ビジネスのシーンにおける「見える化」は「可視化」とは異なることをご存知ですか?違いを理解できている方も多いものの、
「結局見える化ってどういうこと?」
「具体的にどんな取り組みがあるんだろう」
このように疑問を感じている方も少なくないでしょう。そこで今回は「見える化」について以下項目を中心にまとめました。
- 可視化の違いを踏まえた概要
- 5つの目的
- 企業の導入事例
見える化の理解を深めたい方や、業務に取り入れたい方はぜひ参考にしてください。
1. 「見える化」の意味を知っていますか?
見える化とは、見えないものを目で見える状態にする作業を指します。よく間違えられる「可視化」も同じ作業を指しますが、作業を通して目指す「見える状態」が異なります。
可視化では、見えなかったものを目で見えるように文字や数字など形に表します。しかし見える化では、見えなかったものを見たい意思とは関係なく強制的に見える状態にします。
見える化の起源は、トヨタ自動車における製造管理の現場にあります。トヨタの生産方式では、異常が発生した時点で機械を止める「自働化」を推奨しています。自働化は、目で見て正常や異常を判断する、機械と人間の知恵を融合させた仕組みです。自働化の実現には管理道具として、作業者自身が機械を止めるボタンである「アンドン」が導入されています。「アンドン」は正常や異常など状況に合わせてランプの色を変え表すことで、従業員は常に目で見て自身の業務を管理できる状態となりました。その後1998年にトヨタ自動車の岡本渉氏の論文「生産保全活動の実態の見える化」において、目で見える管理として「見える化」という表現が生まれました。
見える化を企業に導入する際の注意として、以下2点があります。
- わかりやすい
- 全員が同じ認識をできる
見える化は、目で見てわかる状態にするためシンプルで伝わりやすいことが重要です。そのためには社内で共通の判断基準などを用いると良いでしょう。また、同じ情報に対し全員が同じ認識をできることも大切です。認識のズレが生じる表し方では、目で見える管理としては不十分でしょう。
2. 見える化の5つの目的
見える化には以下の5つの目的があります。
- 個人の暗黙知を組織に共有する
- 個人の成果を見える化して現状を把握する
- 業務プロセスを見える化してムダを改善する
- 顧客を見える化して売上を上げる
- 企業方針を見える化して組織を強化する
1つずつ確認しましょう。
2.1 個人の暗黙知を組織に共有する
暗黙知とは、主観的な知識で言語化や数値化が困難であり他人に伝えるのが難しい知識です。具体的には職人やベテランが持っているスキルやノウハウがイメージしやすいでしょう。そのような優れたスキルやノウハウは、見える化でわかりやすく示されることでナレッジや成功要因として新たな成果を生み出すことが可能です。暗黙知を見える化するには、共通体験によって他者に暗黙知を伝え議論を重ねた上で目で見えるような状態にする方法があります。例えば、職人が行う熟練の技を共に体験し、共に体験した者と職人による議論によってそのノウハウを言語化するような流れが挙げられます。
2.2 個人の成果を見える化して現状を把握する
成果の見える化は高いモチベーションにつながり、業務への意欲が向上されます。なぜなら成果が認められることは高い満足感につながり、「また認められたい」という前向きな気持ち姿勢で業務に取り組めるためです。具体的な取り組みとしては、毎月上がった成果を部署内で共有するなど、個々の成果や結果をオープンに見える化します。成果が上がっていない場合でも、認められる状況が見えることで、改善しようとする意欲の向上にも期待できます。
2.3 業務プロセスを見える化してムダを改善する
業務プロセスの見える化によって進捗や状況を把握しやすく業務効率が改善されます。例えば同じ部署やチーム内で業務進捗の共有を行うと、進捗が思わしくない社員がいれば他の社員がすぐに協力することが可能です。部下がつまずきやすいプロセスにおいて指導を強化することで、その社員自身の成長にもつながります。業務プロセスの見える化は業務効率の向上や生産性向上に期待できる取り組みです。
2.4 顧客を見える化して売上を上げる
企業の売上や成長には、顧客が求める製品・サービスの提供が欠かせません。顧客の見える化によって顧客のニーズが顕在化されるため、より適切な製品・サービスを生み出すことが可能です。例えば顧客の購買履歴や顧客属性を見える化し、ターゲットごとにニーズを仮説立て製品・サービスを開発します。ターゲット層によって適切なアプローチが可能となり、売上の向上につながるでしょう。
2.5 企業方針を見える化して組織を強化する
企業方針の見える化は、社員と企業双方が同じベクトルを向いた働きにつながります。目指す方向性がバラバラでは衝突が起こりやすく、企業としての成長は困難です。例えば、経営ビジョンやあるべき姿を明文化し経営陣から直接社員に伝える機会を定期的に設けます。大きなビジョンばかりではなく中長期的な目標や、行動指針など社員にとっても身近でわかりやすい企業方針は、より見える化として効果的です。
3. 【企業事例】見える化を導入した企業2選
見える化を導入した2つの企業事例を紹介します。具体的に紹介するので、自社への導入の参考にしてください。
マルハニチロ株式会社
食品会社であるマルハニチロ株式会社では、工場が持つデータの見える化によってミスを起こさせない仕組み作りを実現しました。具体的には全国にある7工場のデータを本社で一元管理し、リアルタイムで現状を把握します。このように、遠隔地であってもテクノロジーの活用によって組織内での見える化に取り組むことが可能です。
キユーピー株式会社
世界で活躍する日本の食品会社であるキユーピー株式会社は、企業方針の見える化によって現場と経営陣が同じ方向性を向く環境を整えました。タイの現地法人では現場と経営の間で対立が発生し全体のパフォーマンスが低下する現状を抱えていました。その際に対立する意見から本質的な課題を見出し、その課題を解決する共通目標を示しました。その結果、経営陣は現場の声を汲み取った企業方針の見直しができ、現場社員にとっては自らの声が反映されている企業方針に納得を感じられます。
4.組織の強みと課題を見える化する 組織改善ツール「ラフールサーベイ」
「あの社員、最近元気がない気がする…」「コミュニケーションをもっと取った方がいいのかな?」とお悩みの管理職や経営者の方も多いのではないでしょうか。
組織改善ツール「ラフールサーベイ」は、1億2000万以上のデータを基に、従来のサーベイでは見えにくかった「なぜエンゲージメントが低いのか?」「高ストレス者のストレス因子は何?」といった低スコアの要因を可視化することができます。メンタル・フィジカルに関するデータはもちろん、eNPSや企業リスクなど組織状態を可視化する上で必要な設問を網羅しています。そのため、今まで気づかなかった組織の強みや、見えていなかった課題も見つかり、「次にやるべき人事施策」を明確にすることができます。
組織改善ツール「ラフールサーベイ」について、詳しくは以下からWebサイトをご覧ください。
5. まとめ
今回は見える化について概要や目的、企業事例を紹介しました。見える化の取り組みは、全員が同じ認識を持てるようわかりやすく示すことで様々な目的を果たせます。そのためには従業員の立場に立って物事を捉え考える意識も必要です。自社に必要な見える化を検討し、従業員の目線を持って取り組みを行いましょう。