企業のビジョンを実現するためにかかせない行動指針ですが、「どんなことを書けばいいのかがわからない」「効果的にビジョンを伝えるにはどうすればいいか」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、行動指針を定める意義から、具体的な行動指針の作り方、組織へ浸透させる方法まで解説しています。行動指針についての理解を深め、望ましい行動を促せるような行動指針を固めましょう。
そもそも行動指針とは何なのか
行動指針とは、企業の経営理念やビジョン実現に向けた、行動の基本方針となるものです。企業によっては、クレド、スピリットまたはプリンシパルと呼ぶこともあります。
行動指針を具体的に策定することにより、企業の目指す姿が明確になるので、組織が同じ方向を向いて進むことが可能です。
企業理念との違い
企業理念は会社の存在意義や考え方、あり方を示すもので、ミッションやビジョンと呼ばれることもあります。行動指針は企業理念を実現するための方策であり、具体的な行動の設定により、組織全体を企業理念の実現に向かわせるものです。
行動指針を定める意義
行動指針を定めることで、組織の行動が企業理念に則ったものになり、取引先から信頼を得ることにつながります。組織として正しい行動が規定されるので、評価基準が明確になり、従業員のモチベーション向上をはかることも可能です。
メリットは長く愛され信頼される企業の風土を作れるところ
行動指針があれば、社員の行動や方向性に統一感が生まれ、企業理念に向かって一体となって進んでいくことができます。また、目標を明確に提示することで何を目指すべきかが把握でき、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。
そうして行動指針が企業全体に浸透することで、企業を特徴づける個性が生まれ、独自の企業風土が作られます。「その企業らしさ」があることは対外的なアピールにもつながり、取引先からの信頼も得やすくなるでしょう。
行動指針がなければ、従業員の評価基準があいまいになります。従業員も努力の方向性がわからず、納得のいくフィードバックも得られないことから、モチベーションが上がりにくいでしょう。
企業の規模が多くなるほど、社員の統率は取りづらくなるものです。個性を活かすことも会社の発展には欠かせませんが、行動指針を定めておけば、価値観の違いによる社員同士の摩擦を減らすこともできるでしょう。
「その企業らしさ」が生まれる行動理念の作り方
行動指針の策定は、抽象的な企業理念から、具体的な行動へ落とし込む作業です。企業理念に沿った行動を列挙し、特に重要なものを選ぶ流れで策定します。
特定の部署だけでなく、どの部署の誰もが理解でき、行動できるようにすることが必要です。企業として実現したいこと、やるべきではないことをリスト化し、集約していきましょう。
仕事を通じて実現したいことを書き出す
まずは企業理念を確認し、ミッションやビジョンを明らかにします。企業が仕事を通して、なにを実現したいのかをリストアップしていきましょう。後のプロセスで短くまとめるので、文章よりも箇条書きにするとやりやすいです。
次に、ミッションやビジョンを達成するための行動を、具体的に挙げていきます。また、現在企業に根付いている行動で、今後も継続していきたいことがあれば、書き出しましょう。
反対に、企業理念にそぐわないNGな行動も挙げておくと、より具体的な行動指針を作ることができます。
創業理念も含める
会社を創業する理由はさまざまありますが、当時の社会ニーズに応えるものであることが一般的です。つまり、創業時の理念は、企業が活動する意義が詰め込まれたものといえます。行動指針に創業理念を盛り込むことで、会社が大切にしていくべき価値観の継承が可能です。
ただし、創業時と時代背景が異なることから、現代に合ったものを採用したり、アレンジしたりすることが必要でしょう。
標語のように簡潔な言葉に言い換える
ひと通りリストアップできたら、新入社員でも理解できる内容かつ実践できるものとなるように、リストの内容を簡潔な言葉で言い換えていきます。キャッチコピーのように短い文言とするのが望ましいです。たとえば、「お客様のことを考えたサービスの提供により満足してもらう」を「お客様を笑顔に」や「顧客満足最優先」のように作成します。
これらのワードを5つのカテゴリーに分類します。5つはカテゴリーが多くなりすぎない目安の数なので、5つ未満でも問題ありません。各グループから行動指針とするものを選び、それぞれの指針を具体的な行動に落とし込み、記入します。
行動指針を企業や部署に浸透させる方法
行動指針は日々の業務に反映されなければ、企業風土として根付きません。ミーティングによって、行動指針を実践できているかどうか振り返る機会を設けるなど、行動指針を社員に意識してもらうことで浸透していきます。
部署ごとにミーティングを行うことで、業務に行動指針を取り入れやすくなるでしょう。日常の業務に落とし込むことで、実際の行動に結びつきやすく、振り返りもしやすいです。チェックシートを作成しておくと、ミーティングが形骸化しにくいでしょう。
評価制度や昇進の指針とすることも、行動指針を浸透させる効果が期待できます。
定期的に行動指針を確認するミーティングを開く
行動指針の浸透には、上司と部下の1対1による定期的なミーティングが効果的です。ミーティングにより行動指針が部下へ正確に伝わり、上司と部下の行動指針に対する認識の違いを埋めることができます。
上司にとっては、部下の行動指針の理解度や実践できているかを確認する機会にもなり、状況に合わせた個別指導やサポートも可能です。部下は自身の行動を振り返ることで、改善点を明確に把握することができるでしょう。
ただし、ミーティングが形骸化しないように注意が必要です。あらかじめ評価シートやチェックリストを準備することで、行動指針を意識づける機会として活かしましょう。
評価や昇進に直結させる
行動指針を昇進や昇給のための評価基準とすることで、行動指針の定着と従業員のモチベーション向上が期待できます。評価を得るためにすべきことが明確なので、従業員も自然と行動指針を意識するようになるでしょう。
また、社内表彰制度を取り入れると、行動指針に基づいたアクションがさらに活発になります。評価制度や表彰制度を活用して、効率的に行動指針の浸透を図りましょう。
行動指針を定めて企業理念を体現する企業になる
行動指針は、企業風土を決定づけるほど重要なものといえます。行動指針を定めることで、社員全員が一貫した考えをもち、企業理念に沿った行動をすることが可能です。
行動指針を通じて企業のビジョンを従業員に伝えるためには、創業理念や企業理念の意味をよく考え、企業として実現したいこと、反対に行ってはいけないことを、具体的な行動に落とし込まなければなりません。誰もが理解できるように、あまり難しい言葉を使わず、標語のような簡潔な言葉で表現しましょう。
策定できたら、ミーティングで正しく伝えて実践を促します。社員評価の基準として行動指針を盛り込むと、社員のモチベーションを高めつつ、効果的に浸透させることが可能です。
企業理念を実現できる行動指針を作成し、社員からも取引先からも愛される企業を目指しましょう。