近年、労働人口の減少などを背景として、企業の採用活動は従来通りの形では上手くいかないケースも増加しています。そんな中新しい手法として注目されているのが「ダイレクトリクルーティング」です。 そこでこちらの記事では、その基本的な特徴から従来の採用方法との違い、メリットとデメリットまで解説しています。企業の採用活動が上手くいかないとお困りの方や、新たな手法について知りたいとお考えの採用担当の方は是非参考にしてみてください。
ダイレクトリクルーティングとは
その名の通り、企業が欲しい人材を採用するために、候補者へ「直接的に」声をかける採用方法です。アメリカをはじめ海外では一般的で、「ダイレクトソーシング」と呼ばれることもあります。
自社にとって必要な理想に近い人材をスカウトすることで、一対一でアピールできるのが大きな特徴です。従来の採用活動では企業が応募を「待つ」手法が基本でしたが、対してダイレクトリクルーティングは企業が「攻め」の姿勢をとる手法とも言われています。
なぜダイレクトリクルーティングが注目されているのか
近年、労働人口の減少によって、有効求人倍率が高まっています。
厚生労働省の調査によれば2023年平均の有効求人倍率は前年に比べ0.03ポイント高い1.31倍です。これは、1人あたり1.31件の求人がある、つまり売り手市場であることを意味します。
参考:一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)について(厚生労働省HP)
このような採用市場の変化にしたがって、採用への考え方が大きく変化しました。
特に、高度なスキルや豊富な経験を持つ人材を求める場合は採用活動が難化するため、受け身の姿勢では他社に出遅れてしまうという状況になっています。
加えて、SNSの浸透により、採用経路が多様化したことも新たな採用方法が台頭する後押しとなりました。
実際、近年は新卒・中途ともに採用活動の中で取り入れられています。
新卒採用においては、就職活動早期化によって就活解禁を待たずに活動を始める学生も多いため、企業が優秀な学生を他社より早く採用する必要があります。
また中途採用の場合、多くの企業から必要とされている優秀な人材を採用するためには、応募を待つだけでは不十分です。
これらの理由から、企業が候補者をスカウトする形の採用活動は幅広く注目を集めています。
ダイレクトリクルーティングと従来のリクルート方法の違い
従来は求人サイトやメディアへの掲載、ハローワークや人材紹介会社などへの登録の後は、企業は候補者の応募を待つという受け身のスタイルが主流でした。これらの採用方法では、応募がなければ採用プロセスがそもそも始まりません。
対してダイレクトリクルーティングは企業が人材を自ら探すことから採用活動が始まります。
詳しい違いは下の表の通りです。
母集団 | コスト | 自社内の作業工数 | |
---|---|---|---|
人材紹介 | 限定的 | 成功報酬型課金 :高めだが、 成果が出るまでは 費用発生無し | 書類選考を省略可 |
求人媒体 | 多い | 1求人数万~40万程 :低めだが、 成果が出なくとも 掲載料がかかる | 求める人物像とは 異なる候補者からの 応募対応が増える |
ダイレクト リクルーティング | 企業が調整可能 | 成功報酬のあるなしはサービスによる | 候補者の選定や、 スカウト文の作成など担当者の負荷が多い |
ダイレクトリクルーティングにかかる費用
基本的な費用体系は「先行投資型」と「成果報酬型」に分かれています。
中途採用向けの場合は媒体によってさまざまですが、新卒採用の場合は基本的にひとつの媒体の中で先行投資型と成果報酬型両方のプランが設定されています。
先行投資型は、人材データベースの利用料を月額や年額等の単位で支払う費用体系です。採用人数に関わらず一定の料金で利用できます。
成果報酬型は、応募や入社など採用活動の成果が出た後に料金が発生する費用体系です。採用成果と支払う費用のバランスがとりやすいため、自社の採用活動の計画に適したプランを選ぶことができる場合は、コストを抑えられるのが特徴です。
ダイレクトリクルーティングのメリット
採用コスト抑制
メリットのひとつとして、活用次第で単価を抑えることが可能であることが挙げられます。
費用は「人材データベースの利用料+採用時の成功報酬」という形が一般的であり、人材紹介費用よりは安価に設定されていることが多くなっています。
また理想的な人材に焦点を当てて接触することができるので、従来より効率よく採用活動ができるのも採用コスト抑制に繋がる要因です。
転職潜在層への採用活動が可能
中途採用の場合、労働人口が減少している現在の採用状況においては、転職活動を始めている人のみならず、これから転職を考える人も視野に入れる必要が出てきました。しかし従来の採用方法では、転職をまだ始めていない層には接触することができません。
そんな中、スカウト型の採用手法は転職活動を始めるには至っていない層にも接触できるのが特徴です。
自社とのマッチ度が高い人材を採用可能
自社にとって理想的な人材に企業から直接声をかけ、その人材が自社に関心を抱いた結果選考が始まることから、採用後のミスマッチ低減が期待できます。
また企業から直接声をかけることで候補者に自社を意識してもらいやすいため、認知度が低いという理由から母集団の形成が難しい企業でも、自社の求めるようなスキルの高い人材に接触できるという点も魅力です。
採用ノウハウの蓄積
自社主体の採用活動を通してスキルや知識を蓄積することは、企業の採用活動にとってプラスになります。
従来の採用方法と異なり、自社の分析からアピール方法まで、ワンストップで自ら考える必要があるため、課題を分析して次の機会に活かしやすいのがポイントです。採用フローが明確で、数値目標を設定しやすいと同時に、採用活動の費用対効果を把握できます。
また長い目で見れば、自社に合った採用ノウハウを積み重ねることで、よりよい採用活動が可能になります。
ダイレクトリクルーティングのデメリット
工程が多く負担が増える
人材紹介会社など他社を介さず自社で作業工程を担う分、企業の採用担当者の負担が増えてしまいます。
具体的には自発的に候補者を探し出すのみならず、効果的なスカウト文の作成やメールのやりとり、日程調整、合否連絡など全ての工程を企業内で担当しなければなりません。
そのため、スカウト型の採用手法を取り入れる際は豊富な人材を投入することが重要です。
短期的に結果を出しづらい
効果的な文面作成を行わなければならないなど、運用難易度が比較的高いため、短期間では効果が出づらいのもデメリットのひとつです。自社の魅力や採用力が採用の成果に影響を及ぼすので、自社に適したノウハウが蓄積されるまでは結果を出すのに時間がかかってしまいます。
さらに潜在層へのアプローチの場合、長期的な姿勢でやりとりを続けることが重要です。スカウト型の採用手法を成功させるには、専任の担当者をつけるなど体制づくりが重要となってくるでしょう。
ダイレクトリクルーティング向きの企業とは
スカウト型の採用活動はどの企業にとっても適しているわけではなく、企業によって向き不向きがあります。ダイレクトリクルーティング向きの企業の特徴は以下の通りです。
- 専門性の高い人材を求めている
- 認知度が低いために母集団形成が難しい
- 従来の採用方法を通して自社の必要とする人材と出会えていない
- 自社の採用力を強化したい
反対に業務負荷を減らしたいと考えている企業や、大量採用を行いたいと考えている企業の場合、担当者の負担が増えてしまうことから、必ずしもダイレクトリクルーティングがおすすめできるとは言えないでしょう。
ダイレクトリクルーティングを導入するときのポイント
長期的な視野
スカウト型の採用活動において基本的に必要なのは長期的な姿勢です。理想的な人材であれば、転職顕在層でなくともアプローチしたい、という企業に向いていると考えられます。
また、難易度が高い採用手法であるため、自社の採用活動に根付かせるPDCAによって採用活動における知識やスキルを蓄積することが重要です。
自社の魅力を伝えられる採用チーム編成
ダイレクトリクルーティングを始める際は、チーム編成の基盤を強固にしておく必要があります。特に自社の魅力が大きなアピールポイントとなるため、自社の魅力や今後の展望について、熱意を持って語れる人の協力が不可欠です。例えば、経営層などから協力を仰ぐのもおすすめです。
細やかでスピーディな対応
スカウトを通して候補者の心を惹きつけるには、メールの返信などでの細やかでスピーディな対応が重要です。返信が遅れたり、雑な部分があったりすると、元々自社に興味を抱いていたわけではない候補者たちの心は離れてしまいます。
丁寧かつ迅速な対応を行うためには、人員と時間を十分に投入する事が不可欠です。体制づくりを徹底的に準備したうえでスカウト型の採用手法を取り入れましょう。
自社とのマッチ度を算出する適性検査ツール「テキカク」
ダイレクトリクルーティングは、自社とマッチした人材に採用活動へ参加してもらうために有効な採用手段のひとつです。
さらに採用活動の過程においてマッチした人材を見極めるには、適性検査も役立ちます。ラフールサーベイの適性検査テキカクでは、組織改善ツール「ラフールサーベイ」事業で蓄積されたビッグデータを活用して組織とのマッチ度合を算出します。中でも現在の組織とのマッチ度合のみならず、組織の未来像とのマッチ度合も算出できるのがテキカクの特徴です。
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