「リフレーミング」を活用し、出来事をプラスに変換して捉える方法

「リフレーミング」を活用し、出来事をプラスに変換して捉える方法

コロナ禍で生活環境や働き方が変わり、メンタルに不調を感じる人が増えています。厚生労働省が2020年に行った調査では、約半数の人が「何かしらに不安を感じていた」と答えており、感染リスクだけでなく自粛による生活の変化や仕事面、収入面に対しても不安感があったようです。

一方で、企業のメンタルヘルスアは年々重要視されており、中小企業でも従業員に向けたアンケートを実施するなど、取り組みが進められています。

今回は、日常やビジネスにも役立つ「リフレーミング」というフレームワークについて解説します。テレワークや多拠点を持つ企業など、従業員のメンタルや仕事ぶりを把握しづらい状況でも、リフレーミングを効果的に用いることで社員自身が自己をコントロールできるようになり、生産性も向上します。

出典:厚生労働省|「新型コロナウイルス感染症に係るメンタル ヘルスに関する調査」の結果概要について

リフレーミングとは?

リフレーミングとは、物事を見る枠組み(フレーム)を変えて、違う視点で捉え、ポジティブに解釈できる状態になることです。

近年、人材育成や組織マネジメントの分野でも用いられるようになりましたが、もとはNLPと呼ばれるコミュニケーション心理学の概念です。1つの出来事や事実に対し、固定的な考え方を捨て、幅広い視点で考える力を養い、強いメンタルを維持できることを目指した手法です。

有名な例え話に、水が半分入ったコップの話があります。「半分しか入っていない」という不満や不足を感じるフレームと、「半分も入っている」という満足や喜びを感じるフレームが考えられますが、どちらが幸せかといえば後者です。

ビジネスにおいても、優秀なリーダーは物事をポジティブに捉え、高いゴール意識を持ち、大きな成功を収めます。リフレーミング力を身に着けることで、仕事の幅や質を上げ、成長速度を上げられます。

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リフレーミングの種類

「状況のリフレーミング」と「内容のリフレーミング」の2種類があり、事象に応じて有効な方を選択すると良いでしょう。

状況のリフレーミング

目の前の出来事が今は不都合でも、条件が違えば役立ったり、迷惑に感じていた相手が頼りになる瞬間もあるなど、状況のリフレーミングでは、物事や人を違う状況に置きプラスに転換します。

例えば、仕事は早いが上司にあまり相談をしない従業員がいたとします。一匹狼タイプは、他の人との連携や帳尻を合わせる必要があるチームプレイの仕事において、周囲からやりづらいと思われるかもしれません。しかし、単独で進める仕事であれば、行動力を活かし、スピーディーに成果を出せる素質があります。営業として担当顧客の売上げを伸ばすなど、個人で成果を出せる仕事で貢献できるでしょう。

人の得意不得意を把握し、違う仕事や違う人と組み合わせることでパフォーマンス向上につながります。

内容のリフレーミング

一方で、物事の意義を多角的に考え、「これは必要な機会だった」「この経験は今後に活きる」など、価値を見い出す手法が内容のリフレーミング(別名、意味のリフレーミング)です。

例えば、思い通りの人事評価をもらえなかった場合、落胆し、自信喪失になりがちです。自己評価とのギャップが大きいほど、評価者の理解が足りないなど責任転嫁しやすくなります。

しかし、自身の不足部分を認め改善を図ったり、上司からの期待に喜びを感じ高い目標意識を掲げられれば、その後の仕事ぶりは全く違うものになります。

内容のリフレーミングを用いれば、自分の殻を破り、人間として厚みを増せます。

リフレーミングの方法

リフレーミングは無意識に行っているものもあるかもしれませんが、どんな効果があるのかを理解した上で活用すると効率的です。

言葉の定義をリフレーミングする

短所と長所は表裏一体であるように、言葉の裏に隠された別の意味を解釈します。例えば「臆病」という言葉は、「失敗を恐れて躊躇する」「思い切った決断ができない」などマイナスな意味に捉えがちですが、裏を返せば「慎重に物事を判断し、リスクマネジメント能力に長けている」と言えます。

「リフレーミングカード」を使い、ゲーム感覚でネガティブな特徴のポジティブな言い換えに慣れるのもお勧めです。

「もし・・・だったら」と考える

考えても埒が明かないときに「仮に〇〇をやったら」といった仮説や前提を立て、発想を広げると、推進力が高められます。

問題が起きた時、「上司ならどう解決するか」「乗り越えたらどんな影響を与えられるか」など、考えを巡らせると、新たなアイデアが閃きやすくなります。

時間枠でリフレーミングする

時間の軸を頭に置き、今起きた事象は将来的にどんな価値があるかを考えます。例えば、希望と違う部署へ配属になった場合、未知の経験や考え方を得られるチャンスと捉えます。あるいは、やりたい仕事を将来実現するために、今は職種に捉われず幅広い経験を積む時期だと考れば、気持ちの整理がスムーズにできます。

「Want」でリフレーミングする

人は悩んでいる時に、「どうしよう」と悩みを掘り下げることに気がいきがちですが、「どうしたいのか」を認識することが大切です。

例えば、「クレームが多くて精神的に辛い」という従業員に対し、「納得感ある回答を返したい」「クレーム対応以外の業務をしたい」など、want=したいことに焦点を当てれば具体的な要望が見え、その実現を目指すことに意識を向けられます。

メタファーでリフレーミングする

メタファーとは、伝えたいことを間接的に伝える表現方法・間接的な比喩のことです。

新たなポジションにAさんを起用するとします。普段の仕事ぶりを知らない上層部に対し「Aさんは商品企画部の4番バッターです」と表現して伝えれば、部内のピンチを救ってきた人材、期待に応える人材といった印象が浮かべるしょう。

また、部下への提言も「結果に残せなくても次に活かせばいい」と言わず「スティーブ・ジョブズの言葉に、『旅の過程にこそ価値がある』という言葉がある」といったように、功績ある偉人などの名言を添えると、話に惹き込まれ共感しやすくなります。

解体してリフレーミングする

「毎日大変」「あの人と仕事をしたくない」など、短絡的に考えてしまう時は、5W1Hの視点で紐解くと、容易く解決できたり些細なことに感じたりするかもしれません。

「毎日大変」なのは、How=どのように大変なのかを考えれば、「仕事量が多く残業が増えている」「家庭の両立が難しい」といった具体的な要因が明らかになるでしょう。

同じく「あの人と仕事をしたくない」に対し、What=どのような点でそう感じるのかを聞けば、「会話しづらい」「仕事の進みが悪い」など、根本の問題が見えてきます。

「リフレーミングノート」の活用

日々の繁忙の中でも、リフレーミングの考え方を忘れず習慣化できる「リフレーミングノート」が便利です。

ノートの左側に自分の欠点や好きではない点をリストアップし、続いて他者の苦手だと思う点や嫌いな点も追記します。ひととおり眺めた後、右側のページにそれらを別の言葉へ置き換えて記していきます。書くことでポジティブワードを思考する力が養われ、かつ客観的に捉えられます。

リフレーミングの活用例

リフレーミングを実践編へと移す際、参考になる活用例を紹介します。

モチベーションを上げたいとき

不安感を持ってしまった時に、自分主体から相手主体のフレームに置き換えると、モチベーションを上げられます。

例えば大勢の前で話す時、過度に緊張してしまう人は、「自分のために時間を割いて聞いてくれる、それほど意義のあるこの機会を大切にしよう」と捉えれば、落ち着きを取り戻し積極的に話せるようになります。

自分に自信をもちたいとき

仕事で自信を失くしたり、仕事を通して弱みに気づくこともあります。そんな時、「ほかにどのように表現できるか」を考えることで自信が持てます。

例えば、即決するのが苦手と感じていれば、見方を変えると、「他部署へ配慮するなど、多面的な考えや物事に対し根拠づけをしっかり行う論理性を備えている」という長所が見えてきます。

苦手なタイプの人がいるとき

自分にとって苦手な相手へは、捉え方次第で苦手意識を取り除けます。

例えば、批判的な意見ばかり言う人に対し「率直な意見を言う人が身近にいることはとても貴重だ」と考えます。自分のための助言と捉え、感謝の気持ちで受け止めれば良好な関係を築けます。

チャレンジして失敗したとき

失敗や挫折は人生につきものですが、注力したほどショックは大きいものです。しかし、成功者が失敗を重ね、大成したのと同様に「失敗は成長の機会だ」「やらなければもっと後悔した」と捉えて乗り越えることが重要です。

否定や批判を受けたとき

否定的な言葉を受けた時に、その言葉だけに注意が向いてしまうと、物事の本質から遠のいてしまいます。心理学NLPの便利な考え方の一つに「失敗はない、あるのはフィードバックだけである」

という考え方があるように、違う視点で物事を見るチャンスと捉え、冷静に受け止めることが大切です。。

新しい仕事を任されて不安

異動や転職、新しい仕事やプロジェクトを任されると不安感は大きくなります。そんな時、「新たなキャリアアップが叶えられる」と思い挑むことが重要です。

人は体験を通して成長します。同じ環境で同じ仕事を続けるよりも、違う体験を重ねた方が成長スピードは明らかに早いため、チャンスと捉えることが大切です。

自分はダメ、相手がダメ、という状態に陥ったとき

「もうダメ」など、ダメと口に出すときは、考えを深堀りすることから諦めている状態です。ダメだと思う対象は、状態、存在、行動のどれなのか。「ダメ」に至るまでどの程度試したのか、乗り越えた後の自分ならどうアドバイスをするかなど、噛み砕くと気持ちが落ち着き解決しやすくなります。

移動中の電車が止まったり、打ち合わせの時間がズレたとき

想定外の出来事で予定が崩れた時、苛立ちを覚えたり失望してしまうと、何かある度にストレスがかかります。「予測通りにいかないから楽しい」といったように不測の事態も歓迎できるマインドを持つことで冷静に対処できます。

リフレーミングのポイント

リフレーミングと混同しやすいポジティブとの違いや、相手に対して活用する時の注意点を説明します。

ただポジティブなことを言えばいいのではない

リフレーミングは、ポジティブな発想以前に、相手の立場に立って理解や共感をするところから始めます。例えば、コロナ禍で経営難の飲食店に対し「もう少しの間辛抱すれば、また盛況できますね」と言うと、「何もわかっていない」と不快に感じられるかもしれません。コロナ以前のように集客できるかはわからないからです。より効果的なリフレーミングは、相手を理解しようとする気持ちや姿勢の上で成り立ちます。

相手の今のフレームや言葉を尊重する

リフレーミングを相手に活用する場合は、相手の置かれている世界を尊重し、成長や改善に向けた活用を心がけます。例えば素直ですね」と言う言葉一つも、時に「自分を持っていない」「主体性がない」と受け取られる可能性があります。そのため、相手の今のフレームや言葉を尊重するにあたり、その人が尊敬している人、憧れている人などの言葉を用いて伝えるのが効果的です。

バックトラッキングを加えてリフレーミングする

相手に対し、バックトラッキング(オウム返し)を行うのも効果的です。

「今回のミスは自分の未熟さが原因で周りに迷惑をかけた」と言われれば、「あなたは自分の未熟さのせいで周りに迷惑をかけたと思っているんだね、でもそれは、これから伸ばすべき能力に気づけたということだよ」といった表現で返します。相手は自分の心情を理解しくれていると感じ、リフレーミングを受け入れやすくなります。

リフレーミングの具体例

自分より「下」だと思う人を見下し、自分より「上」だと思う人には自虐的になってしまう人がいました。

その人には「相手の良いところはどこか」「自分もみんなも違っていい、それぞれ良いところがある」という考えをもって相手に接しててもらいました。結果、「自己コントロールをし、自分ができることは進んで取り組み、相手に教え、自分ができないことは素直に認めて教わる」という姿勢の変化が見受けられました。

リフレーミング辞典

日常耳にするマイナスな言葉の言い換えを、いくつか紹介します。

  • 調子にのりやすい・・・ノリがいい、雰囲気を明るくする
  • ずうずうしい・・・・・堂々とした、積極的
  • 引っ込み思案・・・・・まじめでこつこつとやる、慎重かつ丁寧
  • 出しゃばり・・・・・・しっかり者、物おじしない
  • 凝り性・・・・・・・・粘り強い、徹底的に物事に取り組む

「リフレーミング 辞典」で検索をすると、他の言葉の言い換え例も見つかるので、リフレーミングの参考にすると良いでしょう。

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まとめ

リフレーミングは、日常やビジネスシーンでも常に意識し、実践しながら癖付けしていくことで、早く習得できます。まずは自己コントロールに活用し、上司や同僚、部下とのコミュニケーション、顧客との交渉、社員育成などに活用の場を広げていくと周りにも良い影響を与えられます。一喜一憂せず安定したマインドを保つことは、多様化がますます進むこれからの時代に必要な能力です。

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