 一人で調整しようとせず、意図的にコミュニケーション量を増やしてみてください。

リモートワークなどで不透明になりがちな「相手の状況」や「感情」を確認するだけでも、不安は軽減されます。また、記事内で紹介した「リフレーミング」を活用し、状況を捉え直してみるのも一つの手です。それでも辛い時は、信頼できる第三者に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。

Q3. 管理職になってから仕事が終わらず、心身ともに疲弊しています。

A: 「全部自分でやる」という完璧主義を捨て、優先順位をつけましょう。

プレイングマネージャーがすべての業務を完璧にこなすのは物理的に不可能です。「自分にしかできない仕事」以外は部下に任せる、またはITツールやアウトソーシングを活用するなどして、業務を手放す勇気を持ってください。小さなタスクの完了を積み重ね、達成感を取り戻すことも大切です。

Q4. 相談したいのですが、悩みがまとまっておらず、誰に話せばいいかわかりません。

A: まとまっていなくても大丈夫です。「モヤモヤする」という状態こそ相談のタイミングです。

言葉にして話すこと自体に、頭の中を整理する効果があります。まずは「現状を聞いてほしい」と前置きして話してみましょう。社内の人には話しにくい場合は、利害関係のない社外のカウンセラーやEAP(従業員支援プログラム)を利用するのがおすすめです。

Q5. 育休から復帰しましたが、以前のように働けず不安になります。

A: 環境の変化による戸惑いは当然のことです。まずは周囲に「助け」を求めてみてください。

責任感から「迷惑をかけてはいけない」と一人で抱え込みがちですが、管理職が自ら弱みを見せ、SOSを出すことは、部下が協力しやすい土壌を作ることにもつながります。「今はこういう状況で困っている」と率直に伝えることで、チーム全体の心理的安全性も高まります。

Q6. 「管理職を辞めたい」と思うのは、甘えや逃げでしょうか?

A: 決して甘えではありません。自分を守るための「正しい選択」の一つです。

心身に支障をきたしてまで守るべきポジションはありません。また、適性として「現場のスペシャリスト(専門職)」の方が輝ける場合もあります。「辞める=逃げ」ではなく「キャリアの再選択」と捉え、まずは転職サイトを眺めるなど、小さな一歩から自分の市場価値や選択肢を確認してみることをおすすめします。。

Q7. 企業として、中間管理職のメンタルケアにどう取り組むべきですか?

A: 「個人の頑張り」に依存せず、「支える仕組み」を組織として構築してください。

具体的には以下の施策が有効です。

  • 現状把握: ストレスチェックの集団分析やパルスサーベイでの定点観測
  • スキル支援:中間管理職に特化したマネジメント研修やメンター制度
  • 対話の場:経営層や上司との定期的な1on1(評価面談以外の対話)
  • 業務削減:DXツールの導入や、業務プロセスの見直しによる総量規制
  • 文化醸成:長時間労働を美徳としない評価制度の見直し

中間管理職のストレスは一人で抱え込まず、仕組みとマインドの両面でケアを

管理職のメンタルヘルスは、単なる「個人の健康課題」ではなく、組織のパフォーマンスや持続可能性に直結する「経営課題」です。

中間管理職が健康で活き活きと働ける組織は、自然と人が集まり、成果も伸びていきます。採用も定着も育成も、そのすべての中心にいるのが「管理職」という存在です。

今こそ、彼らを”戦力”ではなく、”守るべき資産”として見つめ直す時期ではないでしょうか。

ストレスを感じたら、一人で抱え込まず、まずは小さな一歩から始めてみてください。セルフケアの実践、誰かへの相談、キャリアの見直し——どんな小さなアクションでも、確実に前に進むきっかけになります。

そして企業は、管理職を支える仕組みづくりに本気で取り組むことで、持続可能で強い組織を築くことができるはずです。

https://survey.lafool.jp/
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