新卒一括採用とは?メリットやデメリット、通年採用との違いについて徹底解説!

新卒一括採用

日本の採用市場において定着している新卒一括採用とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。 新卒一括採用の実施を検討している方や他の採用制度との比較を行いたい方に向けて、新卒一括採用を導入するメリットやデメリット、他の採用制度との違いについて詳しくご紹介します。

新卒一括採用とは

新卒一括採用とは、毎年決まったサイクルで新卒の学生をまとめて採用する方式のことを指します。これは日本特有の採用方法です。

学生の在学期間中に採用活動を行い、卒業後すぐに学生がその企業へ入社するというサイクルが形成されています。

新卒一括採用の歴史と背景

ではなぜ、日本においてこの新卒一括採用の方式が用いられるようになったのでしょうか。

その背景には、年功序列・終身雇用という日本特有の社会構造があります。これらの社会構造と相性が良かったことから、約50年にも亘って新卒一括採用が行われるようになりました。学生は新卒一括採用で入社し、転職することなくその企業に深く適応することで安定したキャリアと雇用を得ることができていたのです。

しかし、近年は年功序列制度の崩壊やグローバル化、キャリアの多様化により、新卒一括採用を見直す動きも見られています。日本においても多様化やグローバル化が推進されており、新卒一括採用の方式が今の日本の在り方と合致しないのではないかと指摘されているのです。

そのため、新卒一括採用とその他の採用方式の特徴やメリット、デメリットをしっかりと把握することが必要です。効果的な採用活動を行い、優秀な学生を取り逃さないようにすることが今後の日本企業にとって重要であると言えるでしょう。

新卒一括採用の流れ

多くの企業がこの新卒一括採用を行う上で参考にする指針があります。

それは、日本経済団体連合会(以下「経団連」)の「就活ルール」です。

経団連に加盟する企業は、この「就活ルール」に則って新卒一括採用を行っていました。

しかし、2018年10月に、経団連は今後「採用選考に関する指針」を策定しない方針を発表したため、その後は学生が安心して就職活動に取り組めるよう、政府が活動を引き継いでいます。

実質的には、就活の模範的なスケジュールは経団連が作成したものがベースとなっているため、現在も企業は経団連の「就活ルール」を参考に、新卒一括採用を進める傾向にあります。

政府が公表した2025年(令和7)年度卒業・修了予定者に向けた最新の採用活動日程ルールは、以下の通りです。

広報活動開始  :卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降

採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降

正式な内定日  :卒業・修了年度の10月1日以降

参考:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou_yousei/2025nendosotu/index.html

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新卒一括採用が【企業】にもたらすメリット

では、企業が新卒一括採用を行う場合に生じるメリットとはどのようなものなのでしょうか。

第一に、採用にかかる費用や採用人数に関する計画を立てやすくなることが挙げられます。

新卒一括採用はサイクルが一定であるため、例年の傾向を基にして全体の流れを意識しながら動くことができます。

第二に、優秀な学生にアプローチしやすいことが挙げられます。

他社との採用時期に差が生まれにくいことから、学生が既に他社へ流れてしまっていたという状況に陥ることが少ないでしょう。そのため、優秀な学生に対して企業はアプローチの機会を平等に得ることができます。

第三に、新卒の従業員に対して一定の教育を行い、業務に対する理解度を統一することができます。

新卒一括採用では、一斉に社員に対して新人研修等の教育を行うため、受けた教育の内容にバラつきが生じにくくなります。そのため、安定した教育の提供がしやすくなり、同時に従業員間の業務内容に対する理解度も一致させることができます。

第四に、従業員の企業に対する意識を高めることができます。

新卒一括採用では、懇親会や研修など同期との密な交流を通じて、従業員間に信頼関係や集団意識が生まれやすくなります。この周囲の人々に対する信頼が、やがて企業に対する愛着や帰属意識にも繋がっていきます。

最後に、若い世代の離職率を低下させる可能性が挙げられます。

アメリカを始めとした海外の採用市場では通年採用が主に用いられており、新卒・中途の関係なく、空いた職種ごとに採用を都度行っています。そのため、日本とは違って嗜好性や相性といったポテンシャルではなく、その職種に活かすことのできる能力や経験があるかどうかを重視した選考が行われます。これにより、経験の少ない若年層は雇用機会を得ることや入社後の業務に付いて行くことが難しくなるといった確率が比較的高くなります。

一方、新卒一括採用であれば、若年層は就職の機会を安定して得ることができ、その後受ける教育も長い目でしっかりと行われる傾向にあるため、離職率の低下が見込まれます。

新卒一括採用が【企業】にもたらすデメリット

では、新卒一括採用を取り入れた場合に起こり得るデメリットとは、一体どのようなものなのでしょうか。

第一に、採用活動の負荷が集中しやすいことが挙げられます。

新卒一括採用を実施する場合、学生に対して短期間集中してアプローチしていく必要があるため、人事部等の採用活動を行う従業員に一定期間負荷が集中してしまうことがあります。特に、夏休みや春休みなど学生が就職活動に注力する期間は、注意が必要です。

第二に、ミスマッチを理由とする離職が発生しやすいことが挙げられます。

新卒一括採用の場合、就業経験の無い学生の嗜好性や考え方といったポテンシャルを基に選考を進めることになります。そのため、学生にとっては「実際に働いてみないとわからない」要素が多く、入社後に初めてミスマッチに気が付くというケースが多く見られます。

第三に、対象となる学生が限定されてしまうことが挙げられます。

例えば、留学中の学生などは日本の就職活動の時期に合わせて活動することが難しい場合があります。他にも、第二新卒や既卒者などを応募の対象外にしてしまうなど、優秀な学生を取りこぼしてしまう場合があるのです。

第四に、学生から内定辞退をされた場合に補完することが難しいことが挙げられます。

新卒一括採用ではサイクルが一定であることから、採用が終了する時期も比較的明確に決まっており、新たに学生を募集することが難しくなります。内定を辞退する学生が予想以上に多かった場合には、新年度が開始するまでに採用予定であった人数を確保することができなくなってしまうケースも見られます。

新卒一括採用が【学生】にもたらすメリット

以上、企業にとってのメリットとデメリットについてご紹介しました。では、学生にとっての新卒一括採用のメリットとは、どのようなものなのでしょうか。

第一に、業務に直結するスキルや経験が比較的求められないことが挙げられます。

新卒一括採用は、前述したように嗜好性や普段の考え方などのポテンシャルを重視します。そのため、即戦力となるようなスキルや経験はほとんど求められません。

第二に、大手企業や有名企業に就職できる可能性が高いことが挙げられるでしょう。

もちろん、個々の能力によって異なりますが、新卒一括採用の枠が大きいことやポテンシャル重視の形態であることから、中途では入ることが難しい企業であっても新卒であれば入社できる可能性が大きい場合があります。

新卒一括採用が【学生】にもたらすデメリット

では、反対に学生にとっての新卒一括採用のデメリットは何でしょうか。

第一に、自分の好きなペースで就職活動を行うことが難しくなります。

採用スケジュールのサイクルが一定であることから、学生は自身の学習やその他の活動で忙しい場合でも、就職活動に取り組まなければなりません。そのため、本来の目的である学業が疎かになることが懸念されています。

第二に、過度な重圧がかかることが挙げられます。

新卒一括採用は一度きりの大きな機会であるというイメージが強く根付いているため、周囲との比較や向けられる期待によって苦しみを抱える学生も多くみられます。

新卒一括採用と通年採用の違い

新卒一括採用と定期採用に応募する学生

続いて、前述した新卒一括採用と通年採用の違いについてご説明します。

通年採用は、新卒一括採用とは違って、期間を限定せず年間を通して採用を行うことが特徴です。

通年採用においては、新卒も中途も関係なく、席が空いたところへ順に応募することができます。そのため、企業は人材が減るごとに必要に応じて新たな求人を出し、人材の不足分を確保していくのです。

通年採用が【企業】にもたらすメリット

では、通年採用を実施する場合、企業が得られるメリットとしてはどのようなものが考えられるでしょうか。

第一に、採用活動の負荷が分散されることが挙げられます。

新卒一括採用は動きが一定であり、尚且つ学生のスケジュールに合わせる必要がありましたが、通年採用の場合は人材の不足状況によって採用活動を細かく行っていきます。そのため、負荷を分散させながら採用活動を進めることができるのです。

第二に、企業にとって最も必要な人材のみを採用することができます。

募集職種にあったスキルや経験を基に判断することも理由の一つですが、通年採用の場合は同時に応募者の幅も広がります。そのため、第二新卒や留学中の学生などより幅広い人材から、優秀な人物を選定することができるようになるでしょう。

第三に、内定辞退があった場合にも人材を補完しやすいことが挙げられます。

新卒一括採用では、採用活動が終了する時期が明確であるため、その時期を過ぎると新たに人材を募集することが難しかったのですが、変則的な通年採用の場合はそのようなことは起こりません。そのため、内定辞退があった場合にも柔軟に次の人材を探すことができるようになるのです。

通年採用が【企業】にもたらすデメリット

一方で、通年採用のデメリットとは何でしょうか。

第一に、研修や教育の管理が難しいことが挙げられます。

新卒一括採用では、入社した社員に対して同時期にまとめて研修を行うことが可能でしたが、通年採用の場合は変則的に少数の従業員が入社してくることになるため、その都度研修や教育を行う必要があります。これにより、従業員に対する教育の質を安定させ、管理することが難しくなるのです。

第二に、企業に対する意識や愛着を生み出しにくいことが挙げられます。

その理由は、新卒一括採用の場合とは異なり、同時期に入社した従業員が少ないまたは存在しないからです。そのため、従業員同士がお互いに高め合うことや、交流を通じて従業員や企業に対して愛着を持つことが難しくなってしまう可能性が高まるのです。

第三に、人材に偏りが生まれることが挙げられます。

新卒一括採用の場合、ポテンシャルを重視した採用であったため、その先の成長の仕方には余白が残されていました。これは、やがて従業員の個性に繋がります。しかし、定期採用では、即戦力になり得るスキルや経験を持つ人が集まるため、組織における個性が似通ってしまう可能性が高まります。

新卒一括採用はおかしい?問題点とは

これまでご紹介した新卒一括採用でしたが、近年いくつかの問題点が指摘されていることはご存じでしょうか。

第一に、現代の企業の体制に合致していないことが挙げられます。

前述したように、近年の雇用は変化しつつあり、終身雇用の衰退や多様性の尊重などが見られます。変容する企業の体制において、新卒一括採用は適切ではないとの声が上がっています。

第二に、少子高齢化に伴う労働人口の減少により、即戦力になるようなスキルマッチ型の採用が求められていることが挙げられます。

今後もますます労働人口は減少することが予想されています。そのため、企業の人材不足を埋めるべく、迅速に選考を行うことのできる定期採用の実施が注目されているのです。

第三に、就活ルールの撤廃により、採用開始時期が早まり、採用活動の長期化による費用の増加が見込まれています。

前述したように、2018年に経団連の採用に対する指針が表明されなくなったことから、新卒一括採用のスケジュールが年々早期化している傾向にあります。学生の負担になることはもちろん、企業にとっても採用活動に対する費用が嵩むため、問題視されています。

これらのことから、新卒一括採用に変わって定期採用を実施する企業も増加しつつあります。

新卒一括採用は日本だけ?海外との違い

新卒一括採用は、日本特有の採用方式でした。では、海外ではどのような採用活動が行われているのでしょうか。

フランスやアメリカを始めとした国々では、基本的に通年採用が実施されています。そのため、前述したように、求職者には募集職種に関連するスキルや経験が求められます。

また、日本に比べて採用市場におけるインターンシップの重要度が高いことも特徴です。実施期間が長かったり、入社後の業務と同じものを任されるなど、インターンシップに対する取り組み方で採用の合否が決まるケースが見られます。

国内の外資系企業においても、この通年採用を採用している企業が多く見られます。

新卒一括採用の見直し方

これまでのことから、新卒一括採用は日本特有の採用方式であり、現在様々な問題点を抱えていることがわかりました。では、どのようにすればこの採用方式を見直していくことができるのでしょうか。

まず、社内の人材を分析すると良いでしょう。

社内でどのような人材が活躍しているのか、どのような人材が必要なのかを明確にすることで、より効率的に自社をアピールし、選考を進めていくことができるようになります。

次に、通年採用との比較を行いましょう。

前述したそれぞれのメリット・デメリットを見比べながら、現時点の自社に適する採用方式はどちらなのかを検討しましょう。場合によっては、両方の採用方式を取り入れることもできます。

続いて、採用マーケティングを実施しましょう。

採用市場の分析を通じて、今の学生は企業に対してどのような条件や要素を求めているのかを明らかにします。これを基に、採用市場における自社の強みや弱みについても分析し、自社の広報を効果的に行っていくと良いでしょう。

選考が終了した後には、内定者のフォローを行いましょう。

折角採用活動に力を入れて取り組んだとしても、内定を辞退されてしまっては意味がありません。内定者の不安や企業に対して確認したいことなどを一つ一つ解決し、ミスマッチを防ぎましょう。

最後に、早期から広報活動を開始し、オファー型の制度などを活用することで、競争力を高めるという方法も有効な手段の一つです。

優秀な学生は他社に取られやすいため、早い段階で情報を提供し、尚且つ受け身での採用活動のみを行うのではなく、企業側から学生に対してアプローチすることで他社との差別化を行うとよいでしょう。

まとめ

今回は、新卒一括採用について、メリット・デメリットを中心にご紹介しました。

より効果の高い採用活動を行うために、これらの情報を参考にしながら採用方式の見直しに取り組んでみてください。

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