「介護離職する人ってどれくらいいるんだろう」
「自社で増加しないようなんとか防止したい」
少子高齢化が加速し人材不足が叫ばれる中、このような悩みを抱える方は増えているかもしれません。特に人材マネジメントを行う管理職や人材管理を担う人事部担当者にとって、介護離職は蔑ろにできない問題でしょう。
そこで今回は介護離職の現状や原因、対策として仕事との両立支援施策、また取り組みを進める企業事例について紹介します。介護離職防止の取り組みを検討している方や、実態を把握したい方はぜひ参考にしてください。
介護離職の現状を把握しよう
介護離職の現状を把握するために以下3つの項目を紹介します。
- そもそも介護離職とは
- 介護離職者の推移
- 介護離職をした人の半数以上「仕事を続けたかった」
1つずつ詳しく確認しましょう。
そもそも介護離職とは
介護離職とは、従業員が仕事と介護の両立に悩み離職してしまうことを指します。当てはまりやすい従業員として経験を積んだ熟練従業員や管理職など、企業の中核を担う人材が挙げられるため介護離職の増加は企業にとって大きな損失です。
厚生労働省が委託調査を行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」では、仕事と介護の両立をする正社員の割合について報告されています。男女別にみると「介護を担っている」割合は男性で14.4%、女性で10.7%であることが報告されました。さらに年代別にみると、「介護を担っている」割合は、40代では9.8%、50代では15.4%と年代が高い従業員に割合が多い状況です。
介護離職者の推移
介護離職者の推移として「就業構造基本調査」の結果を紹介します。就業構造基本調査とは国民の就業及び不就業状態を把握するものであり、総務省統計局によって昭和31年から行われ、昭和57年以降は5年ごとに実施されています。
平成29年の調査結果によると、2016〜2017年までに介護・看護のために離職した人は9万9千人であることが報告されています。男女別にみると男性は2万4千人、女性は7万5千人と、女性が8割を占めている現状が報告されました。過去の動向として平成19年からは減少しているものの、平成24年と比べるとほぼ横ばいであり改善はみられていません。
介護離職をした人の半数以上「仕事を続けたかった」
介護離職者の実情として、介護離職をした人の半数以上が「仕事を続けたかった」と感じていることが報告されています。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社による調査では、「平成24年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」にて結果が報告されています。
調査の対象と期間は以下の通りです。
・調査対象
40 歳代~50 歳代の就労者 男性(正社員)1,000 人、女性(正社員)1,000 人
40 歳代~50 歳代の介護による離職者 男性・女性(離職前は正社員)計 1,000 人
・調査実施期間
平成25年1月
この調査において、「手助・介護を機に仕事を辞めた時の就業継続の意向」をみると、男女ともに「続けたかった」が最も高い割合を占めていました。男女比は、男性が56%、女性が55.7%とほぼ同じ割合であることが報告されています。また「再就職をしていない理由」をみると、「仕事と手助・介護の両立が可能な職場が見つからないため」という回答が男女ともに多く挙がっています。
これらの結果から、介護離職者は「仕事を続けたくても続けられない」という実情を抱えていることが伺えるでしょう。企業としてはなるべく介護離職をさせない、もしくは介護離職者を減らす取り組みが必要です。
介護離職に至る原因TOP5
介護離職の原因として「介護離職ゼロ」を目指すことを目的に実施された、みずほ情報総研株式会社による調査結果を紹介します。
調査の概要は以下の通りです。
「介護と仕事の両立を実現するための効果的な在宅サービスのケアの体制(介護サービスモデル)に関する調査研究 」
・調査対象:年齢は40歳~59歳。1999年4月から現在までに正社員として仕事をしているときに在宅介護をしなければならなくなった者。
・調査期間:平成28年12月9日から12月14日
介護離職に至った原因として「正社員の就業継続が難しかった・離職に至った原因」の上位5つの調査結果がこちらです。
- 体力的に両立が難しかった
- 介護は先が読めず両立の見通しが困難だった
- 自分以外に家族で介護を担う人がいなかった
- 介護のために仕事の責任を果たせなくなった
- 自身が介護にもっと時間をさきたかった
この結果から、仕事との両立における大きな課題として「体力維持」と「先の見通し」が困難であり不安を抱えていることが伺えます。そのため介護離職への施策を打ち立てる際には、従業員の体力維持に考慮し、将来への不安を払拭できるような内容を講じる必要があります。
介護離職を防ぐ!仕事との両立を支援するための施策
介護離職の防止策として、仕事との両立を支援する施策がこちらです。
- 介護制度の周知
- テレワークやサテライトオフィスの導入
- 勤務時間の見直し
- メンタルヘルスケアの実施
1つずつ具体的に紹介します。
介護制度の周知
仕事と介護との両立に苦しんでいる従業員を少しでも減らすために、介護制度の周知が必要です。利用できる制度の存在を知らないまま仕事との両立に取り組むことは体力や精神的な限界を感じやすく、離職をする可能性が高まります。
具体的な施策の内容として、制度の種類や利用条件、手続きや申請方法などをわかりやすく周知します。周知する方法は社内広報誌や社内ポータルサイトへの掲載、また担当者から直接制度内容を伝える機会を設けると良いでしょう。
テレワークやサテライトオフィスの導入
職場に出勤しなくても勤務が可能なテレワークやサテライトオフィスの導入は介護離職の防止に効果的な施策です。介護を行う従業員にとっては従来の通勤時間や移動時間を削減できるため、その分介護に時間を割けられ仕事との両立が行いやすくなります。
特にテレワークは情報通信技術の活用によって自宅でも仕事が可能であり、時間や場所に縛られない働き方を実現します。そのため特定の場所に出勤するサテライトオフィスと比べより柔軟な働き方ができ、介護との両立を行いやすくなるでしょう。
勤務時間の見直し
介護を行う従業員が働きやすさを感じられるよう、勤務時間の見直しを行いましょう。介護では食事や入浴など日常生活におけるこまめな介助が必要な場合もあり、仕事との両立を目指す際には柔軟な働き方が不可欠です。
そのため企業はフレックスタイム制度や短時間勤務など、様々な勤務時間体制が可能な制度の導入を検討すると良いでしょう。介護の体制はそれぞれで異なるため、介護を行う従業員に対しアンケートを行いニーズを把握した上で見直しを行うと効果的です。
メンタルヘルスケアの実施
介護中の従業員は職場で孤独感や孤立感を感じやすいため、適切なメンタルヘルスケアが必要です。メンタルヘルスケアの実施によって従業員は企業の間につながりを感じることができ、介護離職を防ぐことにつながります。
具体的には、定期的な従業員サーベイによって従業員の心情を把握する方法や、相談窓口を設定し担当者が親身になって対応できる体制を整えましょう。
介護離職防止に取り組む企業事例
介護離職の防止に努める企業事例を2つ紹介します。取り組み内容や効果を詳しく解説するので、自社における活動の参考にしてください。
花王株式会社
大手化学メーカーである花王株式会社では、従来より「仕事と生活のバランスを重視した働き方」を推進する方針を掲げています。
介護との両立に対する取り組みは2008年より開始し、特に注力したのが「実態把握」でした。従業員へのアンケートに加え個別面談という形でヒアリングに取り組み、従業員が抱える負担を具体的に特定する成果が得られています。
その結果、負担の解決につながる制度の利用は促進され介護と仕事の両立への理解が社内全体で深まり、風土醸成として一定の効果が得られました。
株式会社ジャパンタイムズ
英字新聞の発行を行う株式会社ジャパンタイムズでは、社員の介護離職を経験したことから介護離職防止への取り組みを本格化させました。退職した社員はこれからの活躍が期待されていた人材であり、会社としての在り方を考える大きなきっかけとなったそうです。
取り組みとして特に注力したのが「働き方改革」で、介護との両立を行う従業員だけでなく幅広い従業員がテレワークの利用するよう推進しました。社内全体におけるテレワーク利用の浸透によって、全ての社員が働きやすく様々な働き方に対する理解や認知が促されました。
その結果、移住によって退職を考えていた社員がテレワーク勤務によって柔軟な働き方の実現し、今後は介護との両立を希望する従業員へも適用できる可能性が高まっています。
社員の心身の健康状態の可視化に役立つツール ラフールサーベイ
「ラフールサーベイ」は、社員の心身の健康状態を可視化することのできるツールです。従来の社内アンケートなどでは見えにくい心の状態などを可視化することで、社員が安心して働ける環境づくりのお手伝いをします。
社員が安心して働ける環境づくりは、企業の成長・拡大のための土台となります。まずは、社員一人一人にとって居心地の良い職場を整え、人材の定着と組織改善に繋げましょう。
ラフールネス指数による可視化
組織と個人の”健康度合い”から算出した独自のラフールネス指数を用いて、これまで数値として表せなかった企業の”健康度合い”を可視化できます。また、他社比較や時系列比較が可能であるため、全体における企業の位置や変化を把握することも可能。独自の指数によって”健康度合い”を見える化することで、効率良く目指すべき姿を捉えることができるでしょう。
直感的に課題がわかる分析結果
分析結果はグラフや数値で確認できます。データは部署や男女別に表示できるため、細分化された項目とのクロス分析も可能。一目でリスクを把握できることから、課題を特定する手間も省けるでしょう。
課題解決の一助となる自動対策リコメンド
分析結果はグラフや数値だけでなく、対策案としてフィードバックコメントが表示されます。良い点や悪い点を抽出した対策コメントは、見えてきた課題を特定する手助けになるでしょう。
154項目の質問項目で多角的に調査
従業員が答える質問項目は全部で154項目。厚生労働省が推奨する57項目に加え、独自に約87項目のアンケートを盛り込んでいます。独自の項目は18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに専門家の知見を取り入れているため、多角的な調査結果を生み出します。そのため従来のストレスチェックでは見つけられなかったリスクや課題の抽出に寄与します。
まとめ
今回は介護離職の現状や原因、仕事との両立を支援する施策などについて紹介しました。企業は従業員に対し利用できる制度の周知徹底や、柔軟な働き方の実現によって介護離職の防止や減少が可能です。新たな制度の設立や見直しが必要であるため、容易に実現できることではないかもしれません。しかし従業員のニーズや現状を把握できると、具体的な対策が検討や実施につながります。
まずは介護を行う従業員の有無や抱えている問題の確認など、自社における実態把握に取り組みましょう。